しかもちょっと短いよ!
でも反省なんてする気がないよ!
もうちょいマジメに頑張るので、どうか石を投げないでいただきたい。
みなさんこんにちは、塔城小猫です。
サイラオーグ・バアルとのレーティングゲームも終わり、周りも少し落ち着いてきました。
私は悪魔のお仕事がお休みになると、時々だけどカズキ先輩から仙術を教わっている。
それのお陰でバアル戦でも少しだけ役に立つ事が出来た。
最後は勝ったと思い油断したせいでやられてしまったのがとても悔しく、また教えてくれたカズキ先輩に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
カズキ先輩曰く、私は先輩よりも仙術に向いているらしい。
私の種族である猫魈(ねこしょう)の特性なのだろうが、それでも先輩に羨ましがられるのは少し誇らしかった。
術を教わり一つ出来るようになる度に、先輩は頭を撫でてくれる。
その時の先輩の顔が好きで、兄に褒められる感覚というのは、こういうものなのかもしれない。
先輩が得意なのは何かを阻害したり相手を騙したりする術だそうで、先輩はそれをイタズラに使ってイッセー先輩やアザゼル先生をからかって時々遊んでいる。
ちなみに私が得意なのは身体強化や、相手の中に流れる気を乱す事。
阻害系の術は私も教わって使う事はできるが、先輩の発想には勝てそうにないです。
今日は悪魔のお仕事がお休みだけど、先輩に用事があるそうなので自主練する事にした。
今日練習するのは、先輩がスコルに使っていた変身する術。
他者に使う時は呪符がいるが、本人の場合は必要ない。
これなら一人でも安全に練習できると思う。
カズキ先輩が言うには、一番大切なのはイメージする力。
自分が変わりたいものを、強く明確にイメージする。
最初は身近な何かに化けるのがいいらしい。
取り敢えず今回は、白い猫に変身してみようと思う。
目を閉じてから頭の中で白い猫を強く強くイメージして……同時に練り上げた仙術の気を、一気に解き放つ!
軽い破裂音と共に、白い煙が私を中心に広がる。
閉じていた目をゆっくりと開くと、そこに広がっているのは普段よりも低い地面スレスレな視点。
4本の足から伝わってくる土の冷たさ。
「……ニャン」
どうやら、無事成功したようだ。
四足歩行で上手く動けるか不安でしたが、骨格も変化するから違和感もない。
色々と用途がありそうな術だし、今度先輩に質問してみよう。
それじゃあそろそろ元に……あれ?
えっと、確かこう……てい!
……どうしよう、元に戻らない。
念じれば戻るって聞いてたのに、いくらやっても元に戻る気配がない。
……うぅ、迷惑は掛けたくないけどカズキ先輩に助けてもらおう。
幸い先輩の家はここから近いし、家で用事があるって言ってたからきっといる筈。
先輩に言葉が通じなくても、モグさんが通訳してくれると思うし。
車などに注意しつつテクテクと移動し、なんとか先輩の家の前までやって来た。
猫の身体だと歩幅が短いので、思ったよりも時間が掛かってしまった。
さて、どうやって中に入ろうか?
よく考えたら、こんな身体じゃ呼び鈴なんて押せない。
えっと、確か裏に回ると小さい庭があった筈……あった。
というか、ここから先輩の姿が見える!
用事は終わったのか、座椅子に腰掛けテレビを見ている。
こっちに気付いてもらうために、なるべく傷付けない様に爪で優しく網戸を引っ掻く。
その音でこちらに気付いた先輩は立ち上がってこちらに近付き、網戸を開けて私を両手で抱き上げた。
先輩、顔がちょっと近いです。
「なんだ、野良猫とかここにも来るのか。何時もスコルとハティがいるから近寄らないのに」
先輩はそんな事を言いながら私を部屋に入れ、先程まで座っていた座椅子に再び腰を下ろした。
なるほど、あの二匹はお散歩にでも行っているのだろう。
先輩の胡座の上に乗せられたまま辺りを見渡しても、近くにモグラさんの姿はない。
どうしよう、このままじゃ先輩に状況が説明出来なひゃ!?
