キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

169 / 565
13:草原浮遊島の使い魔探し

「さてさて皆、モンスターと結構遭遇したと思うけれど、どうかナ――?」

 

 

 空前の《使い魔》ブームに乗っかった俺達は、浮遊草原島ヴォークリンデにて、グランドクエストの攻略をしながらも、《使い魔》探しをしていた。その中で最も意欲的だったのはリズベットとリーファとフィリア、クライン、ディアベル、エギル、ユウキ、カイムであり、この者達は他の者達よりも積極的にアリシャやシリカから《使い魔》の取得方法について教えてもらって、それを実践するべくフィールドを飛び回っていたのだが、一段落ついて、再び草原の一角に集まっていた。

 

 

「見た事が無いモンスターが沢山いたけれど、可愛い系のモンスターは少ないわね。ちょっとこの辺りにいるのはあたしの趣味に合わないわ」

 

「まぁ、強さと可愛さが比例する事は稀だからネ。というか、リズちゃんは可愛い系がほしいのネ」

 

「右に同じー。このフィールド、何だかいかついのばっかりで可愛いの全然いないよ。テイムできそうになったけど、全部断っちゃった」

 

「リーファちゃんもなのネ。見た目がいかついのは進化しても最後までいかついから、可愛いのが欲しいなら、初期段階から可愛いのを選ぶのが一番だヨ。ただ、最初は可愛くても進化するといかつくなるのもいるけどネ」

 

「うーん、強そうなのは沢山いるんだけど、戦っても種族経験値になるだけで、全然テイムチャンスをくれないよ」

 

「ユウキちゃんは強い《使い魔》が欲しいのネ。でも、強いのは全然テイムできないから、根気がいるヨ」

 

 

 今も超が付くほど世界中で大人気のモンスター育成ゲームほどではないけれど、実に沢山の種類のモンスターが存在するALO。その世界に住まうモンスター達をテイムする方法は、ケットシーの領主であるアリシャ曰く、モンスターと戦って撃破すると、爆散した直後に復活を遂げる時があり、その時に出現するウインドウでOKを選択すれば、《使い魔》として使役が可能になるとの事だ。――その説明をしっかりメモして、フィールドに赴いて行ったクラインが、悔しそうな顔をして抗議するようにアリシャに言う。

 

 

「くっそぉ、駄目だぜ。ワイバーンを見つけたから狩りまくったのに、スキル熟練度が上がるだけだ。全然《使い魔》に出来ねぇ!」

 

「ワイバーンもドラゴン族だから、テイム確率は結構低めだヨ。だけど、ドラゴン族の中では一番テイムしやすい種類なのよネ。うちにも沢山ワイバーンをテイムする事に出来た人がいるし、進化させてる人も沢山いるヨ」

 

「マジかよ。となると、もっと狩らなきゃかぁ」

 

 

 そこでディアベルとエギルとフィリアが困ったような顔をして、アリシャの元へ歩み寄る。よく見てみれば、アリシャの隣には俺の《ビーストテイマー》の先輩であるシリカの姿もある。

 

 

「駄目だ。聖竜みたいなのが欲しいのに、それっぽいのはいないな」

 

「聖竜まで来ると、討伐クエストにしか出てこないヨ。それを根気よくこなしていくしかないネ」

 

「俺はいくつかのモンスターをテイムできそうになったぞ。だけど、どいつも能力値が微妙すぎて、ちょっとの戦闘でやられちまいそうだったから、NOを押した」

 

「エギルさんは運が良いネ。だけどやっぱり強い《使い魔》が最初から欲しいなら高難度のダンジョンに潜る必要が出てくるし、最初は弱くても進化させれば強い《使い魔》になる事もあるから、それのカタログを見てみるのもいいかもネ」

 

 

 アリシャが穏やかに《ビーストテイマー》になるための手順を説明していくと、最後にフィリアが見慣れた困り顔をして、シリカの方へ声をかけた。

 

 

「わたしはクラインと同じ。全然《使い魔》にモンスターがなろうとしてくれないよ。シリカ、何かいい方法、無い?」

 

「んー……確かケットシー領の方で、モンスターのテイム確率を引き上げる装備アイテムがあったような気がします。中にはそれがないとテイムできないモンスターもいるみたいです」

 

 

 SAOの時は遭遇した際に友好的な反応を示したモンスターに餌付けをする事によってテイムが完了し、《使い魔》になるという感じだったから、SAOの技術やシステム、プログラムが流用されているこのゲームでも同じような感じなのではないかと思っていたけれど、ALOでのテイムのやり方を改めて聞いた時には、あのやり方が通じない事に思わず驚いてしまった。

