キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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 長くなったので二分割。原作に出てきたあの胸糞回。


06:狙われた者達

          □□□

 

 

 ザッカリアの街の衛兵隊へ入るための剣術大会を、キリト、ユージオ、シノンの三名は無事に勝ち抜いた。キリトは東、ユージオは西、シノンは北のブロックへと進む事になり、それぞれ優勝を目指す事になったのだ。

 

 その決勝戦において、キリトはイゴームという貴族に卑劣な罠を仕掛けられたが、《アインクラッド流》剣術という名前を付けたソードスキルにて跳ね返し、勝利を掴んだ。それと時を同じくして、ユージオもキリトから教わった《アインクラッド流》剣術を使いこなして勝利を掴み取り、シノンも潜在的であろう見事な弓術によって勝利を果たした。これにより、三人はザッカリアの街の衛兵隊へ採用される事となり、街の警護や獣の駆除、旅人の護衛などをしながら、剣術と弓術の腕を磨いていった。

 

 その入隊から六ヵ月後、三人はその腕を認められ、ノーランガルス帝立修剣学院受験に必要な推薦状を得る事になり、北セントリア市街へと向かう運びになり、そこで更なる試験を受ける事となった。結果は上々。三人は入学試験にて上位十二以内の成績を収め、初等練士として入学する事となった。

 

 上位十二名の初等練士は、《傍付き練士》となり、その年の《上級修剣士》から、それぞれ一、二名指名されて選ばれる事になるというルールだった。これにより、キリトとシノンは上級修剣士の次席であり、《歩く戦術総覧》という異名を持つソルティリーナ・セルルトという女性上級修剣士の《傍付き練士》になる事になった。

 

 一方でユージオは、キリト達同様に衛兵隊から上がって修剣士となったゴルゴロッソ・バルトーの《傍付き練士》となったが、学び舎は結局同じなので、離れ離れになったりせず、共に過ごせるようになっていた。

 

 《傍付き練士》として好成績を叩き出せれば、いずれソルティリーナやゴルゴロッソのように上級修剣士となり、最終的には二年後に卒業して、四帝国神前剣術大会で勝ち抜く事ができれば、整合騎士になれる。

 

 整合騎士は、問題のセントラル・カセドラルに所属する騎士であるため、堂々とセントラル・カセドラルに入る事ができる。そうなればユージオは幼馴染のアリスとの再会ができ、自分達は外部との連絡ができるかもしれない。それだけじゃない。自分達が面倒を見なくてはいけないという事で、一緒に修剣学院で暮らせるようになったルコが探している、《はじまりの姫巫女(ひめみこ)》と《(まもり)(かんなぎ)》を見つけるヒント、(ある)いは探し出す事自体ができるかもしれない。

 

 なので、これだけは逃すわけにはいかない。何としてでも整合騎士になるぞ。キリト、シノン、ユージオ、リラン、ルコの五人は改めてそう決め、整合騎士目指して日々を過ごす事にした。

 

 しかし、その日々を開始して早々、キリト達は驚くべき事象に出くわす事になった。ザッカリアの街を目指す中で行動を共にした少女、メディナがいたのだ。髪型を目が隠れるようなそれに変えていたものの、その燃えるような赤色の髪と翡翠(ひすい)色の瞳は、確かにメディナだった。キリトの予感は当たった。やはり彼女とは近いうちに会う事ができたのだ。

 

 そんな思いを抱くキリト達との再会を、メディナはあまり喜んではいなかった。それだけではなく、メディナの様子は以前と比べて大分変わっていた。以前のメディナはどこか高圧的ではあるものの、勇ましく、何かを成し遂げようという意思を確かに持っているような雰囲気を漂わせているような人物だった。しかし今の彼女は、何かの物陰に隠れたがっているような、余り人前に姿を見せたがっていないかのような、どことなく気弱な雰囲気を漂わせていた。

 

