俺、総二と愛香が大好きです。   作:L田深愚

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お久しぶりです。ここまでお待たせして申し訳ない。
久方ぶりの更新ついでに過去の細かいところ(尊さんの結維への呼び方を結維ちゃん→長友妹、時雄先生がバツイチ→シングルファーザーなど)や一部エピソードを修正しました。


第五十四話「仮面のメイドX(カイ)」

 ここ輝見市の一等地、日本でも有数の大富豪である神堂家の邸宅で、今日も見目麗しいメイドたちがテキパキと仕事をこなしている。

「はあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 夜を迎えあらかた仕事を終えたメイドたちの集う休憩所に、地の底まで届こうかという重苦しいため息が響き渡った。

 長年の婚活の末、やっと結婚が決まったメイド長の桜川尊である。

 その何十回目かわからないため息を耳にしたメイドたちは、メイド長に何かあったのでは? と顔を見合わせると意を決して尊に声をかけた。

「あかんわメイド長、そんなにため息ばかりついているとせっかくの幸せが逃げちゃいますよ?」

「そんな様子ではあけみちゃんも心配します」

「そうです! マリッジブルーなんて厚かましいにもほどがあるメイド長には似合いませんよぉ!!」

「……おい待てソーニャ、私が厚かましいとはどういう意味だ?」

「人の彼氏に婚姻届け渡す人が厚かましくないわけないですぅー!」

「ああ、だいぶ前会ったあの婚姻届け欲しそうな面をした男か」

「彼が欲しがってたのはメイド長のじゃありません!!」

 ソーニャと呼ばれた子供のように小柄で浅黒い肌のメイドが尊へ向けて文句という名のマシンガンの引き金を引く。毒舌な彼女がずれた尊に突っ込みを入れるのは同僚たちもよく見る光景だ。

 ソーニャが文句を一通り撃ち尽くして落ち着いたころ、それを歯牙にもかけない尊が口を開いた。

 

「……正直、お前らに後を任せるのが不安で仕方がない」

 

 室内だというのに一陣の風が吹き、間をおいてメイド長候補の三人が尊へ詰め寄った。

「「「どういうことですかメイド長! 他の二人はまだしも!?」」」

 タイミングもばっちりな異口同音な叫びの後、顔を見合わせた三人はたちまち眼光鋭くメンチの切りあいを始める。

「お前たち、いいからそこへ並べ」

 喧嘩を止め言われたとおりに横並びとなった三人のメイドは、黙って尊の言葉を待った。

「理由を教えてやる――――まずチアキ」

「はい!」

 チアキと呼ばれた関西弁にポニーテール眼鏡のメイドが背筋を伸ばす。

「お前は神堂家のセキュリティを支えている上に、車両やメカニック類の整備も手掛けられる優秀な人材だが、それ故にメイド長に抜擢すれば他の手が足りなくなる」

「くぅ……その通りです」

 歯噛みするチアキから、隣の金髪長身のメイドへと尊の視線が移る。

「続いてマコト」

「――――はい」

「お前は働きぶりは問題ないものの、戦闘力に不安がある」

「そんな! 愛しい慧理那たん……お嬢様のためなら、この身が砕けても敵と刺し違えてみせる覚悟です!! 私がいる限り、狼藉ものに不埒な真似はさせません!!」

「いや戦闘力以前の問題やん、この間初等部でやらかしかけたの忘れてへんで……こんなんがメイド長になったらお嬢様の危険が危ないわ」

「お嬢様の付き添いで行った映画館でプリキュア目当ての子供を視姦して通報されかけたのもですよ。今更ですけどなんでコレがここで働けてるのか疑問しかないんですが……メイド長の目って節穴なんですか?」

「濡れ衣です! 私はただ、子供たちの笑顔を温かく見守っていただけで……!!」

「うーむ、こいつはトゥアールと比べてまだ害がない方だからなあ」

「お嬢様のご友人、そんなヤバかったんですか……」

 マコトの凛々しくクールな美貌とはかけ離れた、トゥアールといい勝負な醜態が詳らかにされてゆくのを尻目に、最後のソーニャの番が来た。

「お前は口が悪すぎるのが最大の欠点だ。ウチは軍隊の訓練施設ではないんだぞ?」

 

 ――――ピッカピカに磨き上げろぉ! 聖母マリア様でもウンコしたくなるくらいになぁ!!

