俺、総二と愛香が大好きです。   作:L田深愚

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3巻編。
はじめに言っておく! テイルミラージュ一人の眼鏡属性ではダークグラスパーには敵わん!!


第十六話「暗黒の眼鏡-ダークストーカー-」

 何よ3桁って!? 酔っぱらってんの? そんなの人間の胸じゃないわ、牛よ牛!! と気絶からガバリと跳ね起きた愛香に、血涙を流しながら散々詰られ揉みしだかれた後、俺たちは目覚めたイエローと共に帰路に就くことにした。

 正直おっぱいもげるかと思った。

「……で、あの女の子の事、きちんと話してもらうわよ」

 基地に帰り着いた俺たちは、コンソールルームで早速トゥアールから詳しい話を聞くことにした。過去にアドレスを教えていた“一番のファン”で、現在は凶悪なストーカーというのは道すがら聞いたものの、やはりみんなも交えて知っておいた方がいいだろう。

 出迎えてくれた女幹部ルックの未春さんと、火力の充実は間違っていなかったと盛り上がる会長の姿はさておき、今回は恋香さんも結維も女幹部だった。

 恋香さんはボンテージじみたセクシー系、結維は人形のような可愛らしさを前面に押し出した感じだ。

 未春司令────ときたら恋香参謀、結維王女……博士はトゥアールでいいか。

「おねえちゃんまで……」「増えた……感染った……恋香さんまで……」

 愛香と総二は激戦の疲れがぶり返したのか、がっくりと崩れ落ちた。

 さあ愛香も仲間になるといい、今なら元帥の位が空いているぞ。共にツインテールの千年王国を造り上げようではないかハッハッハ……

 などとアホなやり取りの後、ダークグラスパーに関する説明が始まった。

「ダークグラスパー……イースナは、私が元居た世界の住人(ようじょ)でした」

 トゥアールは、イースナの事をエレメリアンから助けて以来、以前の会長のように行く先々で遭遇するようになったと語る。

 だがいつしか彼女は1時間で60通もの長文メールを送り続ける人間メールサーバーと化し、トゥアールを恐怖のどん底へ陥れたそうだ。

 あの年ごろの女の子って、しばらく見ないうちにいきなり成長しやがりますね。とトゥアールが彼女の幼かったころを思い返す姿に、俺はかつて可愛かった幼女が無駄に育ってストーカーと化した。という彼女の話を思い出す。

 あの時話題に出たのがダークグラスパーだったのか……

「あのう……ダークグラスパーとの会話で、“アルティメギルが侵略を完了する前に”と聞こえたのですが……もしやトゥアールさんの故郷は……」

 おずおずと挙手した会長の問いかけに、俺たちはしまったという顔をした。

 ごまかしたせいで会長は、撃退した強敵を追ってトゥアールはこの世界へやって来たとでも思っていたのかもしれない。

「……会長なら大丈夫だ。もう全部話してしまおう」

 総二に促され、俺たちは会長にトゥアールの世界の顛末を語った。

「それでは……最初に宣戦布告してきたあの怪人が因縁の相手だったのですわね!」

 会長は感動に打ち震えて拳を握り、俺たちが異世界の仇を討てたことを我がことのように喜んだ。

 そしてイースナは自らの意思でアルティメギルへ取り入り、レッドのテイルギアに組み込まれたトゥアールのツインテール属性を頼りに、この世界へやって来たのだろうと説明は締めくくられた。

 気掛かりなのは眼鏡装甲グラスギア────属性力の変換技術は元々アルティメギルが本家本元だ。規格や発想自体はトゥアールのオリジナルだとしても、彼女の神眼鏡によって基本構造が把握され、さらには技術水準が上の組織によって生み出された対抗兵器……これはこれまで以上に気合を入れなければ勝てないだろう。

