超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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またもや遅れました。あのですね。戦車が悪いんです。無駄にクオリティの高いヤークトティーガーとかタンケッテが悪いんです。だから私は悪くなiチュドーン(^з^)

今回もまたアメストリアさん瀕死です。
これも愛故...!




お知らせ
何か言った気もしないでもないですが題名を変更いたしました。
ご迷惑をおかけいたします。元ネタは土佐さんです。


70.心の調子 げ

ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

 

「...まぁ、いい。やまと、一応伝えておくが貴官の船体は破損していた為に序でに改修しておいた」

「まぁ...それはご迷惑をお掛けしました...より強くなりましたね....ふふふ」

なんか、今までの大和とは違うようなので、以後『やまと』と呼称する。これは私の推論になるが、大和はここの旧パラオ鎮守府...現ナウル鎮守府の出身ではない。トラック島第二鎮守府の生まれだ。あそこはまさにブラック鎮守府を体現したような劣悪な管理の元に艦娘が飼育(・・)されており、私達が実力を持って制圧。大和以下戦艦、航空母艦の艦娘を救出した。実の所練度は高く酷使されていたとは言え実際に戦闘していた訳だから経験豊富なベテラン艦娘だった。だからパラオ鎮守府ですぐに改修ができた訳なのだが。

因みに第二艦隊とかの他の艦娘達は別の鎮守府に移籍したり、以前私が叩き潰した大本営付近の鎮守府戦力強化に流れたようだ。今の所轟沈も無し。地味に気にかけている事だ。

 

話題を戻すが、大和はあの奴隷同然の扱いの下暮らし、そのトラウマとも言える地獄の日々は大和の脳裏にしっかりと焼き付いており、何かの拍子でそれが暴発する危険性は十分にあった。だからこそ私はそういう連想させる事柄から艦娘達を徹底的に遠ざけ、私達や天龍田達に担当してもらっていた。しかし今回の魔のミッドウェイ攻略作戦にて深海棲艦の捕虜となり、近くで馴染みのある艦娘が拷問され自身も暴行された事によって遂にトラウマのロックが外れた訳だ。『やまと』というのは大和が防衛本能から作り出した虚像。謂わば第二人格だ。

 

 

ここまで言えばもうお分かりだろう。大和は、トラウマからの精神崩壊を防ぐ為に第二人格を形成。晴れて「二重人格」、正式名称 解離性同一障害(DID)となってしまった訳だ。

かつては多重人格(MPD)と呼ばれたこの症状は厳密に言えば障害ではない。そもそも【解離】というのは別に誰でも起きる事で、例えば不幸な目にあったり親戚が亡くなった時に眩暈や気絶をしたりする者が居る。あれが【解離】だ。但しこれは正常な範囲での【解離】の話であって、限界を超える苦痛や精神的負担を記憶ごと切り取って封印する事は重度の解離で、これが成長して二重人格として現れる事を解離性同一障害という。

解離性同一障害は防衛的適応のなかでは凶悪な分類に入り、深刻な症状だと「感情の調整」が破壊され更に二次的、三次的な派生効果が生まれ、衝動の統制、メタ認知的機能、自己感覚などへの打撃となる。

またそれが精神面にも行動面にも跳ね返ってくるという負のスパイラルに陥る場合があり鬱病、摂食障害、薬物障害、また転換性障害を併発することがあり、そしてパニック障害、境界性パーソナリティ障害によく似た病状を発症する。

リストカットのような自傷行為は勿論本当に自殺しようとすることも多い。 だから私は警戒しているのだ。また他にもアイデンティティウンタラカンタラで一つの人格さえも維持できなくなって自我が消失する場合がある。これは要するにお腹が空いたから御飯を食べるのではなく身体機能を維持する為に外部からの栄養補給をする。人類の為でなく、身を守るために深海棲艦を撃滅する。眠いから眠るのでは無く記憶の整理、知識の精製の為にノンレム睡眠を摂る。一般的に云われる「人間らしさ」の一切が無くなってしまうのだ。会話は出来る。ただ同情や非難はなく、議論のみだが。楽しむ事はなく、実に合理的な行動のみを取る事になる訳だが、私の持論だが無駄があり、決断を誤るのが人間だと考える。自我の消えた人間が、「人間」と呼べるか?少なくとも私は呼べないな。生命体としては究極なんだが。