 

 一同の脳裏に、いつぞや新人のメイドを教育していたソーニャの声が再生される。

 もしハートマン軍曹もかくやという毒舌な彼女にメイド長を任せたら、神堂家のメイド隊は立派な海兵隊員と化してしまうだろう。

「厳しさが……仇となりました……」

 がっくりと膝をついて崩れ落ちるソーニャ。尊はこの、一長一短が極端すぎる三人が現時点での最優秀候補なことに眉を顰め、深々とため息をついた。

 

□□□□

 

 陽月学園ツインテール部の面々も、ここ数日の尊の不調を気に病んでいた。

 かつて無差別に婚姻届けを配り歩き婚活に失敗し続け、ようやく伴侶を見つけてさあこれからという時期に、いったい何が彼女を追い詰めているのか?

 疲労と焦燥、苦悩に染まった尊のツインテールに、観束総二は心を痛める。

 黙っていれば一見いつも通りの尊を一瞥し、結維の膝に乗った慧理那が口を開く。

「皆さんもお気づきでしょうけれど、尊は今後任選びで悩んでおりますの」

「家庭とメイド長の仕事は両立できませんからね……お子さんがいるなら尚更です」

「力になってあげたいけど、俺たちにできることなんて無いしなあ……」

「ただの高校生じゃあねえ」

「よその家庭に嘴突っ込めないもんな」

 トゥアールがうんうんと頷き、総二、愛香、結の三人が、まるで尊の憂鬱さが伝染したかのように揃ってため息をつく。

 ツインテール部の空気が、心なしか重くなった気がした。

 そんな空気を打ち破るように鳴り響くエレメリアン警報に、部室の面々は弾かれたように転送ロッカーへ飛びつき、基地を経由して現場へと出撃してゆく。

 どんなにつらくても悲しくても落ち込んでいても、エレメリアンが来るのなら戦わなければならない。

 戦士に立ち止まっている暇はないのだ。

 

 何事もなくエレメリアンを撃破していつものように基地でくつろぐ面々に、大学を終えた恋香と収録を終えたイースナが合流した。

「結婚か……結君にうちの道場継いでもらって、私は仕事しながら子育てするのが一番無難なところかな? 就職早々産休とるのも悪いし、一年くらいはお預けになっちゃいそうなのが悩みだけど」

「愛香たちに先越されちゃいそうだよね。あー俺も時間に自由の利く副業探さないとなあ」

「さ、先越すって……もう! 結ったら!!」

 頬を染め、照れ隠しで結の背中をバシバシ叩く愛香の姿を微笑ましく眺めつつ、総二は浮かんだ疑問を口にする。

「それならうちのバイト、大人になっても続けたらいいじゃないか。正式に店員になってくれたら忙しい時助かるし……」

「――――なあ総二、俺だって本音を言えば続けたいよ? けどな……とっくの昔にアドレシェンツァは、常連さんがセルフで飲み食いするダベり場になってるじゃん」

 総二はハッとした。一部の常連客は事実上の共同経営者にすらなっているのだ。

「そんな、特に頑張ることもなくお前らと一緒にいられる場所に入り浸っていたら俺は……きっと堕落してしまうよ」

「結……」

「お前は愛香たちとこの店で余裕のある暮らしをして――――ツインテールを磨き続けろ」

 

「うーん、おにいちゃんが大学部に進むならどうにかおねえちゃんに追いつけそうだなぁ……慧理那ちゃん、赤ちゃんの世話手伝ってね」

「赤ちゃん!? もちろんですわ!!」

「う わ あ こいつどんだけなのじゃ……」

 自分が母になる年齢を指折り数える結維を「視」てしまったイースナは、邪悪の権化結維と無邪気に愛する人との育児を夢見る慧理那とを見比べてドン引きした。

 

□□□□

 

 アルティメギル基地の修練場で、今日もまたスワンギルディと無限の円環(アイン・ソフ・オール)隊員による激闘が繰り広げられていた。

 互いが交差する刹那、スマホへ送信された文章をすんでのところで受け止めるスワンギルディに不敵な笑みを向ける隊員は、スワンギルディからの返信に目をやりながら彼の成長ぶりを素直に称賛する。

