超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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あるぇ?一話で収めるつもりだったのになんで関係ないところに13000文字も使ってるんだぁ?
いや、すみません。だいぶ遅れてしまいました。次の二時創作の大まかな流れや設定の熟成、この小説の流れを考えておりました。いやー、新学期きついっす。


69.心の調子 じょー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

MI作戦が終了し、各々が大規模作戦の安息の余韻に浸り、全員が十分とは言えないが休息を取った。

特に天龍龍田の二人には一週間の休暇を与え、私達も情報収集のレベルを3段階ほど下げている。

其々が好きに過ごし実にほのぼのとした時間を過ごすことができ私は眼福であったが、私達の失態による影響は深く深く根を下ろし未だに回復と兆しを見せない。

意識を失った大和や元々失っていた神通。少しだけ意識を回復した長門。長門は翌日から意識を回復し、衰弱と脱水症状こそ残るものの表面上は快調な様子を見せていた。しかし心の奥底にはあの体験が絶対的な恐怖の象徴、トラウマとなってハッキリと刻まれた事だろう。付きっ切りで看病してうた陸奥もそれだけを心配していた。

神通に関してはあくまで私見だが拷問が加えられていなかったのだと思う。一度施術の為に身体中の傷を調べたが主にあったのは打撲痕に切り傷、擦り傷程度だった。数はとても多くて痛ましかったが全て治療し目視で確認できる限りの傷は全て消えている。これも治癒符のお陰だ。人体の回復力を促進し自らも回復力の糧となって治療してゆく。使い捨てだが優秀な符である事に間違いはない。神通の白くて華奢な体つきは少し心配になってしまうほどの儚さを孕んでいたが内に秘める熱意や戦意は誰よりも高い事を私は知っている。史実での壮絶な戦闘経験故か普段はおとしめやかだがいざ戦闘となると才能を遺憾なく発揮し深海棲艦を虐殺してゆく。最大戦速のまま深海棲艦の艦隊に突貫し翻弄し鬼神の如き戦いをする。船体を大きく傾かせキールや舵、スクリューの回転率全てを巧みに操り船体を横滑りさせながら電探を駆使して主砲を別々の標的へ旋回させそのまま発砲。アメストリア軍世紀の三大傑作発明の一角を占める全自動装填装置の恩恵を存分に活かし瞬間的に155mm砲弾を雨あられと浴びせてゆく。同時にハープーンも放ち敵航空機をハリネズミの様に配置された45mm対空連装機関砲が迎撃し空から突き落とす。一度暴れだしたらてんこ盛りの戦果を引っさげて無傷での帰還。文句無しのS勝利を収め帰ってくる彼女には私も尊敬の念を送らざるおえない。

大和に関しては......一週間経った今でも目覚める兆しがない。武蔵は毎日欠かさず看病を続けているがその武蔵にも疲労が溜まってきている。これでは本末転倒であり流石に今日は隣のベッドで仮眠を取ってもらっている。因みに普段の勝気な姉御肌とは似合わない可愛い寝顔であった。眼福眼福。

大和は今回の作戦で私達の受けた損害で一番大きかった艦だ。船体の意味ではない。精神の面で多大なるダメージを負い今尚眠り続ける大和に私は何かやってやることさえ出来ない。

なんだかんだで船体も抉られ中破判定。艦娘は鬼畜過ぎる拷問を受けて確実に廃人コースを歩んでいたカイクルは意外にもケロッとしており今日も朝から斬馬刀を振り回し、ノイトハイルがからかいまた鬼ごっこ(ガチ)が勃発し私達が微笑ましく見守るという光景が見られた。私はその間にも別の準備を進めていた訳だが。

兎も角大和が目覚めないのは大変心苦しいが『戦力』としてみた場合大和は第二艦隊旗艦という実質的なナウル鎮守府主力艦隊の総旗艦。主力中の主力で、戦艦という超火力の中核を担っている。そんな重要な艦娘がいつまでもダウンしていては、戦線が維持出来なくなり、支配海域が縮められる危険性は高まってゆく。加えて武蔵も看病に付きっ切りとなり現在の主力は長門、陸奥、一、二航戦そして第三艦隊の金剛型や五航戦なのだ。火力不足は否めない。