 

 そしてモンスターを《使い魔》に出来る確率だけど、アリシャ曰くそこら辺を飛び回っている飛行型モンスターや、地上を闊歩する小型モンスター達などは、撃破した際に十体に一体くらいの割合でテイムできるらしくて、初心者でもテイムしやすいらしい。

 

 それで、モンスターが強くなればなるほどテイムの確率は下がっていき、ドラゴン族などまで来るとレア度ランクは最高レベルの10に匹敵するくらいになるそうだ。

 

 

 つまりリランのようなドラゴン族を手に入れるのは、サーバーに二本くらいしか存在していないエンシェントウェポンを手に入れるのとほとんど同じ事。更に、ドラゴン族は基本的に討伐クエストにしか出現しないから、テイムにするには討伐クエストをひたすらこなして、運営が設定したものすごく低い数値の乱数と戦うしかない。

 

 だからこそ、ドラゴン族を見事テイムする事に成功したプレイヤーは、《ドラゴンテイマー》という誇り高き名で呼ばれるようになるのだ。

 

 ――そんなドラゴン族モンスターの最強クラスを、ほとんど苦労する事無く《使い魔》に出来ている俺は、チーターと罵られても反論できない。本当はリランが勝手に手に入れたんだけど、話しても理解されないだろう。

 

 そんな中、《ビーストテイマー》になろうと必死になっている者を見ながら、アリシャの茶飲み友達であるシルフ領領主は苦笑いする。

 

 

「まぁ、乱数という数字との戦いであり、己の運が試されるような事柄だからな。

 失敗しても「素晴らしく運が無いな、君は」とか言われないだけマシだと思った方がいいのかもしれない」

 

「逆に成功すれば「素晴らしく運が良いな、君は」って言われるんですね、わかります」

 

「それにしても、キリト君のところの《使い魔》はそこら辺のAIとはわけが違うように感じられるな。まるで人間そのものじゃないか」

 

 

 そう言って、サクヤは狼竜の姿になっているリランへと目を向ける。サクヤとアリシャにはリランはAIであると既に伝えているけれど、開発者が誰なのか、そしてその役割や性能はどのようなものなのか、詳しく話してはいない。あまり話すと、混乱させてしまいそうだからだ。

 

 

「あぁえっと……リランはそう、特別製というか、世紀の大発明というか」

 

「確かにそれくらいだと思えるくらいのものではあるな。しかし、開発者は何故リランの事を公表しないのだろうか。リランくらいのものならば、公表すれば功労者として……」

 

「そんな事のためにリランを作ったんじゃないのさ。名声や大衆の声なんかのために、リランを作ったんじゃない」

 

 

 そこで俺は驚いてしまった。サクヤの右隣に突然並んで話に割って入って来たのは、他でもない、リランやユピテル、ユイやストレアの開発者であるイリスだったからだ。しかもイリスは完全に知らん顔をして、自分が開発者である事を隠しているように見える。

 

 

「リラン達を作り上げたのはすべて同一の人物だ。そしてその人物は、名誉や名声のために彼女らを作り上げたのではなく、本当に生命と言えるものを誕生させたかったから、作ったのさ。名誉や名声のために作ったんなら、あんなに人間や生物に近しいものにはならなかっただろう」

 

「……確かに、彼女達を見ているとそんな気がしてくるな。名声や名誉のためでは、あれだけのものは作れないというのもわかる気がする」

 

「そうだろ。それに、リランくらいのAIになれば、もはやそこら辺の研究者達では手に負えないし、解析も分析も無理だ。が、周りの研究者達とかは工業ロボットとかに応用できないかとか言って、すり寄って来るだろうな。まぁ、勿論彼女達は拒否するだろうし、開発者は首を横に振るだろう。そんな事になるくらいならば、もはや公表しない方が静かでいい」

 

「……随分と詳しく喋るのだな、イリスは。まるで自分が開発者みたいじゃないか」

 

 

 いや、実際そうだからこれだけ詳しく喋れるんだけど――そう言いたくなったその時、イリスは咄嗟に何かに気付いたような顔になって、サクヤに向き直った。

 

 

「あ、そういえばサクヤ。話を()げ替えて悪いんだけど、君は《使い魔》が欲しくないのかい。今は連れてきてないけれど、アリシャは《使い魔》を持っているようだが」

 

「えっ。あぁ。私は《使い魔》が居なくても構わないよ。そのようなものよりも、武器を手に入れたい主義なのでな」

 

「なるほど、君は武器集めが好きな人なのか。意外だな」

 

