俺、総二と愛香が大好きです。   作:L田深愚

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90年代以降の戦隊ロボは、基本的に初登場時は合体せずに分離状態で巨大戦するもの。
80年代はそもそも合体しなかったり、いきなり合体までやるからなあ……


第四十四話「緊急発進! はばたけテイルマシン!!」

 長友結の朝は早い。

 遅くとも朝六時前には目を覚まし、軽く歯磨きをしてから準備体操を行い、日課の走り込みへ往復三十分ほど出かける。

 津辺家への外泊や食事当番などでその時間が取れなかったり、雨が降っていて走れなかった場合、代わりに時間の許す限り正拳突きや蹴りの練習を行うのだ。

 妹の結維が参戦してからは、彼女も兄との鍛錬に参加しており、基地のフィットネスマシンの使用も相まって、しっかりと筋肉が付いてきている。

 今や最高強度のトレーニング用ゴムバンド、通称黄金のきしめんさえ難なく引き延ばせる彼女が、テイルミラージュ化する日は近い。

 帰宅した後汗を拭き、朝食をしっかり摂って着替えたら、後はいつものように喫茶アドレシェンツァへ向かうだけだ。

 

 長友兄妹が到着した観束家のリビングでは、いつものように朝食を摂りながら総二たちがTVを眺めている。画面の中では、朝のワイドショーが昨日病院を襲ったナイチンゲイルのことを報じていた。

 映像を空中に投影したり、各メディアをジャックして宣戦布告してきたアルティメギル程ではないが、巨大円盤で襲来してきた奴らもなかなかスケールが大きい。

 

『証言によれば、エレメリアンとも交戦していた、戦闘員もモケーとは姿が違っていたそうで、新たな組織が襲来したとの見方が強いと思われます』

『アルティメギルもまだ倒されていないのに、新組織ですか……ツインテイルズのみんなが心配ですね』

 

「やっぱり連中、あんなデカブツで乗り付けてきたから目立ってるな……」

「それにしても、ナース服着たマッチョとか、絵面がすごい怪人よねえ……総ちゃんたちは実際に見てどうだった?」

「あのエレメリアンにやられるくらいだから、強さは大したことないみたいでしたけど……別な場所に出られたら面倒よね」

「そうだな」

「あとで他の皆さんにもお伝えしますけど、何とかあの円盤を発見できないか分析を進めておきます」

「よろしく頼むぞ、トゥアール」

「任せてください!」

 食器を洗い終えた未春が見送る中、TVを消し、鞄を手に取った総二たちは登校のために我が家を後にした。

 

 高等部では、久々にツインテイルズ関連の全校集会が開かれ、新たな組織ナイチンゲイルの脅威を周知する慧理那の演説は、彼女とレッドたちにお熱な生徒たちを大いに沸かせていた。

 

「おお……ツインテイルズのナース服イラストか!」

「昨日の夜SNSに上がってたのを拾って来たんだ。タイムリーだよな」

「ミラージュさんナース長似合うなあ」

「この眼鏡とおっぱい……いい仕事してるぜ」

「ああ……レッドたんやブルーたんにお注射されたぁ~い」

 休み時間に教室で屯す生徒たちは平常運転だ。総二たちも努めてその狂気の日常をスルーし、愛香やトゥアールたちと机を囲んで談笑している。

「あ、これ焔先生の絵だ」

 周囲の会話が気になって、つい件のつぶやきSNSを立ち上げた結は、憧れの作家が変身した自分を描いてくれたことに気付き、速やかに画像を保存した。

「お前まで見てんじゃねーよ!」

 総二のツッコミが炸裂した。

 

□□□□

 

