マックスさんが「グリッドマンのせいにはするなよ?」って言ってたのでグリッドマンのせいにはしません。
勇ましく立ち向かう白亜の巨神キングミラージュだったが、突如背後からの不意打ちを受けて倒れ伏す。
下手人の正体は、氷河の惑星マグマの惑星と多岐にわたる幾多の星々を、進化と言う名の侵略行為で平らげてきた大怪獣キングソフビ。
住民の避難すらままならぬ都市のど真ん中で、キングミラージュに未だかつてない困難な試練が襲い掛かった!
「前門の虎、後門の狼か……」
街から引き離そうと一方を相手取れば、自由なもう一方が街を襲うことは確実。
この被害を食い止めるために取れる手段はただ一つ!
「トゥアール! テイルマシンを発進させてくれ!!」
『そうくると思って、準備は万全ですよ総二様!』
極彩色のゲートが開き、白銀の戦闘母艦スタートゥアールが夜空を駆け抜ける。
上空へ陣取ったスタートゥアールからのトラクタービームに導かれ、地を蹴ったツインテイルズは開放されたハッチから母艦内部へと滑り込むと、そのまま艦内の転送装置を経て各マシンの操縦席へと収まった。
マシンを持たないテイルブラックとメガ・ネプチューンがブリッジへ姿を現すのと同時に、艦長席の未春から操舵席のトゥアールへ指令が飛ぶ。
「テイルマシン、発進!」
「了解、スカイトゥアール、ランドトゥアール、アクアトゥアール、ハッチ開放します!」
異次元空間に格納されていた赤、黄、青の三機のマシンが空中へ躍り出るや、すかさずキングソフビへと攻撃を開始した。
真紅の戦闘機スカイトゥアールのレーザーバルカンが、黄色のドリル戦車ランドトゥアールの砲撃が、蒼い潜水艦アクアトゥアールの魚雷が、一斉に大怪獣へと殺到し、その姿を爆炎の中へ覆い隠す。
『今ですキングミラージュ! バイパススリップを!!』
「────応!」
『イエロー、例の奴の最終調整も万全じゃ! 思いっきりぶちかましてやれ!!』
「わかりましたわ!」
トゥアールの指示とブラックの通信が、ミラージュとイエローに飛ぶ。これを好機と見たキングミラージュは、眼前のレイヴンギルディへ猛追し、逃がさぬとばかりにがっしりと組みついた。
「ミラージュッ! バイパススリップ!!」
キングミラージュが内蔵の大出力転送装置を起動するのと同時に、三機のテイルマシンも空中でフォーメーションを組む。
「「「「────双房合体!!」」」」
スカイトゥアールが頭部に、ランドトゥアールが胴体に、アクアトゥアールが脚部に変形し、一瞬で元の色の判別できない白銀の巨大ロボットを形作った。
「「「「完成! トゥアールオー!!」」」」
そのまま空中から降下したトゥアールオーは、爆煙から姿を現したキングソフビへ飛びつくと、こちらもまた転送装置を起動する。
「トゥアールオー・バイパススリップですわ!!」
テイルイエローが勝手に名付けた叫びと共に、双方の巨大ロボットは極彩色の輝きに包まれてその場を後にした。
□□□□
キングミラージュが初陣を果たし、
被害を考慮して、広大な原野の広がる自衛隊の演習場へ降り立った俺たちのスーパーロボットは、もろともに転移した巨大怪人、巨大怪獣を前にファイティングポーズをとる。
時刻は既に夜を回っているが、見えるところにいた自衛隊員たちがカメラを取り出しつつ速やかに撤退を開始していた。
「みなさーん! 落ち着いてくださーい! みなすぁーん!!」
ネバーストップというかスパーキングというか、聞き覚えのある良く通る声の隊員が、同僚たちへ避難を促している。
流石は自衛隊だ。もう安全な場所まで引き上げてしまったと、俺たちツインテイルズは彼らを横目に感心する。
「さあここなら思いっきり暴れられるぜ! 覚悟しろ怪獣!!」
「トゥアールオーの初陣を、勝利で飾ってやりますわ!!」
「ま、さっきみたいなやり口はあたしもいい気はしないもんね……」
「ギタギタにしてやろう、ブルーおねえちゃん!」
俺たちの後を追ってきたのだろう、夜空に浮かぶ先程の円盤を俺は睨んだ。
新たな隊長なのかは知らないが、こいつらを差し向けてきた奴は今までの隊長と違って相当陰険な奴なのだろう。瞳の奥の集合コックピットで席を同じくし、怒りに燃える一同は皆やる気満々だ。
色こそ違えど元はスカイトゥアールの尾翼と思しき、銀色のツインテールをピコピコと動かしつつ、トゥアールオーはその、ゆるキャラめいた外見とは裏腹の勇猛さで猛然と、倍の背丈は有ろうかと言う大怪獣へ挑みかかってゆく。
そして俺も、意思を失って暴れるだけのモンスターと化したレイヴンギルディに、拳を固めて立ち向かう。
「カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
レイヴンギルディが嘴を開き、衝撃波を発した。もはや音楽ですらないそれを、俺は歯を食いしばって持ち堪え、すかさず顔面へ正拳突きを叩き込んだ。
怯んだ隙に奴の右足を大外刈りで払い、倒れたところで両足を捉え、追い打ちの逆エビ固めを決める。
富士の裾野にレイヴンギルディの痛々しい絶叫が響き渡り、奴は苦し紛れの衝撃波を地面へ叩き付け、その反動でかろうじて窮地を脱した。
「うおっ!? ……なかなかやるな」
「そっちこそ……お陰でバッチリ目が覚めたぜ!」
意思を取り戻したレイヴンギルディとの仕切り直し。俺は天に右掌を翳し、夜を切り裂く稲妻と共にフォーリンソードを呼んだ。
「俺はもう……独りじゃねえ!!」
レイヴンギルディも、属性力からエレキギターを生み出しただけでなく、その背から新たに生やした何対もの翼を腕へと変化させ、ベース、ドラム、キーボードなど、あらゆる楽器を操る千手観音めいた様相を呈している。
「今や俺がっ! この俺レイヴンギルディこそがヴァンド=エイドだ! 音楽シーンにその名を刻み! 宇宙に轟くヴァンド=エイドそのものなんだ!!」
掻き鳴らされる無数の楽器が咆哮し、
「フォーリンソード────チャージアァァァァァァァァァァァァァァァァップ!!」
迎え撃つのは、音を置き去りにする極超音速の剣技!
