私は生きています。大変お待たせしてしまいました...
進級してから時間が取れず、ちまちま書き溜めてました。めっちゃ時間かかった。
皆さまは史上最悪(自分的)のお米イベントどうだったでしょうか。
私は全時間を費やしてカタパルトをもぎ取って来ました。直後に設計図二枚要求ってね。うん。
熊野が96レベになっても改ニになれなかったので今回こそ、と改装。また耐えきれず鈴谷とケッコンカッコカリしました。嫁は大和なのに。大和なのに...修羅場に胃を痛めています(阿呆
黒潮にやられました...設計図また要求しやがって...売りやがってくださいお願いします。
ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーー
なんやかんやあって、鹿島の船体は完成した。
一応改修という体を取っているため進水式などの儀式は行わない。
今回の艤装改修のおかげで全長は長門型に迫り、それでいて武装を最小限にして居住区をめいいっぱい大きく取った。
その結果200人以上の個室と遊戯室、食堂、大浴場に10の会議室を備える豪華客船となった。いや、武装しているから仮装巡洋艦だろうか?
まぁそこはいい。
推進システムには4軸の5枚刄。それを動かすために船舶用粒子エンジンを四十基搭載した。
まぁそれなりのものが出来たと思っている。非戦闘艦なんて間宮以来のため、妖精さんもはっちゃけたようだ。
全周囲対56糎装甲に塔楼には対20.3糎装甲を追加。
また砲に関してだがアメストリア式のブローバック式だと凄まじい勢いで弾薬を貪るので、オートメラーラのような自動装填装置を新規開発して搭載した。一体弾薬で、ドラム式の弾倉に収まっている。
一門あたり即応弾50発に追加弾倉450発。これが二門の砲塔が四つ。合計4000発の携行弾薬がある。
対空砲?あれは勘弁してくれ。量子変換器に直付けだよ。
船体が妖精さんの主導で移動する。
警戒音が鳴り、遅れてライトが点滅する。
船体を固定したトレーが可動し、私達は鹿島に格納式ラッタルを使って船体に登る。
地下工廠の中央にある伸縮式のEVにトレーが接続されると、地上のハッチが開いてゆき光が差し込む。
次世代護衛艦のような被弾傾避やステルス面の考慮されたスリムな形状の艦橋にこれまた被弾を前提にした鋭角で構成された20.3糎連装砲が二つ。
光が差し込むこむことによって照らされた鹿島の塗装色は横須賀海軍工廠色。
これは横須賀海軍工廠で艤装が施されたからだろう。
伸縮式EVが登りきり、地上に接続された。
数百本のバーが差し込まれ、完全に固定される。
今度は地上設備の警報が鳴り響き、水門が解放される。効率的に注水されるように構成された注水口と正面水門から莫大な海水が流れ込み、既に水深は50cmに達した。
船体を固定するアームが覆われ、水深は5mに達する。
注排水機能は抜群に優秀な為直ぐに進水可能な水深に達した。
鹿島の全長や排水量から考えて必要な水深は15m。アメストリア艦艇の特徴たる平べったい船底のお陰で喫水線は浅く済むのだ。
「では鹿島、固定具を解除する。意識を操舵の方へ向けてくれ」
「分かりました」
水中で船底を固定していたアームが解除され、浮力のみで船底が浮き始める。
強靭な鋼鉄によって構成された船底は軋むこともなく波を受けている。
「では始めに、機関を始動する」
「はい!」
艦橋に私達は移動した。
これからはアメストリアスペックのチュートリアルだ。
まずアメストリア艦艇の第一手順は機関を始動すること。
この機関はご存知の通り夢の悠久機関であり、色々と特殊である。
今回使用されている船舶用粒子エンジンは際限なく指方向性の粒子を生み出し続ける物で、それをタービンに注ぎ込むことで軸を回転させスクリューを回すのだが、今回鹿島のように日本に対応させる為に船舶用粒子エンジンとタービンの間に大出力の発電機と分圧機を設置して使用するエネルギーを電力に置き換えた。