 アルティメギル基地の片隅で、一心不乱に剣を振る傷だらけのエレメリアン。

 つい先日決闘を挑んだテイルレッドに敗北し、テイルブルーにトドメを刺されそうになったところを、アルティロイドに庇われて命を長らえたスワンギルディだ。

 彼は神聖な決闘に無粋な横槍を入れた別組織、ナイチンゲイルとの戦いの中、看護服属性への誇りを込めた一撃を振るい、何かを掴みかけていた。

 本来の得物はテイルレッドの一斬でへし折れており、今彼の手に握られているのは刃渡りと重さが同じだけの、訓練用の模擬刀だ。

 だがその軌跡には一切よどみなど無く、熟練の看護師による清拭、注射、抜針の流れを思わせるスムーズな動きを実現している。

 憎しみではなく、看護服属性の誇りを刃としてツインテイルズへ一矢報いる────ただそれだけを胸に、彼はただひたすらに剣を振る。

 目指す先は、研ぎ澄ませた至高のお注射。

 それこそが、テイルレッドの剣へ届く唯一の武器なのだと信じて。

 そんな彼のひたむきな鍛錬を、陰から静かに見守る者があった。

「スワンギルディ……どうかもう命を粗末にはしないでくれ……お前が生きてさえいてくれれば、私はそれだけでいいのだ……」

 涙すら流して若武者の生還を喜んだ老参謀、スパロウギルディの呟きは、誰に聞かれるでもなく空気へ溶けてゆく。

 

□□□□

 

「宇宙だって!?」

 秘密基地アイノスに集められた俺たちは、トゥアールから告げられた言葉に揃って驚愕の声を上げていた。

 ちょうど夕方からフリーのイースナたちや、恋香さんも一緒だ。

「ええ、奴らの円盤が去っていった方角に転移反応が探知できなかったので、もしやと思いようじょの予備機を二基とも宇宙へ向けて走査し、徹底的に分析を行ったところ、あの円盤が月軌道上に停泊していることが判明しました」

 地球のレーダーや観測技術では見つけるのが不可能で、トゥアールの科学力でも発見困難なステルスが施されていたらしいが、彼女の執念がわずかな違和感を捉え、こうして発見に至ったというわけだ。

「異次元空間に隠れていたりしなくて幸いだったな……」

「現状、アルティメギルだけでもやっかいなのに、余計な相手を抱え込むリスクは可能な限り避けねばなりません。そこでこの千載一遇のチャンスを無駄にしないためにも、私たちは早急にナイチンゲイルを壊滅させようと思います!」

 正面のスクリーンに表示された円盤型要塞をバックに、トゥアールが宣言した。

「で、どうやって相手するの? スタートゥアールで飛んでいく?」

 愛香の発言にガタリ、と会長が瞳を輝かせて席を立ち、結維に手を引かれて座り直す。

「────私に考えがあります」

 トゥアールは端末を操作して、コンソールルームのメインスクリーンに、敵艦を発見してすぐ計画していたのだろう作戦の概要を表示した。

「これは……!」

「テイルマシンか!!」

「メカ戦ですわー!!」

 メインスクリーンに映し出されていたのは、かつて巨大戦の切り札としてトゥアールが開発し、未完成のまま保留にされていたツインテイルズの合体マシン。そしてDrオヴェルが生み出した俺の愛機にして分身、エクスミラージュの姿だった。

