俺、総二と愛香が大好きです。   作:L田深愚

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この話書いてる途中で、今まで属性玉の描写をしてなかったことに気づき慌てて二話に加筆する羽目になりました。原作でやってるからって端折り過ぎるとこうなるから危ない。

2017.5.9:あとがきにロリブルーのイラスト追加しました。


第四話「ピッカピカのツインテール」

 テイルミラージュがトータスギルディ相手に苦戦している頃、テイルレッドもまた窮地に立たされていた。

「結晶せよ、我が愛!!」

 髪紐(リボン)属性を持つ黒狐型エレメリアン、フォクスギルディによって生み出された自身の写し身。目の前でそれに対し行われる頬ずりだのお風呂妄想だのといった奇行の数々に、行き過ぎたツインテール好き以外は健全な男子高校生である総二は怖気をふるい、絶叫する。

 一思いに破壊してしまえばこの悪夢を容易く振り払うことも出来よう。だが総二には、ツインテールを何よりも愛するがゆえに地球で最強のツインテール属性を持つテイルレッドには、たとえ作り物であってもツインテールを破壊することなど出来るはずもなかった。

 俺のツインテールは……こんなところで負けてしまうのか……? 頼りになる友は足止めされ、自らも絶体絶命の彼の心が諦観に支配されそうになった瞬間、最高の援軍が駆けつけた。

「────その子を放しなさい!!」

 テイルレッドとは正反対な蒼いコスチューム。見ているだけで吸い込まれそうな、深い海の輝きに染まる見事なツインテールを、航空機の翼にも似たフォースリヴォンでまとめた勝気そうな幼女。