「やるようになったではないか」

「お陰様でッ!」

 何度目か数え切れぬほど行われてきたメール合戦。毎度毎度受信した者に激痛をもたらす文面の直撃でスワンギルディが吹き飛ぶのが通例となっていたが、今回はそれまでのタイムが劇的に伸びていた。

 見事に自己ベストを更新したスワンギルディは、それに驕ることなく先達からのメールを受け取り、すかさずの返信を繰り返し続ける。

 少女趣味のキャピキャピした文面が飛べば、そのお返しに絵文字でのみ構成された暗号にも似たメールが襲い掛かり、アスキーアートが反撃の牙を剝く。

 その永劫とも思える時間の中、遂に終わりの時がやってきた。

 

 ――――スマホの電池残量、互いに僅か!

 

 下手をすれば受信のバイブレーションどころか、文面を書き上げる間に電池が尽きかねないほどのギリギリの残量に、二人はこれが最後の一戦だと神経を研ぎ澄ませ、全身から闘気を迸らせる。

 

「メエエエエエエエエエエエエエエガネエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

「お注射あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 送信/受信/閲覧/返信というシークエンスを神速で駆け抜けた白鳥の騎士だったが、送信ボタンをタップした瞬間スマホの画は暗転し、相手のスマホをブルリとも震わせることなく沈黙した。

 スワンギルディ、送信ならず。

 

 だが薄氷の勝利をつかんだ無限の円環隊員は、自分をここまで追い詰めたスワンギルディを称え、その肉球のようにプニプニで甲殻のようにゴツゴツしたヌメヌメの手でがっしりと握手を交わした。

 

 ――――名状しがたき特徴を持つ彼こそは、此度の眼鏡卜(めがねぼく)で選び出された精強なる戦士である。

 

□□□□

 

「面接を希望していた者ですが……」

 ある休日の朝、神堂家の門を叩く者あり。

 露出の低いヴィクトリア式のメイド服に身を包んだ彼女は、インターホン越しに連絡していた面接希望者だと告げると出迎えたメイドから思い切り疑いの目を向けられた。

 きゃぴきゃぴしたアニメ声なのも、頭頂部からアホ毛を生やした鮮やかなエメラルドグリーンの髪をツインテールに結び眼鏡をかけているのも、首元に何かのエンブレムを模したチョーカーを巻いているのも構わない。

 だが彼女の顔面はアニメキャラか何かを模した仮面に覆われていたのだ。

 まるで動く等身大フィギュアか着ぐるみコスプレそのものな姿に、こいつはまともに面接を受ける気があるのかと扱いが不審者相手に傾いてゆく中、警戒したメイドに呼ばれた尊とチアキがやってきた。

 チアキの手には護身用に愛用のスパナが握られている。

「本当にただの不審者ならお嬢様たちに被害が及ぶ前に排除せねば……」

「怪しい面接希望者って、どないして審査すり抜けてきよったんや……なんやコイツ」

 チアキたちの姿を見た途端、外見以外は真っ当な面接希望者を装おうとしていた不審なメイドの態度が急変した。

「おお……メイド長のメイド力もさることながら、なんと見事なメガネメイドなのでしょう! 優秀すぎず頼りなさすぎず、程よい塩梅……言うなれば完璧なる中庸の体現! 言うなればまさしく凡人眼鏡! 凡人眼鏡そのものです!!」

「誰が凡人眼鏡じゃアホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

 チアキの持つスパナが一閃され、興奮していたコスプレメイドの首がそれはもう見事な勢いで飛んだ。

「「首いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」」

 予想外の惨劇に悲鳴が上がる中、当の本人は壁へぶつかりながら転がった生首から蜘蛛のような脚を生やして胴体によじ登り、何事もなかったかのようにチョーカーを失った首をヘッドオンさせた。

「ふい~~~~さすがの私も採用前に首にされるとは思いませんでした」

 きゃぴきゃぴしたアニメ声は、いつの間にか男の声に変わっていた。

 

