モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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チャイナ、というか民族衣装が好きです。
カワイイの多いですよね?


60話

サイラオーグさんとのレーティングゲームが終わってから数日たった。

俺は途中からしかみれなかったけど、みんな全力で頑張っていたと思う。

最後はイッセーとサイラオーグさんがタイマン勝負でケリをつけ、見事グレモリー眷属が勝利を収めた。

 

俺が会場に着く前に、ギャスパーくんは《僧侶》、小猫ちゃんは《戦車》に敗北してしまったらしい。

それでもそれぞれが懸命に奮戦した、素晴らしい試合内容だったとみんな褒め称えていた。

 

二人の試合には間に合わなかったが、朱乃さんの試合からは観戦することが出来た。

アザゼルさんにシバかれ、ロスヴァイセさんからお説教を受けながらだったけども。

 

朱乃さんの相手は同じ《女王》の女性。

『穴(ホール)』と呼ばれる異空間を操り、放った術やら魔法やらを丸ごと跳ね返してくるという相性最悪な相手だった。

終始苦戦するも最後は玉砕覚悟で放った広範囲の雷光が炸裂し、何とか相打ちまで持っていった。

試合後にお見舞いに行ったら、俺の顔を見た途端泣き付いてきたのには驚いた。

よっぽど悔しかったんだろう、泣いてしまった事は秘密にしてあげようと思う。

 

ゼノヴィア、スコル、木場はサイラオーグさんと戦い敗北。

しかし木場が最後にサイラオーグさんの片腕を切り落とす事で、相手方の『フェニックスの涙』を消費させる事は出来た。

後続に、親友の為に貢献できた事を誇らしげに消えていったのは素直にかっこよく見えた。

 

にしてもサイラオーグさん、あの人強すぎるでしょう。

スコルを一撃で沈めるわ、ゼノヴィアと木場の攻撃片手で防ぐわ……あんなんどうしろっての。

まぁイッセーはそのトンデモない人に殴り勝った訳だけど。

 

技術もなにもない純粋な力と力、拳と拳の殴り合い。

アレは熱かった。

ガラでもなく夢中で魅入ってしまうくらいに。

 

イッセーの新しい力、『真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)』。

暴走して宿主を破滅に向かわせる赤龍帝の力を、イッセーの想いの力で導いた『覇龍』とは別の回答の一つ。

相変わらずイッセーはやる事が主人公染みててカッコいい、普段との落差がヒドいのに目を瞑れば。

 

そしてあの厨二全開の呪文みたいなのがヤバいね、色んな意味で。

イッセーが改変した奴の方が大分マシになってるけど、それでも破壊力がハンパない。

 

オマケに試合中に行われたリアス先輩への大胆告白。

若いよなぁ、俺と同い年だけど。

まぁそんなこんなで、辛くもサイラオーグさんに勝利したグレモリー眷属の面々。

今は何してるかと言うと–––

 

 

 

「「いらっしゃいませ、こちらのお席にどうぞ ♪ 」」

 

「三番卓に新規で四名様! 炒飯を四つお願いしますわ!」

 

「カズキくん、四番卓に餃子二人前追加〜!」

 

「レイヴェルちゃんはこのまま待ってて、すぐ出来る! イリナは他の卓から食器下げて来て! 木場、悪いけど食材尽き掛けてるから誰かと買い出し行ってきてくれ!」

 

「了解! えっと……」

 

「祐斗先輩、私が一緒に。イッセー先輩、ギャーくんと一緒にお皿洗い頑張って下さい」

 

「そ、そんな!? 幾ら洗っても次から次へとやって来て終わらないのにいぃぃぃ!?」

 

「イ、イッセー先輩! 洗い物のおかわりがまた……うわぁぁぁんっ!!」

 

「ゼノヴィア、これ二番卓……摘み食いしてんなオラァ!!」

 

「むぐぐ!? の、喉に……!」

 