剣先から発せられ、赤熱するショックコーンが奴の演奏を切り裂いて迫る。
「トゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥエンダァァァァァァァァァァァァ!!」
袈裟懸けに振り下ろされた剛剣が、すれ違いざまにレイヴンギルディを両断した。
「へ、へへっ……強ぇなぁ……魔星少女にやられたあいつらも……こんな気分だったんだろうなぁ……」
致命傷を負い、全身からスパークを奔らせるレイヴンギルディだったが、その表情はどこか満足げだ。
「なああんた……名前、何て言うんだ?」
「────キングミラージュ」
「いい名前だ……気に入った……! ツインテイルズとあんたの主題歌、俺が
「そうだな……俺があの世に行ったときにでも、聴かせてくれよ」
「任せとけ……最高の演奏を、聴かせてやるっ、ぜ……!!」
残心し、納刀する俺の後ろで背中越しに会話していたレイヴンギルディは、最期にそう言い残して夜を彩る花火と化した。
□□□□
一方その頃、トゥアールオーとキングソフビの戦いも一進一退の様相を呈していた。
トゥアールオーが拳を振るえばキングソフビは長大な力強い尻尾で迎撃し、キングソフビが口から咆吼と共に破壊光線を放てば、トゥアールオーが装甲に物を言わせて悠然と持ち堪え、全身に備えられた兵器群で反撃に出る。
「フィンガーキャノン、ランドミサイル一斉発射ですわ!!」
指先からドリル戦車時の火砲が、胸元からはリトラクタブルライトのようにせり上がった、連装式のミサイルランチャーが次々と火を噴いた。
鉄風雷火の弾雨に呑まれ、爆炎に包まれるキングソフビ。
しかしキングソフビも伊達に進化王を名乗っているわけではない。
コントラバスの弦を松脂手袋で擦りあげたかのような咆吼と共に、身を包む業火を貫き、角を振り立ててトゥアールオーへ迫る。
数万トンは有ろうかと言う、単純明快な大質量攻撃。四人分のツインテール属性を源とする、大出力のフォトンアブソーバーで守られてはいても、無傷で防ぎ切るのは難しい。
「────甘いってのよ!!」
テイルブルーの操作で、跳び上がったトゥアールオーがカウンターの回し蹴りを決めた。
その速度と質量がかえって仇となり、右角をへし折られたキングソフビは轟音と共に地面へと倒れ伏し、口から血混じりの泡を吹きながら痙攣する。
刹那、首領の吐息の強化に伴う破壊衝動に突き動かされていた彼の脳裏に、かつての恐怖の記憶が蘇った。
自らの伝家の宝刀たる、衛星を恒星に変えることすら可能な巨大化光線を受けても1mmの成長さえ認められなかった恐るべき貧乳。
自らをただ一振りの拳にて屠り去った太陽の少女の髪形にも通じる、眼前に聳える白銀の戦女神のツインテールもさることながら、亜種とは言えエレメリアンとしての本能で、その内に全き貧乳の気配を感じ取った進化王は、最期の力を振り絞って起き上がり、野生の熊から逃走するようにゆっくりと後ずさっていた。
不愉快なそれを野生の直感で察したテイルブルーは、無言で
「ブ、
「「
遅れて叫んだレッドたち三人と同じタイミングで、トゥアールオーがその姿を変える。
白銀の装甲が合体前の三色に染まり、胴体と手足が伸長。
緊張感の無いゆるキャラめいた頭部が展開し、リボンへ変わるのと同時にその内側から世界の守護女神に相応しき美貌の頭部が顔を出す。
瞳の中のコックピットは、外装が開放されたことで内に秘められていた頭部キャノピーとしての姿を露わにした。
トゥアールが翻す白衣の裾のように、背面に折りたたまれていたスカイトゥアールの主翼が広がり、モデルとなった本人と同じ空色の瞳に光が点った。
「「「「トゥアールオー・ブレイクレリーズ!!」」」」
その頭部にツインテールを取り戻した巨大なるトゥアールの似姿に漲る、はち切れんばかりのツインテールの活力に、
正統派ヒロインロボットの出現で、遠巻きに見守る観衆から湧いた歓声を背に、トゥアールオーの必殺技が発動する。
背部、脚部のスラスターが唸りを上げ、轟音と共に火を噴き、一瞬で機体速度をトップスピードへ押し上げた。
