【完結】serial experiments S. A. C   作:藍色

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第2話

lain。

それは岩倉玲音のワイヤード内でのアカウント名である。

管理人権限を持つこのアカウントは、一般ユーザーよりも多くのことができる。

例えば。

 

「………………」

ひたすら黙々と、この時代では珍しい部類に入るハードウェアでのプログラミングを玲音はしていた。

電脳化が進んだことにより、アナログなプログラミングをする者は、趣味が高じた者かもしくは高い技術を持った者だけである。

勿論、玲音は高い技術を持った者である。

玲音の高い技術は、比較的簡単なものではあるがアンドロイドの自作すら出来るようになっていた。

 

「れ、い、ん、げ、ん、き?」

『玲音、元気?』

 

今、玲音が作っているのは"お父さん"である。

玲音の両親は既に離婚しており玲音は現在母親に育てられている。

玲音は母親に育てられながらも父親のことが忘れられなかった。

父親を求める純粋な思いはやがて、玲音の類いまれなる電脳空間に関する才能によって、父親の創作という行為に発展した。

 

「待っててね。お父さんを創ってみせるから」

 

 

 

lain。

それはワイヤードというプログラムを創ったとされる管理人権限を持つアカウント名である。

lain というアカウントに対して何人の人間が存在しているのかは、誰も知らない。

 

「ワイヤードのプログラムはかなり高度な技術が使われているのか」

オペレーターの役割を果たすガイノイド達は現在、ワイヤードのセキュリティシステムに触れない程度の調査をしていた。

「カテゴリが多様にあるぶん、並みの人間が造ると不具合が起きやすいのよね」

ワイヤードについての調査内容が次々と画面に映し出される。

「ハッキングの防護もかなり厳重だなこりゃ」

並列思考を持つガイノイド達の処理速度は、ちょっとしたスーパーコンピュータの処理速度程度なら越えているため、本来ならばセキュリティシステムを掻い潜ることができる筈なのだが。

「少佐レベルになればいける、かもしれんな」

それは処理速度のみでは突破できない要塞のようであった。

「今の段階ではワイヤードの深いところまで直接調べることはできないし、やはり現実世界から調べていくのがいいのかね」

はあー、と武闘派課員達がため息をつく。

「頼むぞトグサー」

笑い混じりの声かけ。

「聞き込みは俺だけしかできない訳じゃないでしょう!」

いつものからかい混じりの掛け合いが飛び交う。

「ははは!元刑事なんだから頑張れやー」

 

 

 

走る、走る。

足下がおぼつかなくなっても、とにかく前へ走らなければならない。

あの存在から離れなければ。

とにかく、逃げなければ。

揺れる景色にぼんやりと白い姿のアレが映る。

「ひ、ぎっ」

言葉にならない音が喉からこぼれる。

 

『ねえ』

 

「うわああああああああああっ!!」

道を横に逸れて全速力で駆け出す。

駄目だ、アレに捕まったらもうおしまいだ。

駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ

 

『ねえ、逃げても何も変わらないよ』

正面に出没したのは白いワンピースを着た女の子。

左の揉み上げだけが長く、結ばれている。

 

「うっ、うっ、がはっ、っご」

足が震えて立っていられず男は這いつくばる。

「なんで…なんでいるんだよ!」

 

「lain!!」

 

『私は遍在する。記録によって。私は遍在する。記憶によって』

無表情のまま淡々と呟くように話す女の子。

『記録さえあればあなたの中にだって私は遍在するんだよ?』

 

「俺が悪かった!俺が悪かった!俺たちは調子に乗りすぎただけなんだ!だから助けてくれ!頼む!」

涙を流しつつlainの存在に怯える男。

 

 

 

 

 

 

『さよなら』




「私達、一発ネタ作者が一発ネタを短編にカテゴライズしようというのだ、アムロ!」
「エゴだよそれは!」
「ならば今すぐ執筆に喘ぐ者達にネタを与えてみせろ!」

逆襲のシャアはDVDで見ました。
金曜ロードショーでも見たかったなあ……

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