文化祭の出し物の一つとして、オカ研メンバーで中華飯店やってます。

美少女たちが接客してくれると評判を呼び、かなりの人がやって来ている。

リアス先輩とアーシアちゃんのお出迎えもなかなか様になっている。

 

初日には射的やお化け屋敷、昨日はリアス先輩や小猫ちゃんが占ってくれる占いの館と巫女服を着た朱乃さんが簡単なお祓いをしたり。

そして本日最終日には、リアス先輩からの要請により俺が調理を担当する中華飯店になった。

 

メニューは簡単な物を数品に絞って効率を上げ、別料金でウェイトレスと一緒に写真を撮れる様になっている。

自分が参加する最後の文化祭で売り上げ一位を目指す為とは言え、意外と悪どい商売をするなぁリアス先輩。

まぁモグラさんも張り切って俺の手伝いしてくれてるし、楽しんでるみたいだからいいけど。

 

モグラさんは調理の手伝いで、野菜の皮剥きをしてくれている。

俺にもどうやってるのかよく分からない爪捌きで、どんどん野菜の皮を剥いていってくれる。

それでも料理担当が俺と朱乃さんだけっておかしいだろ、この人数は流石にキツイぞ。

でも女の子たちを後ろに下げすぎると客足に響くし……ロスヴァイセさんか会長さんでも拉致って来るか?

 

ちなみに男子はいつもの制服だが、女子は全員チャイナ服を着用。

深いスリットから覗く魅惑的なフトモモの、なんと素晴らしく神々しい事か。

モロに俺の趣味だが、同調する男子の入りも素晴らしい事になって一石二鳥だ。

これのおかげで、厳しい激務にもなんとか耐えられる。

 

「うふふ、ちなみにカズキくんは誰の脚がお気に入りですの?」

 

「ゼノヴィアの健康的なフトモモも良いし、肉感的な朱乃さんのフトモモも捨て難い。しかし小猫ちゃんのしなやかな感じもまた素晴ら……なんでもないですゴメンナサイ」

 

「あらあら、なんで謝るの? なにか悪い事でもしたのかしら?」

 

気が付いたら横にチャイナ服の上からエプロンをした朱乃さんが、包丁を握って立っていた。

いかん、朱乃さんがいるのに疲労と煩悩が混ざってなんか口走ってしまった。

というか、その包丁の持ち方は本当に危ないからまな板に置いてください。

 

「そんなに怖がられるとちょっと悲しいわ」

 

朱乃さんは口を尖らせて少し拗ねる様な仕草をした後、モグラさんが剥いてくれた野菜を手早く切り始めた。

流石朱乃さん、包丁捌きも手慣れている。

しかしなんと言うか、チャイナ服にエプロンって不思議な組み合わせなのに何故か似合ってるな。

よくわからないが、新しいエロスの波動を感じる。

 

 

 

空が夕焼けに染まり、文化祭も終了に近づいて来た。

朱乃さんのサポートに加え、もうすぐ文化祭がもうすぐ終わる事もあり客足も段々と少なくなってきた。

これならきっと売り上げ一位も夢じゃないだろう。

初めての文化祭だったけど、初日には色々回れたしなかなか楽しかったな。

 

「ねぇカズキくん? 明日なんですけど、ちょっと付き合って欲しい所があるの」

 

朱乃さんが調理器具を片付けながら声を掛けてきた。

何処となくモジモジしている気がする、何だろう?

 

「へ? まぁ別にいいですけど、何処に行くんですか?」

 

「……グリゴリの施設へ。ちょっと用事があるものですから」

 

グリゴリの……あぁ、バラキエルさんになんか用事なのかな?

