超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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えーと、はい。大変に長らくお待たせいたしました。
学校関係でいろいろバタバタしておりまして。はい。
かくいう今もテスト勉強中でして、はい。

すみませんしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!、!
申し訳ない。色々ありまして。
皆さんもやったかと思いますが、偵察作戦にて初イベデビューしまして、今回の北海道でのイベでは現在E-3までやってます。ラスダンに泣いていますがね。古鬼とかふざけるなよ...

因みに占守や阿賀野、衣笠、神威をげっついたしました。これが遅れた主な原因ですね。しむしゅしゅしゅー!!
あと今資料の改定中でして...全長4.6kmの船体の割に、対空砲とか色々足りなくないかとか、電探の設定を作っておりました。


78.性別詐称はバレるもの

ーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーー

時間は少し飛び、候補生の襲来の夜。

私は残骸の解析結果を纏めた報告書を片手に、月を眺めていた。

 

結局、残骸は極普通の特殊鋼に従来のステルス用の電波吸収剤が散布されているだけの物だった。何とも言えない結果に、何とも言えない。

全海域対応型万能電探後期型はそれこそ()()()()()()()()()()()だから光学迷彩だろうと何だろうと検知するのだが、その探査の方法には電波を使用していなかったのだが、原理的には電探と同一だ。だから電探ってついてるんだがな。

それが一般のステルスでこうも見事に欺けられるとは、全く思っていなかった。

 

基本アメストリアの原則にステルスなんて想定はない。

あの船体の大きさや、ステルスを考慮しない造形で御察しの通り隠密行動を戦艦に求めてはいないのだ。光学迷彩は実装してあるがな。

従って妖精さんには私達を建造する際、全海域対応型万能電探後期型を作る際に地球でのステルスの概念をガン無視していたのだ。

 

それが仇になり今回深海棲艦の接近を許してしまった。

あ、不明艦は深海棲艦だった。断言していなかったな。

 

それは兎も角、ステルスの対策は早急に取らねばならない。幸い、三次元立体全天電子探査機の方は残骸を捉えることができるようなので、しばらくは全海域対応型万能電探後期型と三次元立体全天電子探査機の平行利用で対処するしかない。

何れはステルスも捉えれる新型電探をまた開発しなければならない。

いや、全海域対応型万能電探後期型を改良するだけでいけるか?

うーむ。これは妖精さんと話し合わなければならないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「......月が綺麗だね」

「...堂々と口説くとはいい度胸だな。」

「いや、そのつもりしかなかったよ」

 

ーーなかったんかい。

電探の改造に思いを馳せていると、後ろから声がかかった。

初っ端から口説いてくる艦娘は一人しかいない。

あとはセクハラか斬りかかってくる奴らしか居ない。...ロクな妹がいないなオイ。

 

「で、ノイトハイル。何の用だ。できればさっさと寝てもらいたいのだが」

「やだお姉さん大胆〜!...それはそうとして、ドミートリーが帰投してくるようだよ。」

「...そうか。すぐに向かうぞ。」

 

下ろしていた五式自動拳銃を再びホルスターに収め、立ち上がる。

寝静まった丑三つ時に帰投するのも情報統制の意味合いが強い。どうせ前もって候補生の話は独自に手に入れているだろうからその意味もあるのだろう。

寮から港まではそれなりに時間がかかる。

車輌を使うと駆動音などで艦娘達を起こしてしまうかもしれないし、居ないとは思うが夜更かししてる艦娘が居ないとは限らない。

 

こういう時は裏技を使用する。

まず転移で自らの船体に移動して下船するとあら不思議。すぐにドックに到着する。

今回もそれを利用し船体から手っ取り早く桟橋に移動する。

 

照明の落とされた桟橋には数々の軍艦が停泊するだけで、真っ暗で何かを視認することは難しい。補給用か何なのか妖精さんが埠頭の方にコンテナを積み上げていたりと障害物はそれなりに多く、それ故に密会にはうってつけの場所と言える。

ドミートリー・ドンスコイ。例の魔改造潜水艦は影の部隊。今回も会ったこと自体()()()()()なのだから都合がいい。

僅かな排水音と水泡を伴ってのっぺりとした鉄のくじらが浮上する。

筋から海水を排出しながら、潜水艦が停泊している時の高さまで船体を持ち上げると停止。

照明さえなく、真っ暗闇に融けた隠密艦。

そんな潜水艦のブリッジ、そのハッチが金属音と共に開きにょきりと艦娘が姿を表す。

 

前見た姿をまんま。黒を基調に白と赤のラインが入ったスポーツ水着に礼装を羽織ったロシアン。彫りの深い顔立ちは私達に共通するところだろう。

スポーツ水着に直接下げているのか斜めにベルトを巻き、六式自動拳銃(11mmハンドガン)をホルスターに入れた姿は様になっており、任務に慣れを感じさせた。

 

「...ドミートリー・ドンスコイ、任務を遂行し無事帰投しました」

「うむ、良くぞ帰った。何か報告する事はあるか」

「...いえ、特には。」

「そうか。貴官には一週間の休暇を与える。十分に身体を休めてくれ」

「はっ、感謝いたします。あぁ、そういえば深海棲艦か所属は不明でしたがソロモン沖にて哨戒機を探知いたしました」

「...何?」

ソロモン沖といえば、私達が苦労して開放した海域ではないか。

もう何か来ているのか。ハイエナ根性逞しいな。見習いたくはないし撃滅したいが。

手慰み程度にデータベースにアクセスすると、ソロモン沖近海に哨戒機を出した記録は無し。

となると深海棲艦かハイエナだろうか。最近輸送船団は見かけるがそれ以外はまず見ない。

 

あぁ、輸送船団というのは無論大日本帝国海軍の輸送船団だ。

20隻以上の大型貨物船と護衛に沖ノ鳥島警備府の二個水雷戦隊が派遣されてきてソロモン諸島に何やら建造しているようだ。

まぁいつもの海域開放→鎮守府設置→鎮守府起点にさらに海域開放のスタイルに基づいた新鎮守府だろう。

着任してくる奴が誰かによって私達の苦労が色々と変わるのだが。

ソロモン諸島とナウル島は割と近い。700km程度しか離れておらず、やる気だけば一日で往復も余裕だ。航空機的にも一瞬で着く範囲だし、何よりも防空圏内なのだ。

そんな『お隣さん』にクソ野郎が着任したら私絶望する。すんごい疲れるもん。

ーーーん、でも大本営も分かっているようだ。「アイツ」を着任させるつもりらしい。

 

 

「...お姉さん?」

「......んぁ、すまない。ドミートリー、休暇後で構わない。ソロモン沖をちょいと哨戒していてくれまいか」

「はい、かしこまりました。仮設拠点などは」

「要らぬ。近くには新設の鎮守府もある事だし、どうせだ。偽装しておけ。こちらでペーパー面は偽装する。...そうだな、伊号潜水艦600型とかどうだ。」

「それでよろしいかと。」

「後で妖精さんに作業してもらおう。」

 

深海棲艦に間違われて警戒でもされると厄介だ。

新鋭艦とかいう設定にしてナウル鎮守府が試験運用している伊号潜水艦という事にしておく。

一応原潜の形状を小改造したものだから伊号とは程遠いのだがどっかのチート艦隊も同じような事してX艦隊作ってたし大丈夫いけるいける。

[イ-600]とか書いておいたら大丈夫だろう。艦娘の方はまぁ大丈夫だろう。

薄い金髪だけど日本艦娘の癖に緑とか赤とか色々いるし。うん。

 