まぁ幸いにして大和は第二人格...これも第一人格から派生したものだがこれが顕現しただけに収まったのだが。

「......ともかく、生きていて良かった。」

これは偽らざる本心だ。勿論艦娘は例外なく好きだが、大和は特に気にかけている。こう、容姿だけは凛々しいのに声は少し幼く、健気に喜ぶ様は見ているこちらが幸せな気持ちになるとても魅力的な艦娘なのだ。よく武蔵や矢矧と行動することが多い大和だが、別に誰かを嫌っているわけでもなく、全員に対して平等に接していた。其処に一抹の不安を抱えながら微笑ましく眺めていたのだが、時折酷く儚く海風に吹かれてそのまま吹き飛ばされる様な弱々しい姿を目撃することもあった。そのアンバランスさ......実に危うかった。

 

 

それで、だ。解離性同一障害の治療方法だが、これが難しい。

それぞれの別人格は必ず意味があって生まれてきた大和の「部分」であるから、そこをしっかりと理解していなければならない。別人格...今出てきている人格が受け持っている不安、不信、憎悪その他の負の感情を和らげる必要がある訳だがこれまた、難しい。

やまとのもつ感情は不安や絶望といった類のおもいっきしダークな部分で、恐らく人間への不信感や憎悪が蓄積されてうずたかく積み上がっている。

これを和らげる方法など知らない。

安心感や信頼感は大和となら築いている自信はあるがやまととは繋がりさえない。

あなたのもつ憎悪はやはり汚いものです。深く懺悔し神に許しをこいて〜〜とかいう便利な謳い文句で人間が簡単に更生したら便利だが生憎と人間の心理や精神の構造はそんなに甘く出来ていない。

だってさ、今までずっと親の親の親の世代からずっーずーっとと互いに憎しみ合い、貶し合い、嵌め合い、戦争を続けてきた怨敵と、ハイ今日からみんな友達です。仲良く手を取り合って生きていきましょうねーと言われてそう実行できる人間などいるだろうか?否。絶対に居ないだろう?

 

万が一にそういう行動を取っている奴らも大体は精神がイカれて末期的なキチガイであったり思考停止した阿呆でしかない。

 

「......比喩も、隠喩もしないで直接的に聞くが、貴官はにn「はい。とてもとてもとても憎んでいます。出来れば、今すぐに全てを焼き払って皆殺しにしてやりたいくらいには。」......そうか。分かった。リバンデヒ」

「何かしら」

丁度、医務室に到着した事情を察したらしいリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルに指示を出す。

「これより大和型一番艦やまとは、()()()()()()()脅威と判断し治療されるまで拘束する事を決定する。手枷を持ってこい」

「......良いのね?私としてはやまとの意見はごく普通だと思うのだけれど」

「私とて、これが正しい事だとは思っておらん。」

原因は人間だし、これを押さえ込んで人類の為に戦い続けたのは大和だ。しかもそれのトリガーを解き放ったのは深海棲艦と人間。二度も人間に精神の限界を超えるクラスのトラウマを捻じ込まれ、さすがに大和でも、耐えられなかったのだろう。今回こういう形で溢れてきているのだ。大和は何も悪くない。悪いのは人間だ。そもそもの原因も、ロックを外したのも。

やっぱり助ける価値あるんだろうか。真面目に悩んでしまうし、これを考える事自体人間からみたらよろしくない事なのだろう。守るための兵器が何をほざいているといった感じに。しかし此方(艦娘)から見たら、己の短絡的な野望や欲求の為に艦娘達を好き勝手に振り回し無遠慮に土足で艦娘達の傷ついた精神を更に踏み荒らしてゆく。

 

