キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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03:少女達の時間

 私はリズベットに素材を渡した後、リズベットに言われるまま武具店の工房に赴いた。

 

 武具店の工房の鉄テーブルにリズベットが素材を並べ、更に弓を並べた後にハンマーで軽く叩くと、金属音とともに弓が紅い光に包み込まれてシルエットとなり、更にその周囲の素材もまた光になって弓に吸い込まれた。直後に、弓は全く違う形の弓矢へ姿を変えて、その光を減衰させた。

 

 そして完全に光が消え去った頃には、白樺の木で出来ていたような弓はまるで大きな牙を2本加工して作ったような、緑と黒と赤の特殊な模様が入った大弓に変化していた。その名前は「ファング・アロー」。詳細情報ウインドウを開いて性能を確かめてみれば、私が攻略のために使っていた短剣の2倍の数値になっていた。

 

 

 あの二層の猪を倒すのでさえ難しそうな弓が、五十四層の敵と互角に戦えるほどの性能に化けるとは思ってもみず、私もアスナも生まれ変わった弓に釘付けになってしまった。同時に、リズベットの鍛冶の腕が本物である事を、そしてアスナから絶大な信頼を得ているという事実を改めて認識出来た。

 

 弓を生まれ変わらせてくれたリズベットにお礼のお金を支払って、弓を受け取った後に、私達はアスナが言っていた通り48層の街に行って、少し豪華でありながら静かな雰囲気の喫茶店に入り込み、少人数の茶会を開いた。

 

 外見は豪華そうに見えて、中も結構豪華なんだろうなと思いながら入り込んでみたところ、中はまるで森や林の中のように静かで落ち着いていて、私は少しだけ驚いてしまった。

 

 

「あれ、結構落ち着いた雰囲気。外観はあんなに豪華だったから、中もさぞかし騒がしい感じかなと思ったのに」

 

 

 リズベットが少し苦笑いしながら、

 

 

「外見と中身が必ずしも一致するとは限らないものよ」

 

 

 と言った。確かに現実世界にいた時も顔は凄く美形なのに性格が凶悪極まりない犯罪者とかいたから、リズベットの言葉を正論であると思えた。

 

 そのすぐ後にアスナが私達を連れてテーブル席に歩き出し、アスナ、リズベット、私の順で座った。しかもアスナは私の隣に座って来て、私をちらと見た後ににっと笑ったものだから、つられて私も笑ってしまった。

 

 

「さてと、何を頼もうかしら。リズはこの店について何か知ってる?」

 

 

 リズベットは驚いたような顔をした後に、呆れたような顔をしてアスナに言った。

 

 

「ちょ、あんた前もって情報を持たないでここに来たわけ? まぁここはあたしの家がある層で、ここにもちょくちょく寄ってたから、どんな店なのかはわかってるけれどさ」

 

 

 リズベットは近くにあったメニュー表を手に取り、開いてテーブルに置いた。そこに目を向けてみれば、白と緑の背景に黒い色で文字書かれていて、メニューのイメージ図であろう絵がいくつか描かれているのが確認できた。これはそこそこわかりやすい書き方だわ。

 

 そんな事を考えていると、リズベットがある一か所を指差しながら私達に声をかけてきた。

 

 

「この店のおすすめはカフェラテ。ミルクとコーヒー、そして甘さがこれまた絶妙でね。そしてさらにおすすめするのがレアチーズケーキよ。この組み合わせであたしはよく食べているんだけれど……あんた達はどうするの」

 

 

 リズベットが言うものもいいけれど、この店は思ったより色んなメニューがある。ショートケーキからティラミス、シフォンケーキやチョコレートケーキなど、本当に様々なケーキ類が扱われているし、ケーキだけじゃなくスコーンやクッキーなどもある。

 

 更にコーヒーのメニューもカフェラテは勿論、ドリップコーヒーや豆乳ラテ、ココアまで揃っている。まるで現実世界にある大手喫茶店のようだ。いや、多分そこをイメージして作られた喫茶店なんだろう。これは、何を頼むべきか迷うわ。

