超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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なんかさ、遅れるのが当たり前みたいになってきて怖くなった諷詩さんです。
本当にごめんなさい...何かやる気スイッチが中々インに成らなくて何をしようにもその場しか楽しくない状況が続いて、学業の方ももう高校システムに移行し始めて成績が爆落ちしたりで一人ネガティヴキャンペーンしてました。はい。
誰か活力の補給法を教えてください...

→劇場版行ってきたらそこそこ回復しました。
帰還聞きながらぽちぽちしてます。


74. アハトアハトは浪漫だと思う(迫真)

''敵さんの砲弾来ます!''

''500cm砲弾です?''

「...何発だ?」

''40発です?''

''でもでも一部迎撃できないのがあるです?''

よりにもよって深海棲艦駆逐艦のラムアタックが来ているというのに...!

迎撃できないのは歯痒いが今は砲弾の迎撃が先だ。

「主砲一番、砲撃止め。目標変更。」

''一番、射撃やめるです?''

''ストップするです''

''撃つのやめるです?''

「弾種、三式弾。目標敵500cm砲弾。迎撃始めー!」

一番砲塔が砲撃を止め、僅かに射線を動かした。

砲身も四本それぞれが別々の角度に仰角を上げ、三式弾を発射する。

轟音と共に激しすぎる閃光が迸り、白い塗装の砲弾を飛ばす。今までにも言った通り主砲の射撃精度はかなり高いから徹甲弾をごっつんこさせる舐めプでも良いんだが、万が一があるといけないので確実に対象を消せる三式弾を採用した。気化弾だしなアレ。

飛んできた40t以上の鋼鉄の塊に可燃性の液体が塗りたくられ、発火。

刹那、砲弾の全域が炎に包まれ砲弾ごと消失する。

しかし徹甲弾がいたようで、三式弾の迎撃にも耐えたようだ。一秒で1kmを進む500cm砲弾にとって次弾は意味を成さない。距離は950m。もう主砲は間に合わない。

せめてもの抵抗のして暇してた45mm対空機関連装砲の片舷を動員して迎撃してみたが回転による物理的な結界が発生しており、45mmという装甲車くらいならワンパンできる砲弾も弾道が歪められ、命中さえせず。まぁ元より徹甲弾なのだから表面に傷をつける程度だろうがな。

「応急班、手配しろ」

言うが先か、船体に九一式徹甲弾が船体に突き刺さった。

対空砲陣地を何もなかったかのように貫通した砲弾は構造物を破壊して進み、適当な位置で爆発した。10t以上のアホみたいな爆薬が炸裂し、好き勝手に爆風が駆け抜け、水密扉を張り倒し壁をなぎ倒す。思わず吐血し、黒々とした血液の塊が吐き出されるが、すぐに袖で拭い、主砲の砲撃を再開する。

「お姉ちゃんっ!?」

側面より盛大に爆炎を上げた私が見えたのだろう。比較的落ち着いているが焦りが隠せていないリバンデヒの声が聞こえてくる。

カイクルやノイトハイルは、と見ると加賀や赤城の方に集中攻撃がされておりそれの防衛に回っているようだ。絶対干渉結界はこの距離だと互いに重なり合って自爆するからな。というかそもそも航空母艦に絶対干渉結界は積んでいないからな。戦艦なら絶対...とは言えないがある程度使える結界発生装置を妖精さんが試作第一号を開発した所だ。実戦に使えるやつな。実証実験とか色々としてないけど。

 

「引き続きリバンデヒは攻撃を続けてくれ。私は特攻を対処する。」

「了解よ。さっさと処理しなければ艦娘達に被害が及ぶし...」

応急班が駆けつけ、抉られた場所を重点的に消化活動を開始したようだ。なんかムズムズするし。しかし15t位の炸薬とあって体育館ぐらいはリフォームの犠牲になったはずだ。かつ配線や配管、薬莢の投棄通路など様々なものが通っていたため大損害。46cm三連装砲の一基が薬莢廃棄通路がやられて使用不能。対空砲も命中した点を中心になぎ倒され押しつぶされている。取っ替えなきゃならんくなった。めんどいのに...

''ラムアタック、来ます!''

''敵速120ノット以上!''

''距離156mです?''

''貫通はないです?''

''でもでも歪んじゃうです?''

''潜れないです?''

''最大戦速だせないです?''