駄菓子菓子、誰よりも艦娘を大切にしていたい、艦娘至上主義である私は、艦娘を消耗品としてみる事は絶対にしないし、したくもない。大和が病んでしまうのは考えるだけで心苦しいし実際に回復の兆しが全くない事に軽く絶望感を抱いている事も事実だ。しかし重要なのはそこで立ち止まってグズグズと自分を責めて悪化させて本来気をかけるべき対象を蔑ろにするか、それでも諦めずに泥水啜ってでも救うという絶対の決意を持って対象にアプローチを続けるかどちらかを選択する事だ。因みに私は後者を選択するがな。

 

 

 

 

 

夜の茅に降ろされた漆黒の闇の中。

夜襲対策か最低限の照明に落とされた鎮守府の桟橋は存在の隠蔽のために照明は全て落とされている。その凸型の桟橋の中には存在しない、設計図にも記載されていない存在自体がなかった事にされている桟橋がナウルには存在する。闇に紛れる様に真っ黒な塗装が施され、第一隔壁に寄り添う...付け足された感がある桟橋は、表立って公表することのできない『裏』の部隊が運用する専用港。表立った作戦で華々しく公表されることのない、しかしそれ以上に重要な意味合いを持って作戦を誰の目にも入る事なく秘密裏に遂行する闇の部隊。

ナウル鎮守府には残念ながらそんな部隊が存在する。部隊構成はたったの三隻。

存在自体が無かったとされている建造記録さえまず作成されていない天龍型軽巡洋艦。艤装はアメストリア軍の海軍工廠が保有していた最先端技術を惜しげもなく注ぎ込み、直接的攻撃力は50口径15.5cm三連装砲二基 六門。あと対空砲として限定旋回の45口径12.7cm連装高角砲四基 八門と軽巡洋艦としても少なく、対空砲は200門。ミサイルに至っては1500セルという現代の戦闘艦のような艤装の分布は天龍型という特定はまずできないだろう。船体も黒く塗装され目視での確認自体が困難になるだろう。加えてF-222も5機搭載し幅広い任務に対応できるように設計されている。兵装の間隔は開いていてその代わりに諜報用の電子機器や限定的ではあるが物理的な電子防御を張れる試験段階の機材もこの一週間で組み付けられた。なんか史実の夕張みたいな扱いだが、特殊部隊なんてそういうものだ。常に最先端の装備が支給されそこでの運用データをもとに改修する。そういう実験場的な扱いを受けるのは自明だ。

「......本当ならもう少しゆっくりさせてやりたいんだがな」

「いいよぉ、私達ものぞんでいるのだからぁ...」

「良いんだ。俺たちだって嫌々やっている訳じゃねぇからな。むしろ...」

「天龍ちゃ〜ぁん?」

「...ゔっ!わ、わかったよ......」

天龍、龍田の他にも、諜報ではなく情報収集専門の艦艇だって存在する。

それが鹵獲して色々な意味で魔改造された潜水艦。ドミートリー・ドンスコイだ。

元ネタは一隻で核戦争ができる原子力潜水艦だが、妖精さんが改造した事によって機関は船舶用粒子エンジン25基に換装されスクリューは静音性の高い七枚刄スクリューが四本。キールは鋭く魚雷を撤廃し甲板には出来る限りミサイルハッチが敷き詰められ、側面にもミサイルハッチが窓のように配置されている。装甲は分厚く対150cm装甲。艦娘という最低限の設備で済む設定を利用し他のエリアを全て潰してミサイルハッチの内部、量子変換装置に割り振り、内部には中央演算処理装置の二分の一程度の演算量を誇るスーパーコンピュータを搭載。ありとあらゆる情報収集の為の機能が積まれている。

「ドミートリー?」

「何でしょう?お姉様」

この有様である。リバンデヒやカイクル、果てはノイトハイルまでもが再教育に参加し、アメストリア海軍用に訓練し直したらしい。私は本能的な嫌な予感で見る事をしなかったが、恐らく色々とやばい事をしていたのだろう。ロシア式の海軍礼装にスク水という服装は変わらないが艤装の変化か、インカムをつけているし、目は鋭く細められている。リバンデヒ達とは少し違う印象を受ける。なんか、リバンデヒ達の欲望や理想を名一杯詰め込んだ感が否めないが都合よく改変されるよりはマシだろう。調きょ...再教育の成果は絶大だった訳だ。まぁ反逆されても困るしなぁ...