極超音速で猛追する巨大な戦女神の姿に、満身創痍の大怪獣は逃げる間もなくトドメの一撃を、怒りの鉄拳をその身で甘んじて受ける。
武器など不要。拳一つが有ればよい。そんな男らし過ぎるコンセプトのフィニッシュブロー、その名も────
『シャイニングッ! パニッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
可視化するほど高密度なフォトンアブソーバーが凝縮した正拳突きが、吹き飛ばして衝撃を分散させるなどと言う愚を犯すことなく大怪獣の土手っ腹を貫通した。
拳を振り抜いたトゥアールオー・ブレイクレリーズは、構えを解き残心する。
単純明快かつ、強力無比な右ストレートに貫かれ、進化王キングソフビは断末魔の叫びをあげて大爆発を遂げた。
レイヴンギルディとキングソフビという二大戦力を粉砕し、後はあの円盤だけだと夜空を見上げたツインテイルズだったが、彼らの耳にトゥアールからの通信が飛び込む。
『────今すぐそこを離れてください! 円盤は囮です!!』
直後に地響きと共に演習場の地面が罅割れ、ツインテイルズの背後からキングソフビに匹敵する巨人が姿を現した。
背広姿の人形を粘土細工で拵え、表面をドロドロに溶かせばこうなるだろうかと言う、なんとも不気味な姿だ。
ツインテイルズが消耗した隙を突く伏兵。これがマーメイドギルディの隠し玉だったのだろう。おそらくネクタイであろう位置に、当然のように首領の吐息が根を張り妖しげな輝きを放っている。
不意を打たれたキングミラージュとトゥアールオーに襲い掛かった巨人、全宇宙の憎悪より生まれし破壊神カイザーエディットは、破壊衝動のままに
「────────────我が物語にこのような汚物は不要!」
閃光が迸り、カイザーエディットの両腕がいとも容易く切り落とされた。
「…………え?」
「な、何が起こったんだ!?」
「あれを見てくださいまし!」
「光の先に……」
「文庫、本……?」
空に目を凝らせば、星々に紛れるように無数の文庫本────絵柄もタイプも様々な、されど全てが眼鏡の美少女イラストを表紙にあしらったラノベ単行本が宙を舞い、その開かれたページからロボットアニメの
泥の巨人を掃除する片手間で頭上の蠅を払う様に、空中に鎮座していたヴァンド=エイド母艦が快刀乱麻の軽妙な語り口で両断され、大輪の花火と化して夜空を彩った。
カイザーエディットはその両目から、光線や念動波を発して反撃しようとするが、攻め手の数には敵わない。
みるみるうちにキレのある文章でその巨体を削り取られ、心を突き刺す筆致で穴を開けられ、胸を打つ恋物語がボディブローのようにその鳩尾を打ち据える。
かつて文豪集団スポットライティアに君臨し、極限の計算力で未来さえも描き出した破壊神は、全宇宙に渦巻く編集者の憎悪の集合体は、その実力を万分の一も発揮できぬまま完全消滅させられた。
「……さて、お初にお目にかかる。ツインテイルズの諸君」
「いやはや、余りにも先程の汚物が醜悪だったのでつい手を出してしまった」
「あのような汚い手口は、我等の美学に反しますからなあ……」
今しがたカイザーエディットとヴァンド=エイド母艦を消滅させ、ツインテイルズの二大ロボを取り囲むように出現したのは、容貌さえうかがえぬ漆黒のフードとマントを纏った集団だ。
「お前ら……アルティメギルのエレメリアンか!?」
「いかにも! 我らは
基地で行われた
「無限の円環……じゃと……? まさか、あやつらが……?」
「イースナちゃん、どうしたんや!?」
「イースナ! しっかりしなさい、イースナ!!」
戦いを見守っていたスタートゥアールのブリッジで、テイルブラックは地の底から這い出てきた過去の因縁に押しつぶされようとしていた。
はい、無限の円環ついにご対面でした。
遂に出したトゥアールオー、勝手に完全開放でゆるキャラから美人に変形させちゃいましたが私は謝らない。
あとこの背中に翼、腕が砲塔などの変形パターンは独自の物なので、今後原作に登場したものと違っていてもパラレルなので悪しからず。