 総二は人間と戦わなければならないことに苦悩しているようだったが、そんなことを気にする奴は、悲しいかな俺も含めこの場には一人もいない。

 愛香は「トゥアールにしてるより強めにやればいいんでしょ?」なんて言ってるし、会長は同じ力を持った敵幹部の出現に目を輝かせて興奮している。

 かくいう俺も、変身中に必殺技を叩き込んだって変身解除されるだけで、大怪我の心配なんてないだろうなんて暢気に構えているくらいだ。

 え? 理由? そんなの判り切ってるだろう。説明書を読んだのよ。

 それに人間だろうが強敵相手に手心を加えていられるか。それで危なくなるのは総二たちなんだぞ?

「……ところでみんな、今更だが見せたいものがあるんだ」

 その発言にいったい何事だと視線を向ける皆の前に、俺はウエストポーチからにゅるりと取り出したソレを机の上に横たえる。金属製のはずだが意外と軽く、変身せずともどうにか持ち運びできる重さだ。

「こいつを見てくれ、これをどう思う?」

「すごく……大きいですわ」

 取り出したるはおよそ2mほどもある、先細りな直方体の砲身を持ち、後部側面に早期警戒機のレドームを思わせる円盤状の加速器を備えた大型のビーム砲だ。

「なあ結、なんなんだこれ?」

「結くん……もしかして」

「恋香さんご名答。この間Drから送られてきた新兵器、エレメントバズーカです」

 ドヤ顔で新兵器を披露した俺に、あることを察した愛香からツッコミが入る。

「────まさかあの時の着信って……これだったの!?」

Exactly(その通りでございます)! 幹部戦で使えればよかったんだけどいまいち切っ掛けが無くてな……」

 俺がリヴァイアギルディに手痛い敗北を喫し、エレメントドライバーを落とした日。

 路地裏で鳴った着メロはトゥアルフォンではなくウエストポーチの物だったのだ。

 トゥアールの白衣と同じように格納用の異空間を備えたこれには、更に外部からの転送機能まで備わっている。

 今までは予備の武器やその他整備用品、個人的に用意した雑貨が入っていただけだったが、それだけでなくDrオヴェルが新兵器を開発すれば、たちどころに中身が充実してゆくのだ。

「────ポチっとな」

 空中に投影されたポーチの仮想コンソールをタップすると、ランプ部から立体映像が投射される。

 当然映るのは、恋香さん以外のメンバーは初めて見る彼の姿だ。自宅で一度確認はしたのだが、博士の無事な姿はやはり安心するな。

「これが……エレメントギアの生みの親……」

『────久しいのう、結君。データを拝見させてもらったが、あれ以来順調に勝ち進んでおるようで何よりじゃ。頼りになる協力者も現れてこちらとしても心強い限りじゃわい』

 映像に映るマント姿の老科学者のメッセージを、一同は固唾を飲んで傾聴する。

『ツインテール属性のギアを造った彼女はトゥアール君と言ったか。属性玉の能力を利用するシステムを、あそこまで小型化できるとはその若さで大したもんじゃ』

 マニュアルにも載っていたが、エレメントギアは使用者と機体側の属性力をうまく噛み合わせるために、機体のリソースが犠牲になっているのだ。科学力はともかく、彼の技術力の都合と言うのもある。

 具体的に言えばイメージを読み取って武器を生成するフォースリヴォンや、スラスター兼用の属性力増幅器エクセリオンブースト、外付けでトゥアールに造ってもらった属性玉変換機構だろう。

 エレメントギアの背中に有るのはあくまでスラスターであり、増幅器はテイルギアに比べて幾分性能の低いものが両肩、両脚の計4か所に組み込まれてようやく同レベルの出力を発揮していた。

 コイツにテイルギアと同じ能力を、Drオヴェルの技術だけでフルに持たせようとすれば、某ゲームの軍艦娘や某ラノベのパワードスーツ女学園のように、背負いものをするか、手足が大型化してしまうこと請け合いだろう。