「......兎も角、調べる事は分かっているな?」

「あぁ、俺達の御同業を攫った奴らの規模や拠点の調査だろ?」

「......その通りだ。あとは既に攫われた艦娘達の居場所の特定だ。これは実際に救出しなくて良い、私達が直接制圧する。」

これにも意味がある。艦娘を攫った組織やそれに類似する組織への警告。

万が一艦娘に手をを出したら絶対に死ぬ迄追い続けて精神を破壊してから殺してやるという最終通告だ。今回はその見せしめという面も存在する。それも報告がなければどうしようも無いのだが。

「あとだな...ドミートリー」

「何でしょうか?」

「......少々危険だがある調査に徹してもらいたい」

「畏まりました。全ては貴女様の思うままに」

うわぁ...誰だ趣味全開の調教施した奴。多分リバンデヒだな。以前私にメイド服着させてhshsしてた危ない人だし。

「近年、深海棲艦がより狡猾で高度な戦術をとってきている事は承知だな?」

「はい。此方でもピンポイントでASROCを命中させられたことが幾つか」

 

............ちょっと待てい。なんかさりげなく報告してきたがASROCを既に数発被弾している?深海棲艦でミサイルを積めるのは私達と同じアメストリア海軍の艦艇達...人類側、大本営はアメストリア型戦艦との差別化を図るためにイロハニホヘト式の命名基準から逸脱し「姫」「鬼」というなんかファンタジー臭のするキラキラネームを名付けた。貴様らはモンスターペアレンツかっての。因みに深海棲艦の加賀型は「レ級」と呼ばれているらしい。私も詳しくは知らないが。だって興味無いし。深海棲艦のアメストリア型戦艦は「戦艦棲姫」という素敵ネームで呼ばれているらしい。本人達が聞いたらどう思うだろうか。人類に勝手に名付けられて私達にボッコボコにされて。私なら撃沈して引きこもる自信がある。凄いっすね深海棲艦。鋼鉄メンタルだ。私なんか豆腐メンタルなのに...何故か話題からずれたな。

「当初私達はアメストリア型戦艦から知識をサルベージした物と考えていたのだがノイトハイルによって否定されてな。なら何故かと検討した。」

「..........まさ、か...?」

ノイトハイルは唯一私達の中で深海棲艦からドロップした戦艦だ。しかも深海棲艦時の記憶や意識を引き継いでいる。そのノイトハイルが自分からは戦術を教えていないと断言されたのだ。というか拗ねられてしまった。僕のことそんな風に思ってたんだ...ってな。私としてはなんか腑に落ちないが取り敢えず謝ったら何故か奴隷権が復活したでござる。何故に。ナウル鎮守府に引越しするついでに有耶無耶にしていたつもりだったのだが、ノイトハイル(クレイジーレズ)はきっちりと憶えていたようで凄くイイ笑顔で死刑宣告された。

「その通りだ。誠に不本意な事に人類に深海棲艦と通じて戦術という概念を付与した存在がいる可能性が高い」

「......粛清したのでしょうか?」

「...相手もわからんのに粛清出来る訳なかろう。取り敢えずその件をドミートリーは調べてもらいたい。」

Да, сэр! (かしこまりました!)Вместо него в этой(この命に代えてでも) жизни вы (必ず)всегда(遂行) осуществляется.(して参ります)