「そういう貴方は、《使い魔》がいらないのか」

 

 

 全く入っていけそうにない大人の女性同士の会話を、イリスの方を見ながら聞いていると、ポケットからひょこりと顔を出した小さな妖精――彼女の偉大な発明品の一つであるMHHPの三番目かつ次女、クィネラの銀色の瞳と目が合った。

 

 

「私にはナビゲートピクシーのクィネラがいるんでね。それに、私達の全員が《使い魔》を欲しているわけでもないよ。既に《使い魔》みたいなのを連れているのが数人いるしね。そしてそういう人達が今、《使い魔》探しをしないで、攻略をしているわけだ」

 

 

 《使い魔》ブームに乗っかったのは何も全員じゃない。実はこの場に合流しているのは《使い魔》を探してフィールドに赴いた者達だけで、アスナ、シノン、シュピーゲル、ストレアの四人は普通に攻略に赴いている。

 

 なぜこの四人は《使い魔》を欲していないのかというと、アスナはユピテル、シノンはユイというナビゲートピクシーが既にいるから、ストレアはプレイヤーであると同時に俺とシノンのナビゲートピクシーでもあるから、シュピーゲルは武器や装備を収集する方が楽しいからであるらしい。

 

 確かに《使い魔》ブームが来たのもつい最近だし、そもそも《使い魔》が居なくても大丈夫だと思えるならば、無理して《使い魔》を手に入れる必要などないのだ。まぁ、そう思えるのは彼女らに《使い魔》の代わりになるようなものが存在しているからなのだけれど。

 

 

「みんな――!」

 

 

 そんな者達とは違って、《使い魔》を欲しがっている者達を眺めていると、少し遠くから声が聞こえてきた。視線を向けてみれば、《使い魔》探しをせずに攻略に向かって行ったアスナ、シノン、シュピーゲル、ストレアの四人が飛行しながら戻ってきているのが見えた。彼女達が戻って来たという事は、何か攻略が進むような事があったらしい。

 

 

「おぉ四人とも、戻って来たか――!」

 

 

 四人はすぐに俺達の元へ辿り着き、地上へと降りてきた。怪我を負っている様子は見られないため、あまり危険な戦いに巻き込まれるような事はなかったようだ――そんな事を考えていると、小さな妖精ユイを連れているシノンと、武器収集家のシュピーゲルが俺の元へやってきた。

 

 

「キリト、そっちはどうだった」

 

「こっちは選り好みが激しいばっかりに、《使い魔》取得チャンスを逃した人達がいっぱい。そっちはどんな感じだった」

 

「こっちはグランドクエスト攻略の鍵みたいなのを見つけたよ。どうやら、このグランドクエストは三つの島に跨っているみたい」

 

 

 シュピーゲルによると、地上にある遺跡の混ざった洞窟の中を進んでみたところ、宝箱を発見したらしく、その中には今現在受けているグランドクエストの鍵と思われるアイテムと、このグランドクエストそのものを現した書物が入っていたそうだ。

 

 

「って事は、手に入ったものはいずれも書物系アイテムって事か」

 

「そう言う事だよ。キリト君、読んでみて」

 

 

 そう言ったアスナがウインドウを操作すると、その手元に光に包み込まれた本のようなものが出現し、やがてそれは光を弾け飛ばして古めかしい書物となった。そんな古紙の臭いがしてきそうなそれを受け取ると、本は自動的に開いてページをめくり、ある部分で止まった。

 

 まるで小説を読むような感覚で、俺は開かれた書物を(そら)んじる。

 

 

『この三つの浮遊島は、闇の神の支配下にある。

 この浮遊島を支配せし者、闇の神、世界の裏側に在る。

 世界の裏側への道を開くには、三神獣の持つ宝珠を揃える必要がある。

 三神獣は浮遊島の最奥部におり、浮遊島を我が物にしている。

 勇気ある者達よ、三神獣を打ち倒し、世界の裏側への道を開き、世界の闇を打ち払いたまえ』

 

 

 いくつも気になるワードが散りばめられている文章は、そこで終わっていた。随分と登場が早いような気がするけれど、このグランドクエストは最終的に世界の裏側と呼ばれる場所へ行き、そこに居る闇の神という存在を打ち倒すという形になっているようだ。

 

 

「なるほど、この世界の裏側っていうのが所謂ラストダンジョンで、《闇の神》っていうのがラスボスって事だな。……随分とネタバレが早い気がするな」

 

「でも、どこに向かって進まされているかわからないよりかは、ましじゃないの」

 