しっかりと艦橋に据え付けられている机にしがみつく。

120ノット(216km/h)で2000t以上の鋼鉄の塊が突っ込んでくるのだ。衝撃は想像に難しくない。

金属のひしゃげる音が悲鳴のように響き渡り、船体が激しく揺れる。

「つぐぅっ!?!?」

姿勢制御装置が緊急稼働する。慣性も加わった恐ろしい威力のラムアタックは船体に命中。かき混ぜられたような激しい痛みが脇腹あたりからズキズキとくることから貫通したのだろう。一体どこに...?

「........被害報告急げ」

''船体にドッカンした感じです?''

''隼が大破した感じです?''

.........なるほど。格納庫に突っ込んできたのか。格納庫は隼を下すために唯一船体がカットされた比較的弱い部分だ。しかしそれは分かっていたことだし、対策にトラス型になる展開型の骨組みが内側に張られており、かつ扉に当たる装甲は一枚モノ。縦横に交互に重ねたとりわけ頑丈にした部分だし、防水機能のために水密壁のように機構を仕込まず、純粋に鉄板がぴったり重なり合うように設計されていたし、後付けの防水材も張られていた。しかし、誰が駆逐艦の120ノットでの直撃を想定するだろうか。そんなの500cm砲弾よりも威力高いし。装甲も無意味になる。

 

だけどさぁ...ないわ〜。(ドン引き

お陰で見事に格納庫の隔壁は食い破られ、駆逐艦が艦内に突き刺さるという世にも珍しい珍事が発生した訳だ。

ごっつんこして艦首が切れた〜って言うのはよく聞く話だが。船体に駆逐艦刺さった〜は聞いたことないし見たことない。ヤバいと焦りつつ確認してみると、何か対策していたのか駆逐艦は無傷。隔壁の残骸に混ざって色の違う鉄板がある事から艦首あたりをギチギチに包んで突っ込んできたんだろう。つまりこれは計画的に実行された対私用の作戦であり破れかぶれや深海棲艦特有の根拠のない突発的な行動ではないということ。

 

....待てい。駆逐艦無傷やん。つまり、主砲も生きている訳で......

「ぐふぅっ!?......ぐぬぅ...妖精さん、応急修理班を寄越してくれ...」

絶賛艦内で12.7cm砲を乱射されている私です。

グサグサと釘を思い切り内臓に突き立てられているような生々しい感覚と共に想像を絶する多量の吐血と肉片を吐き出す。

思わず蹲り胸に手を当てて白衣を握りしめる。ズキズキとかそんなもんじゃなくもう痛い。とにかく痛い。やっぱ私って内側の攻撃に弱いなって軽く現実逃避しつつも鼓膜を割りかけていたインカムを毟り取って捨てる。心配は嬉しいけどうるさいっての。今痛いんだから...

「......妖精、さん...戦闘班を、緊急編成して、駆逐艦の...武装、を潰してくれ...」

''あいあいさー!''

''じゃけんアハトアハト使いましょうね〜''

''なおすです''

''れっつごーなのです!''

トタトタと駆けてゆく妖精さん達を横目に麻酔...そうだな、モルヒネあたりか。

注射器を作り出して乱雑に突き刺すと押し込む。少なくとも艦娘には薬品が効くことがわかっているからな。利用させてもらった。

幾分か痛みが無視できるようになってきたので熱を持っている腹を中心に治癒符を貼り付けてキツく包帯を巻く。まだやらなきゃならない事があるのだ。転移する。

 

 

 

転移した浮遊感に目を開けると激しい銃声と爆発音が聞こえてくる。妖精さんが武器庫から運んできたのか大口径武器の薬莢がそこら中に転がりまくっており、12.7cmと思われる軽くよく響く砲声も聞こえる。

 

まだ主砲、あるのか...ならばあれがいいだろう。

[88mm歩兵携帯砲]と呼ばれる妖精さんの自信作。実の所アメリカでの救出作戦で使う予定だったのだが前倒しだ。出し惜しみしている余裕ないし。

 

この88mm歩兵携帯砲はその名の通りかの有名なアハトアハト。アレを歩兵が撃てるように作り直された悪魔の兵器だ。口径長は48。四号シリーズ後期型と同じだな。口径は違うが。