なんかフルロシア語で言われた為面食らったが()のエキサイト翻訳によってすぐにわかってしまう。此奴、ヤンデレの気がないか?なんか言い知れぬ危機感を覚えるのだが。

「...そうか。では総員、心してかかれ!」

「了解よぉ〜」

「おうよ!」

「даー!」

私の敬礼に返礼してくれる。深夜、照明もない中艦娘の不思議パワーではっきりと見える艦娘達の服装は少し異なっていた。天龍龍田はブレザーなどの制服では無くどの軍隊とも似つかない...どちらかと言えばナチスドイツの冬季用軍装だな。ジャーマングレーのロングコートによって体型は覆い隠され、ブービーキャップとか目出し帽を被ったら性別もわからなくなるだろう。しかし私は知っている。この桟橋に来る前に必要な重火器をリストアップしてもらったのだがM145-S1A、147式軽機関銃、25式歩兵小銃、115式対艦機関狙撃銃、19.8mm重機関銃が各三艇ずつ。MS95という11mm口径のサブマシンガンを今回の天龍のオーダーの為だけに妖精さんが改造した.50BMGがフルオートで発射できるキチガイサブマシンガンを二艇。あなた方は戦争をするのですかと真面目に問いたいが諜報に関しては一切の制限を設けていない為まぁなんか必要なのだろう。M634を何処で使うか知らないが。

 

照明灯の一つも点灯させることも無くじんりゅう型のような静音性に優れた十枚刄スクリューがゆっくりとした回転を始め桟橋から現代艦艇擬きが出港する。こちらから見たら艦尾と後方に設置された50口径15.5cm三連装砲と艦橋付近に左右二つずつ四隅に配置された45口径の12.7cm高角連装砲の計四本の砲身しか見えない。またさらに姿が分からないのがドミートリーだ。二次大戦ではありえなかったのっぺりとした船体は闇で輪郭がぼやけはっきりとした姿を視認するのは不可能だろう。改造の為X型の舵になった艦尾にはタイルのようにミサイルハッチが敷き詰められていることだろう。

僅かに航跡を残しながら進んでゆくその姿は何か覚悟を決めたようで決意に満ちている。

私は第一隔壁の水門を三隻が通過するまで敬礼で見送り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が昇り始め、遥か遠くの水平線から徐々にオレンジ色へと空は染まってゆく。

いつもと変わらない景色。ドックに係留されている全艦艇を遅れて強烈な太陽光が照らし出し、その複雑な艦橋やハリネズミのような45mm対空機関連装砲、高角連装砲によって海面に映し出される影絵はもっと複雑怪奇だ。私は毎朝こうやって朝日を浴びる事にしている。此処はアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの艦橋群の中で一番高い場所。大和ならば全幅15mの測距儀があるテラスに似た露天艦橋。アメストリア型戦艦サイズとあってサッカーコートクラスの広々とした空間が広がっているが索敵用か数多くの穴が開けられ、そこからもオレンジ色の日光は差し込み測距儀を彩る。この測距儀型の巨大なドームは自動射撃統制装置が搭載されており左右の出っ張りについている金網みたいなのは113号電探だ。この下にはモアイでいうおでこの部分が広がっており五階層に渡って中央演算処理装置が陣取っている。船体の大型化に伴い巨大化した艦橋群の有効な活用方法だろう。逆を言えば土地の広さを盾に好き勝手艤装を詰め込んだ結果ともいえるが。

「やっぱり、ここに居たのね」

コツン、という編み上げのブーツが甲板を叩く音が後ろから聞こえ、同時に聞き慣れた妹の呆れの入った声が届く。

「......どうした、リバンデヒ」

「報告よ。天龍達は現在太平洋米国領に侵入を確認。ドミートリーは南米の方へ転針しているわね。後は現在時点ではどの国も特に動きはないわ」

「承知している」

それくらいは優秀な113号電探がキャッチしている。ドミートリーの転針の理由は知らないが、何か思いついたのかネタを掴んだのだろう。気にしない。

「なら良いわ。長門型の第三次改装が終了したわ。あとは大和型だけよ」

そう。例の150cm三連装砲の反動で他が動けなくなる問題の解決案を妖精さんや工廠長と話し合った結果、大和型は56cm砲、長門型は51cm砲を搭載することになった。51cm三連装砲は金剛型のデータの実績があるから問題はないし、56cm三連装砲はまんま51cm三連装砲を拡大しただけなのでまぁ問題なかろう。

「そうか...早速第二艦隊に復帰させて習熟訓練を。その間の欠員は大鳳達を充てろ」

「了解。大和はまだ...?」

「あぁ、未だに目覚める兆しはない。」

「そう...。可愛かったのに、残念だわ.......」

なんかそのセリフ大和が死んだみたいでやだなぁ...不吉な。

ああ、そうだ。MI作戦後、艦隊編成を改めた。理由はまぁ大和型の実質的な欠落だ。

こんな感じで編成してみた。

 