「「エレメリアンだあああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 

「うろたえるな! 全館に警報発令!!」

 尊が悲鳴を上げる一般メイドたちを一喝し、チアキはすかさずスマホを操作して屋敷に非常警報を鳴らす。

「ぬお!? この完璧な変装が見破られるとは油断ならぬ相手! こうなればツインテイルズが来る前にそこな凡人眼鏡とメイド長の属性力を奪い去ってくれるのであ~~~~る!!」

「――――そうはさせませんわ!!」

 口調もコスプレ衣装もかなぐり捨て、170cmに届かなそうなエレメリアンにしては小柄の、犬のような正体を現すエレメリアン。そこへ颯爽と電光纏う黄色の戦士が降り立った。

 彼方でいやー! テイルイエローがお嬢様の部屋にー!! というマコトの悲鳴が聞こえたが、テイルイエロー神堂慧理那は聞かなかったことにした。

「エレメリアン! この方たちに狼藉を働くことはこのわたくしが許しませんわ!!」

「おのれテイルイエロー! 眼鏡でもメイドでもないお前に用はないのである!! さっさとテイルブラックを出すのであ~~~~る!!」

 

「さあお前たちは早く避難するんだ!!」

「エレメリアン! 俺たちが相手だ!!」

 そこへ舞い降りたブラックを除くツインテイルズ一同。

 チアキと一般メイドたちはその場を離れようとするが、湧いて出たアルティロイドたちがモケーモケーと行く手を阻む。

「このシングギルディがいる限り、メイドは一人も逃がさないのである!」

属性玉(エレメーラオーブ)――――学校水着属性(スクールスイム)!!」

 地面を泳ぎ、アルティロイドたちの真下へ潜り込んだテイルブルーが、イルカのように飛び上がりメイドたちの行く手を遮る邪魔ものどもを蹴散らしてゆく。

「さあ今のうちに!!」

「ホラホラとっととずらかりやがれですぅ! ムーヴムーヴムーヴ!!」

「おのれツインテイルズ! こうなれば、無限の円環にてメガネメイドには一家言ありと言われたこのシングギルディの名に懸けてお前らをメガネメイドにしてやるのである!!」

 ソーニャの先導で速やかに逃げ去るメイドたちに地団駄踏んで悔しがるシングギルディは、ホワイトブリムと眼鏡が組み合わされたブーメランを投げつける。

「シングギルディ……? あいつ、犬じゃないのか?」

 よくよく見ればシングギルディの各所にはカニのような甲殻や、蜘蛛の脚やカタツムリの触角めいた突起物が生えていた。

「シング……犬……まさか」

『――――愛香さん! 触手に注意してください!! 奴は……』

 銃剣槍鞭各々の得物でブーメランを迎撃しながら名前と外見の食い違いに首を傾げるツインテイルズだったが、引っ掛かりを覚えたイエローより先に正体に思い至ったトゥアールからの警告がテイルブルーへ飛んだ。

「今だ喰らえッ! X攻撃ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」

 

『The Thing……物体Xのエレメリアンですっっっっ!!』

 

 脳天から観音開きになったエレメリアンの胎内から、無数のX字を描くような軌道でおびただしい触手の奔流が撃ち出されツインテイルズを襲う。

「嫌あああああああああああああああああ触手ううううううううううううううう!!」

「ブルー!!」

 割って入ったテイルレッドがブレイザーブレイドを振るうが、触手は岩に分かたれた川が合流するように炎刃をすり抜けて持ち主へ絡みついた。

「レッドぉ!!」

 絡みついた触手は本体から切り離されると粘土のように形を変え、メガネまで完備したヴィクトリア式のメイド服と化した。

 袖口や首元からは肉色の触手がピチピチと蠢いている。エロゲやエロ漫画でおなじみの触手服だ。

「うわあっ気色悪い! 全身がムズムズするぅ!!」

 メイド服に覆われた全身を内側の触手が這いまわり、レッドの顔が嫌悪感に歪む。

「メガネメイドと化したテイルレッド……ドゥフフこれはなかなか見事な出来栄え。テイルブラックに着せる予行演習としてはちょうどいいのである!」

「くそぉっ!!」

「ほんとにっ!!」

「キリがありませんわ!!」

 ミラージュロッドガンモードの二丁拳銃で迎撃するミラージュも、火器を分担して弾幕を張るイエロー、サンダーも、矢継ぎ早に襲い来る触手の群れとレッドの被害に焦りを隠せない。