 だが、正体をごまかす認識攪乱の上からであっても総二には判る。あれは、あの幼女は自らの最愛の少女、津辺愛香なのだと。

「あたしは────テイルブルーよ!!」

 フォクスギルディの誰何の声に、遠巻きに報道陣が駆けつける中高らかに、雄々しく名乗りを上げる。

「他にも仲間が居たとは……素晴らしいツインテールだ。胸の高鳴りを抑えられ────へぶん!」

 レッドの人形を一瞥したブルーは、フォースリヴォンから呼び出した長槍ウェイブランスを無造作に振るい、フォクスギルディの横っ面を殴り飛ばす。

「こんな人形でいかがわしいことした上にレッドを苦しませて……絶対に許さないんだから!!」

 即座に人形とフォクスギルディの間に割って入り、オーラピラーを展開する。大瀑布にも似た水流がフォクスギルディを飲み込み、全ての身動きを封じた。

完全開放(ブレイクレリーズ)────エグゼキュートウェイブ!!」

「願わくばこの二人に……リボンを手ずから結んであげたかったああああああああああ!!」

 渦巻く水の尾を曳いて投げ放たれた三叉の槍が目標を貫き、断末魔とともに爆散させる。

 主を失ったからだろう。複製されたレッドの人形は、フォクスギルデイの死とともに生命感を失い元のリボンに解け、虚空に散ってゆく。

「……そーじ、怪我はなかった?」

「愛香……ありがとう」

 消えゆく写し身を見送ったテイルレッドは、愛する者を強く抱きしめて感謝を表した。

「ミ、ミラージュ以外の娘がもう一人いるぞ!」

 戦いの終結を見て駆け寄ってくる報道陣は、新たな戦士の存在に色めき立つ。

「あたしはテイルブルー、ツインテイルズの新しい仲間よ。よろしくね!」

 ブルーはカメラに向けてノリノリの笑顔でピースサインを出し、先程手に入れたばかりの属性玉(エレメーラオーブ)を左腕の属性玉変換機構(エレメリーション)に装填する。

 するとリボンが翼に変化し、彼女が歓声を上げる。

「おお、空飛べるんだ! これ使えるわね」

 総二をお姫様抱っこで抱えた愛香は、重力を易々と振り切って空へ飛び立った。

「愛香……このテイルギアって……」

「うん、トゥアールのよ」

 その短いやり取りだけで総二には察することが出来た。かつてツインテールを守るために戦い、力及ばず破れてしまったトゥアール。彼女の意思を今、愛香が受け継いだのだと。

「これからは、あたしもそーじたちと一緒に戦うから」

 自分の不甲斐なさが悔しくなる。本来なら守るべき恋人を戦いの場に引きずり込んでしまったなんて。

「辛気臭い顔しないの、あたしが自分で選んだの。そーじたちが辛い目に遭ってるのに、何もできないで守られてるばっかりなんて……柄じゃないもん」

 その言葉にもやもやしていた胸がスッと軽くなる。それでこそ愛香だ。近頃は庇護欲をそそるか弱い面ばかりが表に出ていたが、彼女は本来こういった負けん気が強くどこまでもまっすぐで気持ちのいい女の子なのだ。

 不意に愛香が耳に手をやる。どうやら基地からの通信を受け取ったようだった。

「結の方もどうにか片付いたって」

「そりゃあよかった」

 これで一切の気兼ねが無くなった二人は、つかの間の遊覧飛行へと洒落込んだ。

「……こうして二人とも小さくなってると、子供のころを思い出すよな」

「そーじが女の子なのが大違いだけどね」

 大空で風に頬と靡く髪を撫でられながら、どちらともなく笑い合う二人。

「三人並んだら、ミラージュがお姉さんであたしたちが妹だーなんて報道されちゃったりしてね」

「違いないな」

 帰宅するまでのしばしの間、これからのことを思い笑う、赤と蒼二人の少女の声が誰もいない雲の上に響き渡った。

 

□□□□

 

 テイルブルーの存在がお茶の間に知られるようになってから、ツインテイルズの人気はとどまることを知らず、TVはどのチャンネルを回してもツインテイルズの映らないニュースはなく、各国首脳からも応援のメッセージが届くほどとなっていた。

 恋香さんも妹の晴れ姿に大はしゃぎ。自宅で変身してもらって小さくなった愛香を散々猫可愛がりするなどやりたい放題だ。

「いやあ、レッドたんとブルーたんは可愛いですねフヒヒ」

 おいそこのコメンテーター、いい加減にしないと警察呼ぶぞ。

 だがレッドとブルーの人気が上がるのはいいとして、ミラージュの立ち位置がお色気要員で固定されてしまっているのはどういうわけだ。

 使用される画像も、涙目でおっぱい揉まれる映像やトータスギルディに押し倒される映像ばかりが繰り返し使用され、話題になるのもツインテールや眼鏡でなく胸ばかり。

 ツインテイルズのファンならツインテールを語れよ! と総二と二人してTVへ文句を言ったもんだ。

 しかしツインテイルズに影響されてツインテールにし始める女子の増加に伴い、ツインテールの知名度もうなぎ上り。かつてはマイナーな髪型だったツインテールはメジャーな髪型の一つとして完全に市民権を得たのだ。

「……なんでこんなに増えてるのよ」

「そりゃあアイドルでもタレントでも、人気が出たらファッションや髪型をマネする奴は出てくるだろ」

 そんなツインテール女子の増加に眉をひそめる少女がここに一人。

 ツインテール好きな総二が目移りしてしまわないか不安でしょうがないんだな。愛香ったら可愛いなあもう。

「そんな心配しなくても、お前のツインテールに勝てるような女なんて恋香さん以外に居るわけないだろ」

「でも……」

「────どうした総二?」

 ふと俺は、道行くツインテールを不安げな目で眺める総二に首を傾げた。

「なんか気掛かりなんだ。ツインテールの広まり方がさ」

「意外だな、ツインテールの人気が上がって喜ぶかと思ったのに」

「うん……喜ばしいことだとは正直思う。でもうまく言えないんだよなあ……」

 愛香のツインテールを摘まみながら思い悩む総二の姿に影響されてか、俺もだんだん不安になってきた。

 ことツインテールに関してなら、こいつの勘はよく当たるのだ。酷いことにならなきゃいいが……

「おはようございます! よい朝ですわね」

 背後から掛けられた弾む声。振り向けばそこに居たのは上機嫌な生徒会長神堂慧理那の姿。見事なまでに先端がカールした下結びのツインテールが、朝日に照らされて彼女の育ちの良さを現すような高貴な輝きを放っている。