本来なら粒子を使用しているのだが互換性が無くて補給面で不安が残るので、人類で幅広く使用されている電力を主に据えた。
全て電動にしたため割と便利になっていると思われる。
でもまぁ機関は船舶用粒子エンジンなので手順は変わらない。
「まず、艦娘は基本的に指示するのみだ。機関や舵取り、砲熕の照準に至るまで妖精さんが行う。無論、艦娘が直接操作も出来る」
「はい。どうやって機関を始動させるのでしょうか?」
「そうだな、イメージは個々それぞれだ。レバーを倒すイメージやエンジンをかける感覚。色々とあるな。カネーシャを回す感覚やらクランクを回す例もある」
「やってみます...」
一、二分経っただろうか。
タービンの騒々しい駆動音と共に電力が供給され艦橋の照明や機器が一斉に点灯した。
予めセットされているプログラムが立ち上がり、初期設定が全自動で完了してゆく。
「うむ、機関が始動したみたいだな」
「はい」
「では他の点だが、基本的に従来と変更はない。以前の感覚がそのまま使えるだろう。しかし幾つか新規の機能が搭載されている。まずは電探や照準器等の電子機器はかなりの高性能を誇っている。まず外れないし、狙いを合わせるだけで当たる。」
「そんな性能が...?」
「うむ。思い切り耳と目が良くなる感覚があるはずだ。あとは、砲だな。装填装置が現代基準でな。30発は毎分で放つことが出来るだろう」
「30発!?それでは装弾数が...」
「うむ。その為妖精さんの技術を使用してそれなりの携行弾薬数を実現している。そこそこの戦闘はできるだろう。砲弾は徹甲弾、榴弾弾、三式弾等様々な砲弾を用意した。継戦能力はかなり高いものと推測できる」
母艦だし、これ位はしておかないと安心出来ない。
さてさて、鹿島は順調に動き出す事が出来た。
感覚は以前と大体同じな為、操舵は大丈夫。
速力に関しては振り幅が大きいため、まずは1ノットから順番に上げて行き、左舷、右舷に回るコツを掴んでもらった。
鹿島自身才能なのか元が優秀なのかスラスラ覚えおぼえてくれ、現在は急加速や高速航行こそ出来ないものの、かなり動けている。
そこで、私は早速訓練を開始する事にした。
まぁまずはあちらでもする事になるであろう艦隊行動から。
その為には他にも艦娘が必要であるので、暇...という訳ではないだろうが、当直ではない艦娘を幾人か呼んだ。
鹿島の船体全長的に軽巡洋艦か駆逐艦しか呼べないので今回は初月、親潮、翔鶴、瑞鶴を呼んだ。
え?軽巡洋艦どころか空母が来てるかじゃないかって?対空訓練に決まってるジャマイカ。
艦隊行動はとらない。てか取れない。
「では、初月を旗艦に単縦陣から」
「分かりました。舵そのまま、15ノットにて追従します」
『初月、承知した。15ノットにて前進する。加速はしてもいいか』
『親潮、了解です。取舵45度、17ノットにて単縦陣に加わります』
鹿島の前方に秋月型の独特なフォルムが滑り込む。全長252mに反比例して艦橋は必要最低限に留め、対空電探用の高いマストが聳え立つ。
防空駆逐艦を謳いながら何故か配備された60口径41糎三連装砲に、二基の空軍で使用されている20.3糎のガトリング砲。
凶悪な火力を誇る自称駆逐艦。
後部から見れば完全に戦艦である。
更に追加で割り込みだ。
救助以来よく初月と一緒に居る所を目撃する陽炎姉妹の四番艦。ウチの四番艦とはえらい違いで、よく出来た艦娘だ。
艦隊型駆逐艦としての機能を考慮した艤装配置や船体のデザイン。
アメストリアでは史実で吹雪型に使われた「特型」の称号が与えられ、特化型ではないマルチロールとしての役割を期待された設計。
船体を一杯に埋め尽くす五基の15.5cm三連装砲。全長が198.5mしか無い関係で128mm三砲身対空機関連装砲は10基。88mm四砲身対空機関連装砲に至っては20基の少数配備。
