超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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さてさて、皆様はコミケに向かわれたのでしょうか。
私はその一週間前に東京に赴きました。何やってるんでしょう。しかも秋葉探索に行ったのがまさかの37度ですって。作者は馬鹿なのでしょうか。
因みにサバゲ装備真っ黒けバージョンを一式揃えて個人的に大満足です(*´꒳`*)
でもね、私の愛銃SCAR-Hなんすよ。マガジンでかくてベストにつけれないっす(´・ω・`)

あ、今回は気持ち短めです。
あと相変わらずアメストリアが酷い目にあってますが、これも愛故。
...11178文字なんで長いんですけどね。


79.敵新兵器って対処できんよね。

 

ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

 

さてさて、絶賛精神をゴリゴリ使って航行中の私だ。

先程青葉は艦娘、船体共に回収を完了。 今は今尚降り注ぐ残骸や私の発生させる波に細心の注意を払いながら衣笠の所へ向かっている。

 

こうしている今にも深海棲艦のアノ兵器がいつ牙を剥くかもしれないので、警戒は取れる限り最大に。

全海域対応型万能電探後期型に三次元立体全天電子探査機、予備の電探も全て起動させ、徹底的に索敵を繰り返す。

 

ーーあぁ、そうだ、大和達はどうなっているのだろうか? 巻き込まれていないといいのだが....艦娘らにとってこの攻撃は防ぎようがない。 質量が莫大な為迎撃も不可能で、何処に潜んでいるのかも不明。 兎に角当たらないことを祈ってひたすら逃げるしかない。

 

「総旗艦より大和へ、そちらはどうなっている?」

『こちら大和です。 既に日付変更線から120kmの地点まで退避しています。 こちらは無事なのですが...大丈夫ですか?』

「こちらは夕立、青葉、衣笠が巻き込まれ、青葉は船尾を脱落。 衣笠は艦首を潰されている。現在救助活動中だ。」

『そうですか...こちらは被害なし、すぐに戻って防衛体制を構築します。』

「頼む。 リバンデヒ、聞こえているだろうな」

『勿論よ。 状況も把握済み。 どうするのかしら?』

 

今は情報がなさすぎる。

新兵器の材質や大きさだけでも掴んでおきたい。

それが分からなければ対処策を考えるどころか、メカニズムさえ不明。 未知の悪魔の兵器になってしまう。

 

「...衣笠を回収後、全速力で帰還する。 その後は全隔壁を閉鎖し第一戦闘態勢だ」

『了解よ。 アメストリア型は全艦出すわ。 漁夫の利を狙う深海棲艦がいる可能性があることだし。』

「そうだな、そうしてくれ。」

 

ともかく、まずは衣笠を回収せねば。

側面のハッチを開き、回収用にクレーンを移動させる。

 

重心が後ろにある為か、そこまで浸水していない衣笠の船体。 しかしその姿は見るも無惨で、グシャリと潰された紙のような艦首。

強固な構造故衝撃にも耐えてしまい艦橋構造物に突き刺さる砲身。 三連装だったので、艦橋に三本深々と突き刺さっている。

 

まずはクレーンから下ろしたワイヤーを船体に固定し、釣り上げる。

抜き取られた莫大な質量を補填しようと周囲から海水が流れ込み、白波が荒ぶる。

沸き立った無数の水滴がキラキラと太陽光を反射し、それはまた幻想的な光景だった。

主役が少々傷ついているが。

 

ともあれ、クレーンがレールを通って私の船体へ格納されて行く。 後は衣笠の船体を固定して全速力で帰還するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーあ、これフラグですわ。

いかんなぁ、これは。

 

『ぽぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!?!?!?』

 

能天気な感想を片手に私は宙を舞う。

夕立も船体共々宙に舞う。

深海棲艦の再度の攻撃。 回収中だった私は為すすべなく直撃。

全力のアッパーを食らったような、強烈な圧迫感を叩きつけられた。 実際遅れて物理的にアッパーが決まった。

 