「愛香さんの言う通り、スタートゥアールで宇宙へ出ます。ですが敵要塞への攻撃は、テイルマシンを使用します」

 作戦はこうだ。まずスタートゥアールで軌道上まで上がり、敵影を確認できたところで各テイルマシンを発進させ、一斉攻撃で撃滅する。

「シンプルで分かりやすいな……」

「物事は何でも単純なほうがいいわよ?」

 総二たちの率直な感想。かくいう俺も同意見だ。

「当然反撃されることも考慮して、スタートゥアールもあれから改良を進め、自衛用の武装くらいは施してありますから、艦載機くらいとは戦えるはずです」

 その言葉を聞いて脳内で、三機編隊で攻めかかる敵戦闘機を物ともせずに蹴散らし進む、無敵の要塞戦艦スタートゥアールの勇姿が躍った。

 おそらく瞳を輝かせて拳を握る会長も、同じものを想像しているに違いない。

「わらわたちはマシンが無い故、役目はアルティメギルの襲撃への警戒ということで間違いないかのう?」

「ええ、私たちが宇宙にいる間、地球は頼みましたよイースナ、メガ・ネ」

「心得たのじゃ!」

「まかしとき!」

 留守を守るイースナたちが、誇らしくその任を受けるのを他所に、会長がおずおずとトゥアールの袖を引く。

「あのう……トゥアールさん、やはりトゥアールオーへの合体はまだ無理そうですの?」

「申し訳ありません、慧理那さん。スタートゥアールの武装化と、マシンの整備で手一杯で、最後の仕上げは手つかずのままです」

「そうですか……でも、現状で出来ることを精一杯やるだけですわね」

「その通りよ慧理那ちゃん! ……正直あのラジエッカーみたいなのに乗るのはまだ抵抗あるし」

「そうじゃそうじゃ! 今はその鬱憤を全て連中へぶつけてくるがよい。わらわがトゥアールを手伝って、いつか必ず慧理那を巨大ロボに乗せてやるからのう!!」

 合体できずに少しだけしょんぼりする会長を口々に励ます二人。でも結維、小声で言ったの聞こえてるからな?

 それはそうと、トゥアールはツインテールを作り出すことが出来ないが、イースナが居るから上手くすればトゥアールオーにツインテールを組み込むことは可能なんだな。

 総二も同じことを考えていたようで、不意に目が合って俺たちは笑い合い、何よその意味深な笑みは!? と愛香のツッコミを受けた。

 恋香さんも未春さんも、そんな俺たちのやり取りを微笑ましく見守っている。

 だが妹よ、いくら俺と会長に染められてるからって「バルジオンさえあれば!」って悔し気に呟くのはやめておけ。

 メガ・ネと色被るしサンダーじゃなくテイルハンターになるぞ?

 

□□□□

 

 その日、とある天文マニアが上空に不審な物体を発見した。

 極彩色の光と共に忽然と出現した巨大な飛行物体。翼の生えた巨大な銀色のライトバンとも形容できるそれは、まるで月を追いかけるように宇宙を航行していた。

 常識を超えたスーパーマシンの出現、これすなわちツインテイルズかアルティメギル関係の事件だと、存在を知った軍には即座にスクランブルが発令され、ありったけの高高度偵察機が各地の軍事基地から一斉発進。搭載されたカメラを背面飛行で宇宙へと向ける。

 軍だけでなく、目撃した住民からの情報も瞬く間にネット上に拡散し、天文台どころか一般家庭の望遠鏡まで総動員して人々は事の成り行きを見守った。

 

 所変わって宇宙の医療集団ナイチンゲイルの母艦、超次元戦闘医院ナイチンゲイレストの内部では、これからの身の振り方を決めるべく、ナース服に肉体(からだ)を押し込んだむくつけき怪人たちによる会議が開かれていた。

「やはりアルティメギルと事を構えるのは良くない。この世界から撤退するべきだ」

「尻尾を巻いて逃げろと!? これだけ見事なより取り見取りの病院を前にして!?」

 撤退を支持する者、徹底抗戦を掲げる者が口角泡を飛ばして意見をぶつけ合う中、その様子を眺める彼らの首領、キングデュナンが手を上げ、重々しくその口を開く。

「────余は撤退に賛成だ」

 その言葉にざわめきを増す一同を手で制するキングデュナンは、何故その考えに至ったかを語り始める。

「だがそれは究極の組織と戦うことへの臆病風に吹かれてのことではない。純粋に損得勘定の結果である」

 キングデュナンは、身を包む白衣と同じ純白の兜の、赤十字を模るバイザーの奥で、鋭い双眸をグポォンと光らせ、無駄に我を通して争い合った結果が、見る影もなく荒廃した世界と、筋肉を鍛える気力すら残らぬ患者たちでは全くもって割に合わぬと部下たちへ知らしめた。

「だが悪いことばかりでもない。つい先ほど20151223世界の惑星ユーマエルより、我等に看護の依頼が入った」

「なんと! それはまことでございますかキングデュナン様!?」

 悔しがりながらも首領の決断だと受け入れていたナース長が、ハッと顔を上げる。

「この依頼による報酬は、この20150308世界の惑星地球を、アルティメギルと争いながら治療完了した場合の収入試算を上回っておる。それが撤退を決めたもう一つの理由である」