例の如くブローバック式の装填機構に量子変換器の組み合わせで連射できるおまけ付き。

銃のように構えるのではなくキャリングハンドルとグリップを握って腰だめで撃つ。

全長は48口径長とあり480cm。4Mを超える深く考えるのがアホらしくなってくるこの兵器は大体のものに有効で関係なく吹き飛ばしてくれる助っ人的存在だ。

今回は遠慮なく使用させてもらう。

やや近未来的デザインだが戦車から引っぺがしてきたような外見のそれを構え、腰を下ろす。

しっかりと足で踏みしめ、腹に力を入れる。そしてグリップのトリガーを引き絞った。

88mmの砲声が響きまくり、足元にM634とは比較にならない巨大な薬莢が弾き回る。

予想以上に衝撃がなかった。駐退器が四本にマズルブレーキ。下方向に衝撃を逃がすために重りが移動するピストン機構まで組み込まれているためアレだな、芯に入ったホームラン打った時くらいの衝撃で撃てた。なにこれこわい。

「...中々使えるな」

「...中々使える、じゃないわよっ!!」

後頭部に強烈な打撃が入り、思わず88mm歩兵携帯砲を取り落としてしまう。

「連絡がつかないから心配してきてみたら...お姉ちゃんなにやってるのかしら。妖精さんも奮闘しているのだからお姉ちゃんは休みなさい。」

「し、しかし駆逐艦が刺さって...」

「黙りなさいアメストリア(一番艦)。思い切り内臓を二つ以上やられている姉に戦わせる程私達は落ちぶれてないわ。」

...はっきり言われたよ私。というかリバンデヒからアメストリアって呼ばれるの初めてかもしれん。大体「お姉ちゃん」だし。艦娘ならまだしも妹達に呼び捨てされた事はない。

.......夜?ノーコメントで。

「う、うむ.......すまない」

「いいわ。すぐに医務室で治療を受けなさい。この駆逐艦は私が退けておくし、穴も塞いでおくわ。」

「任せた。...すまない」

そう言って素直に転移する。

 

駆け寄ってきた医療科妖精さんにされるがままにされながら、考える。

敵さんはもう壊滅状態。恐らくノイトハイル辺りが残りの敵を喰らい尽くすだろうからあまり考えなくていいだろう。四隻アメストリア型戦艦がいるんだし。

弾薬の消費は...うん。目をつむろうか。工場行きだがまぁ仕方ない。今回はイレギュラーだったんだから。練度おかしかったし。

損傷は...うん。工廠行き待った無しなんだが、私考えた。対空砲、弱くね?って。

現在我がナウル鎮守府が正式採用しているのは45mm対空機関連装砲のみだ。あとは仰角がいい12.7cmや15.5cmの砲しかない。しかしそれは主砲だし、そもそも対空砲は対戦闘機用に配備しているからまぁ問題はない。しかし私達はそうはいかない。ある程度装甲を持った対象を叩き落とす必要がある。アメストリア型戦艦だけは規格外の戦闘に駆り出されるんだし。

45mm対空機関連装砲3500基7000門の威力は凄まじい。しかし45mmとあって戦闘機は落とせても飛来する砲弾に対してはあまり有効だになりえない。従来の砲弾なら木っ端微塵だがアメストリア製の初速の早い砲弾はいかん。

しかもアメストリア型戦艦には高角砲がないのだ。

45mm対空機関連装砲は「砲」なのだがそうじゃなくてさ、12.7cm高角連装砲とかああいう感じのがない。そこらへんはミサイルに任せているし。

取り敢えず対空砲強化に関してはこれが終わった後時間ができた頃にでも妹たちに聞けばいいか...

''かんむすさんかんむすさん、治療符の効力であと40分くらいで治るです?''

「...そうか。すまないな。今回は私も至らぬ所だ。」

''いやいや、別に大丈夫です?''

''毎回修繕に弄れるからけっかおーらいです?''

''格納庫改修できるです?..

医療班の妖精さんに混ざってつなぎ姿の妖精さんがいた。

...というか「改修」という言葉に不穏なものを感じるのは私だけではないはず。

だってあの()()()()だぞ?アメストリア型戦艦をバーナーを使ったからといって一瞬で建造したり魔が差して核兵器ポンって作っちゃうあの妖精さんだぞ?

今度はどんなことされるか分からない。

「.......程々にな...」

''最近作ってないです?''

''隼もこわれたです?''

''なかみもぼろぼろです?''

''水密壁かいぞうするです?''

''こんどは駆逐艦もふせぐです?''

''いやいや、軽巡もふせぐ〜?''