宙に浮く妖精さんをキャッチ、抱え込んだところで反動がカムバック。

突き上げられた船体が海面にダイブ。

 

私の体も再度の圧迫感。

体の叩きつけと船体の叩きつけ。 ダブルで来た衝撃に、身体中が危険信号を発し、例の如く喀血した。 多分口の中を切ったんだろう。

...それだけじゃない気もするが。

 

衣笠とは比べ物にならない程キチガイ染みた質量が海面に投入された為、喫水線を無視して莫大な海水が船体に上陸。 甲板を覆い尽くした。

 

更に不幸は続く。

攻撃があった瞬間は、衣笠の回収中。

当然隼の格納庫ハッチを全開にしていた訳だ。

屋根になるような形式のハッチは強度がアホみたいに高く、そのため突き上げられた海水はハッチによって直角ターン。

格納庫に大量の海水が流れ込んだ。

そのため衣笠を回収する為に集まっていた妖精さんが多数呑み込まれ、機材も全滅。

ていうか現在も海水は絶賛蹂躙中である。

 

通路にも流れ込んだ海水は私をも襲い、激痛のレベルがアップ!

こんなに嬉しくないレベルアップはまず無いだろう。

 

キャッチした妖精さんは辛うじて持っていたので、震える手を離し、自由にしてあげる。

ーー出来れば助けを呼んでもらえたらお姉さん嬉しいなーって。

 

''大丈夫です?艦娘さん''

「ーーこれ、が...大、丈夫に、見え...る、か...ガフッ!」

''見えませんなー''

''絶体絶命です?''

''危機一髪です?''

 

そうです。 そうです、今私は黒髭危機一髪クラスにやばい状況なんです。

多分衣笠は船体に居るし、船体はクレーンに吊るしていたから大丈夫。 青葉も船体は既に固定済み。 艦娘も医務室に運んである。

...夕立は?

 

辛うじて見えた窓からは、巨大な水柱を上げて入水した夕立の姿が見えた。

うん、アレなら大丈夫だろう。 多分。

だってもう活動を再開しているんだもの。

 

''すぐ医務室行くです?''

''そうさなー''

''でもでも艦娘さん運べないです?''

''ぽいぬさん呼ぶです?''

''ですです?''

 

どうやら、妖精さんズはあの狂犬を呼んで救助に協力してもらうらしい。

まぁ私今動けんしな。 多分基礎逝ったわ、これ。

 

船体(自分)の事だからよくわかる。

船体フレームに軽微の打撃があり、船底の広範囲に損傷。

貫通こそしなかったものの、大きく凹んでおり、骨組みが破壊され、甲板にまで突き上がっているようだ。

道理で骨が突き刺さっている訳である。 だから血が止まらないんだろう。 本能で血を吐き出そうと喀血しているが、そろそろマジで間に合わなく...

 

「だ、大丈夫っぼい!?」

 

視界の端にロファーが見えた。 黒い服装から、夕立だと考えられる。

どうやらもう到着したらしい。 有能かよ。

 

「...ゲホッゲホッ...医務、室へ...」

「了解っぽい! アメストリアさん!ちょっと我慢っぽい!」

「ーーぐうぅぅぅぅ!!!!」

 

再び激痛が体を駆け抜け、這い回る。

夕立が私を起こしたおかげで、骨格が変動し折れていた骨が周囲を傷つけたのだ。

だが歯を食いしばって耐える。耐える。

 

「アメストリアさん! 医務室何処っぽい!?」

 

まさかのコレである。

一瞬痛みを忘れ、頭が真っ白になった。

そうだった、忘れていた。 アメストリアは難攻不落の大迷宮なのだ。

艦内を鉄道や道路、EV、通路が張り巡らされており、その難易度は鬼畜の一言。

初見の夕立が解けるわけがない。

しかしここには有能な妖精さんがいるのだ。

 

''艦娘さん艦娘さん、そこの犬っぽい艦娘さん!''