元が大日本帝國の為に最期まで戦い続けた艦達だ。魚雷を喰らいつつも主砲を撃ち続け、真っ二つになっても戦う事をやめなかった艦。エンジンが破壊されても乗員のハンモックを帆にしてまで戦闘を続行して猛烈な()()による攻撃で無念にも轟沈した艦。()()の無謀な作戦によって囮として使われ、奮戦虚しく轟沈した航空母艦。()()の航空機300機以上に15発以上の魚雷を一方に喰らいつつも、甲板を真っ赤に染めながらも戦い続け90度転覆して轟沈した戦艦。()()のミスによって敵艦隊を味方と誤認し攻撃されているにもかかわらず只管に我は味方だと表明しつつも轟沈した重巡洋艦。数々の味方艦を目の前で失い続け、戦後は復員艦として活躍し、最終的には中華民国(現在の台湾)に賠償艦...正直貴様らが賠償してほしいところだが再三にわたる返還要求も詰まらない意地っ張りにより全て拒否し最後は暴風雨によって破損し、そのまま解体された。宗谷を除けば、唯一の戦闘以外での原因の最期を迎えた駆逐艦など、誰しもが必ず傷を負っている。そんななか態々守るために戦い続けているのにそれを仇で返してくる。これはもう誰でも愛想尽かすだろう。ブチ切れるだろう。

「............はぁ、カイクル。少し休む。今日の警戒艦隊は?」

「了解した。本日の警邏艦隊は金剛、榛名、摩耶、川内、吹雪、暁だ。」

中々に練度の高い艦隊だ。大体...そうだな。120くらいだろう。火力、装甲共に十分な堅実性を持っているはずだから、大丈夫だろう。金剛は...うん。警戒くらいは紅茶片手にしないでおこうか。

 

あとは...ちょっとお仕事だ。船体に意識を向けて15基しかない超大型多段頭ミサイルハッチ(通称 BGM-9)にエネルギーを伝達。備蓄されている大型ミサイルを量子変換器から出すとミサイルハッチにセット。緯度経度を始めとした厳密な座標などの諸元入力をパパッとすませると、発射。

ハッチが素早く開ききると、爆煙が噴き上がり、大質量を伴って巨大で太く長いミサイルが飛び出てゆく。赤いような青い様な噴炎を滝の様に圧倒的なエネルギーをともなって飛翔した弾頭に特になにかといったものを載せていないミサイルは、一分以内に大気圏へ到達し、迎撃もままならない内に目標へと着弾するだろう。まあそれによって死者は出るだろうがいくら死のうが気にしない所に落としたから大丈夫だろう。精々1000人くらいだろう。

弾頭を積めなかっただけ温情だと思ってほしい。粒子爆弾でも積もうならば多分威力は日本を物理的にワンパンできるクラス。ウンターガングを積んだら......多分ユーラシアが消し飛ぶな。うん。

 

まあ今回は演習弾ですしおすし?威力は慣性と空気抵抗だけですし?

因みに、今まで詳しく言っていなかったが私の主砲である500cm一式徹甲弾は25500000J。初速は1000m/sとアホみたいに高く、重さは総重量にして45t。その中でも超高性能炸薬は30tと最早徹甲弾とは呼べないクラスの砲弾になってしまっているが、まぁそれは良い。その結果2500000Nという莫大な運動エネルギーを生み出した砲弾だ。あくまでもそれは砲身の中で回転し、飛び出した時の運動エネルギーだ。砲弾はそれだけのものでは無い。そんなのは空砲で十分だ。自動射撃統制装置の情報をもとに中央演算処理装置が算出した数値に定められた目標へと速度を上げつつ着弾。その瞬間の衝撃や信管が作動して爆発した炸薬など様々な運動エネルギーがごちゃまぜになった広範囲爆発は目標の装甲など叩き割り内部で炸裂するのだ。むろん装甲を食い破った後に炸裂するのだが。

 

 

 

兎も角(閑話休題)、いい加減疲れた。「やまと」の問題も今すぐに解決できるわけでもないし、ここ最近まともに休んでないのでいい加減ぐっすり眠りたい。無論、完全に施錠してリバンデヒ(クレイジーサイコレズ)ノイトハイル(ご主人様(仮))に侵入されて夜這いをかけられないためようにな。

なんだかんだあってあの悪魔の契約であるノイトハイルの奴隷宣言は復活してしまい、私は暫定的にノイトハイルの奴隷となっている。といっても今の所ノイトハイルからそういうコンタクトを受けたことは無いのだが。

 

一応私もナウル鎮守府においての艦娘統率の任を担い、いやがらせのレベルを天元突破した書類の山を処理し、それとは別にナウル鎮守府の防衛設備の点検や維持に消費した資源の報告書に日々自由にさせている個別演習の消費資材や戦闘経過の一部始終を軽く書いたレポートに深海棲艦との戦闘の報告書に消費資材の報告書。