「......。」

もう、いいかな。うん。

人...艦生、諦めも大切だろう。今まで散々精神面で苦しめられている のだから、いい加減慣れてきた...........と、思う。

 

「...入るわよ。一応、破孔は鉄板で塞いだわ。あと私達の方にも突撃してきて、カイクルに命中したそうよ」

「...何?」

私だけでなく、妹達にも?

それは頂けないな...赦せん。このアメストリア型戦艦の分厚い装甲をもってしても防御できない危険な攻撃。妹達に命中したら、私と同じ被害...それよりも大きな被害が出る可能性だってある。例のミッドウェーでのカイクルが受けた攻撃ってこれだったのだろうか。

あれも船底に大きく凹んでいた。今回私は格納庫に命中したからこそ船内に突っ込んできたが、船底にぶつかればああなるのではないか?

ドックでカイクルを確認した時の事を未だに強烈に覚えている。

水を抜いて船底を見たとき、何か鋭角の物が衝突した形跡があった。無論修繕のためにわざわざ叩いて直した。アホみたいに時間かかったが。

 

「別に貫通した訳じゃないわよ。少しだけ凹んだだけよ。戦闘に支障はないわ」

「......ノイトハイルは?」

私、カイクルに被害があったのは分かった。

じゃあ、リバンデヒとノイトハイルはどうなんだろうか?

その被害によって深海棲艦のボコり具合が変化する

「...ノイトハイルに乗っかってたわよ。」

 

...

 

......

 

.........

 

...どういうことだろうか。想像がつかないんだが...?

「乗っかってたわよ」とはどういう状況なんだろうか?

艦娘のほうのノイトハイルに乗っかっていたらそりゃ即死不可避だが、恐らくリバンデヒが言っているのは船体の事だろう。というかそうであってほしい。

つまりだ。つまりノイトハイルにはラムアタックは命中せずそれどころか乗り上げたということだろうか。

「.......その後は?」

「砲塔を振って無理やり叩き落としたわ」

...さすがですクレイジーサイコレズ。やることが違いますよ。

砲身折れても交換面倒なんだぞ?手伝わんぞ?今まで撃っていたから砲身は熱くなっているだろうし、その状態で打撃を与えれば少なからずダメージを負う筈だ。

砲精度が下がったりな。死活問題だがノイトハイルだから何とかしているだろう。砲塔で落としてる可能性あるし。とりま気にしない。

「...そ、そうか。ならば問題は無いな。敵は?」

ほら、痛いからさ。私いま電探切ってるのよ。艦娘パワーの方は。

「えっと...姫級は血祭りにあげたわ。他の艦艇は赤城と加賀が沈めていたわよ?」

「残党は?」

「駆逐艦が少々」

「...弾薬は?」

「私はまだあるわ。どこかのおバカさんと違ってね。カイクルは四割、ノイトハイルは八割ね。赤城は二割、加賀は三割五分、翔鶴瑞鶴は共に五割位ね」

...耳の痛い話である。

150000位の消費に目を瞑れば今回は辛勝と言えよう。

アメストリア型戦艦が二隻破損したがまぁそれは良い。改装も一緒に済ませて貰えば良い。

そもそもソロモン戦自体想定外だったし。

「各艦に弾薬を補給しておいてくれ。あと加賀には直庵機を出させてくれ」

「了解よ。すぐに直しなさいよ?これから殴り込みに行くんでしょう?」

「うむ。隼を積み直し、修理が済み次第直ぐに向かう。」

 

そもそもの目的は天龍田の報告にあった拉致された艦娘達の救出である。

横槍があってこんなところで戦闘していたが一刻も早く向かわなければいけない緊急事態なのだ。しかし上陸用兵器を積んでいた隼はやられたし、少し時間がかかってしまう。

「.......えぇ。分かったわ。...お姉ちゃん、こちらに接近する感を一つ確認したらしいわ」

「......何?」

慌てて窓から海を覗く。青々とした、しかし砲煙で曇り始めた空に暁の水平線。

遠くには深海棲艦が燃えているのか黒々とした煙がポツリポツリと確認できるが、接近中の感を確認できない。船か?戦闘機か?