「ーーっぽい?夕立の事?」

''いぐざくとりー! ふぉろみーなのです?''

''ですです?''

「っぽい!わかったっぽい!」

 

一歩一歩、ゆっくりと歩いて行く。

身長差か、背中をまげざるをえず、そのせいで逝った背骨が危機的状況を生み出しつつある。

 

やばい、神経が死に始めた。

動脈も脈が弱くなってきているのが、実感できる。

 

「ガフッ!」

「っぽい!?アメストリアさん!だいじょーぶ?」

「...割と、やば、い...ゲホッゲホッ!」

 

更に喀血を繰り返し、べっとりと血が夕立にも付いてしまう。 すまない...本当にすまない...

視界が暗くなってきた。 割とガチでヤバイ。

 

船の命たる基礎が破損気味なのだ。

器たる艦娘へのダイレクトアタックは計り知れず、死という形でしか把握しきれない。

今の所沈みはしていない様だ。

 

しかし艦橋の妖精さんが上手くやっているのか、既に衣笠は今度こそ回収。

ハッチを閉め、全域にて排水作業を並行しつつナウル鎮守府に向け半速。

既に緊急電は妖精さんが発信したので、異変を察知して妹がどうにかするだろう。

 

旗艦たる私がこの状態。

妖精さん達は旗艦権限を副旗艦であったリバンデヒに移譲している。

 

「アメストリアさん!もう少しっぽい!がんばって!」

 

よーしお姉さん頑張っちゃうぞぉーーー!!

 

......とはいかないんだなこれが。

もう余裕がない。割とマジで。

通路に響きわたる警告音が酷く遠くに聞こえる。

加えて寒い。とても寒い。

無論実際に寒い訳ではなく、感覚としてとても寒い。 これは冗談抜きに危険信号だわ。

 

艦娘の構造は人体と大体一緒だから症状も似るのだ。

そろそろ私の艦生にチェックメイトがつきそうな件について。

 

''とーちゃーく!''

''電気除細動器すたんばーい!''

''さーぬぎぬぎしましょーねー''

「ぽ、ぽいっ?!ア、アメストリアさん!返事して!お願いだから返事してよぉ〜!」

 

夕立の泣きそうな声を最後に、プツリと訳ではの意識は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーハッ!

意識が急速に回復してゆき、視界が開ける。

 

知ってる天井だ。

ナウル鎮守府の医務室。清潔感を出したいのか白塗りにされた空間は、良くお世話になる場所。

ツンとする鼻に付く消毒液の匂いは保健室が如く。

 

「あぁ、良かった...目覚めたのね...」

「その声は...リバンデヒ、か...ぐっ!?」

 

リバンデヒを見ようとして身体を動かそうとーーーー出来なかった。

少しでも動くと背中に激痛が走り、連続的に他の個所でも激痛がはしる。

今分かったが私うつ伏せの状態らしい。

背骨をやったんだから当然と言えば当然だが、なんだか新鮮だ。

 

「あの後、どうなった?」

「なんとか船体が持ったらしく、なんとかナウルに到着。直ぐに緊急入渠よ。お姉ちゃんもこの後入渠よ?フフフ...」

 

なんかぞくりとしたぞ私。

何気に危機が迫っている気がするな私。

 

「夕立は?」

「あの娘なんなのかしらね、無傷よ。 カスダメはあるけれど、中破以下よ。 ずっと運んできてくれたのよ、感謝しなさい?」

 

他の艦娘に助けられたのはパラオ鎮守府防衛戦以来か。 あの時はウチのサイコレズが吹雪にお世話になったが、今回は私本人だ。

面目ない...