様々なものが集まり私達はそれを一気に処理しなければならない。

なんかなぁ...人間って器小さいよね。そうやって自分では何も努力せずに自分より戦績を出している鎮守府をただ恨み権力を使ってくだらなさすぎて呆れる程の陰湿な嫌がらせをかけてそれで自分は出来るんだという現実逃避をして適当に深海棲艦と戦って。

未だに管轄の海域を一切解放する素振りさえ見せず近海のみを防衛するだけの鎮守府もあるらしいし、最近は殆ど物理的に消し飛ばして殲滅したブラック鎮守府も最近その予備軍らしき兆候を見せる鎮守府も現れ始めている。そうやって自分達で自分の首絞めて揚げ足とってお互いの足引っ張りあって共通の目的が世界的危機でのレベルであるにもかかわらずそれをしようともしない。やはり人間の生存本能故か保身に走るのを別に悪とは言わん。しかしそれだけに固執し他を蔑ろにするクズなど少なくとも大日本帝国海軍には要らない。アメストリアか?進んで戦火を拡大して戦争を楽しむからそんな下らない問題は無いぞ。

 

 

 

 

 

鎮守府の家屋は洋風であり和風である、和洋折衷なデザインだ。

赤い絨毯は敷かれているし、壁も障子ではなく洋風のパテを塗りたくったような壁紙。しかしその骨組みは和式、艦娘寮も大体全て和風建築だ。具体的に言えば大社造の派生版みたいな構造で屋根は高く、提督棟と同じく外側の壁はレンガが構成され、屋根は瓦というなんかよく分からないカオス建築となっており、内装もまぁ生活基準の問題上洋風の設備を導入している。具体的には、冷暖房機能完備の妖精さん特製のエアコンや加湿器、又艦娘の希望制だがベットも導入しているし、美容製品や電子機器も自由に配給している。

 

ここはどの大陸ともかけ離れた正に絶海の孤島。大陸から流入する文化なんてものはなく日本とも離れているので二次元的文化が入ってくることは無い。詰まる所、この南国の島ナウル島には娯楽と言えるものが慢性的に不足しているのである。

戦闘くらいでしかストレスを発散する手段は無く、ましてや艦娘という少女の姿をとったのだ。年頃の娘であるためにやはり楽しいことをしたいのだろう。しかしその楽しい事をする物がなければ手段もないと。

 

何という負のスパイラル。

 

し、しかしここも腐っても南国。休憩用にと砂浜は一部残してあるし海水浴だって可能だ。

 

......確かにさ。最初は艦娘達も楽しんでくれたよ?一部は。

しかし彼女らは極端に水に浸かり『潜る』という事を嫌う。いや、正しくは恐れている。

それに関しては解る。前世...WWl時でも現在でも海上を駆り、決して海中の中へ自ら進むものは居ない。海上艦の艦娘では。但し例外も存在するのが世の常。もともと海中が本分である潜水艦の艦娘は寧ろ進んで潜って行く。ナウル鎮守府でいえばドミートリーだな。他の鎮守府で言えば伊号潜水艦の艦娘達だろう。後は...U-511か。呂-500?知らない子ですね。

 

 

 

閑話休題。またしても話題がずれてしまった。どうしてこうよく思考が主題からずれてゆくのだろう。そんな和洋折衷の廊下を歩いて私の部屋へと向かっている時、おぞましい、狂気とも言えるドス黒い、明確な憎悪の()()が背中を駆け抜けた。

怖っ...と思うと同時に派手な破砕音が後方から響き渡った。.......嫌な予感がする。

こういう時の私の予感は良く当たる。念の為腰のホルスターから五式自動拳銃を一丁握り込み反転して走り出す。「やまと」が病的なまでに恨んでいるのは何か?それは己を絶望と恐怖の淵に追いやった人間どもである。なら、この鎮守府にいる唯一の人間とは?