「敵か?」

「どうかしら。いま加賀の航空隊が向かっているわ」

「そうか。念の為に他の艦娘にも攻撃態勢をとらせてくれ」

「えぇ。」

インカムを新しく作り直し、耳にはめる。

同時に処置が終了したのか妖精さんがグッってジェスチャーで伝えてきたからナデナデして感謝の意を伝える。可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

「.......夕立?」

「えぇ、加賀の航空隊が確認したそうよ。ドロップ艦かしらね。煙突から煙出していたからアメストリアの夕立じゃ無い筈よ?」

何故かぽいぬがつれたでござる。意味不なんですけど。

私が不運体質なのかわからないけど泥艦なんか滅多に出ない。ノイトハイルくらいじゃね?

しかし今回はレアなのか、夕立が出てきた。

いや、しかしその夕立が泥艦であるとは限らんしな。元々いた艦かもしれんし。

私達が絡むと泥艦はアメストリアの艦艇になるとかのシステムがあるのかもしれんし、やはり情報が足りん。どう判断することができるか...

「リバンデヒ、今私の内火艇は木っ端微塵だ。よってお前の内火艇を使わせてもらう」

「別に良いけれど...対価は高いわよ?」

こんな時にも対価を要求してくるとは...やはり外道か。

しかしなりふり構っている余裕は無い。態々F-222使いたく無いし、体に負担かかるし。

「カイクルとノイトハイル。非殺傷兵器と五式もってここに来い」

『承知した。非殺傷兵器というのは何処までだ?』

「艦娘を無傷で拘束できるものだ」

『.......無理難題を...』

まぁ自覚はある。スタンガンだって無傷じゃないしテーザーガンも電極が突き刺さるからやはり傷がつく。あとビリビリして気持ち悪い。

そもそもアメストリアに非殺傷兵器など一つとして歴代で開発、試作された形跡さえ無いのだから察してほしい。殺すか飼うかしか無いのがアメストリア軍の基本スタンスだし。

ともかく、アメストリア製重火器には非殺傷兵器なんていう優しいものが無いため、今までも地球産の非殺傷兵器を使用してきたのだが、今回は敵である可能性が極めて低い(と思いたい)ため前回のドミートリーみたいにガチ武装しなくても良いだろう。ノイトハイルみたいに極められないだろうし。寧ろされたら怖いわ。

『...姉さん、一応、ゴムよりも柔らかい物質で作った模擬弾を95式短機関銃と25式歩兵小銃に装填しておいた』

『僕も無理やりだけど25式歩兵小銃に詰めておいたよー』

「そうか。ならばリバンデヒの内火艇に集合してくれ。リバンデヒはこのまま残って警戒を」

「分かったわ。対価は後ほど頂くわ」

不安だ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本的には、私の隼もリバンデヒの内火艇も変わらない。

私のとこが勝手に隼って呼んでただけだし、戦艦なんだからカッターくらいないとダメじゃね理論で積まれてる内火艇だが、この実高性能だし、私は割と重宝している。

だって私達つっかえるんだもん。着岸できる地点がどれくらいあるか知ってるか?海上プラントとナウル鎮守府だけだよ。その他は深かったとしても大きすぎてドックや桟橋に収まりきらず、ひどい時には海流をぶった切ったり海峡を封鎖してしまう。だからこそ内火艇が必要であるのだ。

詰まる所便利な足だな。取り繕わずにいうと。

それで、その内火艇に私、カイクル、ノイトハイルが非殺傷兵器と五式自動拳銃で武装して乗り込み、航行中の夕立に接近。臨検を必達目標とする。

まぁ100km先から見える私達だし、こっちに向かってきているらしいから会うのはそう遅くならないだろう...多分な。

 

一枚物の装甲板が船体から外れて行き、クレーンに吊るされた内火艇が外に出される。

リバンデヒは内火艇をクレーンで下ろす方式らしい。

だから私だと下に開いた装甲板も上に歯弧式なのか歯車が回転しガレージのように開いてゆく。空襲対策にもなるなコレ。採用しよう。

吊るされた内火艇が海へと降ろされ、接続部が離される。

ザバン、と海面に内火艇という巨大な質量が投入された為押しのけられた海水が船体に当たって白い波へと姿を変えた。

外見の変わらない、ただ02、と数字が目立つその船は馬力に物を言わせて発進。

海を切り裂き航跡を残しながら目的の夕立へ向かって行く。

この内火艇...外から見たら戦艦クラスのステルス艦だと、漁船を引っ捕らえる巡視船みたいな身長差が出てくる。帰って動きにくくなる可能性があるし、夕立に怖がられる可能性だってある。あんな子に嫌われたら私立ち直れなくなる自信がある。あのぽいぬだぞ?