ドミートリーの船体が工廠へ向かったのを見送って私達も帰路へつく。

......む、仕事が増えたな。

 

「ノイトハイル、鼠だ。()()はするな。捕縛しろ」

「はいはぁーいっ!」

 

それを残してノイトハイルが消える。

風を切るような鋭い音と、白いぶれた線が暗闇に浮かび上がり、滲んで消えると再び静かな夜へ戻る。

 

「ノイトハイル、部屋に運んでおけ。あとどうせ見ているだろうから言っておくがリバンデヒ、カイクルは私の私室に来るように」

『はーい!むふふふふふー』

『了解よ、ドミートリーは何と言っていたのかしら』

「別に、ハイエナが湧いてきている程度だ」

『姉さん、尋問道具は必要か』

「要らん。別に痛めつけるつもりはないからな。」

 

ツカツカと寮へ戻る。

そういえば、高速移動術の欠点は帰り道は徒歩という点だろう。うん。どうにかならないものか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝静まった艦娘寮。

その内私達のサービス残業に考慮されて離れた場所に作られた私達アメストリア型戦艦の私室に入ると、妹達が勢揃いしていた。

...全員武装している事に関しては突っ込まないでおく。

 

ちらりと視線を床に移せば転がっている哀れな贄が一匹。

手足を縛られ、首にも掛けられていることから動いたら首が締まるものだろう。

ノイトハイルの趣味がうかがえる。悪趣味の外道系ドSめ。

猿轡に目隠しまでされている徹底ぶりで僅かに身体が震えているのは見間違えではないだろう。私だってその立場は怖かった。

 

「カーテンは全て閉めておけ。リバンデヒ、立たせろ」

 

カイクルが素早くカーテンを全て閉め外の景色を消すとノイトハイルが照明を最低限に落とす。そしてリバンデヒがナイフで首につながる縄だけを切り落とすと贄の脇に手を差し込んで無理に立たせた。さりげなく触っているのには目を瞑る。何処に、とも言わん。

 

「リバンデヒ、猿轡と目隠しは要らぬだろう。」

「そうね。何かできるわけでもないし」

 

そう言って贄から猿轡と目隠しが取られ、顔が露わになる。

姫さまカットと言うのだったか。前髪は切り揃えられ、髪は白いリボンでひと束に纏められた男モドキ。純日本人の整った「綺麗」という言葉がよく似合う顔は随分と暗い。

何だろうか、殺されるとでも思っているのだろうか。

 

「さて谷村中尉、下手人はどうせ本家だろうし詳しくは聞かんし興味もない。重要なのは貴官がどういう存在か、だ」

「そう、言われましても。僕は谷村家の者としか。」

「...あぁ、無理に取り繕う必要はない。」

「ーーどういう、意味でしょうか」

「ふふ、君さぁ。戸籍間違えてないかなー?」

「いえ、間違いなど」

「そう、あくまで貫くつもりなのね。随分と固く結んでるみたいだけど、息苦しくはないのかしら」

「......」

 

...黙ってしまった。冷や汗がすごいから、どう弁明しようか考えているのだろう。

別に私が問いたかったのそこじゃないんだが。

 

「そうか。リバンデヒ、剥いて良いぞ」

「...あらお姉ちゃん大胆ね。」

「リバンデヒ、貴様は食い物にしたいだけだろう」

「だよねぇ〜。正直言って可愛いしねこの娘」

「...ひぃっ、わかりました!ぼ、僕は性別を偽っていました...女、です」

「そうか。知っている。」

「...へ?」

 

もしかしてバレてないと思っていたのだろうか。

どう見ても骨格は女性のそれだったし、顔立ちも中性的...でもない。

髪質も随分と良いようだしな。今はリバンデヒの餌食になっているが。

 

「貴官はどう見ても女性であろうに。呉海軍大学校の時点で分かっていたぞ」

「...そん、な...」

「まぁ別にそれは良い。本題は貴官、これからどうしたい?どういう存在になりたいのだ」

「......考えれる立場にありません」

「思考停止するなよ小娘。私はどうしたいかと問うておるのだ。さっさと答えぬか」

「...私は」

「答えなければ貴官はこのままリバンデヒかノイトハイルあたりの人形にするが」

「......私は、」

「どうする。何を選び、何を捨てる?」

「......提督となりたいのは、本心です。」

「ふむ、そうか。......そうかそうか。ではよろしく頼む。『お隣さん』よ」

「......?」

「...あら」

「ほう」

「むふふ、お姉さんこの娘気に入った?」

「...ふふ。嫌いではないな」

 

そりゃわからんわな。帰ってから辞令が出る予定らしいし。

何よりも、この娘の目が気に入った。私達と違って澄んだまっすぐな瞳。

例えるなら神通。強い決意が芽生えた覚悟を決めた者の眼。

私は嫌いではない。そういう者。

 

「リバンデヒ、放してやれ。」

 

縄が解かれ、彼女は崩れ落ちる。

確かにちょろっと殺気を乗せて聞いたが、人間には大分堪えたようだ。

肩で息をして滝のような汗をかいている。

 

「ふむ、そうだな。カイクル、客室まで送ってやれ。リバンデヒとノイトハイルは解散だ。」

「承知した。谷村殿、私が案内する。」

「は、はい...」

「あぁ、谷村中尉。一応言っておくがこの事を誰かに漏らせば其処に大型噴進弾が降り注ぐと思え」

「ーーーっ!!!」

 

さぁぁっと顔を青くする男モドキ。

どうやら意味がわかったらしい。中々に頭が回り、記憶力の良い娘らしい。

どっかの白い家事件の犯人もわかったらしい。

 

これは磨けばとんでもない逸材に豹変する可能性があるな。少々肝が小さいがこれは実戦不足によるものだろう。

ある程度の戦場を体験すれば『軍人』として完成された言い換えれば優秀な()が出来上がるだろう。と言っても噛みつかれる危険性を孕んでいる猛犬の方だが。

 

「お姉さんがここまで気にいるとは珍しいね」

「そうね。大体敵か上官だものね」

 

確かに。ここまで素直に気にいるのは初めてだったと今更に気づく。

同性であるというのが一番の根拠であろうが、それ以上に()の経験や知識が語る。

「こいつは伸びる」と。

磨いてみたいと思った。ほんの気まぐれ。しかし私達の持つ全ての知識を与え出来る限りの技術を与えてみたい。私の元で磨いて作ってみたい。

丁度『お隣さん』になるようだし、暇があればお邪魔するとしよう。

 

「ふふ、使()()()じゃないか、あの娘は」

「まぁ、そうね。もしもの時は肉人形にでもすれば良いし」

「んーー、僕は奴隷にしたいなぁー。そろそろお姉さん奴隷にするの飽きちゃったんだよね」

「ならばやめれば良いだろう。」

「ん、そうだねぇ〜。うんそうしよう!お姉さん、現時点を持って僕の奴隷さんを解任しまーすっ!」

「...殺すのか?」

「まっさかぁ!()()お姉さんだからね。総旗艦だし。」

「......そうか。」

 