 

即ち、提督である。

 

やばいやばいやばい。このままでは確実に提督が死んでしまう。一応提督は私の命の恩人なのだ。恩義は感じている。焦りにも似た危機感に突き動かされ、廊下を割と全力で走ってゆく。

視界に入ったのは、医務室の扉が力尽くで吹き飛ばされ、そこにもたれかかるようにして気絶しているノイトハイルが。ま、まさか...「やまと」がこれをやったのだろうか。というかそうなのだろう。俄かには信じがたいが。私だって赤子をひねるように取り押さえられるクラスの規格外の塊であるノイトハイルが一発ノックアウト。一体どんな技を使ったのか気になるところではあるが、今はそれどころではない。廊下の先を見ると、病院服のまま走り去る「やまと」の姿がチラリと見えた。まっずい。ひじょーにマズイ。足取り...?に迷いがなかったことから完全にロックオンしていることが察せられる。ここからも感じる悍ましい(おぞましい)狂気がピリピリと肌に突き刺さる。

すぐに追いかける。今回は危ないかもしれない。

 

床を踏みしめ、全速力で「やまと」を追いかける。

「ーーーーーーアアァァァァァァァァァァアアッッッッツツ!!!!」

怨霊のような、怨みしか含まれていない大絶叫が響き渡る。遂に「やまと」が提督を直接補足したのだろう。ヤバイヤバいやばい。直角の曲がり角を壁に着地する事で衝撃を緩和しそのままターン。どうにかして、「やまと」を止めねばならない。万がーに提督(人間)に危害を加えようものなら老害共が何をしてくるかわかったものではない。水を得た魚のように嬉々として私を責め立ててくるだろう。責任問題だの監督責任だの私の立場を崩しに掛かるだろう。それだけは絶対に避けなければならない。大和にもとばっちりが掛かるしこれでは私が艦娘を守ることができなくなる。それだけは避けなければならない。

「..........ッ!?」

提督は、「やまと」の気迫迫る普段の様子とは根本的に異なった顔に威圧されたのか、それとも「やまと」を大和として認識した只混乱しているだけかもしれない。兎も角、完全に硬直して回避不可能となった提督と「やまと」との距離はあと数メートル。これではもう取り押えることは不可能だろう。ならば...

 

 

 

グサリ、というよりはブチブチッ!という肉や繊維が無理やり引き裂かれる音と共に腹部に強烈な痛みが私を襲った。次の瞬間には猛烈な熱が腹を中心に広がって行き、脳がこれはヤバイと警告を発する。幸い背骨までは貫通しておらず、幾つか内臓がデストロイされたに留まった。まあ死ぬよりマシだ。

「ゴフッ......て、提督...無事か......?」

「...う、うん...大丈夫、じゃ無さそうだね...すぐに救急班を呼んでくるよ!」

「......恐...らく、妹...が........ゴホッ!ゴホッ!」

やっぱヤバイっすわ。内臓がやられた所為で出血は止まることを知らず、食道から逆流し更に吐血を繰り返す。重症というレベルではない。これは今すぐに集中治療が必要だろう。此処は鎮守府だ。多分大丈夫だろう。

「_________________ッッッッッッッッ!?!?!?イヤァァァァァァァァアッッッッ!!!」

耳のすぐ側で大絶叫が大音量で叩き込まれ、思わずあとずさる。しかし大和は私にもたれかかった状態。従ってその重さで二人とも倒れこみ、更に私には大和の手刀が深く突き刺さった。もっと痛い。私マゾじゃないからこれはキツイ...

それよりも...最悪だ。最悪のタイミングで大和の人格が戻ってしまった。くそっ...どうにかしてこの惨事を納めなければならない。失血は既に危険域だというのに...仕方ない...痙攣する筋肉を無理やり動かして大和を抱きしめる。やはり柔らかいな...色々と。うん。

「ゴホッ...大和....大和っ!......聴けっ!!」

「ァァァァァ...........な、何、ですか......?」

「これは、夢だ...あぁ、そうだとも。私は少々()()な身故な。次に目覚めた時には絶対にベットで眠っているぞ.......ゴホッ...知って、いたか?武蔵は毎日、お前を看病してくれていたの、だぞ...?、礼を......言っておけよ?」

ヤバイ。視界が霞んできた。力も入らない。

「.....これは...夢........?」

「そうだ...全くタチの悪い夢だな.......」

「...ふふふ、そう、ですよね...私は、少し眠りますね...」

「あぁ、そうしろ.......私も、少し...疲れた。」

そう言って、私も意識を手放す。いい加減限界が来ていたのだ、あとは妹達がどうにかしてくれるだろう。重なり合うように倒れ、それを中心に夥しい量の血で円を描いた光景は第三者が見ればトラウマ必須だろう。霞む視界には、誰かの姿が映っていたが、誰だかは分からない...背格好は華奢で低かったから吹雪だろうか...しかし灰色っぽかったから...大鳳、か?まぁ、いいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を取り戻した。