 

「あぁ、候補生は?」

「今は提督室よ。お姉ちゃんが眠っている間に休憩とって現在は歓談中よ。」

「そうか..深海棲艦の方はどうなっている?」

「現在は第三、第二艦隊が警戒中。 カイクルが指揮をとっているわ。ノイトハイルには第四艦隊を率いて遠方の草刈りをさせているわ。」

 

ノイトハイルに関してはそうでもして追い出さないと、私がマリオネットになりそうである。

解体されてましたエンドは誰だって避けたい。

 

「あぁ、候補生の受け入れはいつまでであった?」

「えぇと...明日までね明日見送りよ。」

「そうか...ならば第二艦隊の方で効率的な戦闘指南をさせておけ。 第三と第四はさげてアメストリア型だけで警戒を。 あと妖精さんを呼んでくれ。 船体修繕の件で話がある」

「了解よ。妖精さんはすぐ来ると思うわ。 あとで入渠よ。 忘れないで頂戴?」

「........承知、した。」

 

 

 

 

 

 

''到着です?''

「妖精さん、現在の修理状況はどうか?」

''んー、難しいですなー''

''ですです?底がやられているからだめです?''

''上のものじゃまです?''

 

成る程。船体や骨組みを修理したいが、主砲や艦橋群といった上部構造物があるため修理ができないと。

解体するにもどうしたものか。 この後戦闘する可能性がゼロではない以上、戦闘指揮をする艦橋というのはとても重要だ。 主砲は言わずもがなだが、艦橋群には電探を始めとする観測機器もズラリとしているのだ。

 

「観測機器はどうなった?」

''ムスー!着水で吹き飛んだです?''

''電探ポーン!''

''みんなぽーん!''

 

どうやら電探さんがログアウトしたようです。

三次元立体全天電子探査機、113号対空電探、全海域対応型万能電探後期型この三つに予備、気候情報や重力、地盤に磁場、太陽フレアなどの情報を観測する機器も全滅。 こいつぁは解体するしかないですねぇ(暴論)。

 

「よい。やってくれ。 艦橋群から先に撤去。主砲は最後にしてくれよ?」

''あいあいさー!''

''ついでに改造を..''

''さぁー!2-4-11!''

 

ーー撃てるかは知らんがな。

船体が歪み、骨組みが突き出している以上、主砲が撃てる望みは低い。

それでも万が一を想定しなければならないのが軍の辛いところ。

最後に妖精さんをナデナデしてから送り出す。 優秀な工廠妖精さん達だ。 直ぐにやってくれるだろう。 艦橋群だってブロック工法だし。 あ、でも溶接があるから時間かかるか?

 

''艦娘さん、艦娘さん、麻酔薬をオススメします?''

''しゃぶちゅー!''

''やくちゅー、だめ、絶対?''

''スヤァすいしょーです?''

 

Q.何を企んでるんです?

 

A.大惨事改装DA☆

 

 

 

 

 

...いやーな予感がするなお姉さん。

ーーこれはまずい。洒落にならん。

ナウルが誇る要塞山。そこには数々の砲が収められており、無論500cm四連装砲も配備されている。

その砲塔がゆっくりと回転を始めていた。 砲身は意図的に一度後退。 ブローバック式の為、砲弾を装填するには銃をリロードするように『コッキング』が必要なのだ。

 

装填された砲弾は恐らく榴弾。

四本の砲身の内二本が仰角を下げて行き、俯角を取る。

狙うは海上に聳える艦橋群。

お分かりだろうか。 妖精さん達はまさかの解体に砲撃を利用しようとしているのだ。

 

「り、リバンデヒ!緊急事態だ!直ぐに私に麻酔を打て!!」

『え、えぇ!これは予想外だわ...あと1分で着くわ!こらえなさい!』

「む、無理かもしれん...」

 

いやいやいや、無理っしょそれは。

500cmやで? 熱量半端ないんやで? 艦橋群吹き飛ぶんやで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ...

 

 

ギャャャャァアアアアーーーーッッッ!!!

 

「ぐぅっっっっ!!!!」

 

ギリリと歯をくいしばる音が聞こえる。傷付いた体に追い()()を掛けた一撃は体に良く効いた。 例えるなら灯油をガブ飲みして火をつけた感じ。

焼印を傷口に押し付けられた感覚。 脳が危険と判断したのか、瞬間痛覚は切断された。

 

遅れてリバンデヒが到着。 無針注射器にて麻酔を注入。

じんわりと体が麻痺してゆく。 感覚があるようで無い感じ。

神経系に麻痺が回った頃には、艦橋群のダイナミック解体は終了。 誘爆なのか、三番主砲が吹き飛んでいたが、気にしてはいけない。 イイネ?