「おはよう会長! なんだかご機嫌ですね」

「ええ、ツインテイルズに新たな仲間が加わったのが嬉しいんですの」

 全校集会では周囲の熱狂に掻き消されてしまったが、こんな学園の有名人が俺たちを応援してくれるのは素直に喜ばしい。

「会長は本当にツインテイルズを応援してらっしゃるんですね。彼女らを愛玩動物扱いしてる世間の奴らに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいですよ」

「わたくし、恥ずかしながらこの年でヒーローに憧れていますの。特撮番組を見たり、玩具を買ったり……そんな中、本物のヒーローが現れて怪人から助けてくださった……そんな夢のような出来事が本当に起こって、わたくし……運命を感じてしまいましたわ」

 熱っぽく語る会長に親近感がわいた。総二も同じ意見だったのが表情でわかる。

「会長……ツインテイルズも、会長みたいに応援してくれる人が居ることをきっとありがたいと思ってる」

「そうですよ、会長みたいなまともなファンはきっと彼女たちの心の支えになってます!」

「ありがとう、一年A組の……観束総二君と長友結君」

 そう言って離れてゆく会長を見送った俺たちだったが、最後に彼女が熱っぽくこちらを見つめていたのが気になった。

 変身した状態で助けたことはあるが、ギアには認識攪乱があるし、それに加えて俺なんて物理的に別人の姿に変わっている。バレることはないと思うが……はっ! まさか会長が総二に惚れたか!? ツインテールと愛香を守るために戦いに身を投じた総二のイケメンオーラに、ヒーロー好きの会長が中てられたとしても不思議はない。

「いやあ……高校生にもなってあの容姿を維持しておられるとは眼福です」

 突然、白衣を羽織った銀髪碧眼の学園生徒がひょっこりと顔を出す。もしかしなくても高等部の制服を着たトゥアールだった。

「トゥアール!? 何よその格好……?」

「私、今日から総二様たちのクラスに転入します。学校でもよろしくお願いしますね愛香さん、総二様……ついでに結さん」

「ついでかよ、まあいいけどな」

 総二と愛香の肩に手をまわしてはしゃぐトゥアールの笑顔に、俺のラブセンサーが妙な反応を返す。出会った当初よりはまともになったものの、未練がましく総二に好意を向けているのは解りきっていたが、愛香にも矢印が向いている……?

 奴はレッドとブルーのツーショットに欲情していたが、まさか病気をこじらせた挙句幼女化した二人をまとめて食っちまうつもりになったのか?

 俺は事案発生に備えて、いつでも水影流の技を繰り出せるようイメージトレーニングを開始した。俺の腕前なんて愛香の足元にも及ばないが、変態を取り押さえるには充分だ。

 しかし、テイルレッドと話してるつもりで繋がってない携帯耳に当てたり、シャツやパンツに写真転写したりと、日本の未来を担う高校生がこれでは先が思いやられるな。

 

□□□□

 

『観束トゥアール』

 黒板に踊る白い文字が、それに負けない白魚のような指先によって書き込まれるのと同時に、「観束だって!?」とのざわめきがクラス中に伝播する。

「このクラスの観束総二君とは……一緒に住んでます」

 その一言を引き金に愛香と総二に殺到するクラスメートたち。

「観束お前あの子とどういう関係だ!?」

「ちょっと愛香、どういうことなのよ!?」

 詰め寄られて困惑する総二たちを見てほくそ笑み、さらに勿体着けて誤解を招く発言を行おうとするトゥアールだったがそうはイカの金太郎飴。

「あー、あの子な? 外国に住んでた総二の親戚なんだ。愛香も小さい頃、日本に来たトゥアールで遊んだことあったよな(迫真)」

「あー、あったあった懐かしいわよねー(棒)」

「おい、いま“で”って言わなかったか!?」

 それを聞いた途端、騒ぎは沈静化した。

「ちょっと結さん!? なんてことしてくれるんですかああああああああ!! せっかくの転校初日なのに!!」

「貴様の野望など、ことごとく粉砕してくれるわこの泥棒猫が!」

 総二が欲しいなら余計な小細工なんぞせず、正面から正々堂々向かってこいや。俺と愛香が全力で迎え撃ってやるから。

 