第一艦隊

アメストリア型戦艦一番艦アメストリア ♦︎

アメストリア型戦艦二番艦リバンデヒ ♢

アメストリア型戦艦三番艦カイクル

アメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル

第一艦隊はまぁ、何時ものメンバーだ。その船体の巨大さに付随して発生する津波クラスの航跡からして他の艦との艦隊行動が難しい為一箇所に集めているのだがミッドウェー作戦でも実施した通り他の艦隊と同行動をする場合があるが、航跡の高さの問題で他の艦隊は30km以上後方で付随する。因みにこれ一覧にまとめた紙をそのまま読み上げただけだ。この艦の隣にある♦︎は旗艦の目印。そして♢はあまり考えたくないが旗艦が沈没及びそれに準ずる状態に陥った時に指揮権が移譲される艦だ。ほら、以前私が船体を取り戻しに行く時にリバンデヒに渡したろ?あれだ。

 

第二艦隊

大和型戦艦一番艦大和 ♦︎

大和型戦艦二番艦武蔵 ♢

長門型戦艦一番艦長門

長門型戦艦二番艦陸奥

赤城型二段式航空母艦一番艦赤城

加賀型超多段式三胴艦戦略航空母艦一番艦加賀

蒼龍型戦略航空母艦一番艦蒼龍

蒼龍型戦略航空母艦二番艦飛龍

高雄型重巡洋艦一番艦高雄

高雄型重巡洋艦二番艦愛宕

高雄型重巡洋艦三番艦鳥海

高雄型重巡洋艦四番艦摩耶

阿賀野型軽巡洋艦三番艦矢矧

吹雪型駆逐艦一番艦吹雪

第二艦隊はナウル鎮守府において、実質的な主力艦隊だ。

大和型や長門型は勿論艦載機の搭載量で言えばトップクラスの航空母艦である赤城型と加賀型や二航戦である蒼龍や飛龍を始め古参の部類に入る高雄型重巡洋艦を加えた全14隻の艦隊だ。練度で言えばLv.155オーバー。実質200相当の歴戦の猛者揃いだ。参考程度に言えば、それなりに殲滅している私がLv.120といえば良いだろうか。他にも申し訳ない程度の護衛として矢矧と吹雪を配属しているが、まあろこれは史実ウンタラカンタラだ。

 

第三艦隊

金剛型戦艦一番艦金剛 ♦︎

金剛型戦艦二番艦比叡

金剛型戦艦三番艦榛名

金剛型戦艦四番艦霧島

翔鶴型重装甲航空母艦一番艦翔鶴 ♢

翔鶴型重装甲航空母艦二番艦瑞鶴

雲龍型航空母艦一番艦雲龍

雲龍型航空母艦二番艦天城

雲龍型航空母艦三番艦葛城

最上型重巡洋艦一番艦最上

最上型重巡洋艦二番艦三隈

最上型重巡洋艦三番艦鈴谷

最上型重巡洋艦四番艦熊野

川内型軽巡洋艦一番艦川内

川内型軽巡洋艦二番艦那珂

川内型軽巡洋艦三番艦神通

第三艦隊は金剛が旗艦と少し不安になる編成だが、導入している戦力は大きい。航空母艦を中心とした艦隊で翔鶴型に雲龍型という重装甲の航空母艦を5隻配備し対空対策として最上型重巡洋艦や川内型軽巡洋艦を配備した為例えユリシーズが来ようが迎撃できるし、B-97が61機搭載されるという超火力を手にした超遠距離、アウトレンジからのフルボッコが可能な艦隊だ。編成したの私だがなんだこの艦隊。最上型重巡洋艦が積んでいる55口径20.3cm三連装砲は最大仰角が80°とキチガイ染みている為余程のことがない限り深海棲艦のB-97でもワンパンで落とす事ができる。49kmという長大な射程も持ってるし。

 

 