もしかして此処は天国的な何かだろうかとふざけた思考を回しながらも、目を開けると、白い天井。腹にはまだ継続してズキリという痛みが走り、思わず顔を顰め域を漏らす。

「あら、やっと目を覚ましたのね...全く...お姉ちゃんは毎回心配かけすぎよ...」

「.........すまない。これしか、方法が思いつかなくてな...」

「別に、手を持って受け流せばいいじゃないの...はぁ、やっぱりお姉ちゃんはどこか思考回路がおかしいわ」

一応貴女の姉なんですが。なんか妹にネジ飛んだ人認定されたんですがどう反応すれば良いんでしょうかね。なんか不服だが、私は選択を間違えた積りはないが受け流せばよかった、と言うのは素直を受け取ろう。私がバカであった。でもさ?あの状況でそんな冷静な判断が下せるかっての。ん?なんか無駄に考えてたって?知らんがな、私はそう言う生き物だ。

「...大和は?」

「一応、隣に寝かせているわ。確か武蔵と矢矧が監視兼看病で付いているはずよ。」

「そうか...私は、何故助かったのだ?」

「あら、助けてほしくなかったのかしら」

「いや、そうとは言っていないだろう...」

「ふふ、大鳳が助けてくれたのよ?正直、悔しいけれど私達が駆けつけたのは少し遅かったの。偶然居合わせた大鳳が応急手当をしてくれなかったら今頃お姉ちゃんは冥界ね。」

「そう、か...」

やはりあの姿は大鳳だったか...なんか散々燃料庫とかで弄られている脇空母さんだが、アレでもかなり悲惨な沈み方をしている。だって燃料庫が引火して沈没とかマジで笑えない。まだ敵の砲撃が決定打になって沈むなら戦って戦没したと明確に言い切れるが、燃料庫は...なぁ?

だからこそ私は大鳳達を保護(鹵獲)した時にめいいっぱいの改造を施し出来るだけ生存率を上げる努力をした。過保護といえば済むだろうが、私は真面目に沈んでほしくないのだ。''彼女''がとても悲しくなるし。だからこそ大鳳には対500cm装甲を張り巡らせたし、高雄達には12.7cmという駆逐艦の主砲クラスの対空砲を四基設置している。これも全て艦娘の為。そのためだったらなんでもするのが私だ。

「後大鳳から伝言よ?」

「......?」

「これでやっと()()を返すことができました、との事よ。ふふふ、可愛いわね」

「......あぁ...そう言うことか。ふふ、確かにな。私はやりたかったからやっただけなのにな」

「ふふふ、ともあれお姉ちゃんが助かったのよ。それだけで良いわ」

「そうか」

二人して、大鳳が言っていた()()が微笑ましいと笑いあっていると、カイクルが入ってきた。そして私の姿を見るなり顔を緩ませ、忽ち魅惑的な笑みを浮かべる。

「おお、姉さん()目を覚ましたか」

「カイクル、そう言うお前は大和も見舞いをしてきたのか」

「うむ。彼方は残念ながらまだ目を覚ましていないようだ。あと、報告だ。たった今大和型戦艦の第三次改装が終了した。それと、天龍から報告が上がっていたな。後で確認してくれ」

「...了解した。」

やっとナウル鎮守府の実質的主力戦艦が前線復帰する条件は揃った。あとは艦娘の方だな。

天龍の報告と言うのは...幾ら何でも早過ぎないか?報告出来るということはそれだけの量の情報を得ることができたということだろう。確かに天龍龍田は諜報に関してとても優秀な才能を持つ裏の艦娘達だが、それでも今回の()は手強いと感じている。深海棲艦と繋がりを持ち、今の今まで艦娘という機密の塊を扱った人身売買を繰り返しそれをもとに運営している。これだけ派手な行動をしておきながら今まで波風ひとつ立てなかったのだ。いや、すでに立てているのかもしれない。しかしそれを揉み消している公式の権力が存在する可能性だってあり得る。それだけ今回の処分すべきゴミどもは巨大なのだ。

ともかく優秀であることに変わりはなく、報告が上がるのは別段悪いことではないので問題はない。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの中央演算処理装置に意識を潜らせ、複雑に暗号化され報告書を解析する。