『じゃがな、儂も負けてはおらんぞ結君? 小型化は苦手じゃがその分エレメントギアはオプション装備が充実しておる! 第一弾がこのエレメントバズーカじゃ。属性玉を弾丸にすることで使用者を消耗させることなく、莫大な威力の他に特殊な効果の砲撃を繰り出せるぞ!! もっとも、純度の低い属性玉を使うとただの強力な砲撃にしかならん。まあ状況に応じて上手く使ってくれ』

 それでは健闘を祈る。トゥアール君のでっかいのを生でお目にかかれる日を楽しみにしておるぞ。という相変わらずのセクハラ発言でメッセージは締めくくられ、女性陣が顔を引きつらせる中映像は終了した。

「なんというか……トゥアールとは別ベクトルで強烈な人だったわね」

「相変わらずで、少し安心したなぁ……」

「総二様! 私怖いです! こんなヒヒジジイがこの世界までやって来たらと思うと、もう夜も眠れません!! ……なので今夜は添い寝してくれませんか? 二人っきりで」

「もうトゥアールったら、甘えん坊さんね。 ……さびしいならあたしも添い寝してあげるわよ」

「きゅう」

 久々に抜け駆けをしようとしたトゥアールが、愛香によってあっさりと眠りにつかされ(締め落とされ)、荷物のように担ぎ上げられる。

「俺もトゥアールを部屋まで連れていくよ……今日はトゥアールも、色々あって精神的に疲れてるだろうから」

 総二もトゥアールを部屋まで運ぶために席を立つ。隠してるつもりだろうが、トゥアールに縋られてその気になったのも、引き離されて残念がってるのもバレバレだからな?

 それにしてもヤキモチ妬いてほっぺ膨らませて、総二に引っ付く愛香は可愛いなあ。ああ、トゥアールも可愛いぞ、子供が引きずりながら連れ歩くぬいぐるみみたいで。

「ね? 恋香さん」「そうね」

 とりあえず武装としての色合いが濃厚ながら、Drオヴェル版の属性玉変換機構が手に入り、使い道のなかった低純度の属性玉の活用法もできたわけで。

 疲れも吹き飛ぶほどの興奮状態で、会長が戦隊の必殺武器を彷彿とさせるエレメントバズーカの説明に目を輝かせるのをよそに、今日の集まりはお開きとなった。

 

□□□□

 

 ────ダークグラスパー到着の報せを受け、地球攻略担当部隊は首領直属の処刑人に対して失礼があってはならぬと、映像越しの戦力研究と言う名のツインテイルズ鑑賞会を中断し、こぞって襟を正し固唾を飲んでその訪れを待ち構えた。

 だがしかし、無数の怪人たちが犇めく大会議場の扉をくぐったその姿を目にしたエレメリアンたちは、驚愕に目を見開き口々に動揺の言葉を漏らす。

 “彼女”の周囲を固めるのは、動物や神話の獣の姿をとる彼ら残存部隊とは打って変わって、甲殻や翅を備えた見慣れぬ姿のエレメリアン────昆虫をモチーフとしたダークグラスパー直属の四頂軍が一角、美の四心(ビー・ティフル・ハート)

 まさかの四頂軍の来訪に目を剥いた群衆だったが、その中心に立つ人物の姿こそ驚愕の最たるものだ。もはやモチーフがどうとかいう次元の話ではない。

「馬鹿な……人間、だと!?」

 水面に生じた波紋の如く広がるざわめきが、広大な会議場を満たしてゆく。

 漆黒のマントに身を包む黒髪の少女。おさげのように垂らされたツインテールが乗るなだらかな双丘は、未だ発展途上ながらも子供から女への一歩を踏み出したことを精いっぱい自己主張しているかのような存在感を放っている。