ふぃーーー。皮一枚で繋がったぜ。

ノイトハイルは時折私を玩具のように扱って弄ぶ時があり、割と殺気を乗せた攻撃や苛めをされた事も多々ある。殺されるかと考えた事は両手では足りない。今回もその類かと邪推したのだが、今回はただ単純に飽きただけのようだ。よかった。

 

「...兎も角、明日から少々予定を変更する」

「具体的には」

「そうだな、実習だ。私達の練度を見せるのは、頼りにされるのは迷惑だから嫌なのだが仕方あるまい。教本を見せる必要があるだろう」

「んー、その点は参考かなぁ。女の子に依存されるのは悪くないけど頼り切りにされるのはウザいからねぇ〜。それで、どぉーするのぉ?」

「...近海、いや日付変更線まで短期遠征を決行する」

「あらあらあらぁ、其処まで気に入ったのね。編成はどうするのかしら。」

 

うるさいわい。私の欲でやるのだ。しかしメリットは大きいしあちらのメリットも大きいからまあ先行投資ってとこだ。

日付変更線はご存知の通り都合よくグニャグニャした奇怪な線なのだが、あの付近はまだ未開放の海域で私達がよくレベリングに使用している海域である。

 

アレだ。1-5とか2-4周回とか3-2-1とか2-4-11とかあんな感じだ。

あそこを一週間連続篭りきりで強制レベリングすると3回で99まで上がる。

これのおかげで新参艦でも一瞬で戦力にする事ができたし、迅速な戦力拡張が出来たのだ。

誰もが死んだ目になるが。

要するに馴染みの戦場だから正直誰でも活躍するのだが、さてどうしたものか。

最近作戦に出撃したのは主に第二艦隊の面々。主に戦艦、空母だろう。

ならば今回は重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦を連れて行くか。

レベリング序でにぽいぽいは確定として念の為川内姉妹...いや川内に熊野、鈴谷。青葉と衣笠もだな。

 

「私を旗艦に大和、熊野、鈴谷、青葉、衣笠、利根、川内、矢矧、夕立、初月、親潮だな。」

「...まぁ妥当かしらね。空母は良いのかしら?」

「む、赤城も招集してくれ」

「うふふ、はいはい。」

 

ニンジャ、鈴谷と夕立以外は早起きの艦娘達だ。恐らく大丈夫だろう。

...いや。夕立はその日当番だな。

鈴谷ならば熊野あたりが起こすだろう。

ニンジャ?妹がしっかりしてるし、やる時はちゃんとやる艦娘だから大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、当番でもギリギリに起きた夕立が「ぽいぃぃぃぃぃぃ!!」って叫びながら集合したのが最後だった。恐らく起こしてくれる艦娘が非番だったのだろう。

 

「では行くぞ。各員乗船せよ!候補生らは私に乗って頂きたい。」

「「「はいっ!!!」」」

 

昨日の事があってか心なしか距離がある男モドキに精神を削られながら、私は妖精さんに指示を出して一式重武装車輌と一七式戦車を一両ずつ寄越してもらった。

 

無論一式重武装車輌は候補生用。一七式戦車は私が()()用だ。

いやー、埠頭を一七式戦車で走ると風が気持ち良いんだよな。

アメストリア陸海空軍の車両にオープントップはないので、海風を感じながら走るのは無理なので、外に出やすい、というか上向きにハッチがある奴に限られるのだ。しかし上向きのハッチとか銃座しかないので、仕方なく私は一七式戦車という幅は5mある平べったさを活用して走る板的な使用法をしている。因みにこれを話したらリバンデヒに冷たい目をされてカイクルからは呆れられノイトハイルからは大爆笑された。妖精さんにも心なしか冷たい目線を向けられるのが一番のダメージだったが。

 

 

 

 

船体側面の出っ張り。ミサイルハッチのある台形のバルジは海水を注排水して姿勢制御をする何気に重要な区画だ。中空装甲にバルジ、姿勢制御と大事な枠割を果たすためにミサイルハッチと骨組み以外の区画は装甲板で囲われた巨大なタンクと迅速な排水が行えるように途轍もなく強力なポンプが配置されている。具体的に言えば、一分で利根川を干上がらせる事ができるキチガイポンプを左右二十機ずつ配備されているからこそ私達アメストリア型戦艦は500cm四連装砲の斉射連射を実現しているのだ。

 

そのバルジの側面に開く注水口が開き、莫大な海水をがぶ飲みしてゆく。

溜まり始めたのか徐々に喫水線が下がり、ぶら下がり状態のタラップが降りてくる。

タラップが埠頭に接するのを合図に注水口は閉ざされ、注水が止まる。

 

「さて、私の船体は大和型以上に複雑怪奇かつ巨大だ。もう遭難すれば数十年単位で陽の目を見る事ができなくなると思え」

 

そう警告してタラップを登って行く。

後ろで唾を飲み込む声が聞こえたが、気にしないでおこう。普通に着いてきたら全く問題がないことだし。

 

唐突だが、私ことアメストリア型戦艦の艦内に入る扉は以外と少ない。

攻撃で軽装甲部が破損したならともかく、万全の状態で艦内に入るには二十ヶ所ほどある三重ロックの水密扉か、露天艦橋から第一艦橋に入るか。そっちもハッチがあるが。

 

電子的・物理的に防御された扉で現在の地球の技術では無理に開けることはまずできない。

原爆が隣で爆発しようがノーダメで凌げるためまぁ物理的には無理だ。薬品もそもそも妖精さん印の特殊装甲は構成分子、原子から違う、()()()()()()()()()()()なので無駄である。そもそも対策してあるに決まっている。

 

一点突破がご自慢のパイルバンカーでも、化学反応で一気に高温で焼き切ろうとしても一切を通さない鉄壁の守備なのだが、同型艦との殴り合いでは...まぁ、無駄に終わる。

500cmやら150cmやら質量の桁違いな攻撃の飛び交う戦場においては「もういいや」って諦められているため直ぐに破損する。

 

特殊装甲は相互に支えあっているから強固なのであって扉や隔壁などの独立した小さな部分ではその硬さを発揮することができないから、防ぐこともできない。

だからその後ろには水密扉があったり、通路は海水が流れ込みにくい構造になっていたりするのだが、周囲一帯根こそぎ消し飛ばされるため徒労に終わっている。

いやさ、150cmなら水密扉で海水は防げるんだけどさ。500cmはさすがに無理なんですわ。

 

あぁ、喫水線30mもあるんだから海水来ないだろって?