 あの勇ましいメディナはどこに行ってしまったのだろうかと思えるくらいの変化が彼女に起きていたのだが、その原因は数日後に明らかになった。彼女の事を、一応学び舎を共にする事になった貴族出身の男、ライオス・アンティノスとウンベール・ジーゼックを中心とした貴族達が(いじ)めていたのだ。

 

 修剣学院にも多くいる貴族出身の少年少女達は、メディナの一族である《オルティナノス家》を《欠陥品》などと呼び、靴をどこかに隠して、彼女を裸足で歩かざるを得なくしたり、教科書を濡らして使えないようにしたりなど、執拗で陰湿な嫌がらせを行っていた。そういった執拗な嫌がらせの数々が、彼女をあんなふうにしたというのは、すぐさま把握できた。

 

 そして気になった。メディナの一族であるオルティナノス家が《欠陥品》とはどういう事だ。どうしてそんな不名誉な事を言われねばならないのだ。ある日、キリトはメディナに尋ねた。どこか答えたくなさそうな様子で、メディナは答えた。

 

 オルティナノス家は元々一等爵家であり、武官として高い評価を得ていた一族だった。しかしある時、《公理教会》の最高司祭が「オルティナノス家は《欠陥品》の一族」と呼び、二等爵家への降格を命じたという。

 

 これにより、他の貴族達もオルティナノス家を《欠陥品》扱いするようになり、どんな事をしようが許されると信じ、メディナへ執拗に嫌がらせをしているのだという。皇帝さえも同じだ。「最高司祭様が仰ったのだから間違いない」、「最高司祭様が同じ事をしているのだから正しい」と、何も考えたり疑ったりする事なく、オルティナノス家へ嫌がらせをしている――それがメディナからの証言だった。

 

 愚かだ。キリトが最初に思ったのはその一言だった。同時に貴族達への尋常ではないくらいの嫌悪が胸に募った。

 

 最高司祭がどうしてメディナの一族を《欠陥品》呼ばわりするようになったのかは定かではないが、最高司祭がそう言っているからと、何も疑わず、何も考えずにオルティナノス家を迫害し、嫌がらせをしているのが貴族達のあり様だ。

 

 ライオスとウンベールや、その他のメディナに嫌がらせをする貴族達を見ていた時から思っていた事だったが、メディナに話を聞いた事ではっきりした。貴族達はどいつもこいつも自分で考える事を放棄して、「最高司祭がしていいと言ったから」というのを便利な免罪符にして、やってはならない悪行を平然とやっているのだ。

 

 まさしく、今はどの世界に居るのかわからない、自分にとっての恩師であるイリスの言っていた、絶対になってはならないものであり、嫌悪するべき存在である《思考を停止させて上の者にただ従い、流されるだけの無知蒙昧(むちもうまい)の大人》。それに該当する貴族達に嫌がらせをされているのがメディナであったが、彼女は(くじ)けていなかった。

 

 「私はいずれ大きな武功を立て、《欠陥品》という汚名を返上し、志半ばで死んだ父に報いる。そのために強くなるんだ。だから私に構わないで良い」。彼女はそう言って、キリトの許を去っていった。その背中からは、確かに現状に折られたりなどしない心の姿が確認できていた。

 

 しかし、それでもキリトの中のメディナへの心配が消える事などなかった。何か一段と酷い事をする奴が現れ、彼女を苦しめるのではないかという予感がして仕方がなかったのだ。そしてその予感はあまり遠くないうちに当たる事になった。メディナの婚約者であると言われるオルギスという男が、誰よりもメディナを苦しめたのだ。

 

 オルギスはメディナの父親が生前にメディナの婚約者として確保した男であったのだが、しかし他の無知蒙昧の屑のような貴族達と同様にメディナを欠陥品扱いして見下し、差別しており、日常的にメディナに暴力を振るうのは勿論の事、彼女が唯一心を許していた飼い猫に毒餌を与えて殺害したり、進級検定試験の直前で彼女を幽閉し、落第させてやろうとしたなど、好き勝手の限りを尽くした。

 

