俺、総二と愛香が大好きです。   作:L田深愚

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おまたせ! 自重せずにふぉあたーネタマシマシで行きます。


第五十話「火を噴くロック魂! 吠えるギターの渡り鳥」

 黒い羽根に身を包む彼が目を覚ましたのは、見慣れぬ病室のような白い部屋だった。

 ここは一体どこだ……? 俺はさっきまで母艦に乗っていたはずだ、なのにこれはどういうことなのだろう……?

 自らとは対照的な周囲を見渡し、自らの記憶とすり合わせて状況を確認しようとする彼だったが、それ以上の行動を起こすまでも無くドアが開き、この部屋の主とおぼしき人物が姿を現した。

「目が覚めたみたいね」

 彼は、あまり免疫の無い女性──しかも妖艶な美女──の出現に面食らい、動揺する彼に微笑みかけた彼女は、落ち着いて話をするように促す。

「お、俺は宇宙の音楽集団ヴァンド=エイド所属のヘルシェイクレイヴン……アンタは?」

「私はアルティメギル科学班班長のマーメイドギルディ。よろしくねレイくん」

「れ、レイくん……?」

 相手が究極の組織に所属する属性獣(エレメリアン)だったこともそうだが、マーメイドギルディの、気安く遠慮のない態度に気圧されるヘルシェイクレイヴン。

 側に居るだけでひしひしと感じる、その身を構成する属性力の密度、純粋さ、好きな物へ向けるひたむきさの何もかもが、宇宙怪人(なりそこない)の自分たちとは大違いだ。

 そんなエリート怪人たるエレメリアンが、一旗揚げようとして無残に失敗した底辺のバンドマン風情に何の用があるというのだろうか?

「さて、じゃあ今までに何があったのか、貴方の口から聞かせてもらえないかしら?」

「……俺たちヴァンド=エイドは、惑星ユーマエルのTV局から依頼を受けて、地球に俺たちの音楽を広め、受け入れられなければ侵略するためにやって来た────」

 ヘルシェイクレイヴンは、圧倒的上位者に問われては答えないわけにはいかないと、これまでのいきさつをマーメイドギルディへ語り始める。

 

 地球を守る魔星少女の活躍をTV番組として放送する企画の、悪役としての起用。

 太陽系各惑星の力を司る魔星少女たちの、圧倒的な強さに次々と打ち倒されてゆくバンドメンバーたち。

 極め付けが、起死回生の、番組主題歌を賭けた音楽合戦での敗北────

 モニターへ齧り付いてメンバーの最期を看取っていたヘルシェイクレイヴンは、着陸してライブステージに変形していた母艦が轟音と共に揺さぶられて以降、その意識を失っていた。

 なお、彼のあずかり知らぬことではあるが、その後戦いで損傷したヴァンド=エイドの母艦は、爆発などで地球に悪影響を及ぼしかねないという理由で、魔星少女たちによって地球外へと投棄されている。

 

「……あいつら、ただモテたいからってバンドやってるような不真面目な連中だけど、気の良い奴らだって思ってたのに……肝心の檜舞台で俺を置いていきやがったんだ! 毎日真面目に練習に明け暮れていたこの俺を……! それであっさりやられちまっちゃあ、世話無いぜ……」

 自分を決戦で除け者にしたバンドメンバーへの怒りが口を突いて出る。だが、うつむく彼の肩は怒り以外の感情に震えていた。

「ギターの俺一人じゃあ……仇を討とうにもバンド組めねえじゃねえかよぉ……!」

 その頬を流れ落ちる雫の輝きを目にしたマーメイドギルディは、一瞬だけにんまりと口元を歪めると、そうとは悟られぬよう優しい微笑みを浮かべ直し、ヘルシェイクレイヴンに手を差し伸べる。

「貴方のそのひたむきさ、私は評価するわよ」

 差し出された手に困惑する彼だったが、その意味に思い至り目を見開いた。

「まさか……俺に手を貸してくれるっていうのか?」

「そのまさかよ。レイくんにはそうするだけの価値がある。貴方のひたむきさは、もう一皮剥ければ充分アルティメギルの隊員に手が届くわ」

 いつまでも場末のライブハウスで燻ってた俺が、究極の組織の一員に────? その言葉に心揺れるヘルシェイクレイヴン。

「私の計画に協力してくれれば、元の世界で仲間の仇だって取らせてあげる」

 

 ────だから、手伝ってくれないかしら?