「首輪してないけどホントに野良か? いい毛並みしてるなぁ、触り心地最高。スコルたちもモフモフでいいけど、これもまた素晴らしい」
私がどうしようか悩んでいると、先輩は唐突に私の背中を撫で始めた。
いきなりでビックリしたけど、スコルたちで慣れているのか慣れた手つきでかなり気持ちいい。
何時もの状態なら背中をさすられてるだけの筈なのに、猫の状態だとこんなに気持ちいいものなのか。
「全く、こんなに可愛いのにひどい事をする奴がいたもんだ。ウチで飼っちゃおうかな?」
可愛いと言われてしまった。
いや、先輩は私やアーシアさんなんかにはよく可愛いと連呼しますが。
それでもやっぱり嬉しくなってしまう。
それにしても先輩。
今は確かに猫の姿だから仕方ありませんが、後輩の女の子に『飼っちゃおうかな』は色々とマズイと思います。
あぁ、それにしても気持ちいい。
こんな事をしている場合じゃないのに、思わず目を細めてしまう。
「お? なんだ、お前さんもノリノリか? よかろう、モグラさんたちで鍛えた俺の超絶テクニックをお見舞いしてやろうじゃないか!」
気持ちい……え?
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今日は小猫ちゃんから仙術を教えて欲しいと言われていたのだが、グリゴリへ提出する活動報告を作成しなくてはならないので断ってしまった。
活動報告と言っても俺の場合は神器であるモグラさんの様子と、俺の中にあるミョルニルに変化がないかの確認だけだ。
それでも無駄に項目が多いので、これで結構時間が掛かる。
初めて活動報告の提出を求められた時は『モグラさん観察日記』と副題をつけたせいでエライ目にあったので、真面目に記入しなくては。
モグラさんは構ってくれない俺に愛想を尽かしてゼノヴィアと一緒にハティたちの散歩に行ってしまうし、朱乃さんとロスヴァイセさんは夕飯の買い出しに行っているので家に一人でちょっと寂しい。
そんなこんなで活動報告を完成させてグリゴリの施設へ転送した後、退屈を紛らわせる為に意味もなくテレビを垂れ流していたその時。
庭の方からカリカリ、カリカリと何かを引っ掻く様な音が聞こえてきた。
「ニャ〜」
振り向くとそこにいたのは、一匹の真っ白な猫。
普段なら我が家の番犬たちに怯えて野良猫は寄り付かないと聞いていたんだが、そうでもないらしい。
恐れ知らずなのか根性があるのか、どちらにしろ退屈している俺にとっては嬉しいお客さんだ。
俺は腰掛けていた座椅子から立ち上がり、網戸の前にいた白猫を両手で抱き上げる。
「お〜軽い軽い、まだ小猫なのかな?」
「フミッ」
抱き上げたまま顔を近付けたら、嫌がって前脚を顔に押し付けられた。
肉球のプニプニ感とひんやりした感じが気持ちいい、アピール上手だなこんちくしょうめ。
俺は網戸を閉めた後、白猫を抱きかかえたまま座椅子に戻る。
いきなり部屋に連れ込まれたからか、辺りを落ち着きなくキョロキョロと見渡している。
「首輪してないけどホントに野良か? いい毛並みしてるなぁ、触り心地最高。スコルたちもモフモフでいいけど、これもまた素晴らしい」
リラックスさせる為に背中を撫でながら、猫の状態を観察する。
首輪はしてないから野良だと思うんだけど、毛並みもツヤツヤしてるし痩せこけてもいない。
やけに人懐っこいし、もしかしたら最近捨てられちゃったのか?
「全く、こんなに可愛いのにひどい事をする奴がいたもんだ。ウチで飼っちゃおうかな?」
でもウチにはモグラさんとハティ達がいるからなぁ。
俺一人で住んでる訳じゃないんだし、みんなに相談はしないとね。
そんな事を考えながら撫で続けていると、気持ちいいのか白猫の目が段々と細まってゆく。
「お? なんだ、お前さんもノリノリか? よかろう、モグラさんたちで鍛えた俺の超絶テクニックをお見舞いしてやろうじゃないか!」
そうかそうか、そんなに気持ちいいか。
それならもっと気持ちよくしてやろう!
それから俺は暫く時間を忘れて、ひたすらにこの白猫を撫で回した。
最初は少し驚いた様子だったが、撫で続けるもすぐに抵抗しなくなったので思う存分堪能した。
やっぱ猫はイイね!
スコル達と一緒に暮らし始めてから犬派に傾いて来てたけど、やっぱり猫も捨て難い。
それぞれの良さがあるんだから、わざわざ派閥を作るなんてアホのする事だな。
だから堂々と宣言しよう、俺はどっちも大好きだ!