 

「さぁ、お姉ちゃん。入渠、しましょうか」

「りばんでふぃ...おぶぉえてろぉ...」

 

麻酔の所為か、上手く呂律が回らない。

酔った時のようだ。 アレはアレで良い思い出がないのだが...美味しく頂かれたりお持ち帰りされたりお持ち帰りされたり...主犯は勿論我が妹共だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーしばらくお持ちくださいーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぃーーー、ひどい目にあったぜ。

散々な日だな今日は。 新兵器の犠牲になってFFの犠牲になってリバンデヒの犠牲になって。

...最後は納得がいかないが。マッサージされたから文句言えん。 治癒符をベタベタに貼りまくり、胴を包帯でグルグル巻きにされた。

何気に治療されてるから文句言えん。 ぐぬぬ...。

 

てか猛攻(意味深)に慣れてきた私は複雑な心境である。

余裕が生まれてきたが、負傷箇所に腰が加わったのは頂けない。

入院期間伸びたやんけ。

 

あ、そうそう。

妖精さんのダイナミック解体だが、上手く?いったようで、艦橋群が予定通り吹き飛んだ。

ついでに第三砲塔もM4みたいに吹き飛んだ。

現在は第一甲板から船底まで一気に解体して骨組みを再構成しているらしい。

ついでに区画整理も。 ようやくラビリンスから脱却だぜ。

碁盤の目状に再構成してそれぞれに番号を振って整理したらしい。

予定としては現在再建造中の第三砲塔を設置後、艦橋群を再構成。 これまた工廠で作成中の観測機器、電探を搭載して、対空砲陣地に128mm三砲身対空機関連装砲を正式に配備する運びになった。

ついでに従来の45mm対空機関連装砲も量は減るが、88mm四砲身対空機関連装砲に総入れ替えするとの事。

ふふ、一番艦の特権である。

 

修繕が終了し、進水までに五時間。

海上にて艤装取り付けに六時間。 計11時間のフリータイムが発生したのだが、残念ながら背骨をやっている為行動は不可。

妖精さんや妹達が改良を重ねているらしいが、ハイポーションみたいな効能は現在の所実現不可である。 バケツもあんま役に立たないしな。

 

だが今回は役に立つ。

正式名 高速修復材、通称バケツ。妖精さんが知らぬ間に量産する原材料、精製法共に不明な怪しい液体だ。 パラオ鎮守府、ナウル鎮守府ではそもそも大破艦自体出ることが稀だった為、バケツ自体はレンガ倉庫に天井まで積まれているのが現状。

しかし効果は凄まじく、艦娘の傷を一瞬で全回復...とまではいかないがそこそこ修繕してくれる。

ある意味これがポーションだと思うが、何故か風呂に入れて入渠しなければ意味がない。

恐らく傷に対して外部から干渉するタイプなのだろう。

 

このめちゃくちゃ有能なバケツ君を今回は投入したのだ。

それに治癒符の大量投入で中破程度にまで傷は回復。

内臓はまだ完全に回復していないが、辛うじて立てて歩ける程度にはなっている。

 

リバンデヒに無理を言って立たせてもらい、工廠まで移動。

パラオ鎮守府のような地下式ではなく、呉や横須賀のような工廠の形になったナウル鎮守府の工廠。

生産拠点や開発区画、備蓄は地下にあるが、アメストリア型戦艦の大型ドックは地上にある。

大型の移動式クレーンが10に、中型の伸縮式クレーンが20。

今まさにそれら全てがフル稼働し私の船体を組み上げていた。

 

艦橋群の軸となる、所謂「大黒柱」となる幾つかの全高300mの太すぎる柱が建てられ、それらを結ぶように夥しい量の梁が張り巡らされている。 全体的に軍艦色の施設に、黒に近い色に塗装されている私の船体は何だかミスマッチだ。

地下の工廠から運ばれてくる大量の部品がクレーンによって吊り上げられ、テトリスのようにピタリと嵌まってゆく。 見ていて気持ちの良いものだが、部品が明らかにおかしい。 何故に大量のアハトアハトが運び込まれているのだ?即応砲か?それなら対空砲陣地に置いておくものだろう?何故に艦橋群に置いてくんだ?