まぁ防空駆逐艦でもないのでこんなもんである。
そのかわりみミサイルは船底や喫水線下や甲板に敷き詰められ、152セルを確保。一マスあたりが小さいのが唯一の救いだった。
どちらも全長からしてロシア製駆逐艦なのだが、スペックは残念ながらアメストリアスペックである。当然のように速度は3桁いくし、装甲も対20.3糎装甲が張られている。初月に至っては対41糎装甲だ。
そんなキチ...やばい二隻が先導を務め、第一隔壁を通過する。
ドーナツ状の海域は舵や速力の練習にはもってこいの場所なのだ。
「全艦、第二戦速に増速。次いでだ、妖精さん演習用標的の展開を頼む」
第二隔壁にいつのまにか増設された演習用標的。
1000ミリの特殊装甲で作られた十字と白と赤で年輪が描かれた的。
滑車で吊るされた幾つかの的が現れた。
「全艦、艦隊行動演習に砲撃訓練を兼ねる」
「承知しました。砲撃用意!」
『了解だ。主砲、高角砲を起動する。第一隔壁に指向始め!』
『主砲、目標を捕捉しました。撃ち方よーい!』
鹿島の主砲が旋回してゆく。
性能は格段に良く、精度も良い。しかし慣れが無ければ使いこなすことはできない。
「撃ち方、始め!」
「発射始めます!てぇー!」
『撃ち方、はじめるぞ』
『射撃、開始します!』
閃光と轟音。
大口径の砲弾が次々と射出され、一瞬で命中する。
爆炎をあげて命中したことを教えてくれる。演習弾などナウル鎮守府では使わない。
演習なら兎も角、射撃演習では演習弾だと分かりにくいのでもっと直接な榴弾を使用している。
15.5cm、20.3cm、41cm。主砲弾はかなりの炸薬を積み込んでいる為、その分破壊力は高い。しかしこれだけを撃ってもなお、標的の鋼鉄には傷一つない。
そりゃそうだ。妖精さん印の特殊鋼がそれで傷がついても困る。私の性能に直撃するではないか。
「撃ち方やめ。次は対空射撃訓練だ。各艦対空戦闘用意!」
「了解しました!対空戦闘、用意しますね」
『了解。僕の本領だ。本気で行かせてもらうよ』
『ふふ、張り切るのね初月さん。ならば私もいきましょう』
「翔鶴、瑞鶴。対空訓練開始だ。やってくれ」
『承知しました。艦載機、攻撃開始します!』
『わかったわ!攻撃...開始っー!』
瞬間、轟音と砲声が同時に響いた。
各艦に満載されている対空砲が一斉に反応。各個に射撃を開始。雨のように遡る88粍と128粍砲弾。三式弾の様で上空には火花と花火が花開く。
しかしそれだけで五航戦は落ちない。
上空から襲いかかる白の二本線を描いたF-222は変態機動で避け、時に45粍機関砲で迎撃しつつ肉薄してくる。大気圏内とありそこまでの速度は出せないが、それでも余りある速力。
砲弾を追い越せる速度を出しながら接近し、搭載したST-8を発射して花畑の中を優雅に飛び去って行く。
当然複数発射されたST-8だが、濃密で視界が遮られるほどの熾烈な対空砲火には勝てなかったのか次々と迎撃され、炎上する。
しかしそれを抜けた幸運な一発のST-8。海面スレスレまで降下した後そのまま命中しようと試みるが、標的は初月である。
対空艦がそれを許すはずも無く、サイドキックを行って回避運動をしながら88mm四砲身対空機関連装砲で薙ぎはらう。一瞬で埋め尽くされる弾幕。
一発でも現代戦車が致命傷になる高威力の砲弾が次々と命中し、忽ちST-8は爆散した。
親潮にAF-56の編隊が襲いかかる。
AF-56は88粍を四門搭載するという狂気の沙汰を実戦配備した紅茶臭溢れる兵器なのだが、なまじ推進力が強いせいで反動を苦にしない思いの外優秀な攻撃機なのだ。
親潮も電探が反応し、対空砲が反応する。
舵が大きく右に切られ、射撃開始。何故か主砲も旋回を始めている。
『撃ちます!』
......何をするかと思えば、そう来るか。
以前私が妖精さんに指示したその場で滞空して結界を展開する砲弾、あったじゃろ?