 

 

「そうね、私はこのキャラメルマキアートとチーズケーキにしようかしら」

 

 

 アスナがメニューを指差しながら頼むものを口にした後に、私に声をかける。

 

 

「シノンは何を頼むの」

 

 

 アスナの言葉に少し驚き、私は慌ててメニューを見直した。頼むなら……豆乳ラテとティラミスにしようかしら。この世界に来てこういうものは食べてこなかったし、丁度いい。

 

 

「豆乳ラテとティラミスにするわ。この組み合わせが一番性に合いそう」

 

 

 リズベットが「そっか」と言って、近くにいた男性NPC店員に声をかけて、私、アスナ、リズベットが頼もうと思った商品の名前を次々注文した。

 

 客からのオーダーを受けたNPCは「少々お待ちくださいませ」と言ってそそくさと厨房の方に歩んでいったが、その様子が現実の喫茶店の店員そっくりで、少し不思議に思えてしまった。

 

 この世界で生きていると、まるでこの世界に最初から生まれて、この世界でずっと暮らしてきたような気がしてくる時がある。ゲームの中の世界であるっていうのが嘘に感じられるくらいに、この世界はよく出来ているとつくづく思う。水然り、喫茶店の店員然り、命の営み然り。

 

 でも、リズベットの髪の毛とかを見てみると、あぁこの世界はゲームの中の世界なんだなって気が付く。あんな髪の毛の色の人は、現実世界にはいないから。

 

 

「それにしても、リズベットの髪の毛の色は綺麗ね」

 

 

 リズベットが驚いたように私に顔を向ける。

 

 

「綺麗? 本当にそう思うわけ」

 

「そう思うけれど……」

 

 

 直後、アスナが得意気な笑みを浮かべてリズベットに言った。

 

 

「ほらリズ、わたしが選んだ髪の色に間違いはなかったでしょう」

 

 

 思わず首を傾げてしまう。リズベットの髪の色を、アスナが選んだって事なのかしら。

 

 

「どういう事?」

 

 

 リズベットが私に顔を向けた。どこか複雑な表情が浮かんでいる。

 

 

「アスナったらある日いきなり髪の色を変えるべきだとか言い出してさ、あたしはあまり目立たないような色がいいって言ったのに、アスナが無理やりピンク色を選んであたしに施してさ。あれはこのゲームに閉じ込められた時以来の衝撃だったわ」

 

「だってリズってば、黒とか茶色とか、地味な色ばかり選ぶんだもん。せっかく鍛冶屋になるんだから、明るい色の方が接客も捗ると思って選んだの」

 

 

 リズベットがテーブルに肘をついた。

 

 

「そうだけどさ……でも、いくらなんでもピンク色はないわ。おかげで鏡を見る度にこれ本当に自分なのかって思っちゃうときあるんだから」

 

 

 アスナがまた笑む。

 

 

「だけどリズ、わたしが設定してから、髪の色変えてないじゃない。それって気に入ってるって事なんじゃないかしらぁ?」

 

 

 リズベットは苦笑いした。

 

 

「まぁそういう事よ。目立つ色だなとは思ってるけれど、別に嫌いなわけじゃないから。あんたには若干感謝してるわ」

 

「若干なの?」

 

「若干」

 

 

 アスナはふぅんと言った。こういう会話は現実世界にいた時にも聞いていたような気がするけれど、その時みたいに嫌な感じはせず、寧ろとても心地よく感じられる。

 

 

「ねぇ、シノンも髪の色とか変えてみようと思わない?」

 

 

 もっと聞いていたいって思ったその時に、アスナが声をかけてきて、私はハッと我に返った。慌てて髪の色について思考を回す。

 

 

「えっと髪の毛の色は……いじってみたいとは思わないかな。あんまり急に髪の毛の色とか変えたら、一緒に暮らしてる人にびっくりされると思うから」

 

 

 リズベットが「おぉ!?」という声を出した。

 

 

「シノンってば、誰かと一緒に暮らしてるの?」

 