 

ま、まさか...あの広い通路、アハトアハトに対応してるのか、規格が。

えぇ...いくらなんでも...あぁ...今度は127mm野砲が積まれている...ーーー胃が痛い......。

 

 

 

 

 

その後は割と簡単に組み上がった。 内装に大きな変化がなかったからだろう。

分厚すぎる鉄塊のような外壁が合わさってゆき、基礎的な塔楼が完成。後にバルコニーや88mm四砲身対空機関連装砲を設置してゆき、最後に手すりを張りめぐらしたら完成だ。

これまでと違い、塔楼などにも一部対空砲陣地が作られ、88mm四砲身対空機関連装砲が二基から四基配備されている。

露天艦橋には全海域対応型万能電探後期型に三次元立体全天電子探査機が二基ずつ設置され、その下に設置されている中央演算処理装置は面積を拡張。処理能力をちょっと上昇させた。

 

 

むろんそれだけで埋まるはずは無く、艦橋へのエネルギー供給の為だけに予備の船舶用粒子エンジンが3基設置された。他は前回と同様に食堂やら居住区やら。

しかし余剰スペースには即応砲が積まれ、対空砲陣地の近くにはアハトアハトが配備されている。

...前より重層化しているような感じを受ける。

装甲は前回とほぼ同じだが、遂に指揮所のガラスに防護壁が増設された。

鉄板なのだが、普段は閉まっておける。戦闘時のみシャッターの様に下がってきてガラスを保護する様な形式。しっかりと覗き穴は開けられており、また分厚さも十分。

妖精さんの特殊鋼を160mm積んだ非常に強度が高い装甲板だ。

 

また、潜航時に電探や観測機器を格納するのだが、そこも装甲化され、VLSのような形式に変更された。

 

割と大改装が施されている割には、外見に変化は無い。

大和型の立派な塔楼。根元に広がる対空砲陣地には少々変更がなされた為か幾分かすっきりとした印象を受ける。

 

 

近海に警戒で出ている...あれはカイクルか。同型艦と見比べても大きな変化は見えない。

いっそのこと長門型塔楼とかになったら変化が分かりやすいのだが。

利点はあまり無いから妖精さんはやらないだろうが。

 

何故なら長門型塔楼には防弾性に難があるのだ。形状的に。

模型を所有している提督諸氏なら理解していただけると思う。

長門型の近代化改修後の塔楼は改修前の柱をそのまま利用している為、剥き出しになっている。

それをアメストリア型戦艦に採用すると即おじゃん。一発で指揮系統が死滅する事になってしまう。それでは軍艦として致命的だ。

時間逆行術式というチートをもってしても復旧には時間がかかるし、人員は元に戻らない。

飛ばされたりすると帰還は自力になるのだ。そういう面でも、長門型塔楼はアメストリア型戦艦には向いておらず、その結果大和型塔楼が採用されたわけだ。

 

唯一の昭和生まれの戦艦だしな。大和型は。

そもそも一次大戦の塔楼が無い為新規で設計できたからああいう美を体現した形状を実現することができたのだ。

長門型、扶桑型、伊勢型、金剛型という海軍の戦艦の殆どは大正生まれである。

昭和生まれというのは補助艦艇を除き、主力艦では割と少ない。

 

そういうわけで、アメストリア型戦艦には防弾性に優れた大和型塔楼が採用された。

 

''艦娘さん艦娘さん、塔楼の工事は完了。対空砲は数が多くてまだです?''