 どれほど科学が発展しようとも、物事を成し遂げるにはコストが付いて回る。たとえ貨幣経済から脱却しようとも、装置を動かすにはエネルギーが必要不可欠だ。

 そしてどのように莫大でも、エネルギー源は無限ではない。無くなればどこかから補給しなければならないのである。

 購入するなり、自分で採掘してくるなり、あるいは悪の組織らしく強奪してくるなり。

 そしてそれぞれの方法は違った形でコストを消費するのだ。

 購入は言わずもがな対価が必要であり、採掘には現場へ移動したり採掘機械を稼働させるためのエネルギー。一見無料に思える強奪には、戦闘で消費される武器弾薬に、兵器を動かすエネルギー、更に人的資源が必要なのだ。

 無駄な消費をせずに、目的を達成できるならそれでよい。

「────更に、今回の赴任先では我々の活躍がTV放送で公開される。それを奇貨として、我らナイチンゲイル仕様の医療器具、医薬品、玩具の販売も視野に入れている」

「テ、TVですと!? こうしてはおれません、すぐにでも次元間航行の準備を……」

 ナイチンゲイルのナース長たちは、満場一致で首領の提案に賛成した。

 彼らの脳裏には、自分たちが愛用するのと同じモデルの医療器具が各地の病院でも使用されたり、薬局やコンビニに自分たちの顔がプリントされた栄養ドリンク(プロテイン)が並び、看護師や医療現場に憧れる子供たちが、精巧な玩具を手にお医者さんごっこを楽しむという薔薇色の未来が描き出されているのだろう。

 

 ────その時である!

 

 突如として爆発音と振動がナイチンゲイレストを襲い、集っていたナース長たちを慌てさせる。

「何事だ!?」

「敵襲! 敵襲です!!」

 メインスクリーンには白銀の戦闘艦が赤、青、黄三色の艦載機を発艦させ、こちらに攻撃を仕掛けている姿が映し出されていた。

「うぬぬぬぬ……先日のツインテイルズなる奴らの仕業に違いあるまい。こちらも迎撃態勢に入れ!!」

「フローレン!」

 最高幹部である指揮官。貧弱な筋肉や贅肉という癌細胞を治療する、筋肉陽子線治療器を武器とする、プロトンカギムシ副院長の号令一過、戦闘員たちが速やかに戦闘機ナイチンゲイラーに乗り込み、迎撃を開始する。

 

□□□□

 

 さて、いつもと同じノリで一瞬で宇宙までやって来た俺たちツインテイルズは、各機のコックピットに収まり、出撃を今か今かと待ち構えていた。

 当然未春さんは艦長としてブリッジに、恋香さんと桜川先生は操艦を担うトゥアールの脇で、俺たちの戦いを見守ってくれている。

「敵艦、見えました! 先制攻撃後、スカイトゥアールから順に発進開始します!!」

 ミサイルの発射と思しき振動を感じた後、トゥアールの号令と共にハッチが開き、さっきまで居た極彩色の空間から俺たちは暗黒の宇宙空間へと身を躍らせる。

 実車と大きさの変わらない俺のライドリーベはまだしも、それぞれ20m近くあるテイルマシンが、精々30mくらいしかないスタートゥアールのどこに三台も入っているのか疑問だったが、白衣のポケットや俺のポーチと同じ原理を格納庫にも応用していたようだ。