 この進級検定試験での異変は、ルコが人間のそれではない聴力を持って気が付いてくれ、キリトに教えてくれたのだった。結果、時間内にキリトは幽閉されていたメディナを見つけ出す事ができ、彼女を進級検定試験へ進出させられたのだった。

 

 これにてメディナとオルギスの破談は決定的になったものの、メディナは既にオルギスを敵だと思うようになっており、試験にて対戦相手となったオルギスを、今までの鬱憤を晴らすかの如く叩きのめした。そのオルギスのやられ様と来たら、情けないとかいうレベルではなく、最早醜悪(しゅうあく)にさえ思えるものだった。同情の余地など一ミリもありゃしなかった。

 

 そして勝者となったメディナを、キリトはシノンとユージオ、リランとルコと共に称賛した。進級検定試験はキリト、シノン、ユージオ、メディナは合格となり、四人は上級修剣士となったのだった。

 

 その時には、既にルーリッドの村を出て二年の歳月が流れていたのだった。

 

 

 

 

          □□□

 

 

 

「キリト、見つかった……っていうわけじゃなさそうね」

 

「あぁ。君の方も見つからなかったっていうパターンみたいだな」

 

「えぇ。もう、本当にどこに行っちゃったのかしら。あの子が急に姿を消すなんて事、これまでなかったのに」

 

「どこかで迷子になってるっていう線もないはずなんだけどな。あの子は鼻が利くから、どこを通れば帰って来られるかすぐに把握できる」

 

 

 そんな会話をしながら、キリトはシノンと共に修剣学院内を歩き回っていた。いつもならば、この時刻になればキリトとシノンとユージオの共同部屋にいるはずのルコが、どこにもいないのだ。

 

 ルコは言葉こそたどたどしいが、行動はそこまで幼くはなく、しっかりしている子だ。耳と角がある事をバレると危険だというのを誰よりも理解しているため、あまり部屋の外に出たがらない。外に出ていたとしても、そこは修剣学院の中に限定される。

 

 外に出る事の危険性を自分で理解しているのもあるが、「下手に外に出たりしてはいけないよ」というキリトの教えをしっかり守ってもいるからだ。なので、普段ならば今の時間くらいになれば、部屋にルコはいるはずだった。

 

 しかし今、どこを探してもルコの姿は見当たらない。「どこかに隠れているのではないか」というリランの提案を受けて、試しにクローゼットやタンスを開いてみたものの、やはりそこにルコは隠れていなかった。当然呼びかけに返事が返ってくるような事もなかった。

 

 もしかしたら、上級修剣士の寮を出て、初等練士達の寮に行ったりしているのではないか。ここにいないのであれば、そこにいる可能性もある。

 

 ひとまずその事をシノンに話して、ユージオに上級修剣士の寮の捜索を引き続き頼み、キリトはシノンと共に初等練士達が暮らしている寮に足を運んだ。

 

 そこでルコを探してみたが、やはり見つけられなかった。初等練士達に「一対のとんがり帽子を被った女の子を見なかったか」と聞いてみもしたが、誰も見ていないと答えた。どうやらここに来ているわけでもないらしい。

 

 ここでないならば、一体どこへ行ってしまったのか。キリトはため息混じりになりながら、シノンと共に上級修剣士の寮へ戻ってきた。

 

 

「初等練士の寮にいないとなると、本当にどこへ行っちゃったんだ、ルコは」

 

 

 シノンが答える。

 

 

「ルコだけじゃないわ。ティーゼとロニエも、どこに行ったかわからなくなってる。これって偶然なのかしら」

 

 

 キリト達が上級修剣士となった時、《傍付き練士》として二人の少女が指名された。キリトが指名したのはロニエという黒茶色の髪の毛で、青い目をした少女。 

 

 一方でユージオが指名したのがティーゼという赤く長い髪と、髪と同じくらいの赤い目をした少女だった――ちなみにシノンは誰も指名しなかったので、事実上ロニエが《傍付き練士》という事になっている――。

 