「ブルーたんにお姫様抱っこされるレッドたん可愛いなあ」

「くそおおおおお! アルティメギルめ! 俺もミラージュさん押し倒してえええ!!」

 いつもの病気なBGMを聞き流しながら昼食。トゥアールを含めた四人で机を寄せ合って弁当を広げるが、トゥアールの弁当は焼肉セットだった。すげえ……弁当箱に焼き網と吸気管が付いてやがる。無駄にハイテクだなおい。

 総二のは今日は愛香お手製の愛妻弁当。二本のエビフライを始め、ツインテールにちなんでおかずが全て二個ずつ詰め込まれており、桜でんぶではなく鮭フレークで描かれたハートマークが目に眩しい。

 愛香は俺の作った中華盛り合わせ。八宝菜とシュウマイ、かに玉の代わりにカニかまを入れた卵焼きが詰まっている。

 本音を言えばスタミナを考えて餃子や回鍋肉も入れてやりたかったのだが、愛香が教室でニンニクの臭いを撒き散らすのはいかんと思い断念した。

「その量のお弁当、いったいどこに消えちゃうんでしょうね?」

「俺も昔から気になってたけど、多分髪の維持に費やされてるんじゃないか?」

 俺は破壊力にカロリー全振りしてるほうに一千万ジンバブエドル。

 

 そんなこんなで転入してきたトゥアールがひと騒動起こしてからの放課後。お約束のようにエレメリアンが現れた。

「学園の初等部に現れたようです!」

 基地と連動しているのだろう例の超極薄ディスプレイを広げたトゥアールの指示のもと、俺はドライバーの転送装置、二人は転送ペンで現場まで向かう。

「────そこまでだエレメリアン! 子供たちから離れろ!!」

「ランドセル、確認よーし!」

 駆けつけた俺たちが目にしたのは、子供たちのランドセルを指さし確認してはうむうむと頷く3メートル大の巨大なリスだった。

「現れたなツインテイルズ! 待っていたぞ!!」

「わ! ツインテイルズだー」

 大人たちから注意されているだろうに、尻尾の大きな愛嬌のあるエレメリアンを緊張感無く見物していた子供たちが俺たちへ殺到する。

「こら髪を引っ張ったらダメだよー」

「危ないから離れてなさいよ!」

「おっぱい揉むんじゃありません!」

 もう揉みくちゃだ。

「ふふふふふ、俺への視線を瞬時に奪い去るとは流石はツインテイルズ。ランドセルを愛でるのも骨が折れそうだわい」

「俺の名はスクワルギルディ! 子供たちが背負う世界の宝、ランドセルを愛する学童鞄属性(ランドセル)の戦士だ!」

「ランドセル……ねえ」

 脳裏に在りし日の総二と愛香を思い浮かべる。交通安全のロゴがプリントされた黄色いカバーが被さる真新しいランドセルを背負い、桜の花びらが舞い散る校庭を元気よく駆けてゆく二人。

 愛香の頭でピコピコと揺れるまだ短かったツインテール……年月を経て長さと美しさを増してゆくたびに、総二がそれに向ける視線に熱がこもりスキンシップも増えてゆく……

「────確かに、いいな」

「わかってくれるか! もはやランドセルの似合わん年増だが見どころのある奴だ」

 懐かしくも素敵な思い出を回想させてくれたエレメリアンと、俺はついつい固く握手を交わしてしまう。だが年増は余計だ。まだピチピチの十代やぞ。

「なに意気投合してんのよ!!」

 ブルーの蹴りが尻に炸裂、俺は転がるようにというか実際転がりながら奴から距離を取らされ我に返る。そうだ、こいつはエレメリアン。この素敵な思い出を愛でるどころか奪い去りにやってきた憎むべき悪魔なんだった!