「えぇ。男の人と、一緒に」

 

「そうだったんだ……って事は、その人の事とか好きだったりするの?」

 

 

 アスナの時と同じようにぎょっとする。というかやっぱり、女の子が男の人と一緒に暮らしてたら、その人と恋人同士か何かと考えるのが普通らしい。

 

 だけど流石にキリトと恋人同士になってるなんて言えないし、何よりさっきアスナに嘘を吐いた事がばれてしまう。

 

 

「そういうわけじゃない。その人には助けてもらった事があるのよ。そしてその人が、住む場所をくれているから、それに甘んじて住んでるだけ。別に好きとかそういう気持ちはない」

 

 

 リズベットは「ふぅん」と言った後に軽く俯いて、何かを口にした。上手く聞き取れなかった事が気になって、再度リズベットに聞き直す。

 

 

「どうしたの、リズベット」

 

「あぁいや、なんでもない。でも男の人と一緒に暮らしてるって事は、何かしらのトラブルとかに巻き込まれたりとかしてるでしょ。そういうのがあった時とかはあたし達に話してよ。相談に乗ってあげるからさ」

 

 

 リズベットの言葉に目を丸くすると、隣のアスナも同じように笑った。

 

 

「わたしも同じ気持ちだよ。多分、この後も何かしらの事があると思うし、そういう時は相談してよ? それに私達、シノンの事とかもっとよく知りたいから、もっと話してくれたっていいんだよ」

 

 

 アスナとリズベットの笑顔を交互に見つめると、心の中が一気に温かくなったのを感じた。今まで、いや、そもそも最初から、私は友達を作らずに生きてきた。小学校の時も中学校の時も。

 

 いや、中高一貫校の生徒にになってからは友達になった人はいたといえばいたけれど、そういう奴はろくでもない奴だったから、友達ではなかった。今となっては何であんな異様で禍々しい目つきをした連中が友達だったのかと真剣に考えるくらいだ。

 

 私の話をちゃんと聞いてくれていたのはおかあさんとお祖父ちゃんとお祖母ちゃん、私の事を良くしてくれた精神科医の先生だけだった。

 

 ――この人達はカウンセラーでも何でもないのに、私の事を知ろうとしてくれてるし、それに、隣にいるアスナもいつの間にか私の事を友達扱いしてくれていたし、リズベットだって私の話を真剣に聞いてくれそうな感じと雰囲気を醸し出している。

 

 どちらの目を見ても、あんな禍々しい黒い光はない。寧ろ、とても暖かくて、心地の良い光が浮かんでいる。

 

 こんな人に出会ったのは、初めて――。

 

 

「ちょ、シノン、どうしたの」

 

 

 リズベットの声がして、私はその方に声を向けた。リズベットの驚いた顔が確認できたけれど、どこかぐにゃぐにゃとぼやけている。その原因がいつの間にか私が泣いているせいだと気付くのに、時間はかからなかった。

 

 涙が溢れて止まらなくなって、私は服の袖に目を擦り付けたが、すぐさま背中に手が当てられたったような感じが走った。

 

 

「シノン、どうしたの。もしかして、わたし達シノンを泣かせるような悪いことした? 髪の色とかいじるの、そんなに嫌だった?」

 

 

 思わず首を横に振って、顔を上げた。声を出そうとしても、しゃっくりが混ざった。

 

 

「違う、違う。そういうわけじゃない。今まで、アスナや、リズベットみたいな人と、出会った事なかったから、まともな友達、いなかったから、そんなふうに言ってもらえるのが、すごく、嬉しくて、嬉しくてぇ……」

 

 

 涙を止めようと思っても、全然止まってくれない。人前では泣かないように思っていたのに、身体はそれに反して涙を止めない。私の意志なんか、完全に無視してる。

 

 二人の「あぁ……」という声がして、大きな何かに包まれたような感覚が身体に起こった。見てみれば、アスナが私の事を抱き締めていた。

 

 

「そうだったんだ。ごめんねシノン、気付いてあげられなくて」

 