目も合わせてくれず会っても回れ右。口を利いてくれずそれでも他の艦娘達と楽しく談笑するーーー想像するだけで落ち込んできたわ...

 

夕立を視認できた。

この内火艇(笑)に驚いているのか警戒しているのか、速度を落とし僅かに船体を傾けている。

だからこそ見えた。夕立の船体には幾つもの弾痕が残っており、主砲は一基ひしゃげている。

機銃掃射の跡がミシンのようにそこら中を縦横無尽に走り回っており、大変痛々しい。

中破、といったところだろうか。残弾がどれだけあるか判断出来ないがよく無補給で今まで生き延びたものだ。敵は今まで見たこともないジェット機に信じられない程の精密かつ高密度の艦砲射撃をしてくる。当然自らが持つ武器など等に及ばず、当たったとしても重装甲に悉く弾かれる。いざ逃げん。としても敵は考えられない速度で追撃してくるし、地獄だったのではないだろうか。此処にいた深海棲艦、エリートだったし。

「私は大日本帝國海軍所属、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。現在この海域は作戦区域である。貴官の所属をお教え頂きたい。」

無線周波数に合わせて、そう告げる。

「.......知らないっぽい...」

返信が来るも、どうも要領を得ない。

やはりドロップ艦なのだろうか。他の鎮守府からの脱走艦とかそういうルートも考えはしたが、知らないときたのだからドロップ艦判定でいいのだろう。

駆逐艦も少なかったし、夕立可愛いし。一石二鳥とはこの事だ。

 

何故か、夕立が停船した。

足を止め、流れにされるがまま。

錨も下ろさずにただ漂流するのみ。何だか嫌な予感がする。

沈む傾向は見られないため問題ないが、艦娘が倒れた可能性がある。

すぐに内火艇を近づけて接艦。

「カイクル、周囲警戒。ノイトハイルは私と来い」

「御意に」

「はいはーい!」

一応、五式自動拳銃を片手にささくれた甲板に降り立つ。

 

右、左、上...と警戒するも人影は無く、妖精さんの影も無い。黒煙は確認できる限りで三箇所。

煙突と主砲の残骸。煙突には過貫通したのか大きな穴が空いている。そうだな...恐らく15.5cm口径だと思われる。500cm、150cm砲弾の被弾は無いようだ。

あったら此処にいないと思うが。

警戒しつつも知識にある...というか吹雪や暁に乗せてもらった時の記憶を手繰り寄せて階段を登って行く。

 

照準を様々なところに合わせながら、遂に艦橋に到達した。

「いけるか?」

「大丈夫だと思うなー。敵意感じないし。」

「...そうか」

その敵意を感知するのにどれだけの娘が犠牲になったんでしょうねぇ...?

あれだろ、ノイトハイルが感知する『敵意』っていうのはノイトハイルが襲ってくる事に対しての警戒と殺意だろう?この女たらしめ。

戦闘においての敵意の感知なんかカイクルが当たり前にやっちゃうし、リバンデヒはそもそも姿を見ずに殺っちゃうからやはりこの姉妹は可笑しいと再三思う。

まぁともかく此処でウジウジしていても仕方が無いので、ゆっくりと忍び足で侵入する。

70年前の古く、しかし私達の艦橋とも一部共通点が見られる灰色の殺風景な空間。

初見では絶対わからないであろう観光名所などにはよくある据え付け型の双眼鏡に似た主砲照準器。中央には操舵用の円形のチャリオットの車輪みたいなヤツがあり、壁には伝声管が這っている。その壁に凭れて気絶していたのが夕立だった。