「一理ある。まぁそれもわくわくするからいいのになぁ。

 というか、一番気になるのはこの《三神獣》っていうのだな。多分エリアボスの事を指示していると思うんだけど」

 

 

 そこで様々な神話や小説などに詳しいシノンが、考え事をする時の俺のように顎に手を添える。

 

 

「《三神獣》……このALO自体北欧神話が元になっているから……多分世界樹に棲む獣達がモデルでしょうね」

 

「あ、それなら知ってる。確かフレースヴェルグ、ラタトスク、ニーズヘッグの三匹だよね」

 

 

 ストレアの言葉を聞いて、俺はハッとする。北欧神話にはこのゲーム同様世界樹が登場し、そこの頂上には鷲の姿に似た巨鳥フレースヴェルグ、幹には栗鼠(リス)ラタトスク、根には巨大な龍であるニーズヘッグが存在している。

 

 これらは様々なゲームでも登場しているから、ゲーマーならば誰でも知っているようなものだ。だが、まさかこれらのシリーズがこのゲームでも出てくるとは思ってもみなかった。

 

 

「フレースヴェルグ、ラタトスク、ニーズヘッグ……《三神獣》っていうんだから、それで間違いなさそうだな。そしてこのうちのどれかが、このヴォークリンデのエリアボスって事なんだろう」

 

「多分そうじゃないかしら。あ、それともう一つ、アイテムが手に入ったのよね」

 

「それも書物系なんだよな」

 

 

 今度はシノンではなく、俺に闇の神の書物を渡してきたアスナが答えてきた。いつの間にか、その手には先程のものではない書物が持たれている。

 

 

「それがこれだよ。この島の攻略方法が書いてあったの」

 

「最初から攻略書物があるっていうのか。随分と優しく作られたところだな」

 

 

 そう言いながら、アスナから再び書物を受け取ると、書物は同じように自動的に開いてページをめくり、ある部分で止まった。先程と同じように、俺はそのページを諳んじる。

 

 

『草原の空を封印する者、浮島に存在す。見つけ出し、封印せし者を打ち滅ぼした時、草原の空は取り戻されるであろう』

 

 

 内容は先程よりも簡単に書かれており、何より短いものだった。だけど、草原の空を取り戻す方法だけはしっかりとわかるように書いてある。だが、先程から手に入った書物を読んでいると、初心者用というか、行き詰った人用のアイテムのように感じられる。

 

 

「なるほど、浮島のどれかにこの高度制限を解除を司る奴がいるってわけだな。というかこのアイテム、多分何をしたらいいのかわからない人が見つけるべきアイテムだろ」

 

「えぇっ、そんなものってあるの」

 

 

 てっきり重要アイテムを見つけた気になっていたのであろう、人生で二回目のRPG攻略に挑んでいるアスナ。昔のRPGにはあまり見られなかったものの、最近になって初心者用というか、行き詰ってしまった人のためにこういう親切なヒントアイテムが結構身近なところに設置されるようになっている。勿論、絶対に手に入れなければならないというわけでもなく、RPG慣れしている人はこういうものを無視して先に進む事が出来るようにも出来ている。

 

 アスナ達が手に入れてきたラストボスの事からこの島の事まで結構細かく書いてあるから、恐らくその類、即ち手に入れようが手に入れまいがそんなに結果は変わらないアイテムだ。

 

 

「そ。手に入れても入れなくても、攻略が進むアイテムだ。だけど、これのおかげでボスの存在……フレースヴェルグ、ラタトスク、ニーズヘッグ、闇の神が倒すべき敵だって事がわかったな」

 

「「「フレースヴェルグ、ラタトスク、ニーズヘッグ……」」」

 

 

 俺が述べた名前がそこら辺から聞こえてきて、俺は思わず驚いて振り向いた。いつの間にか俺の周囲に《ビーストテイマー》に憧れてモンスターとの戦闘を繰り返していた者達が集まって来ていて、真剣な表情で俺の持っている書物を見つめている。

 

 

「ど、どうしたんだよ皆」

 

「フレースヴェルグ、ラタトスク、ニーズヘッグ……ねぇキリト、このうちのラタトスクって、栗鼠のモンスターよね?」

 

 

 リズベットの問いかけを受けて、俺は咄嗟に頭の中を回す。ラタトスクは名前自体ありふれたものであるものの、北欧神話での姿は中々知られていない。それで北欧神話でのラタトスクはというと、世界樹の幹に住まう栗鼠であり、フレースヴェルグとニーズヘッグを喧嘩させているものであるらしい。

 

 