「ごめんブルー、二人のランドセル姿の破壊力が凄まじくてつい同意したわ」

「同意するなよ!」

「変な妄想するなー!」

 一部の高学年の子がランドセルではなくデイバッグを背負っていることに、血涙を流して嘆き憤るスクワルギルディを俺たちは武器を取り出して包囲する。流石に子供たちは下がらせた。胸とか尻とか散々触られたけど。

「レッド、ブルー! 何も言わずにこのランドセルを背負ってくれ!! その姿を世界中の子供たちに見せてやってほしいのだ!!」

 そうすれば、六年間の思い出を詰め込んで卒業してゆくランドセルを途中で放棄してしまった子供も思い直し、またランドセルを背負い直してくれるに違いない! と語るスクワルギルディに、レッドの怒りが爆発した。

「ふざけるな! そうやって詰め込まれた子供たちの思い出を、お前らは結局奪い取るんじゃないか!!」

「ほんと、背負いたくなっても背負う気が無くなっちゃうんじゃ本末転倒よね」

 糾弾され動揺するスクワルギルディだったが、奴の両手に二つのランドセルが浮かび上がる。

「返す言葉もない……だがそれでも……それでも俺は子供たちにランドセルの魅力を広めたいのだ!!」

「モケー!」「モケケー!!」

 放たれたランドセルが弾丸のような速さで迫る。まずいと思った俺はそれをミラージュロッドで叩き落とそうとするが、ランドセルはラジコンで操られたように急激にコースを変えて攻撃をすり抜けると、レッドとブルーのもとへ襲い掛かった。

「しまった!!」

 乱入してきたアルティロイドの妨害で回避を妨げられた二人の背に、無情にもランドセルが装着されてしまう。

「可愛い────────────!!」

 途端に巻き起こる大歓声。子供たちだけでなく、いつの間にか校門に集まっていた報道陣からも野太い声が上がった。

 子供たちは携帯のカメラでパシャパシャ、大人たちはやれ大スクープだ局長賞ものだと騒ぎながらTVカメラをこちらに向けている。

 通信越しにトゥアールも立体化決定だとヒャッハーしていた。

「……なんともない?」

「ただの、ランドセルみたいね」

「テイルレッドとテイルブルーのランドセル、指さし確認よーし!!」

 俺はついにレッドとブルーの二人にランドセルを背負わせたぞ! ともはや一片の悔いも無いような様相で天へ拳を突き上げて高らかに宣言するスクワルギルディに、アルティロイドをあっさり一掃したブルーのウェイブランスが襲い掛かる。

「ちっぷでーる!?」

 槍の穂先で顔面を横殴りにされ、錐揉み回転して吹き飛ばされる巨大リスの姿にギャラリーから「可哀想……」との声が上がるが、俺は毅然とした態度で子供たちに向き直り、笑顔で高らかに問いかけた。

「みんなー! 今日のレッドたちを見てどう思ったかなー?」

「「「か、かわいかったー!」」」

「そうだよね、ミラージュお姉さんも、ランドセルを背負った二人はすごく可愛いって思ったよ……」

 でもね……と溜めを作る。

「あのエレメリアンを放っておいたら、ランドセルを背負ったレッドたちを可愛いって思ったり、ピッカピカの一年生がランドセルを買ってもらえてうれしいって思う気持ちをなくされちゃうんだよ?」

「「「えー!? そんなの嫌だー!!」」」

 羞恥心などかなぐり捨てて燃え上れ俺の演技力。今の俺は変身ヒロインではなくヒーローショーの司会のお姉さんなのだ!!

「アタシたちツインテイルズは、何かを好きだっていうみんなの気持ちを守るために戦ってるの! だから敵の見た目が可愛くてアタシたちのほうが悪そうに見えても、悪口だけは言わないでほしいな! みんな、わかってくれるかなー?」

「「「わかったー!!」」」

 これで奴らの危険性や俺たちのスタンスもわかりやすく広まることだろう。俺はブルーに向き直り、GOサインを出す。

「よし、ブルー!」

「────オーラピラー!」

 巻き起こる水の竜巻がスクワルギルディを飲み込み、洗濯機の中身のように撹拌してゆく。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「エグゼキュート……ウェエエエエエエエエエエエイブ!!」