 

 リズベットがどこか悲しそうな表情を浮かべていた。ぼやけているけれど、それだけはしっかりとわかった。

 

 

「あんた、あまりいい目に遭ってこなかったんだね」

 

 

 思わず、アスナの胸の中で頷いてしまった。リズベットが微笑みを浮かべて、私に言った。

 

 

「あたし、もしかしたらあんたの言うまともな奴じゃないかもしれないけれど……出来る限り力になろうと思うよ。だから、話せる事があったら話してほしいし……何より、ちゃんとした友達扱いしてもらいたい」

 

 

 アスナの抱き締める力が強くなった。

 

 

「わたしも、わたしでよかったら力になるよ、シノのん。わたしもあんな風に接しっちゃったから、まともな人じゃないって思われてるかもしれないけれど、わたしはシノのんと、ちゃんとした友達でいたい。だから、わたし達の事を頼ってほしいし、話せそうな事も、ちゃんと話してほしいな」

 

 

 これまで、他人なんて氷だと思って来た。吐き出される声も、紡ぎ出される言葉もみんな氷みたいに冷たい物に感じられた。だけど、この二人は氷じゃない。声も言葉も、みんな暖かい。

 

 これが、友達なんだ。

 

 本当の、友達だったんだ。

 

 

「ありがと……ありがと、二人とも……」

 

 

 思わず溢れ出て着た涙を服で拭うと、アスナが頭を撫でてくれた。

 

 この世界に来て、私は本当に色々なものを得る事が出来たんだ。一緒に居てくれる恋人のキリト、そして本当の友達でいてくれるアスナとリズベット。この世界は忌まわしいですゲームの中でしかないけれど、もしこの世界に来なかったら、こんな事を知る事も、手にする事も出来なかった。

 

 不謹慎だけど……来てよかったかもしれない。そう思った瞬間だった。

 

 

「でも……アスナ」

 

「なに?」

 

「そのシノのんって何?」

 

 

 アスナは私から手を離したが、その顔は酷くきょとんとしたようなものになっていた。私にこんな事を聞かれるのが意外だったように見える。

 

 

「えっと……咄嗟に思い付いた貴方のあだ名なんだけど……駄目、シノのんって?」

 

 

 私はこれまであだ名なんてつけられた事だってなかった。そりゃそうよ、まともな友達、いなかったんだから。だけど今、アスナとリズベットというまともな友達が出来て、尚且つあだ名をもらえた。これが嬉しくないわけがない。……そしてシノのん、すごくいい響きだわ。

 

 

「駄目じゃない。寧ろ、そう呼んでほしい」

 

 

 アスナはどこか安心したような顔をした。多分、私に拒否されると思ってひやひやしていたんだろう。そんな私達の様子を見て、リズベットが呆れたような、そしてどこか安堵しているような複雑な表情を浮かべていた。

 

 

「出会って間もないシノンにあだ名を付けるなんて、アスナも相当積極的になったものね。そのまま恋とかしたらどう?」

 

 

 その言葉を聞いて、アスナはかっとリズベットの方に顔を向けた。見る見るうちに顔が赤くなっていく。

 

 

「こ、恋!? いやいや、そんな相手いないから!」

 

「またまたぁ。アスナなら見つけられるって、最高の相手を」

 

「いやいやいや……そこまでは……」

 

「出来ると思う。アスナなら、きっと」

 

 

 口をはさむと、アスナは私に目を向けた。

 

 

「もうシノのんまで―」

 

「だってアスナ、いい人だもん。アスナなら、きっと見つけられると思うよ。リズベットじゃないけどさ」

 

 

 アスナは「そうかなぁ」と言って前を向いた。

 

 つられて私も目の前……リズベットの方に目を向けたけれど、そこで思わずきょとんとしてしまった。リズベットが、急に下を向いていたからだ。目線の先にあるのはテーブルにあるメニュー表だけど、リズベットの目にはメニューもテーブルも映っておらず、虚空(うつぞら)が映っているように見えた。いや、今リズベットが見ているのは、虚空そのものと言っていいかもしれない。