 不意にマントが翻り、その下に隠されていた甲冑が露わになった時、ざわめく群衆はひときわ大きな驚愕の叫びをあげた。

「その姿はツインテイルズ!? またしても新たな戦士が……しかも我らが基地を突き止めてきたというのか!?」

「違う、わらわはダークグラスパー……首領様の意思を伝える者じゃ」

 その言葉にざわめきが増す。

「馬鹿な!? このような小娘がアルティメギル最強の戦士────誰もが恐れる闇の処刑人だと!? 信じられるものか!!」

「これよりわらわは首領補佐としてこの部隊の指揮を執る! これは首領様の意志じゃ、反論は許さぬ!!」

 歓迎の拍手など起こりようはずもなく怒声や罵声で迎えられ、疑惑はおろか敵意すら混じる視線が四方八方から彼女へ突き刺さるが、そんな無数の視線を意にも介さず、ダークグラスパーは目ざとく見つけたスパロウギルディへ親し気に声をかけた。

「そこなスズメ、見た顔じゃな。この部隊の現在の指揮官は貴様か?」

 以前にも会ったことがあるのだろう。彼女の姿に驚きもせずに再会の挨拶を交わしたスパロウギルディは、雲の上の存在と一触即発の空気に満ちてゆく部下たちの板挟みにあいながら、どうか大過なくこの時間が終わってほしいと心から願う。

「……やはり不満か、ならば誰でもよい、この場でわらわのツインテール属性を奪い取って見せよ!」

 無防備にホールの中心、天井から吊り下げられ先程までテイルレッドが映し出されていた大型スクリーンの真下へ歩みを進めたダークグラスパーは一同へそう宣言した。

「人間ごときの下になど付けるものか!!」

 誰もが感じ取ってしまった圧倒的な実力差に動けない中、その挑発的な物言いに一人の血気盛んなエレメリアンが遂に激昂し、ダークグラスパーへと飛び掛かる。

 繰り出されたのは、そのハリネズミをモチーフとした姿そのままに体を丸めて高速回転し、全身のトゲで相手をズタズタにするというヘッジホッグギルディの必殺技だ。

「ほほう……腰抜けばかりかと思うておったが、向かって来るだけの気概のある奴がおったか、その意気や良し────じゃが届かぬ!!」

 だがしかし、何かが煌めいたかと思った瞬間、ヘッジホッグギルディは全身のトゲをすべて失った丸裸の状態で倒れ伏していた。

「い、いったい何が起きたのだ!?」

「闇の鎌ダークネスグレイブ……あの一瞬でダークグラスパー様はトゲを全て斬り落としたのだ」

「なんと!?」

 スパロウギルディは改めて眼前の処刑人の実力に戦慄したものの、彼女に歯向かったものの末路を目の当たりにした怪人たちは、それでも散っていった同胞に続けとばかりに勇気を奮い立たせて反論した。まだ死んでない。

「たとえどれだけ強かろうと……突然名だけの知れた処刑人が指揮を執るなど納得できるものか!!」

 その手に握られているのは、各人が推すツインテイルズメンバーそれぞれのフィギュア。何の変哲もない樹脂製のそれが、今は信心深き者が持つロザリオや数珠のように折れかけていた心を支え、立ち向かう気力を与えてくれる。

「覇気を失っていなかったのは先程のハリネズミだけではなかったか……気に入った! 褒美にわらわのアドレスをくれてやる、皆の者、携帯電話を出すがよい」

 ────絶句。さっきまでの覇気はどこへやら、一同は予想外の言葉に耳を疑い呆気にとられた顔で立ち尽くした。

 名乗り出る者が居ないことに腹を立て、貴様らの携帯は赤外線通信すら出来ぬ骨董品か? よもや携帯すら持っておらぬのか!? と罵声を浴びせるダークグラスパーは、パソコンのアドレスでも構わぬのだぞ? と問うものの、やはりと言うべきか無言が続く。