いやいや、姿勢制御装置で戦闘時にはタンク一杯に海水溜め込んでるからさ、喫水線が約5mまで下がってしまうから、海水ドバドバ甲板に乗り上げるわけですよ。

後はお察しください。

 

そんな強固(500cm砲弾を除く)な扉が第一甲板には二十ヶ所あるんだが、塔楼付近には四ヶ所しかない。何故なら外付けの階段や塔楼から増設された沢山の銃座やテラスから直接飛び降りちゃう兵士が多いから。そっちの方が早いらしい。

妖怪だからなせる技。もし人間の水兵だったら「効いたよね、早めのアヴァロン」でも直す暇が無くお陀仏である。

 

兎も角、数少ないハッチから入ると、そこは現代艦のような現代的な通路。天井には光量の高い照明が等間隔に埋め込まれ、壁には第一甲板の艦内図に艦章が刻印されており、よく見ると何かの図形が等間隔に刻まれている。恐らく、艦内での近接戦闘用のM75や予備の太刀やサバイバルナイフ、脇差などが入ったウェポンボックスが内蔵されている事を示しているのだろう。距離は...銃撃戦の基本距離である30m毎。なんで拳銃の交戦距離毎にバトルライフルが配備されているのかは理解に苦しむが、どうせ難破や座礁などの非常時を警戒しているのだろう。

この備えが設置されたのは以外にも50年前。

 

とある海洋国家との戦闘時に大規模な白兵戦が繰り広げられてしまい、当時私室にしか配備していなかった重火器や刃物が不足。多くの負傷者を出してしまったらしい。

それを反省にこのように過剰な備えが据え付けられているらしい。

アメストリアはやりすぎなくらいに改善するからこれもその一例だろうか。

 

そんな物騒な通路を二回右折、三回左折した辺りで開けた場所に出た。

それぞれの通路の交差点であり、各フロアへ行き来するEVの乗り場だ。

設計当時はエスカレーターを採用して籠城しやすいように、と考えられていたそうだが移動が途轍も無くめんどくさくなるとの理由でEVが採用されたらしい。

他にも指向性短距離転移装置...つまりゲームとかであるマップで一気に移動できるやつを実装しそうになったらしいが、開発が遅れ断念。

今では移動に不便な区域のみに採用されているらしい。具体的に言えば、船体から独立しているバスケットを持つ砲塔の管制室や端っこの機関室などだ。

 

センサーに軽く手を近づけるとホログラムが起動し、[バスケット移動中]と表示され、その下に行き先を選択する為か、船体各フロアの名称がずらりと並んでいた。

エレベーターのバスケットにもボタン式で大雑把な指定は出来るのだが、隅々まで行きたいとなると、こっちを使用せざるおえない。

 

 

あぁ、言い忘れていたがこのエレベーター、上下左右に可動する。何処ぞのチョコレート工場みたいにな。スペースだけは無駄に有り余っているのでこんな設備や艦内道路、資材運搬用鉄道なども完備されている。といっても普段は妖精さんの遊具とかしているのだが。

資材運搬用鉄道は貨物を乗せるスペースに妖精さんが満載されて走っていた時はビビった。

軽くホラーだったし。

 

しかしこの鉄道、乗ってみると案外楽しい。2路線しかないが、何故か大容量量子変換器を搭載した貨物車があるため格納庫から艦首までF-222を持って行くことも可能だ。

まぁ本来の使用目的は万能生産装置から各所に補修資材の運搬や代替え武装の高速輸送だ。

といっても機銃と装甲板乗せて即席の装甲列車にも出来るように、とのことらしいが。

艦内道路も幅は20m。高さは6mと巨大で、これまた一七式戦車が行き来できるようにとのこと。一体なにと戦うつもりなのだろうか。

営倉も多数確認したし。

 

エレベーターに乗り一気に艦橋まで移動した。

見慣れた光景。防弾の関係か天井は低く、配管や配線が這っている。

体育館のような広さには大量のホログラムが並び、大量のプロセスを消化していることがうかがえる。既に出撃準備は整っているようだ。

 

「適当な椅子に座っておいてほしい。ーー出撃用意!錨上げぇいっ!」

''あいあいさー!''

''鎖ぐるぐる〜''

錨が巻き上げられ、機関の圧力が上昇してゆく。

その莫大なエネルギーはシャフトへと伝えられ、初めはゆっくりと、徐々に回転数が上がってゆく。

 

「零速を維持。大和らが離れるのを待って速度を上げる。」

''ようそろー!''

''わっつあも?''

''そろそろ撃ちたいですぞ?''

「...そうだな。今回は軽いレベリングだ。何時ものセットにしておいてくれ」

''あいあい!弾込めかいしー!''

''いえっさ!''

 

砲身が下がり、薬室に実弾が装填される。

一斉に行われた為、そこら中からガシャンという機械音が響き渡る。

主砲、副砲の叩いたような音から45mm対空機関連装砲のSCARのレバーを引いたような装填音。

といっても45mm対空機関連装砲はガトリング式だから装填音も何もない気がするのだが、気にしてはいけない。

電探を見ると大和ら十一隻は既に埠頭を離れ、水門へ向かっていた。

そろそろ動いていいだろう。

 

「速度上げ。同時に武装動作確認をすませるぞ。」

''砲塔くるくる?''

''薬室、問題なしです?''

''弾倉、もーまんたい?''

 

各武装が順番に旋回、上下を確かめてゆく。

初めは主砲から。

前方三基、後方二基の全幅三分の一の大きさを持つ大和砲をそのまま大きくした四連装砲は己が回れる限界の角度まで旋回。同時に最大仰角である45°、そして最低俯角である-5°までクッソ長い砲身を上げ下げした。

 

二番手は副砲's。

150cm四連装砲、46cm三連装砲は塔楼や煙突などを囲む対空砲陣地の一部を間借りする形で配備されている。理由はいろいろあるが、段々畑状だと一列に並んでいても全基可動するこそができるから、というのが一番だろうか。

ともあれ、対空砲陣地の中にポツンポツンと聳える巨砲も同様に旋回と仰俯角の試験を完了。

 

三番手は対空砲。

実はこれが最大の目的だ。

前々より妖精さんに開発を依頼していた()()が完成したのだ。

 

アメストリア軍においては標準口径である88mmを使用した回転砲身の機関砲。

遂に実装したのだ。88mm四砲身対空機関連装砲が。

初月には20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲を積んであるが、アレの小口径版だ。

それを妖精さんが遂に完成させたのだ。それを私は早速実装。左右に100基ずつ搭載してみた。旋回半径は7m。装甲を含めると全幅は10.4m。77口径と超長砲身で発射レートは1080発/分。つまり毎秒で三発撃てる。これぞ回転砲身の強みだろう。

しかも88mmは榴弾、徹甲弾を含む多種多様な砲弾を装填できる点は強力な武器になる。

今迄迎撃できなかった攻撃もある程度撃破することができるようになるだろう。

そうだな...頑張れば150cm砲弾までならいける。

しかし500cm砲弾は防げない。

 

ならば防げる手段を作るまで。

それで新規開発した()()()

それが【128mm三砲身対空機関連装砲】だ。まんま88mmや20.3糎の拡大発展型だが、大口径故に火力と突破力がある。

だから使用する砲弾は500cmの放出するエネルギーを突破する為に態々作った専用の特殊砲弾。プラスドライバーのように十字に砲弾の先端が加工された専用砲弾。

とある結界が彫り込まれている為500cmでも届く。しかしこれはまだ実戦段階に過ぎないのでこの128mmAAは試験砲という扱いになっており、まだ対空砲陣地の一角に一基のみ配備するに留まっている。

正式採用に至れば左右に50基ずつ配備される予定だ。

その代わり45mm対空機関連装砲が合計700基程減少してしまう。

まぁ必要な犠牲だろうとは思っている。外した45mm対空機関連装砲は島の方にまわした。

 

「こちらアメストリア。大和、そちらはどうか」

『大和です。こちらは既に準備完了です。例の海域に向かうのですね?』

「うむ。日程は二日の予定だが、伸びる可能性もある。食料などはこちらで手配するが、」

『分かっています。念の為二週間分の備蓄を、ですね?』

「...うむ。では向かうとしよう。陣形は複縦陣。速力は70ノットを維持だ」

『了解です。』

 