 クトゥルギルディと戦った並行世界のテイルイエローのように、一対一で自分だけを狙ってくるのならこの世界のイエロー単独でも迎撃できただろう。

 だがメンバー全員を縦横無尽に狙ってくるこちらの触手相手では、自分の身を守るので精一杯だ。

『愛香さん! 全身服属性(ボディスーツ)で触手を一か所にまとめてください!!』

「わかったわ! 属性玉変換機構(エレメリーション)!!」

 トゥアールの見出した逆転の策。全身を締め上げる全身服属性の力場が、広がる触手を一瞬でまとめ上げる。

「ぬお!? 吾輩の触手が動かんのである!!」

『慧理那さん、結維ちゃん一斉射撃!!』

「ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 すかさず射線の集中した大火力が、散々てこずらされた触手を粉砕した。

 その機を逃さずブルーはレッドに駆け寄ってゆく。

 

「レッド……今 、 助 け る か ら ! !」

 

 確かに触手は怖いし気持ち悪い。けれどそーじが苦しんでるのにそんなことは言ってられないと、恐怖と嫌悪を必死で飲み込み、覚悟を決めてうねうね蠢く触手メイド服をひっつかんだテイルブルーは、愛するレッドの戒めをその小さな剛腕で一気呵成に引き裂いた。

 

「おぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 習作とはいえなかなかの自信作を無残に破壊され、シングギルディの喉を裂かんばかりの絶叫が神堂邸の庭に響く。

「助かったぜブルー!」

 礼を言うレッドに泣き笑いの表情を浮かべて頷くブルーという光景を、テイルミラージュは満足げに堪能した。

 

「トドメよ! オーラピラー!!」

「行きますわよサンダー! 属性玉変換機構――――騎乗属性(ライディング)!!」

 テイルサンダーの背負った砲身から放たれた、電光の捕縛結界に捕らわれたシングギルディに最期の時が迫る。

 バイク形態に変形し、テイルサンダーと人狗一体となったテイルイエローライトニングチェインが完全開放(ブレイクレリーズ)の雄叫びを上げ、稲妻の速さで疾駆した。

 

「「ライトニングッ! ジャッジメントォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」」

 

「せめて……一目でいいからメイド服を着たテイルブラックを見たかったのであああああああああある!!」

 体当たりで跳ね飛ばされ砕け散りながら宙に舞ったシングギルディは、神堂邸にほとんど被害をもたらすことなく爆散した。

 

「レッドたーん! ブルーたーん!! ありがとおおおおおおおおおおおおおお!!」

「テイルミラージュゥゥゥゥ!!」

 その途端、屋敷の中にいたマコトや避難していたメイドたちが窓から一斉に顔を出し口々にツインテイルズへ歓声を上げる。

「天晴れです、テイルイエロー、テイルサンダー」

 そこへ優雅にツインテールを揺らしながら、神堂慧夢が姿を現した。母による娘たちへの称賛は、他の誰からの物より誇らしいものだろう――――

「流石は我が愛娘「あー! 装甲(ふく)が脱げましたわー!!」とそのご主人様……」

 母がもたらしかけた正体バレの危機を、誇らしい娘は脱衣でもって誤魔化した。

 そんなことをすれば当然車輪を支えるパーツが欠け、支えを失ったライトニングイエローはベシャリと地に伏し主人の尻と大地でサンドイッチになる羽目になった。

 

□□□□

 

「後任が無事に決まってよかったですわね、尊!」

「はいお嬢様……たとえ一人では無理でも彼女たち三人ならきっと」

 エレメリアンによる神堂家襲撃を経て、私桜川尊は後継者を誰にするか決めた。

 確かにチアキ、マコト、ソーニャの三人は能力十分なれど長所と同じくらい短所も目立っている。だがそれを互いに補い合えればより神堂家のためになるのではと思い至ったのだ。

 奥様、お館様との話し合いの末、新メイド長チアキを中心にマコト、ソーニャを補佐に据えることが決まったのだった。

「ですがお嬢様がご卒業するまでは、校内でその身をお守りする役目を譲るつもりはありませんので」

「うふふ……これからもよろしくお願いしますわね尊」




この名ありメイドトリオはデモンベインシリーズから持ってきました。

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