「カズキく〜ん、ただいま戻りましたわよ〜」
「お、朱乃さんたちが帰ってきたか」
白猫を撫でていたら結構な時間が立っていたようで、朱乃さん達が帰ってきたようだ。
スコル達の声も遠くから聞こえてくるし、一緒に帰ってきたのか。
俺は膝に乗せていた猫を座椅子に下ろし、玄関まで荷物を受け取りに行く。
先頭に立っていたゼノヴィアは頭にモグラさんを乗せており、俺が近づくとモグラさんは俺の頭に跳び移った。
「ただいまカズキ。先に肉や牛乳を冷蔵庫に入れてくるから、残りは頼んでいいか?」
「了解、ちゃんと整理して入れろよ〜」
「無論だ、朱乃さんとロスヴァイセさんに鍛えられた整頓テクニックを舐めてもらっては困る」
ゼノヴィアはそう言うと、足早にキッチンに向かい歩いて行った。
二人にしごかれたおかげで、今のゼノヴィアは卵を冷凍庫に入れる事はなくなった。
次は何でもかんでも空いてる所に詰め込もうとせず、野菜室の存在を理解出来るように頑張ろうか。
「カズキくん、提出する資料は出来たんですか?」
「もう終わったよ、今は猫と遊んでたんだ」
「猫? 飼うんですの?」
「いんや、暇してたら庭に遊びに来てさ……」
荷物を受け取ってから朱乃さんたちとそんな話をしていると、先に行った筈のゼノヴィアが袋を手にしたままリビングの入り口で立ち尽くしていた。
何してんだあいつ、とうとう冷蔵庫にすら辿り着けなくなったとか言わないよな?
「どうしたゼノヴィア、中に入れないじゃないか」
「……おいカズキ、これはどういう事だ?」
ゼノヴィアは俺の方を見ず、ある一点を凝視しながら低い声を漏らす。
ゼノヴィアの視線の先には、白い小猫がいるだけのはず。
そう、そのはずだった。
「は? どういうって……oh」
俺がゼノヴィアの視線を追ってその先を見た瞬間、変な声が漏れた。
真っ白な小猫が寝ていたはずの座椅子には、顔を真っ赤にして息を荒げている小猫ちゃんの姿が。
あれ? ……あるぇ?
「お前……私たちがいない間、小猫に何をしていた?」
「カ、カズキくんが小さい子に手を出す変態さんに……」
「あらあらまぁまぁ、『猫と遊んでた』ってそう言う意味だったのね?」
三方向から突き刺さる様な視線を感じる。
経験則でわかる、これは何をどうしようと逃げられない。
だったら俺のやる事は一つ。
俺は手にした荷物をテーブルに置き、ゆっくりと三人の方へ振り返る。
「それでも俺は、やってない」
当然ボコボコにされた。
その音で意識を取り戻した小猫ちゃんが説明してくれたお陰で、なんとか家は無事だった。
小猫ちゃんにひたすら謝られたが、別に悪意があってやった訳じゃないんだから気にしないで欲しい。
正式名は忘れたけどあの変身する術って解除が難しいんだよね、俺も最初の時は初代さんが元に戻してくれたっけ。
それから数日後。
今度は黒猫が我が家にやってきて似た様な騒動を起こす事を、この時の俺はまだ知らない。
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うぅ、先輩やみんなに恥ずかしい所を見られてしまった。
いくら猫の姿だったとはいえ、あんなにされたらどうしようもない。
それでもまさか気絶してしまうとは……先輩は恐ろしい。
だって、その……言いたくないくらい凄かったんだから、仕方ないという事にしてもらいたい。
これからは一人で練習するのはやめよう。
近くに先輩がいないと危険だ、色々と。
少なくともあの術は暫く封印しようと思う。
撫でられるなら、この姿で褒められた時が一番だ。
それから数日後、私が居候しているイッセー先輩の家に一枚の手紙が届いた。
どうも黒歌姉さまからの様で、危険かも知れないのでイッセー先輩やリアス部長も呼んで一緒に中身を読んで貰う事にした。
しかしそこに書かれていたのは『撫で撫でには勝てなかったよ……』という謎の言葉。
リアス部長たちは首を傾げていたが、私はなんとなく悟ってしまった。
あぁ、姉さまもアレの餌食になったのかと。
……癖にならなければいいけれど。
黒歌「ここが白音を手篭めにした男のハウスね!」
カズキ「お、黒猫だ。……今度は小猫ちゃんじゃないよね?」
黒歌「見てなさい! 私は撫で撫でなんかに負けたりしない!」
きっとこんな感じだったと思われます。
iPhoneをアップデートしたんですが、そのせいか上手くマイページに入れなくなりました。
毎回パスワード入れるのテラメンドイ。