よく育ってくれたものだ。

私の指示があるや否や、大和が令を発し艦隊が変化する。

各艦が舵を切り、単縦陣から複縦陣へ。その時間実に20秒。

船舶用粒子エンジンが生み出す莫大なエネルギーに支えられた速力と、凌波性の高い船体形状のなせる技だ。

そして増速。ぐんと艦隊の行軍速度が上がり、一気に距離を離されてゆく。

さて、此方も動き始めなければ。

 

「速力40ノットに上げ。行くぞ」

「よ、40ノットっ!?」

「この巨体が、ですか...」

「うむ。伊達にナウルの切り札を担っておらんのでな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、日付変更線近海。

ホログラムに表示される海図にも日付変更線がくっきりと表示され、いつもの海域に来たと漸く実感が戻ってきた。

所謂裏作業だったし、私達は見守るだけだったので特に意識しなかったのだが、ここはかの神通教官が猛威を振るう十八番の海域だ。だから高速レベリングができるんだけどな。

 

ここは駆逐艦から戦艦まで全種がレべリングできる珍しい海域だ。

しかも五十代では4回でレベルアップするので凄まじい経験値効率で、合宿すると三週間後にはlv99に変貌している。

その上この海域に出没する深海棲艦は多彩で潜水艦や水雷戦隊、輸送船団に通商破壊艦隊。そして連合艦隊まで実に多種多様でわりかし役に立つ実戦経験が積めるのだ。

 

「さて、候補生殿。ここは日付変更線に程近い海域で、何時も我々がレべリングに使用しています。ここに来れれば大概の艦娘は高練度となり、百戦錬磨の熟練艦となります。

それが今後の鎮守府の戦力として中核を担うのです。特に谷村中尉、貴官はお世話になるであろう。」

「はっ...どういう...?」

「何、そのままの意味だ。大和、準備は」

『はい、既に完了しています。』

「よし。これから行うのは二個艦隊に別れてそれぞれで戦闘。レべリングを行います。この海域での単艦戦闘は非常に危険なものがあり、一日もせずにK.I.A.となります。

最低でも四隻は必要です。かつ、編成は姉妹ごとに区切った方がよろしいでしょう。連携が取れますから。今後の艦娘装備は我がアメストリア製の高性能な兵器へと置き換わって行きます。貴官らもレべリングをする際は留意してください。そのアメストリア製兵器群を持ってしてもこの海域、付近では単艦は危険なのです。」

 

これは経験に基づく。

戦闘記録の敵艦一覧にはエリートやらフラグシップがゴロゴロ。一部は姫級とやりあって撤退している例もある。その際にはナウル鎮守府では滅多に起こらない全艦大破。しかもゲームで言うHPゲージが1残った轟沈寸前。強者がウジャウジャしてる危険海域なのだ。

 

いずれは殲滅しなきゃいけないのだが、大本営からこれと言って通知もないので、上層部はここを見なかったことにしているらしい。

上層部にとっては戦争が長引くのはデメリットもあるが、政治的観点からすればメリットしかないからな。

特に今の日本みたいなとこだと。軍部が発言権を持った国は悉く滅亡しているのだが、それで反省しないのが人類だ。古代からずっと繰り返しているし、これからも繰り返すのだろう。

少なくとも私達は沈まない限りそれを見続けることになる。

見切りをつけるのが先か、精神がやられるのが先か。他の艦娘は多分ダメになる娘が多いと思われる。トラウマ持ち多いからな。

 

人間の最大の敵たる魔物はズバリ権力だ。

穀物と共に誕生した階級というマモノは現代に至るまですくすくと莫大な血と金を吸い上げて育っている。

「全ては己の権力の安泰の為」

これを至上の行動原理とし、今後戦局を良い方に傾けたかもしれない優秀な芽を保身の一心で潰し、優秀な、後世で傑作と言われたかもしれない兵器を賄賂や癒着で見送り惨敗したり、自分たちにとって目障りな物は全て敵として排除する。

 

これを一般に「老害」「上層部」と呼ぶ。

結局そいつらが居たせいで正確な判断が下せたのにも関わらず保身の為に兵を犠牲にしたり、重大な決断をまげ、敗戦へ突っ走っていったりと、居るだけで害となる厄介極まりない害悪なのだが、症状たる強欲な権力欲による地位や権力の所為で下手に動かすことが出来なくなってしまう。頭を切ってもまた次の害悪が生まれるだけで、根を断ち切らないと無限に湧いてくる蛆虫のような危険極まりない病なのだが、まぁ対処法はある。

民衆が「テメェ邪魔。土に還れ」と主張すればいいのである。

しかし民衆と書いて愚民と読む群衆共は基本お粗末な思考回路しかなく、三流小説のような白と黒がはっきりした物語でしか動くかず、普段は不満ばかり漏らすこっちもある意味邪魔だが必要な厄介な存在なのだ。「民なくして国無し」とあるように民がいるから国として存在できるのだが、その(愚民)は感情で動く制御が難しい塊なので、政府は常に板挾みされる不憫な立ち位置に立たされる。

そんな中稀に愚民の不満を巧みに利用して誘導し、革命を起こさせる自己中が発生する。アレは厄介だ。自分が正義、愚民を動かしているだけで世の中俺の手の中で踊ってると勘違いしてしまっているかなり頭のイタイ馬鹿共だ。

ああいうのはさっさと行動を起こす前に処分するに限る。

愚民が祭り上げて現人神現象が発生して手に負えなくなる。シベリア出兵など良い例だ。

あれは共産主義の感染を防ぐために当時の列強(笑)が兵を送って見事に失敗した。

結果ソ連が誕生し、世界史は大きくブラックな方向へ転がり落ちて行った訳だ。ソ連は兵器開発は優秀だが...うん。人間のレベルが低すぎて私は嫌いだ。

 

ーーードォォォォォオン....

 

 

砲声に意識を戻され、遅れて電探が敵影を捉えたのか、アラームが聞こえた。

砲声は46cmのもの。私の副砲が稼働したと言う事だが、それが示すのは大和砲をつわざるおえない深海棲艦を確認したと言う事。

直ぐに確認すると、アメストリアスペックの大型戦艦が多数。

恐らく私が来た事に対する緊急措置なのだろう。打てば帰ってくるその反応は素晴らしい。レべリングが捗る捗る。

 

「全艦、戦闘用意!格好の獲物だ。経験値に変えてやれ」

『承知しました!大和、出撃します!』

『一捻りで黙らせてやりますわ!』

『さてさて......突撃いたしましょう!熊野には負けられないし?』

『第一遊撃部隊、出撃ですねぇ?ガサ!一番乗り、行きますよぉ!』

『青葉!待ってってば!衣笠、出撃よ!』

『その艦、我輩が貰ったぁ!』

『砲雷撃戦!よーい、てぇー!このまま夜戦だぁーっ!』

『砲雷撃戦、始めます!大和、支援をお願い』

『さぁ、素敵なパーティー始めましょ!』

『敵艦隊発見、合戦準備。撃ち方ー、はじめ!初月、行きますよ!』

『分かっているさ。敵は多いぞ、砲雷撃戦用意!行くぞ!』

 

一斉に軍艦達が動き出す。単縦陣から一気に二つの単縦陣へと乱れぬ艦隊行動で分裂したかと思えば更に分裂。合計4つの集団に別れそれぞれで砲雷撃戦を開始した。

主に姉妹ごとや特に中の良い艦娘達で集まって砲撃。蹂躙を開始している。

アメストリアスペックに最大改修の装備だ。強いに決まっている。

 