 何か得体のしれないものが部屋のクローゼットから這い出てくるような恐怖が、その場に居た全員を支配していた。

「そこのクマ、持っているのじゃろう? 出 せ」

「か……かしこまりましたッ! ────おぶぅっ!!」

 不幸にも目を付けられてしまった武者姿の熊型エレメリアン、ベアギルディは、マナーモードでの着信もかくやと言った震える手で黒い携帯を取り出すや、くしゃみでもするような勢いで血反吐を吐き、自らの携帯電話をテイルレッドにも負けないほど真っ赤に染め上げた。

「申し訳ございません! 未熟ながら防水機能なしの携帯に吐血の失態! 首領補佐様のせっかくのご好意ですがこれではアドレスを登録できませぬ!!」

 次の瞬間、ベアギルディは自身が狩られたシャケとなったように飛び、天井へと突き刺さっていた。

「もうよいわ! とにかくこの部隊の指揮官はわらわじゃ! 文句があるならいつでも首を獲りに来い!!」

 アドレスをくれてやるわ! との意味不明な捨て台詞を残して去ってゆくダークグラスパーの後ろ姿が視界から消え、やっと緊張から解放されたエレメリアンたちは糸が切れたように崩れ落ちた。

 

「変態のくせに……プライドばかり高くて、嫌な奴ら……ッ!」

 自室で変身を解除したダークグラスパーは、先程までの尊大な態度はどこへやら。一転して野暮ったい紺ジャージに身を包み、ブツブツと恨み言を呟きながら視線を忙しなく彷徨わせる挙動不審な少女へ早変わりした。

 四方を天井まで積み上がるおびただしい数のエロゲーの箱に囲まれた、魔窟としか言いようのない部屋の中心に鎮座する黒の玉座に体を丸めて収まったイースナは、親指の爪を噛みながら不愉快な初顔合わせを思い返している。

「イースナちゃんはほんま友達作るの下手やな~」

 その背後に金属質な足音が響き、白銀に輝く装甲のロボットとしか言いようのない存在が顔を出す。V字を描く頭部には堂々たるツインテールと、鋭いメガネ状のバイザーアイが輝いていた。

 屈強なエレメリアンにも引け劣らない巨躯から発せられるは、その外見にはあまりに似つかわしくない可愛らしくも甲高いアイドル声優の如き声。

「あ、あいつらがいけないんだもん……私が、アドレス教えてあげるって言ってるのに、小さな女の子のフィギュアなんか握りしめて……」

 ウチ、いつまで部屋にこもったままなん? とのロボットの問いに、イースナは「あいつらは生身の女に興味ないから、人間じゃないあなたに親近感がわくだけ。嫌な奴ら……」と自分より先に友達を作られてはたまらない。と恨めし気な視線を向ける。

 仲良うなりたかったら歩み寄らんと。いや歩み寄ってる、悪いのは向こう。と堂々巡りを続ける二人だったが、埒が明かないと判断したロボットは腹部からポンと飛び出した引き出しから幾枚かの紙片を取り出した。

「ネプネプシークレットアイテムその54! QRコードや!!」

 女の子に免疫のない奥手な男の子らは直接登録するのは気が引けるから、こうやってみんなの好きなものと一緒にシールを渡してワンクッション置けばいいとの提案に、イースナは濁り切った瞳を輝かせて流石メガ・ネ、モテ女と感激する。

「メガ・ネプチューンってかっこいい正式名があるんやから、その略し方やめてって言うとるやん……」

 長いと文句を言うイースナと、付けたのイースナちゃんやん! と突っ込むメガ・ネプチューンと呼ばれたロボットの喧騒が部屋を満たす。

「この世界でもみんなのアイドルになるんやろ? ええ加減変身せんでも笑顔になれるようにならんと……」

「いいの……あの人の前で、いつか本当の私が笑えれば、それで……」

 ────そして、全てを支配して見せる……トゥアールさんも、トゥアールさんのおっぱいも……私が取り戻して見せるから。

 