 二人はキリトとシノンとユージオの部屋の掃除、身の回りの世話などを一生懸命やってくれている、献身的な少女達だった。その二人の《傍付き練士》であるティーゼとロニエの二名もまた、時間になっても部屋にやって来ないという不可解な出来事が起きていた。

 

 

「ティーゼとロニエまでいなくなってるって事は……ルコを二人が連れ出した、もしくはルコが二人を連れ出して外に行ったのかな」

 

 

 提案するように言ってみると、返事が頭の中に返ってきた。聞き慣れた少女の声色による《声》。キリトの背中の服の中に隠れているリランのものだった。

 

 

《外に出ている可能性は薄いのではないか。あいつはお前達の言う事をとてもよく聞く()だ。確かに好奇心のある娘でもあるが、お前達の言う事を破ってまでそうするような事はなかっただろう。この事はティーゼとロニエにも話してあるから、二人が外にルコを連れ出すなんて事もないはずだ》

 

「だから尚更わからなくなるんだよなぁ。どこに行っちゃったんだよ、ルコ」

 

 

 またため息混じりに言ってみるが、やはり何も変わらなかった。とりあえずここにいても仕方がないのは間違いないだろう。キリトと同じ意見だったのだろう、シノンが提案してきた。

 

 

「ひとまず部屋に戻ってみましょう。もしかしたら私達が探してる間に戻ってきてるかもしれないし、まだ部屋の中でかくれんぼしてるのかもしれないわ」

 

「かくれんぼって……探せそうなところは全部探したんだぞ」

 

 

 キリトに言われると、シノンはどこかすまなそうな表情になった。キリトにではなく、ルコに向けてしているというのはひと目でわかった。

 

 

「あの娘、私達の言う事をよく聞いてくれるとはいえ、ずっと狭い修剣学院に閉じ込められているようなものだもの。いつも窮屈で、退屈な思いをしていても不思議じゃないわ」

 

 

 そこでキリトは気が付いた。確かにルコには外に出るなとは言っていて、その約束をしっかり守れと言い続けてきた。

 

 だが、よく考えたところ、これをルコがどう思っているのか、想像した事はなかったかもしれない。シノンの言う通り、いつも退屈していたとしても不自然な事ではないだろう。

 

 もしかしたらルコは、いつも退屈にさせているという事で、自分達に悪戯をしてきているのかもしれない。どこか想像も付かないようなところに隠れて、自分達に探させる悪戯を。

 

 そんな事をするようになるまで、ルコに不満を募らせてしまっているというのが見えてきて、なんだかすまない気持ちになってきた。シノンはいち早くこの気持ちにたどり着いていたらしい。

 

 

「ルコのやつ、俺達に見つからないようにする悪戯してるのか。いつも俺達が外に出さないでいるから……」

 

「そうかもしれないじゃない。だから、まずは部屋に戻ってみましょ」

 

 

 シノンにキリトは頷いた。ルコが隠れる悪戯をしているのであれば、それは日頃の退屈さと寂しさの裏返しだ。早いところ見つけ出して、謝らないといけないだろう。その後は休日に街へ出かける予定を組んでやらなければ。キリトはそう思いつつ、シノンとリランを連れて部屋に戻った。

 

 ドアを開けようとしたその時、部屋の中から気配を感じた。誰かが中にいるらしい。もしかしたらルコだろうか。それとも自分達同様にひとまず部屋に戻ってくる事を選んだユージオだろうか。可能であればルコであってくれ。キリトはそんな思いを込めながらドアを開けた。

 

 気配の通り、そこに人が一人いたが、それは見知らぬ少女だった。灰色の初等練士の制服を着ているので、誰かの《傍付き練士》であろう。一部を三つ編みにしている薄茶色の髪をしていて、その髪とほとんど変わらない色の目をしている。だが、そこに浮かんでいるのは、不安を絶やさず、何かに酷く怯えているような眼差しだった。

 

 

「あっ……キリト上級修剣士殿と、シノン上級修剣士殿でしょうか……?」

 

 

 少女は今にも消えてしまいそうなか細い声で問うてきた。その声色に思わずびっくりするが、それを呑み込んでキリトは頷く。

 