 

 覚悟を決めたヘルシェイクレイヴンは、マーメイドギルディの手を取った。

「今日から貴方はエレメリアンよ」

 地獄の闇を思わせる漆黒のカラスと、白衣にも似た装いの白き人魚の邂逅。それがこの世界に何をもたらすのか、今はまだ誰も知る者はいなかった────

 

□□□□

 

 一方、アルティメギル基地では出撃する隊員を選出するための儀式が行われていた。

「メガネガネガネメガネガネ……キエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 四頂軍とは別に、有志によって独自に結成された眼鏡属性の部隊、無限の円環(アイン・ソフ・オール)に所属する、黒いローブのフードを被った大柄な隊員が、大ホールの中央で護摩を焚き、一心不乱に祈りを捧げている。

 護摩壇の中にくべられているのはメタルフレームの眼鏡だ。そしてその脇には、無残にもレンズがひび割れた眼鏡たちが山と積み上げられている。

 ────眼鏡卜(めがねぼく)。レンズに入った(ヒビ)で吉凶を占う卜占(ぼくせん)の一種だ。

 しかし現在何が不調なのか、一向に意味のあるひび割れが顕れず、無限の円環のメンバーたちは困惑を隠せずにいた。

「あのう……お時間がかかるようでしたら、また我々が出撃しても……?」

「黙れジジイ! 今日こそは我らが出撃し、憎きテイルブラックめに一泡吹かせてやるのだ!!」

 恐る恐る伺いを立てるスパロウギルディを、むくつけき黒ローブは口角泡を飛ばして一喝する。

「いや、うちの者がすまないな、スパロウギルディ殿。普段ならすぐに結果が出るところ、中々結果が出ずに苛立っているのだ」

「こちらこそ差し出がましい真似を……」

 先任の老参謀と、顔は見えねど老いを感じさせる声色をした合流部隊の隊員が、ペコペコとジャパニーズサラリーマンのように謝罪合戦を繰り返す中、護摩壇を囲む面々から怒号の如き歓声が上がった。

 

「────出たぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 先程まで炎に焙られ高熱を帯びていたことなど意にも介さず、天へと差し上げられた眼鏡のレンズには、見間違えようも無いほどはっきりと一つの文字が刻まれていた。

 

□□□□

 

 秘密基地アイノスの音楽室。そこで俺と結維、会長の三人は、それぞれが得意とする楽器を手にツインテールへの熱い思いを歌にぶつけていた。

 演目は夏コミでトゥアールが自作したツインテイルズ応援歌。宙明節がバリバリな、ヒーローソングらしい名曲である。

 ────ツインテールが何物にも勝る至高の頂点(ナンバーワン)

 トランペットだけは弾き語りできないため、録音を流しながらの合唱パートで息を合わせ、そんな想いを高らかに歌い上げた俺たちは、トゥアルフォンのカメラを止めて()()()()()()()()()、ようやく一息つく。

「ぷはぁ! ……無事に成功したわね」

「あとはアップするだけね!」

「たくさん練習しましたもの、どれくらい人気が出るのか、今からとっても楽しみですわ!!」

 何を隠そう俺たちは、今までの練習の成果を動画配信サイトYOU TUIE(ヨウチューイ)にアップするべく演奏を撮影していたのだ。

 もちろん学園のアイドルである会長や、まだ小学生の結維たちのプライバシーを保護するため、俺たちは顔を隠す着ぐるみを準備していた。

 俺の黄色い熊、結維の赤い猿、会長の青い狼に合わせて、Tシャツもオン・○○・ニン!とプリントされた同色の物を着ている。

 正直なところ鶴と蛙も加えて五人揃えたかったのだが、トゥアールはともかく総二たちは楽器が弾けないし、イースナたちにも仕事があるし、安易にプロに頼るなんて贅沢は言えない。