現に群がってきていた水平線を埋め尽くす、ざっと1000隻を超えていた大艦隊も前列が壊滅しており、ごおごおと燃え黒煙が立ち込める中連発した炸裂音があちこちから聞こえてくる。

駆逐艦や軽巡洋艦は至近距離...10m以内まで一気に肉薄して集中砲火を浴びせる機動性に物言わせた変態戦闘を行っており、重巡洋艦は基本的に空からやってくるレシプロ相手に対空射撃やその親元の根絶を主に担当。

自然と役割が分担され、効率的に殲滅が進んでいる。

 

候補生達はその戦いっぷりに食い入るように見ている。

いやいやこれあんま参考にならんから。

......それにしても妙だな。何時もなら噴進機がわんさか押し寄せてくる癖に今回はレシプロだ。親元を見ても護衛空母だったりと骨董品ばかり。

これはあれだろうか。在庫処分的な、私達に処理を押し付けてきている感じだろうか。

何か癪だ。罠な気がする。

 

''艦娘さん!左舷に高速で接近する敵軍集団を確認です?''

''ですです?''

「承知。青葉、衣笠、夕立は処理に当たれ。喜べ。éliteだぞ」

『りょぉーかいです!ガサ、先に行きますよー!』

『ま、待ちなさい!青葉ーっ!』

『ぽいぽいぽーい!!!』

 

派手に水柱を上げて突撃する三隻。

先制攻撃として数十発の砲撃を食らわると敵艦隊の先頭にいた警戒艦隊が火の玉となって爆散。周囲に破片を撒き散らした。

しかしそれには目もくれず三隻は速度を更に上げて突撃すると今度はグラニートを発射。

合成速度によっていつもより気持ち速いグラニートは敵主力と思われる大型戦艦に突き刺さり船体を真っ二つに叩き割る。二つになって沈み始めた船体を突き破って突撃した青葉はそのままキックして一気に舵を切ると周囲にいた深海棲艦に主砲弾をばら撒いてゆく。

ドリフトしているにもかかわらず一発もハズレがないのは青葉の練度が高いお陰だろう。それを見て焦ったのか衣笠は増速して青葉の餌食となった戦艦の隣の戦艦にラムアタック。艦首を切断すると犠牲者を置き去りに航空母艦を平らげてゆく。

...いやらしいミサイルの使い方をする。SM-2を45mm対空機関連装砲で撃ち抜いて煙幕として利用したりワザと自分に当てて急激な方向転換を実現している。これはある程度装甲のある重巡洋艦だからこそできる力技だ。軽巡洋艦でやろうものなら.........いや、川内はやってたな。神通も。...あれ?

 

『よりどりみどりっぽい?でも、夕立はちびっこを平らげてあげる!』

青葉姉妹の後から続いた夕立は衣笠の犠牲者を盾として利用しつつ航空母艦に張り付いていたものの衣笠に軽くあしらわれた深海棲艦の軽巡洋艦、駆逐艦を次々とワンパンしていった。

流石バ火力。しかもそれだけに飽き足らず、先程衣笠が披露したミサイルを己の船体にぶつけて転舵する高等テクニックをさも当然のように使ってスケートで障害物を避けてゆくようにスルスルと奥深くに侵入。固まっていた敵水雷戦隊を三つ殲滅した。

何だかの狂犬。神通も教えてなかった高等テクニックを何故にさも当然のように使ってるんだ?

もしかして、もしかしてだが、衣笠のを見取り稽古に一発で習得したのか?

もしそうだとしたら夕立は戦闘の天才だろう。天性の才能を持っているに違いない。

あ、でも突っ込み癖は治っていないようだ。

深く入り込みすぎて戦艦群に包囲されている。ざっと三十隻か。

 

『ぽ、ぽぃぃ〜〜っ!戦艦は反則だってばー!』

「はぁ...妖精さん、主砲、てぇー!」

''おけおけ。''

''かしおまりー!''

''ふぉいあー!''

 

私の声で第一砲塔が旋回し、三番砲のみが僅かに仰角を取ると、一拍置いて閃光が放たれた。

遅れて轟音が響き渡り、同時に囲んでいた敵戦艦と、直線上にいた深海棲艦を全て抉り取って遥か後方で大爆発。大きな爆炎が確認できた。

 

『アメストリアさん!ありがとうっぽい!』

「いや、礼には及ばん。しかし突撃は程々にな。」

『はーい!分かりましぽぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!?』

『おぉ!?!?う、浮いてますぅ!?』

『きゃぁぁぁぁ!?!?』

 

突如、夕立のいる辺りがナニカに覆われ、見えなくなった。

いや、そんなものじゃない。青葉や衣笠のいた区域も纏めて、何か下から来た物によって全てが見えなくなった。幕ではない。大型の、それも超弩級の巨大構造物だ。

何が起きたのか、分からない。

 

慌てて窓に駆け寄り、構造物の全貌を掴む。

見上げても見切れ、首が痛くなるほどに全高が高い意味不明の物体。

莫大な量の海水を押しのけたせいか未だにその物体の周りには海水が舞い上がっており、所々にポツンポツンと黒い点がある。

あれは......ーーーッッッッッ!?!?

 

あれは、船だ。

先程まで駆られていた深海棲艦達。生存艦、残骸問わず、全てが打ち上げられていた。

それが意味する事は、艦娘もまた巻き込まれたという事。目測で測ったこの超巨大構造物は全幅は軽く1kmを超え、全長は計測不能。おそらく5km以上。

こ、こんなのを深海棲艦は持っていたのか...?

こんなの範囲殲滅ができる最強兵器ではないか。

......カイクルがやられたのは、コレか?あの船底の大きな凹み。

まるでパイルバンカーにつらぬかれたような弾痕ではなかっただろうか。

 

やられた!

 

「全艦!緊急事態だ!速やかに戦闘を中止し、一刻も早く全海域を離脱せよ!どこにあれがあるか分からないぞ!」

 

そう。わからないのだ。三次元立体全天電子探査機を持ってしても、探知できたのはただの海底。今回の巨大パイルバンカーの射出口と思われる巨大な穴以外、怪しい点が伺えないのだ。

 

「候補生!座席に座ってベルトで固定しろ!これから何が起こるか予測不能だ!」

 

慌ててベルトを締め始める候補生を横目に私は探知レベルを最大に拡大して警戒。そしてやっと沈み始めた巨大パイルバンカーの方向へ急行する。

目が良いから分かってしまう。見えてしまう。真っ逆さまに落下してゆく数多の艦艇達が。

既に着水した深海棲艦の末路が。

ビルから自殺したように、空中分解した機体のように。跡形を残さず爆散する。

私は青葉達のそんな姿を見たくない!...でも対処策は見つからない。

 

どうするか、分からない。

でも、動くしかないだろう?