アレ、15.5cmもある訳ですよ。アレを活用して上手い事身を隠しつつAF-56の進路を阻害し、誘導する。そしてドン。
128粍だろう。AF-56の一機に直撃し、炎上。そのまま墜落しながらも離脱した。
それを見た僚機は一斉にブレイクすると遠距離から88粍の大量投射。多数が命中するも88粍だ。効かずにその場で弾かれ、爆発する。
当然、鹿島も標的である。
最大仰角の20.3cm連装砲が繰り返し砲撃を続け、対空砲が接近する脅威の悉くを排除する。
また不規則的な回避運動を展開し、その足は最大戦速に近い。
海面には艦載機の爆弾やミサイル、砲弾によって荒波と水柱が上がり、艦首がそれを切り裂いて行く。
下部分を失った水柱は勢いよく鹿島の船体に降り注ぎ、ちょっとした雨のようだ。
艦橋からの光景は実にスリリングだ。至る所で巨大な水柱が上がり、上空には莫大な数の対空砲弾が遡る。悠々と滑る艦載機が偶にうつりこみ、その度に船体がゆれ、爆発が起きる。
しかし対56糎装甲。ビクともしない。
取り舵を取りながら主砲が一斉に旋回した。機械的に寸分違わぬその動きにはロマンを感じざるおえない。
『アメストリアさん、B-97の投入、許可してくれる?』
「ふむ、いいだろう」
刹那、20.3cm連装砲が次々に砲弾を吐き出してゆき、目標へ命中して行く。
近接信管の榴弾。雨霰と放たれた弾幕に側面から突入したST-8群は次々に吹き飛ばされ、爆散する。現代砲と同じく、砲身の下から排莢する仕組みにしたため甲板は忽ち銀色の薬莢に埋め尽くされた。
迎撃が終わった途端、けたたましい警告音が鳴り響く。
対空電探が多数の目標を探知。警戒を促し、対空砲が反応し我先にと迎撃を開始している。
迎撃はなされている。
事実爆散する爆弾を多数確認できるが、一向に電探の反応は減らない。
何故か?それは相手がB-97だからである。規格外の搭載量を誇り、一機だけで日本列島程なら焦土にできる搭載量にモノを言わせ大量の爆弾を投下してくる。一発一発が10tクラス。更にデイジーカッターのような地中貫通可能な徹甲弾タイプも降り注ぐ。
鹿島は慌てて右に舵を切るも爆弾の落下速度の方が早かった。
次々と着弾し、噴火を繰り返す。視界一面が光と炎に覆われ、遅れてシャッターが閉まる。
外部からの光が遮断され、切り替わるように電灯がつく。
船体の状況を示すホログラムには着弾地点がズラリと一覧で並び、ありとあらゆるところで炎上エフェクトが発生している。
「丁度いい。鹿島、潜水機能を試してみろ」
「潜水も出来るのですか!?」
「うむ。といっても半潜航状態だがな。潜水艦が浮上した状態のような形態になれる」
水面を利用した装甲策の一つだ。
焼夷弾やら薬莢を洗い落とす際に使われる。
「わかりました...半潜航、用意してください!」
''あいあい!''
''あいまむ!''
''ずぶずぶー!''
バルジ兼中空装甲が解放され、喫水線が沈み込んで行く。
浸水しないように砲は仰角を上げ、対空砲も同じく直角に上がる。
そしてどんどん潜航してゆき、海水が甲板に乗り上げ、薬莢が流されたのかガランガランと金属音が鳴り響く。
炎上エフェクトがみるみるうちに消えて行き、代わりに浸水エフェクトが甲板を覆い尽くす。
「よし、浮上だ」
「はい。浮上してください」
''お水だばー!''