 泥のように濁り切った瞳に暗い炎が点る。今、世界を揺るがす底なしの情念が解き放たれようとしていた。

 

□□□□

 

 スパロウギルディは自室のPCで、ダークグラスパー顔合わせと前後して補給物資と共に届けられた他部隊の戦況報告に目を通していた。標的となる世界と前線基地程度の距離ならいざ知らず、流石にアルティメギルの科学力でも次元の壁を遠く隔てた異世界間での通信は容易ではない。

 なので余程緊急を要する情報でもない限り、一見原始的ながらこうして物理的な情報媒体をやり取りする方法が取られている。

 情報の大半は代わり映えのしない勝利の報せだ。違いはせいぜいが侵略完了の時間や、どの世界ではどの属性が豊富だった、と言うくらいか。

 だがツインテイルズに遭遇するまでほとんど目にしたことのなかった隊長格の戦死報告に、老参謀はしょぼくれた目を見開いて驚愕した。

「馬鹿な! ファフナーギルディ様が討ち取られただと!?」

 故ドラグギルディと並んで、ツインテール属性の双房とまで呼ばれたファフナーギルディの敗北に、スパロウギルディは動揺を隠せない。

 しかし驚くのはまだ早かった、続けて記載されていたのは巨乳属性のバハムギルディ、貧乳属性のクトゥルギルディまでもが倒されたという衝撃の事実。

「有り得ん! ツインテイルズ並みの戦力をもった戦士が、そうそう居てたまるか!!」

 どちらの隊長も、リヴァイアギルディ、クラーケギルディに勝るとも劣らない古強者だ。いったいどのような戦士が相手だったのか……半ば狂乱状態に陥りながらもどうにか荒れる心を押さえつけ、貪るように文章を読み進め、添付されていた戦士の画像を確認する。

「…………………………………………有り得ない! こんなことがあってたまるか!!」

 激情のままに叩き付けた拳が、磨き抜かれた机に罅を入れた。

 ツインテイルズに匹敵する損害をアルティメギルに与えた戦士……それは長年ドラグギルディと連れ添い、数々の戦士たちを目にしてきた彼をして叫ばずにはいられない姿をしていた。




Drオヴェル、久しぶりの登場(映像越しですが)。
唐突に新兵器を送ってくれました。以前のアレに気付いて予想できた人は居たでしょうか? まあ携帯の着信ではないだろうと思われた方は結構居そうでしたが。
あと本作ではワニさんが天に召されましたので代わりにクマさんの出番(被害)が増えます。熊派の陰謀じゃないよ?

部隊間の通信事情ですが、イースナ曰く他の世界へ行くと携帯がつながらない。ロリ姉妹の夢通信はその世界で一番ツインテール属性の強い相手にしかつながらない、といった原作での描写とアルティメギルの科学力を合わせて考えた結果、多分基地の高性能大出力な通信設備を使えば行けると思うけど、通信コストが大変そうなので首領の命令みたいな重要で緊急な情報以外は補給のついでに手紙みたいに直接やり取りしてるんじゃないかと妄想。
異論は認めます。この作品ではこうだっていうことで。
あ、思いついた。すごい奴(ダークグラスパーとか)の噂とか補給部隊のエレメリアンが立ち寄ったついでに広めてるのかも。
あと隊長の戦死ですが、タイガギルディという弱い隊長の実例が居る以上、初期の頃、あるいは最近でも稀には有ったんじゃないかと思います。
負けたら即座に次の部隊が追加投入されるシステムも整ってましたし。

余談ですが、このツインテール王国が敵に回った場合、総二が黄金の心で岩や鋼をも打ち砕く、爆雷やミサイルの如き拳や足技を振るい、水影流のツインテール拳が火を噴きます。

結? ストロングな熊の怪人として鳴り物入りで登場したものの愛香の爺さんに粉砕されるよ。

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