''ですです?''

''配線が面倒くさいですなー''

''ですなー''

「そうか。因みに妹達に同様の改装をするならばどれくらいの時間がかかる?」

''うーむ''

''大体とぅーあわーです?''

''120分です?''

 

なんと。

対空砲の総入れ替えに区画整理...は無理だろうが塔楼の増設工事は二時間で出来るという。

妖精さんのレベル上がってませんかね。いや、パラオ鎮守府の頃からこいつらヤバイなって片鱗は見せていた。しかし最近は配線や薬莢廃棄の配管の複雑さで掘り作業並みに泥沼になる対空砲陣地の改装ですら2時間。

確実に妖精さんの技術力は進歩しており、熟練となっている。

まぁ、原因のほとんどは私なんだがな。名付けるならば、そうだな...〈熟練工廠妖精〉と言ったところだろうか。フリーダム、過剰労働、暴走が多い問題を起こすに関してはトップの存在だが、居なければ私は三回は魚礁と化していただろう。

改ニにしてくれたのも妖精さん。

毎回修理してくれるのも妖精さん。

補給してくれるのも妖精さん。

索敵してくれるのも妖精さん。

私の手足となり砲を動かし、狙うのも妖精さん。

ウンターガングエンジンの御機嫌取りをしてくれるのも妖精さん。

船舶用粒子エンジンを整備運用してくれているのも妖精さん。

舵を切るのも妖精さん。

 

...あれ?私完全に妖精さんに依存してません?

いやね?実際は全部私で出来るんだよ?なんたって自分の身体ですから。

照準、旋回、仰俯角、発射。

全て自分で出来るが、それら全てを自分で処理しつつ、指揮をするのは限界があるし、私は一人だからダメコンは出来ない。だから私は指揮に専念し、実際に艤装を動かすのは妖精さんに一任している。

ぶっちゃけ妖精さんは以前クソ憲兵に横須賀で爆破された船舶用粒子エンジンの爆発にも無傷で耐えるし、同型艦との激しい殴り合いでもピンピンしている不死身の摩訶不思議生命体なので、割とこき使っている。

本当に何者なんだろうね。嫌われたら私死ぬんだけど。

妖精さんには妖精さんのポリシーがあるらしく、自分の後始末は自分ですべし。

これはミッドウェーでの一件で行動に移されている。

確かに航法関係等で妖精さんがミスった事により艦娘らが多数鹵獲され、大惨事になったが、後始末はつけた。本土襲撃までしたしな。

アレはいい思い出だ。またやろうかな.........冗談だよ。ーーー多分。

 

「お姉ちゃん、改修工事終わったんでしょう?さっさと埠頭に戻りなさいよ。此処を母港にするつもり?」

「いや...すまない。すぐに動く。深海棲艦のほうはどうだ?」

「特に何も。姫級の動きはなし。雑魚は何回か来たけれど、全て隔壁で対処したわ。」

「そうか。警戒態勢はそのまま。リバンデヒも休め。」

「そうさせてもらうわぁ。いい加減疲れたのよねぇ...」

『こちらカイクル。私の方も警戒態勢を解除。休ませてもらう』

『僕も休ませてもらうねぇ〜。あ、そうそう。この間に対空砲強化改修でもしたらどう?お姉さん』

「...そうだな。私は代わりに警戒に出る。貴官らは改修工事に入れ」

「そうするわ。」

『承知。』

『はいはーい。ねぇカイクル〜!一緒に寝よー!』

『斬り殺すぞ貴様』

『ひゃー!怖いね、カイクルは』

「そこ、戯れるな。さっさと改修工事に入れ」

『すまない...』

『はーい』

 

三隻の動きを新調した電探で確認しつつ、艦橋へ転移する。

以前と変わらない景色。

体育館のような広さの広々とした空間には大量の管制用機器が並び、ホログラム発生器や海図が置かれている。

私はいつも通り艦長用の椅子に腰掛けると、号令を出す。

 

「錨上げー!機関始動!」

''くさりじゃらじゃらー!''