第四遊撃隊

大鳳型超弩級装甲航空母艦(甲) ♢

青葉型重巡洋艦一番艦青葉 ♦︎

青葉型重巡洋艦二番艦衣笠

暁型駆逐艦一番艦暁

暁型駆逐艦二番艦響

暁型駆逐艦三番艦雷

暁型駆逐艦四番艦電

この第四遊撃隊というのは特殊で、どの艦隊にも属していない。

常に鎮守府のドックにてスクランブル待機している所謂即応艦隊で、万が一には応急的に他の艦隊に編入して対応する為の艦隊だ。その任務上柔軟性を求められる為滅多に被害を食らうことすらない大鳳型超弩級装甲航空母艦を旗艦に50口径の20.3cm三連装砲を四基と12.7cm高角連装砲四基八門を装備した青葉型重巡洋艦にスキー式の意味不明駆逐艦の四隻も入れている。スクリューではなくターボファンを搭載した「限界突破」では175ノットというもう何かわからない駆逐艦と変貌した暁型駆逐艦も編入している。

 

 

X艦隊

天龍型軽巡洋艦一番艦天龍 ♦︎

天龍型軽巡洋艦二番艦龍田 ♦︎

ドミートリー・ドンスコイ ♦︎

こいつは特殊すぎるしもう良いよな?

存在自体が無かったことになっているナウル鎮守府の裏。その実行している任務は常人が知ったら確実にSANチェックになるだろうドス黒い闇の部分だが、私は結構重宝している部隊だ。全艦が旗艦であり全艦追従艦だ。それぞれが別々の任務をする事もあれば合同で活動する事もある。兎に角特殊で例外的な艦隊だから私も活動内容に口を出すことはないし位置しか把握していない。何をしているのか、そこを見てはいない。其処まで暇じゃないし。

ドックの方へ視線を移すと、形状が大幅に変化した長門型の船体がでてきていた。

廃止していた筈の側面の副砲は復活し、本来なら金剛型戦艦に搭載される筈の35.6cm単装砲が左右に四門ずつ突き刺さっており、主砲は例の150cm三連装砲から51cm三連装砲に小型化され全体的にスッと纏まった姿、本来の大日本帝国海軍特有の理想形が完成した。なんか感慨深いなぁ...戦力拡大の名の下超火力の獲得の為に150cm三連装砲を無理矢理搭載してなんか無理やり据え付けた感凄かったのだが、やっと綺麗に構成された。

長門、陸奥の二隻を同時改装したのだが、案外すぐに終了した。海を切り裂きながら進んでゆく姿は上から見るとなかなか良い景色になっており、その後方には矢矧に曳航されてドック入りしようとしている改装前の150cm三連装砲搭載型の大和型が並び、もう見る事ができないであろうレアな光景が広がっていた。

「大和型の改装には幾らかかるのだ?」

「......そうねぇ、3時間ほどでしょう。資材は...〔鋼材〕120850〔弾薬〕26500くらいね。その間は金剛達が警備を請け負う予定よ。」

「そうか」

いつの間にか大和、武蔵の二隻が工廠のドック入りし、アメストリア型戦艦にも使用される超巨大な可動式クレーンが船体を包み込みフックが降りている。ここからは簡単だ。主砲と船体を繋ぎ止めていた巨大なビスやピンを抜き取り主砲の砲塔を抜き取る。そして船体内部に埋め込まれた薬莢の廃棄機構や煙突につながる砲煙の排気口などを撤去し56cm用に新たに作り直し、動力の伝達や自動射撃統制装置などとの通信用のケーブルを接続し直して基部が完成。其処にクレーンで砲塔をドッキングして旋回装置を砲塔と基部とを繋ぎ合わせて完全にくっつけると砲塔内に回線を引いて薬莢の廃棄機構と砲をうまく組み合わせると完成。あとは動作確認と艦橋で電探連動や座標固定のプログラムを修正したり艤装として登録したりと色々とやることで溢れていた。特に電子的な部分は大変で主砲の発射プロセスに至っては1500工程以上のプログラムによって支えられている。自動射撃統制装置からの深海棲艦の位置を知らされる時のデータの進む道の誘導に構築、そしてそのデータの解析に認識。私達の使用する射撃データは特に特殊で三次元的な座標データなのだ。それはまあよく考えたら当たり前で私達の活動域は地球のみではない。他の重力や磁場、自転速度に公転速度、地軸の傾き具合も全く異なる異世界において、地球の緯度と経度を基準に演算したら大惨事だ。どこに飛んで行くかわかったものではない。だから数学的に言えばx軸、y軸、z軸みたいな三方向からの距離情報をデータとして作成しているのだ。それを元に算出された最適な仰角や旋回角度が中央演算処理装置から送られ、それをまた解析。一瞬の内に検算しそれを主砲への送信する。