ポンプにより水が排出されてゆき、どんどん喫水線が回復してゆく。
同時に砲が回復し迎撃を再開する。大型ミサイルまでもが飛来し、88mm四砲身対空機関連装砲によって撃ち落とされて行く。
「よし、全艦演習を終了する。直ちに兵装を収め、艦隊行動に移行せよ。」
『初月、承知した。久々に腕がなったよ』
『対空兵装、停止します...演習、終了ですね』
『こちら長門だ。アメストリア、丁度暇していたところだ。陣に加わってもいいだろうか』
「ふむ、大型艦に対する耐性は必要か」
『そうだ。私達のような大型艦と相見える可能性はゼロではない。なら今のうちに経験しておくのはそう悪いことではないと思うのだが』
「了解した。では長門、先頭に立ってくれ」
『承知した!初月、親潮、鹿島!少し揺れるぞ、舵を保て!』
『了解!』
『了解しました。妖精さん、機関圧力上げて!』
「わ、わかりました...アメストリア、さん...?大丈夫なのでしょうか?」
「問題は無いだろう。嵐の中をゆく良い経験にもなるしな」
「それはどうい...わぁ、おっきい......」
艦橋のシャッターが上がられ、同時に影が出来る。圧倒的なサイズ感。
莫大な排水量による大波によって船体は大きくゆれ、傾く。
大和型サイズの初月でさえも遥かに小さく見える超巨大艦。鹿島の後ろから追い抜く形になった長門はそのまま速力を上げ先頭に移動した。元ネタをそのまま大きくして砲を追加した様な威圧感満載の姿。防弾性の都合上、一部近代化した塔楼。側面の副砲も健在で、元ネタより二倍巨大化した長い砲身をもつ単装砲。埋め尽くされる88mm四砲身対空機関連装砲、128mm三砲身対空機関連装砲群。
聳え立つマストに、五基の巨砲。51cm三連装砲の外見は大和砲。艦尾からみれば六門の砲口が覗いている。
巨大タンカーを二隻縦に並べても足りない全長をもつ以上、発生させる波も大きく、一瞬にして嵐が訪れた。10m級の津波が次々と現れ、初月や親潮は傾きながらも鋭い艦首で切り裂いてゆく。突撃も想定されたアメストリアの艦艇の艦首はかなり強硬に作られているため、波に切られて艦首切断、なんて事件はまず起こりえない。むしろ波を切ってなんぼである。
「面舵!回避します!」
「いや、よーそろー、そのままだ。」
「しかしかなり高い波が...」
「大丈夫だ。改装を受けた以上これしきの事では損傷はまずしない」
鹿島の船体が上を向き、波にぶつかる。
無理やり切り裂いて突破し、着水。一部艦底すら見えるのだから激しさは伝わると思う。
まぁ全長844.9mの長門型ですらこれなのだから大和型や私達なんかだともっとヤバいわけだが...戦艦、航空母艦勢なら問題ないが200mしかない重巡、軽巡、駆逐艦メンバーには少し荷が重いというもの。作戦行動ではまずしないが、対空戦闘やらで航跡を突っ切る可能性はゼロではない。
訓練の一つとしてこれはやっているが皆会ったこともない大荒れの海の為大混乱する。
激しく撹拌された海流は不規則な波を引き起こし、駆逐艦は見ているこちらが不安になる程揺れる。時折ドリルのような回転数のスクリューが覗き、着水する度に水柱をあげる。
しかしアメストリアスペックである。絶対に転覆せず、復元する。
「長門、もうよいぞ。速やかに離脱してくれ」
『了解した。おもかーじ!』」
巨艦が転針する。
嵐のような、なにかおどろおどろしい金属音を響かせながら舵が切られる。同時に機動性確保の為に苦肉の策である船体に埋め込まれたスラスターの防弾シャッターが開き、スラスターがエネルギーを放出する。
ぐん、と急激な動きで長門は進路を変え、対応出来なかった大量の海水が右舷に叩きつけられ、捲き上る。