 そして敵母艦を見れば案の定、円盤中央部のハッチから、ナースキャップを模した戦闘機が三機編隊で飛び出してきた。

「さっそく敵さんがおいでなすったわよ?」

「見てろ、叩き落としてやるぜ! スカイバルカン!!」

 テイルマシンの操縦法はテイルギアが教えてくれるため、慣れるのは簡単だ。初めてでも手足のように扱える。

 レッドの操縦の元、真紅の戦闘機スカイトゥアールの機首から撃ち出されたレーザーバルカンは、狙い過たず敵戦闘機を撃ち落としてゆく。

「負けないわよ~、アクアトルペード、発射!!」

 蒼き万能潜水艦アクアトゥアールも、艦首から魚雷を発射し、ミサイルのように敵編隊をまとめて吹き飛ばす。

 魚雷と言いながら思いっきり後ろから火を噴いて飛んでいるため、あれはおそらくロケットで推進する、スーパーキャビテーション魚雷という奴なのだろう。

「イエローは正面を、わたしは左右を受け持つわ!」

「了解しましたわ!」

「「サンダーキャノン、ランドレーザー、一斉発射!!」」

 黄色の重戦車ランドトゥアールも、テイルイエロー、テイルサンダーの息の合った操縦に応え、ドリル先端からのレーザビーム、車体上部に並ぶ二連装フレキシブル砲塔からの砲撃で、襲い来る戦闘機群を粉砕した。

 今更ではあるが、飛行を前提に設計されていない彼女らのマシンに、見事な宇宙戦闘を行わせるとは、合体用のスラスターもなかなかに馬鹿にできない推力だ。

 最後はこの俺、テイルミラージュの駆るトリコロールのスーパーカー、ライドリーベだ。

 唸りを上げるタイヤが宇宙空間の真空をしっかりとグリップし、一条の流星と化して猛然と星の海を駆ける。

「悪いミラージュ、いくつかそっちに抜けた!」

 三機の攻撃を潜り抜けた奴らがライドリーベの眼前に迫る。だが俺は慌てることなくこの機体の必殺コードを叫んだ。

「チェインジ! エクスミラージュ!!」

 スーパーカーは一瞬で人型のロボットへその姿を変え、マシンと一体化した俺の意識は10mの鋼鉄巨人へと拡大。声も女の物から落ち着いた声色の、大人の男の物へ変化する。

 疾駆していた慣性そのままに、敵戦闘機の一機を蹴りで粉砕した俺、エクスミラージュは、残りの戦闘機へ狙いを定め、両腕から小型ミサイルを撃ち放った。

「リーベミサイル!」

 爆散し、次から次に宇宙の塵へと化してゆく戦闘機だったが、補充も次々行われ一向にその数が減る気配はない。

 おそらく奴らの格納庫も、俺たちの物と同じく異次元的に拡張されているのだろう。

「倒しても倒してもきりがないぜ!」

「一体あの中に何機入ってるのよ!?」

「このままではこちらのエネルギーが先に尽きてしまいますわ!」

「あの円盤にたどり着ければ……!」

 母艦を沈めれば、当然この延々膠着状態が続く戦況は好転するのだろうが、そもそも奴らが邪魔をして母艦までたどり着けないのだ。

「合体できなくても、せめて強力な必殺武器が有れば……!!」

『ありますよー』

 苦悩する俺の耳に届いたのは、何とも緊張感の無いトゥアールの声だった。

 俺は思わずスタートゥアールを振り向いた。

『その名もフュージョニックフォーメーション。別の世界のツインテイルズの合体武器をヒントに考案した、テイルマシンの突撃形態です!』

 戦隊ヒーローのマシンが、合体の組み換えでロボ以外の形態になれるような機能が、テイルマシンにも存在していたのだ。

「よし、頼んだぞレッド! みんな!!」

「任せろ!」

 

『フュージョニックフォーメーション!!』

 

 唱和したその叫びと共に、三機のテイルマシンが一直線の単縦陣を組み、ランドトゥアールを先頭にドッキングを開始した。

 連装砲塔が上部から車体側面へ移動し、その後ろから突っ込んだアクアトゥアールが連結される。

 そこへスカイトゥアールが、アクアトゥアールを止まり木にするように合体することで、二本のドリルを機首に頂く大型攻撃機が完成した。

 

『────完成! バスタートゥアール!!』

 

 宇宙空間に雄々しく産声を上げたバスタートゥアールは、スラスターを猛然と噴かし、ドリルの回転勇ましく、敵戦闘機の群れへと突貫する。

「機首ツインドリル、完全開放(ブレイクレリーズ)ですわ!」

「エレメーラジェット、アクア、スカイ両方とも完全開放したわ!!」

「アフターバーナー全開! いっけええええええええええええええええええええ!!」

 