改装されていないと思われるセーラー服には出血した事を示す赤黒い血痕がはっきりと残されており、まだ乾いていない事から最近の傷である事が察せられる。

すぐさまに脈を取り無事を確認する...良かった。息はしっかりとあるようだ。

「ノイトハイル、お前のところで船体は回収しておけ。戻ったらすぐに改修を施す」

「はいはーい..でもこれはねぇ...」

「......?」

「いやー、船体にちょっとダメージが蓄積してるみたいでねー?よく見ればわかると思うけど結構錆びてるよ?」

そう言われて見回す。

艦橋はそうでも無いが、先ほど登ってきた階段を始め、確かに赤さびが多かった気がする。

長い間潮風に当たり続けた弊害だろう。

つまりついきっきドロップした可能性は無い...という事だろうか。

まぁ今は関係無いし後で本人から聞けばいいだろう。

「しかもお姉ちゃんも無視できない損害があるはずだけど〜?」

「これしきの事で問題が発生すると思っているのか?ノイトハイル」

「いやいやー、そうじゃないけどさー。隼もなくなっちゃったんでしょ?上陸どうするのかな〜って」

「.......妖精さんには修理と隼改の建造、夕立の改修を同時並行で進めてもらう。」

「ふふ、さすがお姉ちゃん。妖精さんをこき使うね〜!」

「.......。」

だって本人たちがそれを嬉々として行うんだからさ...もう、なんかさ。

諦めがついたんだよ。こき使ってる自覚はあるが、妖精さんにその概念があるかどうかさえ怪しいので、私がはっきりと言えないのも実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はてさて、此処はナウル鎮守府第一隔壁内のアメストリア型戦艦用大型ドック。

私はそこにいた。

理由はさっき話したからもう言わんが、やっぱり妖精さんってすごいね。

徹甲弾の損害は20分で完治。

格納庫は改造を加えているらしく、未だに火花が散っている。

内火艇の建造には少し時間がかかるらしく、船体の設計にもめているらしい。

といっても武装がすでに完成しているあたり、妖精さんも大概だと思う。

大和作りたかった大本営と同じ事してるやん...

この際に言っておくが、隼改め隼改は特に変化はない。

全長は拡張するらしく、263m。元ネタの大和と一緒だな。

武装も同じく46cm三連装砲三基。対空砲には何時もの45mm対空機関連装砲の他に試験運用段階の【試製 88mm回転式対空機関砲】の連装砲が左右に三基、計六基が搭載される予定だ。

そして足まわりだが内火艇とあって小回りは効かなきゃあかんだろうとの事でスクリュー式を廃止してジェット式に切り替わり、船体側面にも埋め込まれたらしい。キックでもするつもりなのだろうか。日本武尊みたいに。

舵は大舵二つに小舵二つ。

ステルス性はそのまま受け継ぎ、追加で絶対干渉結界(ミニ版)を試験搭載するらしい。

なんかインディペンデンスみたいに期待マシマシ現実ショボーン状態にはならないでくれよ...?切実に。

 

''艦娘さん艦娘さん、設計おわたです?''

''しゅーりょーです?''

''ふぃにっしゅです''

''さんどうかんはやめましたです?ー''

''左右に展開式のフロートがつくです?''

なんで三胴艦にしようと思ったのだろうか。かさばるやん。というかそれもう内火艇じゃないやん。しかし左右に展開式のフロートというのは妙案だと思う。あれだろ、二式大艇とかの機体からせり出すソリみたいな。あれの左右版だとおもう。

恐らく抵抗を増やして旋回半径を縮めたり停止に必要な時間と距離と縮小だと思われる。

合理的ではあるが、強度が心配だな。ジョイント式にするのか、アーム式にするのか、油圧式にするのか。少なくとも展開時に途轍もない圧力を一気に受けるのだから、それに耐えうる耐久性と伸縮性は必要だ。あと船体との親和性だな。

「...よかろう。すぐに作り始めてくれ。船体が出来次第陸上兵器の積み込みも初めておいてくれ。」

''あいあいさー!''

''スピード勝負です?''

''RTAです?''

''最速記録更新するです?''

''兵器は何載せるです?''

「そうだな...」

少なくともアメ公で暴れるのだし、ある程度の火力は欲しい。

しかし大きすぎてもダメだ。道に入れない。一七式戦車はダメだな。二車線半使うし。

五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車だが、理想的な車両だが、火力が心配だな

敵が何を持ち出してくるかわからんし。一式重武装車輌、七式装甲車輌はあれだな。ジープだし。リストラリストラ。

「妖精さん、五七式と七九式を頼む。各5両ずつだ。」

''あいあい''

''かしこまりー!''

''たくさんつむのですなー?''

「あぁ、それと五七式、七九式の2両ずつに火力強化版を試しに入れてみてくれ。砲は任せる」

''強くするー?''

''砲積み替えるです?''

''パワーアップですなー!''

''大火力!それはせいぎ!''

''せんめつじゃー!''

一斉に妖精さんが駆けてゆく。少々不安が残るが、妖精さんだし大丈夫だろう。

使えないものは作らないだろうし。

......いやさ、英国面全開の変態珍兵器だったら却下するよ?