強引に海水を掻き分けながら長門は単縦陣から離脱。私達も速度を徐々に下げてゆく。
「よし、では私達も撤収するとしよう。取舵、進路を埠頭へ向けろ」
「はい!とぉぉぉりかぁじ!速度35!」
『了解だ。取舵、進路を母港へ向ける』
『分かりました。転舵、速度はそのままで!』
三隻の小型艦船が転舵し、進路を海上に聳える山々に向ける。各姉妹がそろうナウル鎮守府では埠頭はどの角度からみても大体カオスな光景が広がっており、ミリオタからしたらすい垂涎ものだ。
塔楼やマストが複雑に重なった様は一日中見ていても飽きないもので、一応軍事基地なので臨戦態勢にいる艦もいたり、妖精さんが動き回っていたりと小さな発見があって楽しいものだ。
また夜になると表情をガラリと変え、ぼんやりと点灯する照明灯や艦橋のライトなどでまるで大都市の夜景の様になる。夜景百景なんて目じゃないぞ。
哨戒担当だろう。まだ速度を乗せていない暁四姉妹と神通が単縦陣ですれ違う。
各艦かなりのクセの強い設計なだけに見た目も中々に奇抜である。
艦橋を見ると神通はしっかり敬礼していたのでこちらも返礼する。やはり神通は凄いな。
長門が戦艦エリアに向かったのを横目に、親潮初月は駆逐艦エリアへ。鹿島はそもナウル所属ではないので埠頭の空きスペースに寄港してもらった。タグボートなんて物は此処にはないので、艦娘の腕の見せ所となる。
艦橋のモニターには簡易化された埠頭と艦の図が表示され、更に埠頭を写すカメラ映像もホログラムで投影される。
細かな軸のピッチ調整。
埠頭には妖精さんが既に舫縄をもって待機しており、同時に鹿島の妖精さんも受け取る為に左舷に集まっている。
クッション代わりの浮きに船体が接触し、舫縄が掛けられてゆく。こういう所は変化しないものだ。投錨でもいいのだが密集する駆逐艦や軽巡エリアでは衝突事故が多発するため、舫縄を採用している。本当ならアームで固定するのもいいのだが、好戦的な艦娘らの意見によって採用は見送られた。今は重巡や戦艦が採用している。あちらはデカすぎて波の影響とか受けにくいからな。アームでもいいのだ。
「良し。いい腕だ。鹿島、下艦するぞ」
「ありがとうございます。はい!」
タラップを降りて、埠頭に降り立つ。
ここからはまた違った視点で並ぶ艦達を眺めれる。人間サイズからいえば駆逐艦でも十分巨大である。滑走路程ある埠頭の左右にびっしり並ぶ駆逐艦、軽巡、重巡、戦艦。
分岐する様に姉妹毎に区切る桟橋が浮かび、幾つかの艦の前にはコンテナや木箱が積まれ、輸送車両が走り回っている。
迎えは呼んでいないので、私が運転する事とする。そうだな...一式、七式はいつも載っているからなぁ...道中で親潮や初月、長門も拾う予定なので積載量があるのがいいな。
七九式、五七式はデカすぎるし毎回使ってるから、趣きを変えてみようか。
私は船体の機能たる万能生産装置を応用し、新たな装甲車輌を創り出す。
アメストリアにおいても一際奇抜な造形。
胴体に付け足した様に車輪が連なるブロックが増設されたナチス偵察車輌に似た輸送車。
二五九式装輪装甲輸送車である。胴体中央には砲塔と90口径50粍砲が搭載されており、ある程度は自衛が可能となっている。スモークディスチャージャーも完備し、被弾傾斜に優れた鋭角を多用した車体。実にシャープな車輌だ。かっこいい。
足は良く、武装がそう強くないためアメストリア軍では専ら偵察車輌として使われていたらしい。
胴体中央にある防弾ハッチをあけ、車内へ入った。案外広く、すぐ上にターレットリングと砲が見える。確か16名収容とあった筈の一列8人掛けの長椅子が私から見て右側、車体後部にあり、左側、前方には運転席と砲手席があった。私は鹿島に一声掛けてから運転席に着席した。