一人で行くのは気まずいって事か。

 

「その、出来たらでいいの。文化祭の次の日で疲れてるでしょうし……ごめんなさい、やっぱり–––」

 

「いいですよ、そんな遠慮なんかしなくて。俺も久しぶりにみんなに会いたいし、一緒に行きましょうか?」

 

やっぱ、一人で会うのはまだ難しいのかもな。

完全に仲直り出来た訳でもなく、何処となくギクシャクしてるってアザゼルさんも言ってたし。

俺が一緒に行って二人の間を取り持ってあげよう。

うん、俺ってばいい奴だな!

 

「カズキくん……ありがとう♪ 」

 

「うわっぷ!」

 

朱乃さんは俺に微笑むと、自分の胸に俺を抱き込んだ。

だが俺は紳士を自称する男、こんな最高のおっぱいに誘惑されておっぱいするなんて事は決しておっぱいやらかくてきもちーなー。

 

「むっ!? 朱乃さんがいかがわしい事をしてカズキを誘惑している! ズルいぞ、私も混ぜろ!」

 

……ハッ!?

あ、危なかった……もう少しでおっぱいに呑み込まれて帰って来られなくなる所だった。

ゼノヴィアが乱入してきてくれて助かった、他のみんなも騒ぎを聞きつけて次々やってくる。

 

おバカだけど役に立つよな、ありがとうゼノヴィア!

だから服を脱ごうとしながら近づいてくるんじゃねぇ!

 

「あらあら、うふふ♪ 残念ですけど、今日はここまでみたいですわ♪ 」

 

朱乃さんは舌をペロリと出し、イタズラっぽく笑うとみんなの方に歩いていった。

……なんか最近、簡単に手玉に取られる様になった気がする。

そんな事を考えていると、小猫ちゃんが近づいて来て俺の袖を掴みながら一言。

 

「……さいてーです」

 

やめて小猫ちゃん、君の一言とジト目が一番心に刺さるの。

 

文化祭終了後、イッセーはリアス先輩に改めて告白し正式に付き合う事になった。

随分と遠回りだったけど、収まるところに収まったって奴かね。

アーシアちゃんも二人を祝福してたし、これでよかったんだと思う。

おめでとうイッセー、良かったね。

でも爆発しろ。

 

 

 

 

 

「悪いなカズキ、面倒に付き合って貰って」

 

「あ〜いいよ別に、試合があったの知らずに応援出来なかったお詫びって事で」

 

数字の書かれた紙と睨めっこしつつ、電卓で小気味良い音を立てながら別の紙に記入していく。

文化祭の出し物が終わった後、俺は匙に頼まれて生徒会室で文化祭の決算を手伝っています。

実はリアス先輩たちがゲームをした日、会長さんたちもゲームがあったそうなのだ。

その詫びも込めて、忙しいであろう生徒会へ手伝いとしてやって来たのだ。

 

「それに今部室に行ったら、間違いなくイッセーとリアス先輩がイチャついてるだろうからな。あの空間は俺には耐えられない」

 

「あら、本音はそっちですか?」

 

「いやいや、応援出来なかった事はホントに悪いと思ってるんですよ?」

 

そんな会話をしつつ、会長さんが笑いながら新しい紙の束を俺の近くに置いてくる。

まぁ確かにイッセーたちがウザいのも理由だけどね、殺意の波動に目覚めそうになる。

会長さんはそのまま他のメンバーの様子を見る為と言って、生徒会室から出て行ってしまった。

 

というか会長さん、ちょっと機嫌悪くなかった?

気のせいだといいんだけど……主に匙にシワ寄せがいく気がするし。

しかしまた多いな、これ本当に今日中に終わらせるの?