実際に陸軍は重戦車の車体に20.3cmとか35.6cm砲載っけて自走砲(笑)にしたら反動吸収できなくてひっくり返るやつとか作っちゃってるんだから。チョン共じゃないんだから...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室にて眠る夕立を見守りながら過ごしていると、格納庫が完成したとの報告を受けた。

隼のほうは船体が70%完成しており、艤装も詰め込み始めているという。なにやってるんだろう。

陸上兵器に関しては報告を受けていない。まだ作ってんじゃね?

それで、私も一応体の一部だし、いざ使う時に不具合が〜、となりたくないので確認に来たわけだ。

私の船体を修理する傍、余ったスペースを活用して隼は建造されていた。

この時点で色々突っ込みどころがあるが、一々突っ込むときりが無いのでスルーする。

アメストリア型戦艦のドックは全長5000m、幅900mの巨大な溝だ。

しかし船は四角形でない。艦首と艦尾は絞られているし、そこは三角形に空白が空く。

史実だとドックに金剛型の誰かと駆逐艦を余ったスペースにぶち込んでる写真を見た気がする。

だから、まぁアメストリア型戦艦クラスになると余剰スペースで大和が10隻は建造出来る。

まあクレーンが足りんのだが。

 

閑話休題。

 

建造されている隼改は確かに報告にあった通り船体は殆ど完成しており、艦橋群は設置済み。

武装はドックに並べられており、クレーンでこれから積み込むのだろう。

内装はまだ分からないが、恐らく形状からして陸に乗り上げても自力で戻れそうだった為側面辺りに格納庫があるんじゃね?

見る限り殆ど完成していると見て大丈夫だろう。

ドックには既に搭載予定の発注した五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車が並んでいる。

彼方に行ってみようか。

 

 

装甲車輌が並ぶエリアに足を運ぶと、見慣れた、しかし明らかに改修が加わったであろう車列があった。

砲身に目を向けると明らかに太くなっていることが窺える。

88mmだろうか。88mm歩兵携帯砲を持った身だから分かるが、それが機関砲になって口径長も延長されたらしい。

最大の特徴は連装砲になっている点だろう。

正直妖精さんだから四連装くらいになっているかと思ったが、割とマシな物に仕上がっている。

しかし七九式装甲輸送車は違った。

なんだアレ。装甲車輌か?砲かあれ?

 

分かった。あれだろう。

ドイツの対空砲にある四連装の20mm砲。

あれの75mm版が並んでいた。

「妖精さん...四連装は色々とないと思うが」

''そうです?''

''四連装は浪漫です?''

''投射量は段違いです?''

「外見がなぁ...」

''あー、それはおもたです?''

''ちょーとださいー?''

''バランスよくないですー''

''薬莢たいへんですー?''

「だろう?ならば連装砲あたりにダウングレードした方が良いぞ。」

''うむー、しかたないですー?''

''つけかえるです''

''ちぇんじちぇんじですー''

''つくりなおすです?''

''ですですー''

私の提案を聞いた妖精さん達が一斉に動き出した。具体的に言うとその場で解体し始めた。

 

何やってるん、妖精さん。

 

 

砲関係って精密機器のオンパレードやん?

平衡器は砲の命中精度に直結してるし、それ関係の圧力調整器に集電板。

ターレットリングを回すモーターに全自動装填器(7.5cm仕様)。

薬莢処理用の機材も仕込んでるし。九割型精密機器だ。

''性能には問題ないです?''

''全然問題ないです?''

''設備無くても出来ないとお話にならないです?''

''ですです?''

「......そ、そうか........」

確かに野戦修理くらいできないとお話にならないんだろうが...時間逆行術式あるから修理もクソもないのでは...?




と、言うわけでぽいぬ追加です。
無論魔改造します。ご安心ください。
あ、追加したのも理由があるんですよ?無意味にやるのは登校だけですので。
ナウル鎮守府、駆逐艦が少なすぎるんですよね。第六駆逐隊とぶっきーだけですよ?戦艦とかアメストリア型に大和型、長門型、金剛型もいるのに。
と言うわけでキャラの特に濃い、アニメにも出たバ火力の夕立さんにお越しいただきました。
あ、まだ増えますからね(ニッコリ




P.S.
ネタバレになっちゃいますが、現在ハワイまでプロットは組んでます。
その後は知りません。なんか終わらせ方に悩んでいます。
轟沈エンドはねぇ...機関がアレだから地球ボーンだし、帰るってどこへ?だし。
あ、提督さんと結ばれるのはありませんからご安心を。

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