 投げ放たれた必殺の刺突がエレメリアンを粉砕した。それによって能力の効果が切れ、二人のランドセルも消えてゆく。

「じゃ、帰りましょうか」

 俺は髪紐属性を発動して翼を生やしたブルーを背負い(スクランダークロス)、レッドを抱えて帰り支度を完了。ランドセルが消えてしまい残念がるギャラリーの声を背に、俺たちは飛び去ってゆく。

 

 ────夕方のニュース番組でこのことが特集され、エレメリアンの具体的な危険性が広く周知されるようになったのはよかったのだが……

「司会のお姉さん、すっごく板についてたね、結くん」

 ノリノリな演技を恋香さんに散々弄られまくったのは予想だにしない二次被害だった。




ロリブルー外見

【挿絵表示】

はい、ロリ愛香さんはコピーレッドを壊しませんでした。
これは恋人の好きなものを目の前でぶっ壊したくないという心理が働いたためです。
代わりに狐さんへ怒りが向かったわけですがw
そして夜這いイベント消失に伴い、痴女がもう学園に襲来しますた。キックで帰宅なキックザトゥアールスルーもなしです。
ちなみに今回のスクワルギルディはオリキャラではなく、特典小説EX1に登場したエレメリアンです。さすがに倒され方はましにしてあげました。原作だとイエローがひどいことしたから……

おまけ
~もしブルーが原作のままだったら~
「なんなのよこれ!?」
 五人がTVを眺めながら朝食を摂る中、愛香の叫びが観束家のリビングに響き渡る。
 夜遅くまでネットで自らの低い評価や煽りに晒され続け、最後の望みを賭けてTVに目を向けたものの「笑顔だが凶暴な目をしている」「ツインテイルズを騙る悪質な存在ではないか?」などと公共の電波で貶されたのだ。荒れるのも仕方ない。
「────結も酷いと思うわよね!? ……あれ居ない」
 次の瞬間、TVの中に壁をぶち抜いてスタジオへ現れるテイルミラージュの姿が!
「「ブ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」」
 総二たちはその光景に飲んでいたお茶を見事に噴き出した。
『うわああ! まさかテイルブルー……テ、テイルミラージュさんだ!?』
『お前ら今ブルーさんのことなんつった!? 悪質な存在だとかぬかしやがっただろ?』
『し、しかしですね……』
『しかしも案山子もあるか! レッドたんのピンチを颯爽と救ったテイルブルーのどこが悪質なのか言ってみろい!!』
『そもそもなあ……ブルーさんは正真正銘のツインテイルズ新メンバーで、レッドたんのお嫁さんになる人なんだよ!! 悪人なわけないでしょうが!!』
『お、お嫁さ……えええええええええええええええええええええええええ!?』
 スタジオは大パニックに陥り、しばらくお待ちくださいの表示がしばらく続くこととなった。
「あのバカ! TVでなんてこと言ってくれちゃってんの!?」
 庇ってもらえた嬉しさか、交際をTVでぶちまけられた恥ずかしさからか、愛香はテイルレッドのように真っ赤になりながらキャーキャー言っている。

56 名無しのツインテール:
   【悲報】レッドたん、テイルブルーと最後までいっちゃった模様【結婚報告】

65 名無しのツインテール:
   嘘だ! レッドたんがあの貧乳に食われちゃってるだなんて!!

123 名無しのツインテール ID:Tmmsb
    だが待ってほしい、女同士では結婚できない。
    よってレッドたんはレッドきゅんである可能性が微レ存

222 名無しのツインテール:
    彼女の秘密は男の娘!? そんな……そんな……アリかも

324 名無しのツインテール:
    正気か>>222!?
    なんでミラ×赤じゃないんだ(号泣)

999 名無しのツインテール:Tmmsb
    あんな可愛い子が女の訳ないだろJK

1000 名無しのツインテール:
     俺、レッドたんのTNTNならしゃぶれる!

 この事件によって掲示板のサーバーが多数パンクし、ツインテイルズファンがレッド男の娘派と女の子派に分かれて争い合うことになるのだがそれはまた別の話。

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