「あぁ、北欧神話でのラタトスクは栗鼠だから、このゲームでも栗鼠かもしれないな。だけど三神獣なんて言われるくらいだから栗鼠――」

 

「栗鼠……可愛い系モンスター!」

 

 

 何かに気付いたような顔になって、すぐさま笑顔になるリーファ。その様子と先程のアリシャへの報告を照らし合わせ、俺はリーファとリズベットが何を思い付いたのかわかったような気がした。

 

 それを口に出すよりも前に、何か悪い予感を感じているかのような顔をしているシリカが口を開いた。

 

 

「も、もしかしてリズさんにリーファさん、ラタトスクをテイムしようって考えてるんじゃ……?」

 

「ったり前じゃん。栗鼠のモンスターなんて言ったら、可愛い系に決まってるじゃないの。これをテイムしようって考えない方がおかしいって」

 

「い、いやねリズちゃん。三神獣って言われるくらいだから、多分テイムできないモンスターだと思うのヨ。それにネ、三神獣だから多分可愛い系じゃないかもしれないし……」

 

「そんなの見てみないとわからないじゃないですか! あぁー! なんだかラタトスクに会うのが楽しみになってきた!」

 

「り、リーファさん……」

 

 

 目をキラキラと輝かせるリーファとリズベットと、相対する困り顔のシリカとアリシャ。多分だが、アリシャは名前だけ聞いて可愛い系だと思い込み、意気込んで実際に会ってみたら全然可愛い系じゃなかったモンスターとかを知ってて、今回もそれではないかと思っているのだろう。実際俺も、エリアボスとして用意されているラタトスクが可愛い系ではないと思っている。

 

 

「フレースヴェルグ……それって多分、リラン級に強いよね! よし決めた! ボクはフレースヴェルグをテイムしてみせる!」

 

「フレースヴェルグかぁ……それくらいになれば、リランと張り合えそうだ。ぼくも狙ってみようかな」

 

「フレースヴェルグって言ったら翼があるよね。そんなのの背中に乗ってお宝探しできたら、楽しそう!」

 

 

 続けて巨鳥フレースヴェルグをテイムしたいと言い出したユウキとカイムのほぼカップルとフィリア。確かに三神獣の中の一匹と言われているから、リラン並みに強いとは思うけれど、テイム確率がどれほど低いものか見当が付かない。いやそもそも、テイムできるかすら怪しい。

 

 

「ニーズヘッグ……三神獣って事は、リラン級ドラゴンって事だよな!?」

 

「ニーズヘッグか……最初から強そうじゃねえか」

 

「ドラゴン型モンスターのニーズヘッグ……きっと強くてかっこいいんだろうなぁ!」

 

 

 そしてニーズヘッグに目を付けたと思われるクライン、エギル、ディアベルの男共三人衆。なんというか、三人の目には童心に帰っているかのような輝きが映り込んでいて、シュールな光景だ。そしてニーズヘッグもそんな簡単にテイムできそうなそれだとは思えない。

 

 

「えっと……みんな、やる気か?」

 

 

 試しに声掛けすると、この場に集まっている、数名を除いた全員が一斉に頷いて見せた。どうやら皆揃いに揃って、出来るかどうかも分からないというのに、エリアボスをテイムする気満々のようだ。その様子を目の当たりにしたアリシャが苦笑いしながら、俺に声をかけてきた。

 

 

「キリト君のお仲間って、せっかちな人が多いのネ。《使い魔》は進化させれば強くなるのに」

 

「そういうわけじゃないんですけれど……多分見た事が無いものにわくわくしてるだけだと思います」

 

「だけどいいじゃないか。皆のモチベーションが上がっているうちに、攻略してしまおう」

 

 

 そう言ったのが、いつの間にか俺の近くにやって来ていたイリス。確かに今の皆のモチベーションはかなり上がっているから、これを利用すれば攻略もかなり進みそうではある。

 

 

「よし、わかった。それじゃあ皆、エリアボスを目指して、攻略再開だ!」

 

 

 血盟騎士団の団長をやっていた時のように大きく声を出すと、皆揃って「おおっ!」と答えてくれた。それだけで、皆がエリアボスをテイムするという目的に本気である事がわかった。……本当に出来るかなんてわからないっていうのになぁ。

 




原作(ロストソング)との相違点

・ラタトスク、フレースヴェルグ、ニーズヘッグの三匹がエリアボスに格上げ。
 原作でのエリアボスはファフニール、ヒルディスヴィーニ、ヘイズルーンの三匹である。

・モンスターをテイムする方法がある。どちらかと言えばドラクエ式。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。