「上手いなぁ……! こんな激しい曲、弾くだけでも難しそうなのによくここまで仕上げたもんだ」

「確かに上手かったけど……なんでわざわざミライに変身してんのよ! 被りものしてんなら普段通りでいいじゃない! ……だいたい会長が青であんたが黄色とか色もバラバラだし!!」

「はっはっは。このアタシがクマードポジを譲ると思ったか。二人のポジだってちゃんと右腕と左腕でペアなんだぞ?」

「知らないわよ!」

 変わり身で身バレ対策も万全。分身も出来たらバンドメンバーの穴埋めが出来て捗るのだが……と俺はニンニンと印を結んだ。

 

 後日、コミケで頒布された同人CDの曲だと前振りしたうえで投稿された俺たちの動画は、恐ろしい勢いで閲覧数を伸ばし、この曲は一体なんだ!? 委託の予定はないんですか? 次の即売会で再版してくれ! 良い曲だけどイエローサンダーパートイラネ。おっぱい! おっぱい! などのコメントが続々と舞い込んできた。

「……俺実は原曲のCD持ってるんだ」

「なんだって!? それは本当かい!?」

「聴かせてくれ頼む!」

「サークルの公式でポチってきたばっかだから届くのが待ちきれねえよぉ!!」

 学校でも生徒たちが大騒ぎ。ツインテイルズ声の合成音声の出来の良さに、まるで本物のツインテイルズが歌っているようだと話題となっている。

「大人気だな、トゥアール」

「イベントの時エレメリアンのせいで最後まで居られなかったもんね」

「在庫が捌けるどころか、増産が必要なレベルで注文が殺到してウッハウハですよ!」

「でもイエロー&サンダーのパートが不評なのが寂しいですわ……」

 昼休みのツインテール部部室では、自作のCDが人気を博してトゥアールが上機嫌だ。

「おや、更新が……」

「なにかお気に入りの動画でも更新されたのか?」

 トゥアルフォンへの通知を一瞥するや、ガンマンの早撃ち(クイックドロー)の如き手つきでイヤホンを取り出して動画を再生するトゥアールが気になり、俺は声を掛けた。

「最近トゥアール、小さな女の子がやってる玩具のレビュー動画に嵌まってるんだ」

「あたしたちのなりきり玩具出してるとこと、ミニカーとかの会社の娘さんがそれぞれ動画配信してるんだって」

 みつきたんとめるきーたんきゃわわ……などと呟きながら、犯罪者の顔で動画に集中するトゥアールに代わり、総二と愛香が苦笑交じりに答えてくれる。

 正しい未来(さき)を創る企業と、楽しい夢を本物にする企業が、動画配信でも鎬を削っているのか……俺はキングミラージュの玩具が両社からほぼ同時に発表されたのを思い出し、これから先のクリスマス商戦がどれほど激化するのか戦慄した。

「総二様ぁ~、愛香さぁ~ん、私クリスマスプレゼントは新しい家族がいいなって思うんですけどぉ、お二人は男の子と女の子どっちがいいですか? 愛香さんにも手伝ってもらえばどっちもいいとこ取りできるかもしれませんけど、昔から一姫二太郎と言いますし、トゥアールちゃんとしては断然女の子なんですが」

「気が早いにも程があるわああああああああああああああああああああああああ!!」

「マタニティッ!!」

 顔を真っ赤にした愛香のハイキックで、久々に天井へ突き刺さるトゥアールがみんなの前に披露された。

 

□□□□

 

 秋の日は釣瓶落としと言う様に、まだ6時前だというのに空が真っ黒に染まる中、インディーズのロックバンドがライブを行う予定のライブハウスにエレメリアンが出現したとの報せを受け、ツインテイルズは夜空から零れ落ちた流星のように現場へと舞い降りる。