 

 

「り、リズベット。どうしたのよ」

 

 

 リズベットは反応を示さない。そればかりか口の中で「いいなぁ」とか呟いているように見えて、流石に不審に思えてきた。

 

 

「ちょっと、リズベットってば」

 

 

 ちょっと声を張り上げて再度声をかけると、リズベットはようやくここに戻って来たかのようにハッとして、私の方に顔を向けた。

 

 

「な、何シノン」

 

「なんだかボーっとしてるみたいだたったから……」

 

 

 リズベットはもう一度ハッとしたような顔をして、すぐさま首を何回も横に振った。

 

 

「いやいや何でもないよ。ちょっと考え事をしてただけ。だから、気にしないで大丈夫」

 

 

 思わず首を傾げてしまった。今のリズベットは、やっぱりここじゃないどこかに心があったように思えた。それこそ、この世界の事があまりよく信じる事が出来ずにいた頃のアスナに近いような、そんな顔だった。

 

 一体どうしたっていうんだろう、って思ったその時に、リズベットは何かに気付いたような顔をしてウインドウを開いた。そのまま顔が一気に驚いたようなものに変わる。

 

 

「しまった……店に鍵をかけてくるのを忘れた! お客が来ちゃってる!」

 

 

 リズベットはいきなり立ち上がって、さぞかし慌てた様子で金銭(コル)を呼び出してテーブルに叩き付けるように置いた。その数はメニュー表に書かれていた飲み物とお菓子の料金と同じと思えたけれど、すぐさま二人分の量だという事に気付いた。

 

 

「シノン、これあたしの分とあんたの分! 今回はあたしが奢る! だからあんたはお金出さないでお茶飲んで! それでケーキは二人で分け合って食べて頂戴!」

 

「え、ちょっと、リズ――」

 

「いきなり何を言い出す――」

 

 

 私達の言葉を聞く前に、リズベットはそそくさと走って喫茶店を出て行ってしまった。あの足で、自分の店に戻って行ったんだろう。流石に店に鍵をかけないまま来てしまった上にお客さんが来てるってわかったら、品物を盗まれると思うのが普通よね。

 

 というか、店にお客さんが来たら、リズベットがわかるようになってるのか。

 

 

「店が客に来たらアラームが鳴るようになってるのかしらね」

 

「多分そうじゃないかな。わたしも他人の事は言えないけれど、リズもずっと鍛冶に打ち込んできたみたいだから、鍛冶以外の事についてなるべく興味を持ってもらいたいところなんだけどね。それこそ、キリト君やリラン、シノのんが教えてくれたこの世界の在り方とか、暖かさとか」

 

 

 確かにリズベットもそういうものがわかっていないように思えた。もしかしたら、あの時のリズベットの顔はそれが原因なのかもしれない。

 

 リズベットも前のアスナと同じように、この世界の事があまりよくわかって無いっていうか、この世界を現実世界と同じように認識できていないのかもしれない。この世界の美しさも、暖かさも、命の在り方も、全部。

 

 

「リズベットにも教えてあげないとね。この世界の事を、もっとよく。そうすれば、リズベットもお店だけの事を考える事もなくなるんじゃないかな」

 

「いや、別にあの娘はお店の事だけ考えてるわけじゃないんだけど……それでも興味の視野が結構狭いのよね。何とかしてあげないと……」

 

 

 そう言った直後に、NPCが二人、ケーキとコーヒーを持って私達のところへやって来て、私の前に豆乳ラテとティラミスのセット、アスナの前にキャラメルマキアートとチーズケーキ、リズベットがいた場所にカフェラテとレアチーズケーキを置いて行った。リズベットの席の前に虚しく置かれたカフェラテとレアチーズケーキの姿を見て、私とアスナは数回瞬きをしたが、すぐさまアスナがその口を開いた。

 

 

「……リズには悪いけれど、食べましょうか」

 

 

 私は頷いた。

 




次回、リズベット回。

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