 

しかし、青葉達は私の予想を超えた対応をした。

Aチームよろしく、主砲を海面へと放ち、姿勢制御をしてのけたのだ。

でも、現実はそこまで甘くなかった。

 

海面には深海棲艦の残骸が山となって漂っている。

その中には先程真っ二つになった深海棲艦の残骸もあった訳で、それがナイフのような役割を果たし、青葉はそれに見事に着弾。

船体後部が切断されてしまう。機関とスクリューが持って行かれ、浸水が始まったのか徐々に沈み始めた青葉。

更に不幸は続く。其処に深海棲艦の駆逐艦が着弾。上部構造物に追い打ちをかけた。

不味くないだろうかあれ。

しかし私もそれどろこではないのだ。

 

「た、対空射撃開始!何としても落とせ!」

 

私も向かった訳だから、私にも深海棲艦が降り注いできたのだ。

様々な艦種の深海棲艦が急降下爆撃を敢行してくるのに対し、私は新兵器の88mm四砲身対空機関連装砲と128mm三砲身対空機関連装砲をフル活用。

駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦位なら迎撃できる。

現に爆散した駆逐艦の破片が降り注ぎ、第二主砲の横に突き刺さってゆく。

これは私の船体の至る所で見られ、あちこちで残骸が直撃し、一部では火災が発生している。

しかし私はいい。それよりも青葉を救出しなければ!

 

ーーー衣笠と夕立は?

何処かと探し出すと、衣笠はすぐに見つかった。

艦首を海面と垂直に向け、突入したところだったからだ。

200m級の水柱を上げながら着水した衣笠は意外にも直ぐに浮上した。

しかしその姿は無惨の一言。

 

艦首は完全に潰れ、衝撃に耐えられなかったのか船体前方にあった主砲三基は根元から粉砕されており、押し潰された主砲の残骸が艦橋に直撃。装甲のお陰かある程度は防げたようだが、発射機構等、機構の都合上剛性が高い主砲周りは比較的原型を留めていたせいか、尾栓付近の部品が突き刺さっているようだ。

しかし指揮所には破片が届いてはいないようだ。生存率は高いだろう。

 

「......青葉、応答せよ」

『ーーーーーー』

「...衣笠」

『こっちは大丈夫よ!私は良いから青葉を!』

「承知。直ぐに回収する。」

 

急いで、しかし慎重に船体を進める。

未だ降り注ぐ破片共は対空砲に任せ、残骸は圧し潰す。

私が発生させる波の影響を青葉達にできるだけないように、慎重に慎重に舵をとる。

スクリューの回転速度を変更しても、それが反映されるまでにはそれなりに時間がかかる。

よって私は未来を想定してスクリューの回転速度を調節して舵を取らなければならない。

海流の最新データや漂流する残骸の精密な位置データそれら全てを収集して解析。軸に当たらず、かつ不必要に波を発生させないように細心の注意を払って操舵している。

 

これ。比較的に、だが中央演算処理装置にかなりの負荷をかける。

塔楼のあらゆる出っ張りなどに配置された各種観測機器は勿論、その予備機材までもフル活用しデータの収集を続ける。

巨大パイルバンカーが他にもいるかもしれないし、あったとしてそれの観測や何か予兆などの情報を集めなければならない。新兵器が登場した場合、まずはその新兵器に関する情報を観測、収集をしなければならない。

知らなければ対策のしようがないからだ。巨大パイルバンカーはまさか海底を移動しているとは考えづらい。海底の振動も観測されていないしな。

だとすればパイルバンカーは固定式。埋まっている状態を探知できれば、それだけでも十分な成果が得られる。なんとかしてパイルバンカーの位置を特定しなければこのままでは連れてきた艦娘達に甚大な被害が及んでしまう。既に重巡二隻が轟沈寸前まで喰われたのだ。

 

 

ーーー夕立、どこいったし。

駆逐艦だからよく飛ぶのは理解できるが、どこいったのだろうか。

未だ滞空しているとは考えられない。曲がりなりにも100mを超えた特殊鋼の塊だ。

割りと重い。既に落下していてもおかしくはないのだが。

 

「妖精さん、夕立はどこに落ちている?」

''さぁ?''

''わからんですなー''

''でもでも船体に駆逐艦が軟着陸してきてたです?''

''ですです?''

''第二艦橋潰れたです?''

''帰ったらまた改造です?''

 

......なんという事でしょう。

恐らく夕立は船底をうまい具合に第二艦橋の塔楼に当てて、クッションにしてのけたのだ。

確かにさ。間違ってはいないとは思うのだが、私にも気付かせんとは...

いやまぁ青葉を助ける事を第一にしていたから船体に刺さってくる残骸は気にしていなかったが、知らぬ間に駆逐艦が刺さっていたとは。

 

駆逐艦...刺さる...ウッ、アタマガ.......。

 

「...夕立、一応聞くが、無事か?」

『勿論っぽい!ちょっとヒヤッとしたけど大丈夫!』

「...そうか。そのまま待機していてくれ。妖精さんが回収する。妖精さん、夕立は船体に固定してくれ。青葉、衣笠は内火艇格納庫に回収。急いでくれ。」

 

下手すれば轟沈してしまう。幾ら硬くて丈夫な特殊鋼製の船体だろうと、こういうスケールの違う物理による攻撃には耐えられない。空軍じゃあるまいし。

側面のハッチを解放すると、妖精さんがテキパキと回収用クレーンを利用して喫水線が大幅に下がり甲板が沈み始めていた青葉の船体にワイヤーを張り巡らせる。

このワイヤーも妖精さんの特製らしく、一本で大体10000tぐらいまでなら支えられるらしい。無論釣りではないので複数のワイヤーを駆使してバランスをとって釣り上げる。

私も艦娘を救助する為に格納庫で作業を見守っている。

 

妖精さん達は手際良く青葉の船体にある出っ張りにワイヤーの金具を取り付けてゆく。

一瞬にして吊り橋のような状態になった船体はゆっくりと持ち上げられてゆく。

破口から大量の海水を吐き出しながら徐々に露わになる無惨な船体。上部構造物には残骸の直撃で艦橋後部から後部主砲に至るまでの広範囲をペシャンコに潰され、

切断された後部は断面図を見せながら海水を吐き出す。随分とコンパクトになってしまった船体。これは竜骨も逝ってしまっている為、作り変えるクラスの以前加賀達にやったような大工事が必要になるだろう。

また妖精さんが荒ぶるのか...考えたら胃が痛くなってきた。はぁー...仕方ない。覚悟を決めるか...

 

あぁ、そうだ。なんでこんなに落ち着いているかというと、私の到着まで青葉が沈没していなかった為だ。これは艦娘の生存を示す確定的な証拠だ。

艦娘至上主義を掲げる私としてはすぐにでも行きたいのだが、まずは船体の回収が先。

艦娘を下手に傷つけて轟沈判定をもらっては堪らない。

 

衣笠だが、船というのは艦橋より前を失っても案外なんとかなるもので、艦首を切断してもそのまま寄港する事も一応可能だ。曳行は必須だが。

駆逐艦みたいに装甲があってもないような艦はそれが顕著だ。

駆逐艦は艦橋より前ならば脱落しても浮ける。これは重巡洋艦でも同じ事だ。と言うのも船の重量を占める機関は中央寄りの後部にあるのだから重心的にも前が軽くなってもある程度は大丈夫なのだ。すぐには沈まない。

逆説的に言うと後部を失ったらかなりマズイのだ。

重心的に前に傾く事になり、艦首が容赦なく海面を切り裂きそのまま沈みかねない。

これはアメストリアスペックの場合な?通常艦なら折れた時点でそこから沈んでゆく。

色々と常識が通じない私達アメストリアスペックだからこその安全?策なのだ。

 