どんだけ生徒会に仕事放ってんだよ、ウチの学校は。

 

ちなみに会長さんたちが戦ったのはアガレスって女の人で、前に会ったらしいけどあんまり覚えてない。

『スクランブル・フラッグ』とかいう旗取り合戦の様なルールで戦って、なかなかの名勝負だったとか。

匙も修行の甲斐あって、龍王状態を維持して最後まで戦い抜き大活躍だったと会長さんたちが口々に褒めていた。

 

「にしてもゲームが終わってすぐに文化祭、しかも後始末までとかハード過ぎるだろ。幾ら体力ある悪魔だからって、そのうちみんな倒れるぞ」

 

「まぁこういう地味なのが生徒会の仕事だしな、仕方ねぇさ」

 

匙は力仕事を中心に作業を続け、苦笑しながら相槌を打つ。

ふむ、それなら匙にご褒美をやらねば。

俺は懐から一枚の写真を取り出し、匙に手渡す。

 

「よし匙、そんな頑張ってるお前に褒美をやろう。手を出せ」

 

「あん? 褒美って……こ、これは……!?」

 

俺の手渡した物を見た匙は、穴が開くんじゃないかってくらい凝視する。

そこに写っていたのは、会長さんが恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら魔法少女の格好をしている姿。

肩出しミニスカで布面積が少ない上に、魔法の杖まで装備している完璧仕様だ。

以前俺の動画を見られた腹いせに保管していた代物で、いつか匙に高値で売りつけようと思っていたけどしょうがない。

 

「どうだ? セラフォルーさんの我儘で、リアス先輩と一緒にコスプレさせられた時の写真だ。俺も惜しいが、最近頑張ってるお前になら譲ってやらん事もない」

 

「ありがとうございますカズキ様ッ! 本当に、本当にありがとうございますぅぅぅっ!!」

 

匙は写真を両手で持ち、床に額を擦り付けながら拝み倒してきた。

恥や外聞なんてまるで気にしない、なかなかの土下座だ。

なんかお前、最近進んでヨゴレ役やる様になったよね。

 

「誰の影響なんだか……困ったもんだ」

 

「私からしたら、貴方の方がよっぽど困ったさんですけどね?」

 

振り返るとそこには、眼鏡を怪しく光らせた美少女とその仲間たち。

それからの事はよく憶えていない。

何かをなくした気がするのだが、それも思い出せない。

だがその日、俺は何故だか心優しい美少女たちに物凄くスイーツを献上したい気分になった事だけは記憶している。

 

 

 

 

今日はやたらと疲れた。

フラフラと揺れる身体をなんとか気力で支えながら、ようやく自宅に辿り着いた。

明かりのついた玄関の取手に手を掛けようとすると、賑やかな声が聞こえてきた。

 

何だろう、玄関が騒がしい。

珍しくロスヴァイセさんまで一緒になって騒いでいるみたいだ。

俺は首を傾げながらも、ゆっくりと玄関の扉を開いた。

するとそこには–––

 

「おぉ、おかえりカズキ! 遅かったな!」

 

「あらあら、随分とお疲れみたいですわね」

 

「あの、その……お、おかえり……なさ、い……」

 

チャイナ服に身を包んだゼノヴィア、朱乃さん。

そして丈の短さが気になるのか精一杯チャイナ服の裾を下に引っ張り、涙目になりながらも出迎えてくれたロスヴァイセさんがいた。

 

「その、カズキくんを労うならこの格好がいいとお二人がムリヤリ……あの、変ですよね? ごめんなさい、いますぐ着替えて–––」

 

「もう、思い残す事は何もない……」

 

「カ、カズキくん!? どうしましょう、カズキくんがやたらといい笑顔のまま倒れちゃいました!?」

 

周りの声が遠くなっていく中、俺はハッキリと確信した。

桃源郷は、俺たちの理想郷は……ここに、確かにあったんだ……!




私の友人は時々壊れる。
久しぶりに連絡が来たと思ったら、用件を話した後に
「いいか、チャイナ服は素晴らしい物なんだよ!」
と言いながら延々とチャイナ服の魅力について語ってきました。

文字に起こすととんでもない分量になりますが、携帯を放り出しつつ片手間でそれを聞いた私の感想は
「マジウゼェ」
の五文字だったので、きっと重要な話ではなかったのでしょう。

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