''巻き上げ完了です?''

''主機、稼働開始です?''

''副機関、エネルギー生産開始。圧力正常値です!''

''主砲、副砲にエネルギー伝達を確認。''

''対空砲陣地、エネルギー伝達を確認!''

''全海域対応型万能電探後期型、三次元立体全天電子探査機稼働します?''

''電探ぐるぐる?''

''113号対空電探もすたーと?''

''舷下副砲群、エネルギー伝達です?''

 

「主砲、動作確認。」

''あいあいさー!''

''ようそろー!''

''一式徹甲弾装填開始ー!''

 

号令で、これまた新調された500cm四連装砲が駆動を始めた。

使い物にならなくなった三番砲塔は新しくなり、元の姿へと修繕。

ターレットリングが回転し、機敏な動きで砲塔が旋回してゆく。80口径というアホみたいな超長砲身は全長400m。重量は一本あたり5500t。一つの砲塔で2万2000tという頭のおかしい重量を誇る、そんな砲身を振り回しながら砲塔は可動域を二週。

仰俯角に関しても同様で、仰角45度、俯角-10度まで四本全ての砲身を上下させ動作に問題がないか確認。

 

副砲も上記と同じことをして確認。

対空砲に関しては陣地が途轍もなく巨大で、迎撃には急を要するため360度ぐるぐる回るように設計されている。

大和型にある12.7糎高角砲のような外見の対空砲が夥しい数並び、一斉に旋回をしている光景は寧ろ不気味さを感じる。

軽いモーター音を立てながら88mm四砲身対空機関連装砲、128mm三砲身対空機関連装砲はぐるぐる回旋し、更に旋回時のモーターとはまた毛色の違うモーター音を響かせながら駆逐艦の主砲クラスの束ねられた砲身が高速で回転する。

ガトリング式を採用している為、砲身一つ一つに薬室があり、いわばボルトアクション式の銃を束ねたような感じ。

 

回転する事によって順番に撃って手数を増やしている訳だが、空撃ちでその動作に問題が無いかを確認。ついでに対空砲其々にある光学式照準器とのラグなどが検査される。

うん。流石アメストリア製の兵器だ。性能が違いますよ。

納入された88mm四砲身対空機関連装砲、128mm三砲身対空機関連装砲では一基も問題は無し。全て完璧な状態で配備されていることを確認した。

 

「両舷微速!5ノットにて工廠ドックから離脱後、第二隔壁内を周回する。電探は警戒を厳としろ」

''あいあい!''

''よーそろ!両舷微速!''

''進路、第二隔壁内に設定です?''

''スクリュー、回転開始です?''

''回転数、500から510の間に安定です?''

 

切り裂くことも想定された鋭い艦首が工廠の穏やかな海面を進む。

もう慣れてしまった莫大な量の海水は両舷のバルジに当たり破砕。勢いを消されながら側面に流れてゆく。

工廠の方を見れば、対応策として陸地には格納式の堤防なのか、30m級の隔壁がせり上がり、流された海水が叩きつけられていた。

 

舵を少し切り、第一隔壁の水門へと向かう。

入れ替わりで、リバンデヒが工廠ドックに入っていった。

さぁて、暇で暇で仕方ない警邏の開始だ。

 

 




今回も更新に間が空き、申し訳ございませんでした。
これも夏休みって奴が悪いんだっ(殴

艦これの欧州再打通作戦にfgoのカオスイベが重なりまして、やばいことになっておりました。
といっても艦これもE-3で泥沼になってるんですがね。主にバケツの所為で。
誰でしょう直前まで3-2-1やってバケツ浪費してた馬鹿は。
あと長門さん、改ニになってからアホみたいに〔弾薬〕貪るのやめていただけません?〔弾薬〕だけ桁が一個少ないんすよ。

でも戦利品は良かったです。
天城に旗風、清霜に藤波が来てくれました。あとは掘り作業だけですね(白目

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