『バスタアアアアアアアアアアア! ギムレットオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 赤、青、黄、三色の属性力が、渦を巻いて機体を包み込み、ミキサーのように進路上の敵戦闘機を飲み込み、跡形も無く粉砕してゆく。

 そしてその先にあるのは奴らの母艦、巨大円盤。

 直径数キロはあるその巨体を、たった数十mの機体が貫き大穴を開けるという快挙。

 だがその穴は中心を逸れてしまったため、ダメージによる小爆発こそ各部で起こしているが、致命傷には今一歩届かない。

「これでトドメだっ!!」

 装甲が開いたエクスミラージュの右脚から、勢いよくリボルバー拳銃が飛び出した。

 それを難なくキャッチし、両手持ちで前方へ構える。

「ジャイアントマグナム、プレアデスマッシュ!!」

 弾倉に込められた属性玉のエネルギーを、一気に開放する必殺の六連射が巨大円盤の中心を撃ち抜いた。

 ────手応えあり!

 残心し、勝利を確信した俺は、ガンスピンを決めてリボルバーを収納すると、振り向いて見栄を切る。

 

『────馬鹿なっ!? ナイチンゲイレストが沈む……沈んでしまう……! ナイチンゲイルに……このキングデュナンに……医療ミス(敗北)など有ってはならないのだああああああああああああ!!』

 

 キングデュナンというらしいナイチンゲイルの首領は、こちらに姿を見せることも無く崩壊する円盤と運命を共にした。

「俺たちの……勝利だ!!」

 

□□□□

 

属性玉変換機構(エレメリーション)────属性玉(エレメーラオーブ)体操服属性(ブルマ)

 その後、普段なら速やかに撤収するところだが、軌道上に残骸がスペースデブリとなって散乱していると、人工衛星と事故を起こしたり、ロケットやシャトルの邪魔になったりと、宇宙開発の障害になってしまうため、可能な限り掻き集めて研究資料として持ち帰ることになった。

「……体操服属性って、ゴミ掃除にも役に立つんだな」

「あんまり知りたくなかった使い方だよね」

「そう? 便利でいいじゃない」

「そうですわ。ヒーローの力を戦い以外にも役立てられるなら、それはとても素晴らしいことではありませんか」

『はーい、集めたゴミは一塊ずつハッチに入れてくださいね』

 体操服属性を使用したテイルマシンは、重力操作をトラクタービームのように使って残骸を引き寄せ、雪玉を転がすようにまとめてゆく。

 俺のは人型で、感覚も繋がってるから腰に来るなあ! 無重力でも力仕事の負担は変わらないのは新発見だった。帰ったら真っ先にリフレッシュカプセル・トゥアヘルを使わせてもらおう。

 それにしても、高校生の身分で宇宙から地球を見下ろせるなんてそうそう出来ることではない。母なる地球の蒼さが眩しいぜ。

 これが戦いの場で無かったら、ものすごくロマンチックな眺めだったんだろうけどな……どうにかゴミを片付け終えた俺たちは、名残惜しさを抑え込みながら、恋香さんたちの待つスタートゥアールへ帰還した。

 

『緊急特番! 衛星軌道上にツインテイルズの巨大ロボットを見た!!』

『間違いなくこれはツインテイルズのマシンですよ。赤い戦闘機はテイルレッド、電車か小型の宇宙船に見える青いマシンがテイルブルー。黄色のドリル戦車はイエローたちで、この人型ロボットはテイルミラージュの物でしょう。いやあそれにしても大型戦闘機には合体しましたが、この三機はどんなロボットになるんでしょうねえ……? もしかしたら四体合体かもしれませんねえ……』

『ロボット評論家の長谷山裕三先生、どうもありがとうございました』

 翌日、俺たちはあの戦いが望遠鏡でばっちり確認されていたと知り、TVの前でひっくり返ることになった。




もしこいつらが普通に戦えてたら、死に際に「プロテイン投与!」とドリンクがぶ飲みして「超・回・復―!」と叫んで巨大化してました。
ナレ「ナイチンゲイルのナース長は、プロテインを摂取することによりエキスパンド・プログレスを起こし再生、巨大化するのだ!」

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