偵察車輌という性格からかゆったりとしたリクライニングシート。視界はホログラム式。ハンドルとブレーキ、アクセルだけと非常にシンプルな構造。一応レバーはあるためバックなどは可能だろう。
「鹿島、どうかその辺りに座っていてほしい。これから鎮守府棟に向かうが、道中初月達を拾いたいのでな」
「は、はい...凄いですね...」
「こんなんでも一番武装は貧弱だがな」
エンジンを始動させた。
タービンの様な甲高い独特な音と共に車内の電灯やホログラムが起動してゆく。
車内は白色で塗装されているようだ。モーター式の車輪が回転してゆき、ゆっくりと走り出す。
速度は35km/h辺り。何分巨大な為、時間が掛かるので飛ばしたいが輸送車やらが動き出すことがあるのでそう速度を上げられないのだ。
秋月型、陽炎型の区画は確か川内型の隣だったはずだから、そろそろである。
軽巡から駆逐艦に切り替わる境目。そこにいた筈だが.......お、いたいた。
二人で並んで立っているのを発見する。心持ち二人の距離が近い気がするが、まぁ気にしないでおく。うん。
ブレーキを踏み、減速する。ハンドル操作は慎重に。
多輪式なのでちょっとした操作じゃあそう動かないが、補給物資などが積まれている為、衝突したら大惨事なのだ。
「鹿島、そこの扉を開けてくれんか?」
「はい、わかりました...よいしょ...」
速度を表示するホログラムが0を示し、車体が動きを止める。
鹿島が側面の乗り降り用ハッチをあけ、親潮と初月が乗り込む。
「よし、全員乗り込んだな」
「はい」
「ええ」
「ああ」
「うむ、では出発する」
アクセルを踏み込み、速度を上げる。
ここからが長いのだ。何しろ軽い艦から海に近いから。要するに駆逐艦は埠頭の一番先頭に並んでいるのである。ここから軽巡〜航空母艦まで全部走り抜けなければならない。埠頭の中央に整備された二車線の道路を走り、どんどん艦を抜き去って行く。
ようやく戦艦エリア。さて長門は...服装からして分かりやすかった。
超弩級の巨艦が並ぶエリア。縮尺が間違っている様な、自分が小人になったような感覚に陥る戦艦エリア。人よりも巨大な砲弾が並んでいたり、食料やら消耗品と思われる物資のコンテナの山。それらの積み込み用のクレーンの側に長門は居た。
改ニの証たる黒いコートをはためかせ、腕を組んでこちらを見ていた。
乗り込んだ長門は慣れた様子で椅子に腰掛けた。
多分、普段はこいつを使っているのだろう。一式と七式のみとお願いしていたんだが...まぁいいか。
「そういえば長門、改修した服装の感覚はどうだ?」
「そうだな、前よりも大分涼しくなったぞ」
「そうか、それは良かった」
そう、例の暑そうな改ニ衣装の改修である。
本人もあのデザインは気に入っているらしく、外見は変えないよう注文は受けていたので、術式やら、無駄に発展した衣服関連の技術を注ぎ込み完成した。
どうやら好感触な様子。良かった良かった。
通気性を限界まで良くして、かつ気温調整機能を完備。シベリアも行けるクラスの耐寒性能を持っている。お陰で快適な生活を送る事ができる。
...何故最初から付けてくれなかったのだろうね。
改装前とかめっちゃ暑かったんだけどなぁ...まぁ過去は過去だ。今は私達にも導入している。
.......単純にスリッド入れて解決したカイクルを除いて。
頑張って書いたのに一万字...やばいなぁ、としみじみ思うこの頃。
現在は帝都蹂躙を終了して時限待ちなので沖田さんを90にする作業が待ってます。