 開場を待つ人々を掻き分け、反応のあった楽屋へとたどり着いたツインテイルズは、バンドのメンバーたちへ熱っぽく指導を行うエレメリアンの姿を見た。

「いいか!? 技術は確かに大事だが、ロックで一番大事なのはハートだ!!」

「押忍!! ……うわぁ! モノホンのツインテルズじゃん!?」

「むっ!? こいつらがツインテイルズ……この世界の守護女神かっ……!!」

 マジヤベェマジパネェとはしゃぎだすバンドマンたちを他所に、真っ黒なカラスの如きエレメリアンは即座に臨戦態勢を取る。

「いや、ここではこいつらに迷惑がかかる。場所を変えよう」

「……ああ、望むところだ!」

 会場の外へ飛び出し、手近なビルの屋上へ上った一同は、メガネウインガーと共に遅れて駆けつけたテイルブラックも併せて改めて名乗りを行う。

「俺は音楽属性(ミュージック)のレイヴンギルディ! ヴァンド=エイド復活のため、必ずやお前らを倒して見せる!!」

「ヴァンド……エイド?」

『そこのバンドはBANG☆SOW光(バンソウコウ)と言うそうですが、何か関係があるんでしょうか?』

「……はっ!? いつぞやの別組織のような連中が、アルティメギルにスカウトでもされたのでは?」

「レイヴンギルディなぞ、わらわも全く聞いたことのない奴じゃし、その線が濃厚じゃな」

 対峙しつつ、それぞれ疑問を口にするツインテイルズに、レイヴンギルディはごまかすでもなく肯定した。

「ああ、確かに俺は外部からのスカウト組で、生粋のアルティメギル隊員じゃあない……だが仲間たちの仇、魔星少女を倒すため! 奴らの世界へ舞い戻るため! ツインテイルズ、お前たちに必ず打ち勝って見せる!!」

 また新しい単語が出て来たぞ。他所の世界のツインテール戦士じゃないでしょうか? と浮かんだ新たな疑問を横に押しやりつつ、ツインテイルズは各々武器を呼び出し臨戦態勢を取る。

 レイヴンギルディもまた、愛用のエレキギターを取り出して眼光鋭くこちらを見据え、弦へと勢いよくピックを走らせた。

 大気を震わせ迸る激音が、半ば可視化されてツインテイルズへと迫る。

 全方位から襲い来る、回避不能の破壊音波(デスメタル)がフォトンアブソーバーを、リフレクトコートを揺さぶった。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 耐久限界には達していないが、怯ませるのには充分な威力の攻撃が、ツインテイルズへ反撃の暇を与えない。

「おのれ、音なぞ避けようがないぞ!」

「大したダメージやないけど、いつまでも続くとしんどいわぁ……」

『壁の中まではそこまで音は響きません、学校水着属性(スクールスイム)で地下から攻撃してください!』

「わかったわ! 属性玉変換機構(エレメリーション)────学校水着属性(スクールスイム)!!」

 液状化したコンクリートの中へ潜水したテイルブルーは、獲物を狙うサメのようにレイヴンギルディの足元へと迫る。

「ぐほっ……!?」

 演奏に集中していたレイヴンギルディは、真下からの強襲に反応が遅れ、飛び出してきたテイルブルーの拳をその身で受ける。

 彼に出来たのは、咄嗟に相棒を拳から遠ざけることだけだった。

「あいつ……」

「ミュージシャンとして、一端のプライドは持っておったようじゃの」

 テイルミラージュの呟きに、テイルブラックが微笑みを浮かべて返す中、暴力と硬い地面から庇う様にエレキギターを抱えて転がり、満身創痍となったレイヴンギルディは、よろよろとふらつきながらも立ち上がり、瞳に不屈の闘志をギラつかせながら、今なお演奏を再開しようとしている。

「俺の……俺の音楽はまだ終わっちゃあいねえ! 絶対に勝って、あいつらの仇を討ちに行くんだ!!」

「これで終わりだ!!」

 ピックが振り下ろされるより一歩早く、テイルレッドが振りかぶるブレイザーブレイドから火球が放たれた。

 轟炎の捕縛結界がレイヴンギルディを飲み込み、その黒い身体をたちまち炎の色に塗り替えてゆく。

「そんな憎しみで奏でられるものが……誰かを傷つけるものが音楽であってたまるか! 俺は知っている! 心を込めて好きな物を高らかに歌った人を! 心を一つにして演奏を完成させた人たちを!!」