 

「あぁ、キリトだよ」

 

「私もシノンで合ってるわ。あんたは?」

 

 

 少女はやはりか細い声で答えた。

 

 

「私は、フレニーカ・シェスキ初等練士です……キリト上級修剣士殿とユージオ上級修剣士殿の《傍付き練士》のティーゼとロニエの、友人です……」

 

 

 フレニーカ。その名前に覚えがある。確か、前にティーゼとロニエが話していた娘がそんな名前だった。その娘は、メディナに嫌がらせをしているウンベールの《傍付き練士》として指名されたものの、現実世界で言うハラスメント行為を毎日のように受けていて、苦しんでいるという話だった。

 

 彼女がそのフレニーカであるようだが、なるほど確かに、彼女は目が怯えの色に満たされ、頬には血色がないという、日常的に暴行や嫌がらせを受けてしまっている者の様子そのものだった。最早精神的にやつれる寸前であろう。

 

 こんなになるまでウンベールは彼女を虐げたというのか。彼の者への強い怒りと嫌悪が胸の中に広がってきたが、ひとまずそれを我慢するようにして、キリトは問いかけた。

 

 

「君がフレニーカか。話はティーゼとロニエから聞いたぞ。ウンベールに酷い目に遭わされてるみたいだが――」

 

 

 言いかけたキリトを、フレニーカが止めた。彼女は絞り出したような大きな声で、二人に伝えてきた。

 

 

「お二方、お願いです! ウンベール・ジーゼック殿の部屋に向かってください! 今、そこにティーゼとロニエと、ユージオ上級修剣士殿が向かっているんです!」

 

 

 キリトはシノンと一緒になって驚いた。

 

 

「どういう事だ」

 

 

 フレニーカは答えてくれた。なんでも、彼女がウンベールに虐げられ続けるくらいならば学院を辞めたいと話したところ、ティーゼとロニエが直接ウンベールのところに抗議しに行ってしまったのだという。それから一時間も経過しているが、二人は戻ってこないらしい。

 

 この話を、先に戻ってきたユージオにしたところ、彼もまたウンベールの部屋へ向かっていったのだという。その時に、ユージオは「キリトとシノンが戻ってきたら、ウンベールの部屋に駆けつけるよう言ってくれ」と頼んだそうだ。

 

 

「ティーゼとロニエ、ユージオまでウンベールのところに!?」

 

「はい。お願いです、どうか三人を、私の友達を、助けてくださいっ……」

 

 

 そう言ってフレニーカは泣き出してしまった。恐らくティーゼとロニエ、ユージオをウンベールのところに向かわせる原因を作ってしまった事を後悔しているのだろう。だが、彼女の気持ちを()み取る余裕はあるものの、(なぐさ)める余裕はなかった。

 

 ウンベール。あの悪質で傲慢な態度を欠かさない腐敗貴族。あいつの傍には、いつも似たような態度をして、同じく腐敗しているとしか思えないような貴族出身のライオスがいた。恐らくあいつらは今も二人揃っているだろう。

 

 そこにティーゼとロニエなんていう(むすめ)が向かえばどうなるか。いや、何をしようとするかなど想像するまでもない。これ以上ないくらいの最悪の行為をもって、二人にこれ以上ないくらいの苦痛を与えようとするはずだ。そうする事で自分達が高貴なる存在、貴族であるという事を実感しようとするだろう。

 

 あいつらがそういう事をする奴らであるというのは、メディナへ執拗で陰湿な嫌がらせをしているところを見た事によって、よく理解できている。間違いなく、二人は今危険な目に遭っている。いや、ライオスとウンベールによって危険な目に遭わされる直前になっている。

 

 

「教えてくれてありがとう、フレニーカ。俺達も行ってくる!」

 

「いい? 下手に動くんじゃないわよ――」

 

 

 事情を教えてくれたフレニーカに礼を言いつつ、部屋を出ようとしたその時だった。

 

 

 

「いぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッ」

 

 

 


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