 

 

 

 

 

解析した結果、様々なことがわかった。

まず一つ目に今までも拉致された艦娘達が居るのは確定した事。

二つ目にその犯罪組織の末端は掴み売買も既に確認している事。

三つ目に現在艦娘達が連行されたと思われる場所を調査するために組織の尾行中である事。

四つ目に拉致された艦娘達の船体は艤装を剥がされた状態でスクラップの様に放置されているらしく、轟沈判定や解体判定ギリギリを責めている事。

他にも今回の潜入任務での障害となり排除した人数。えーと...268人らしい。別に何か感じる訳でもないが。むしろそれだけ関係者がいる事に驚く。というか天龍さん優秀ですね。ここまで一瞬で調べ上げるとは。

他にも備考欄には備考の際に陸上兵器を使用している事と現在船体を隠蔽している座標に、一番気になった一文が記載されていた。

 

 

ーー今回ノ諜報任務ニオイテ天龍型軽巡洋艦二番艦龍田ガ負傷。サレド軽傷ノ為任務ニ支障ナシーー。

 

 

この一文だ。なんかさりげなく書いてあるが龍田が負傷したと言う。一応あっちの国のニュースをちらりと調べてみると、コロラド州で大規模な銃撃戦があったらしい。多分それだろう。何やってるんでしょう。なんか楽しんでいる気がしないでもないが意見するつもりはない、自分のペースでやって貰えば良いのだ。優秀だし信頼を置いているし。

それならば天龍からGOサインが出た時にすぐに救出できる様に備えはしておかなければならないだろう。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアには陸上兵器と言ったら万能生産装置で製造した世界最大最凶の一七式戦車位しか無く、装甲車が居ない。ならば製造するだけの事。

万能生産装置を用いて五七式重装甲輸送車を一両だけ製造し、他にも一式重武装車輌を30両ほど。あとは上空支援様にAH-60 3機を。一七式戦車と五七式重装甲輸送車と一式重武装車輌ニ両のみ隼に積み込んでおき、何時でも出れるように総点検を開始。特に格納式の41cm連装砲とかをな。

 

救出作戦自体はとても簡単だ。ドイツの電撃戦のようにただ速力を生かして電撃的に制圧。

その為にはあの国に直接カチコミに行く必要が出てくるが今回は「日本艦娘の救出」という大義名分もあるため堂々と。一七式戦車を動員して敵対する行動、又はそれに準ずる行動をとった者から家屋ごと吹き飛ばしてゆく。あとは私という唯一の歩兵戦力と合流した天龍が制圧し五七式重装甲輸送車や一式重武装車輌に救出した艦娘を乗せて素早く撤収する。

天龍と龍田はその後撤収作業をしたのちに隠密性を優先し闇に紛れて撤収。私は堂々と真昼間から光学迷彩を一切使用せずに近海まで接近して威風堂々と回収して我が物顔で帰る。ただそれだけ。簡単に言ってのけたが実際に簡単なんだなこれが。

仮にアメ公の戦車(エイブラムス)が出て来ようがあっちは120mm滑腔砲でありその威力は砂漠にいる型落ち戦車になら無双できるだろうが残念ながら対する一七式戦車は正に規格外の塊。全長17.7m幅5.12mという巨体であるにもかかわらず90km/hという非常識な速度で爆走し主砲である150mm速射単装砲は毎秒で発射可能。他にも同軸砲に45mm砲を積み砲塔上部にはリモート操作が可能な19.8mm重機関銃とM3 14.5mm重機関銃が搭載され馬火力の象徴だ。その装甲は厚く正面装甲だけでも780mmあり傾斜を含めると900mm以上の重装甲となる。動くだけで震度2くらいは発生し唸り声のような起動音はもはや戦場の恐怖の風物詩として有名らしい。

 

まぁそんな感じでキチガイ兵器ばかり導入しているので多分大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




割とどうでも良さそうでどうでも良くないそれなりに重要な情報です。
MI/AL作戦はアメストリア達の独断で実行された作戦でもあります。実の所大本営が提示した期間よりも遅くやっていたので結構ギリギリのスケジュールなんですね。次からは、さらなる大規模作戦が決行される模様です。


後は例の幸運艦が......?

ともあれ、次回から次の作戦が発動します。例の如く火力無双ですが、お願い致します。


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