緊急性が高いのは衣笠より青葉。だから先に青葉を収容した。

それだけの話だ。

クレーンによって格納庫の奥に搬送された船体は即席で用意された船渠に降ろされるとワイヤーをそのまま利用して床の金具と固定。横転を防止する。

同時に艦内工廠から急行したらしい工廠妖精さんがわらわらと駆け寄り船体の状態を確認し始める。それを脇目に私は一気に艦橋に飛び移ると青葉を探す。

青葉とてバカじゃない。とっさにどこか頑丈な所に逃げ込んだはず。

 

蛇足だが、アメストリア海軍史に残る大事件が存在する。

一言で言うなれば、海上での重巡洋艦と重巡洋艦の正面衝突。全速力での、だ。

これを引き起こしたのはまぁ御察しの通り最上と三隈だ。

とある作戦の遂行中、航行装置が誤作動を起こしていたらしく、二隻の進路が重なっていたらしい。しかも生憎の濃い霧の中を航行していたため双方気づいた頃には衝突。

それぞれの艦首が鍔迫り合いの後に最上の艦首が三隈の前部船体を切り裂いて機関まで達してしまった。無論最上の船体も無事では済まず、艦橋より前は全損。互いに艦首を吹き飛ばしてくっついた。

艦橋には主砲があり、当然予備弾薬が満載されていた訳で、大爆発。互いの船体を吹き飛ばして周囲に残骸を振りまいた事件がある。

実戦だった為に攻撃と勘違いした艦隊は戦闘体制に移行。

誤射が多発し味方同士で甚大な被害を齎した最悪の事故だった。

この時、当時の最上の艦長は至近戦闘を愛する変な奴だった為艦橋に乗員が掴まる用の柱を増設したり、防弾用の衝立を用意していた。

これが功を奏し艦橋要員は大して怪我もせずに済んだらしい。艦首の乗員は全滅したが。

戦死はしていないからな?すり潰された如きじゃアメストリアの兵士は死なない。

兎も角、この時の柱や衝立はある程度の効果があると考えられ、重巡洋艦、戦艦の多くにそういった設備が増設された。私達アメストリア型戦艦は大きすぎて突っ込まれても大した衝撃は発生しないとしてスルーされたが、重巡洋艦には大きな利益となった。

後に矢鱈突っ込んでくる敵と戦闘になったからだ。毎回衝突されてかなりの揺れだったらしいが、柱があったおかげで吹き飛ばされる乗員はゼロ。落ち着いた対処が出来たらしい。

 

 

というわけで、重巡洋艦には衝突に備えて衝立が設置してあるのだ。

その裏を見れば、ほらいた。

衝立に背を預けて息を荒くする青葉。

見たところ出血等の怪我はしていないようだ。まぁ『被弾は』していないからな。

船体の破損は骨などの中身に影響するのだ。

 

「青葉、無事でよかった」

「これは...無事なんですかねぇ...」

「生きているだけ儲けものだろう。立てるか?」

「いえ、両足の骨が粉砕されてまして...あはは」

「機関は?」

「殆ど持ってかれましたけど、まだ二つだけ生き残ってます。最低限は維持できますよぉ〜」

「そうか。既に妖精さんによる応急修理が開始されている。エネルギーも外部から供給しよう。まずは貴官の治療が先だ。失礼する」

 

脇と両足に腕を通して持ち上げる。

青葉は顔を顰めたものの、声には出さない。本当に強い娘だ。

直ぐに医務室に転移して妖精さんの手を借りながら治療をしてゆく。

と言っても両足に治癒符を張って包帯で固定するだけだ。

服を脱がすとそこら中に内出血、打撲、骨折が広がっており、至る所が紫色に変色していた。

コレに耐えていたのか。私も割と頻繁にあったのでコレの痛みはよく分かる。

骨折は外から強烈な力で思い切り抑えられているような痛みがあり、打撲はそこの感覚がなくなる。残骸などが突き刺さっていないだけマシだろう。私は磔にされたから。

うん。不幸だわ...

 

そうそう、最近発見したのだが、治癒符は重ね貼りによって治癒力が格段に上昇することがわかった。以前またノイトハイルに夜這いを仕掛けられてそのまま右足を折られたのだが、その際にヤケクソで5枚ほど重ねて張ってぐるぐる巻きにしたら翌日には完治したのだ。普段なら骨折は完治までに一週間ほどかかる。

 

この発見で急速な回復が可能となったのだ。

これでバスクリンとはおさらば出来る。今回も利用してそれぞれに5枚ずつ治癒符を張り付けて包帯で固定する。

他の骨折箇所にも治癒符を5枚ずつ張り付けてガーゼで固定する。

打撲程度なら一枚で事足りる。胴体がミイラ状態になったのは...なんだかデジャブを感じない事もないが、まぁ出さないだろう。

 

明日までは絶対安静を言い渡す。

副砲が稼働しているらしい。500cm四連装砲や150cm四連装砲といった人外クンは青葉に配慮してか使用せず、積んであった46cm三連装砲や側面砲の30cm連装電磁力砲や20cm連装砲を使っているようだ。

慌ててクレーンが内側に引き込まれ、装甲板が降りてくる。

引き込まれた装甲板はそこまで早くなく、ゆっくりと閉まってゆくので、滑り込みで砲弾が入ってくる可能性が否定できない。一応、私も妖精さんを抱いて調べて衝立の裏に滑り込む。

 

''艦娘さん艦娘さん、敵さんシップチェイスです?''

''てきぜんとーぼーです?''

''脱走者は銃殺です?''

''ですなー''

''ぴぃ〜!''

「追撃しろ。取り逃がすのはまずい。」

''かしこまり?''

''両舷はんそー!''

''追いかけっこです?''

 

ぐん、と慣性に襲われる。

追撃を開始。弾薬はゴリゴリ削れているのが感覚で分かるが、特に気にしない。

念の為予備弾薬を万能生産装置で生産を開始。運搬は艦内鉄道だ。

こういう時に使える。と言っても艦中央部にある万能生産装置と主砲とは1kmは離れている為それなりに時間がかかる。何しろ主砲砲弾は一発がティーゲルlクラスの重量を誇り、かつ〔弾薬〕形態でも主砲砲弾の大きさは変わらない為鉄道に載せようにも数発しか積めないのだ。

 

そこで私と妖精さんは考えた。

万能生産装置で生産し、それをそのまま量子変換器にin。

そしてその量子変換器を鉄道で運べば前者の方法と比べて遥かに効率的かつ効果的に〔弾薬〕の輸送ができる。この方法は他の物にも応用できる為、かなり便利だ。

というか妖精さんがこの方法を取っていなかったことが驚きだ。普通こう考えん?折角マジカルアイテムあるんだから利用しないと損だろうに。

あ、でもアメストリア兵器は術式の無効化や量子変換器の使用不可を前提にした設計、運用をしている節が見受けられる為、使わなかったのかもしれない。

いざという時に量子変換器に頼り切りで何もできなかったら笑えん。

 

話がずれた。衣笠を救出せねば...

 

 

 

 

 




さてさて遂にカイクルに一矢報いた深海棲艦特製の兵器が初登場です。
ずばり。

【巨大パイルバンカー】

です。まんまです。いやね、敵側の兵器とかざっくりとしかい作ってないので、一秒で考えた適当な名前です。



さて、今回から新章な感じです。
言うなれば「進駐編」です。意味は皆さんご想像下さい。
一気に加速...するかもしれません。


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