 テイルレッドの叫びと共に、ブレイザーブレイドが完全開放(ブレイクレリーズ)され、展開した刀身が紅蓮の炎に包まれた。

 

「────俺にとって、ツインテールが音楽だ!!」

 

 エクセリオンブーストからの最大噴射によって加速されたテイルレッドの斬撃が、オーラピラーごとレイヴンギルディを両断する。

「誰かを傷つけるのは音楽じゃない、か……だから俺たちは、あいつらに負けちまったのかもな……テイルレッド、あんたのツインテール……最高にロックだぜッ!」

 仲間たちを打ち負かした太陽のツインテールを思い浮かべながら、復讐の鬼と化した悲しきバンドマンは、炎の中でその生涯を終えようとしていた……

 

 ────次の瞬間、彼の胸を黒い結晶体が貫いていた。

 

「何っ!?」

「今のは……スタッグギルディの時の黒い属性玉(エレメーラオーブ)!」

『皆さん! 上空に巨大物体の反応が現れました! 以前のナイチンゲイル母艦よりは小さいですが、それでもかなりのサイズです!!』

 トゥアールの通信に天を仰げば、そこには街を照らす月明かりを覆い隠し、轟然とこちらを見下ろす数百メートル級の巨大円盤────ヴァンド=エイド母艦の姿。

 会場周辺の住民はたちまちパニックを起こし、少しでも遠ざかろうと移動を開始した。

 円盤ではあるが真円ではない、楕円形の船体が二枚貝のように開き、内側から眩い閃光が放たれるや、黒い属性玉──首領の吐息(ゴッドブレス)──のエネルギーがスパークしていたレイヴンギルディへそれは降り注ぎ、命尽きる寸前だった彼を再生、巨大化させた。

「ライドリーベ、ツインローダー発進!!」

 幸いこの街は臨海都市で、ライブハウスも海から数キロと言う距離に位置している。

 キングミラージュで巨大エレメリアンを港まで押しやるか、バイパススリップで人気の無い場所へ連れて行けば、被害は最小限で済むはず……

 地下基地の次元跳躍カタパルトに送り出され、タイヤを唸らせながら超空間を疾駆して駆けつけた相棒に飛び乗ったテイルミラージュは、すぐさまキングミラージュへと三重合体し、巨大化したレイヴンギルディに対峙する。

 この騒ぎじゃ、BANG☆SOW光のライブは中止せざるを得ないだろう。

 レイヴンギルディがあれほど熱心に指導していた相手の晴れ舞台を、余計な横槍で台無しにしてしまった連中に、キングミラージュは静かに怒りを燃やした。

 ファイティングポーズをとり、いざ戦闘開始しようとしたキングミラージュの耳に、大地を揺らす激震と、避難状況と移動ルートを確認していたトゥアールの悲鳴じみた通信が届く。

『────後ろです!!』

 振り向く間も有ればこそ。無防備な背中に直撃した光線が、キングミラージュを地に伏せさせる。

「なんじゃあれ……」

「怪、獣……?」

 ツインテイルズは息を飲んだ。倒れたキングミラージュの背後に聳え立っていたのは、円盤から光と共に降り立った数十メートル級の巨大怪獣。

 生命の息吹を感じさせつつも、作り物(ソフビ人形)のような無機質さを併せ持つそれは、かつて別世界で幾銀河を渡り、煮えたぎるマグマも、凍てつく氷河も物ともせずに蹴散らして、数々の惑星に進化をもたらしてきた漆黒の巨獣。

 あらゆる惑星に筋肉と言う名の進化をもたらす侵略組織、エヴォリバース最強最後の王、進化王キングソフビが蘇り、この地球へと降臨したのだ。




この世界では原作と違って応援歌はあの曲になりました。

おまけ
眼鏡卜(めがねぼく)
古代中国で栄えたと言われている一族、ゴーマ族の眼鏡神主が広めた占い。
生贄として娘を捧げることを拒んだ父親が、娘の代わりに彼女が愛用していた眼鏡を捧げたことで吉兆をもたらしたことが眼鏡神主の目に留まり、古来よりの亀卜や骨卜と融合し一族に広く知られるようになったという。
民明書房刊「世界のおもしろ占い」

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