それを受け取った主砲はその内部に内蔵された高スペックの演算装置により物理的な力へと変換されピストンやら駐進器やらが実際に稼働しマガジン型の揚弾筒から送られてきた砲弾を薬室にブチ込みまた密閉する訳だ。実はとてつもない程の演算に支えられているのだが、それに見合った成果を上げている。だって捕捉すれば百発百中だし砲弾によっては至近弾でも沈むし。まぁ、無論それだけではないんだがな?自動射撃統制装置は露出した艦橋の上に乗っかってるし中央演算処理装置はその下だ。今まで同様其処をピンポイント爆撃されると全ての火砲が沈黙してしまうのだ。それだけでハイ終了あなたはただの的です宣言は兵器として失格である。主砲一つ一つに妖精さんの制御室があり砲塔にも小型ではあるが自動射撃統制装置が積まれている。距離などを計るのはほらアレだ。砲塔の横に出っ張りがついてるだろ?アレだ。あれの部分に計測機器が詰まっており其処から船体奥深くにある砲塔の基部に設置された自動射撃統制装置(小型)で演算され主砲や副砲が発射できる訳だがこれは勿論命中精度が悪く、流石に史実の高雄型とはいかんがかなり外してくる。

あればイライラするのだ。幾ら毎秒で撃てて威力も高くて初速も早くても周囲に命中して馬鹿みたいに高い水柱上げて当の目標は悠々と進んでいる。最終的にキレてグラニート使うんだけどな。

 

 

 

 

 

さてさて、リバンデヒも飽きたのか転移で何処かに去り太陽は本格的に高く登った頃、甲高く壮大なジェット音と共に上空を赤い一本線を引いたF-222が編隊で飛行してゆく。どうやら赤城が飛ばしているようだ。自主的な哨戒活動だろう。達者な事で。

時間帯的には7時頃。一部の艦娘達は早速起き出している頃だろう。当ナウル鎮守府はホワイト鎮守府を目指しているため自由起床制だし、朝食も好きな時間に取ることができる。出撃と言っても毎日している訳ではないし出るのはその日の当番の艦隊。それ以外の艦娘達は基本非番で暇そうにしているのをよく見かける。姉妹で固まって活動する事が多いと思う。翔鶴瑞鶴なんか二人で鏡合わせみたいにくっついて昼寝してたし。確かに最近丁度いい日当たりと気温だから絶好の昼寝日和だしさぁ、艦娘肌焼けないし。船体が炙られたら火傷するが。

そんな実にのんびりとしたペースで始まるナウル鎮守府だが、大体時間帯によって行動が決まっている艦娘が多い。早朝から起きているのは私達アメストリア型戦艦や赤城、加賀。また長門や陸奥も起きている事があるが今日まで改装があったためまだ眠っているだろう。そして意外だったのが大和。今までの大和は早朝から起きている事が多かったのだがこれがうっかりさんで偶に寝坊する事がある。武蔵は......まぁ察しろ。

そして8時から9時頃までには大体の艦娘が活動を始めており色々な所で遊んだり自己鍛錬をしている。偶に大きな爆発が聞こえるのは気にしてはいけないぞ?以前駆けつけたら大惨事になったから。しかし艦娘といえども外見相応の行動を取る事が多く、第六駆逐隊こと暁姉妹は鬼ごっこや第一、第二隔壁の探検をしていたりと可愛い。稀に響がウォッカ飲んでることがあるが艦齢で言えば其処らの人間より上なので全く問題はないのだが、酔っ払うのはやめてくれよ?酔っ払いの対処は長門だけで十分だから。

そして軽巡洋艦といえばまぁあの個性が強すぎる川内型と大和love勢の矢矧だが、こちらはまあ可愛いものだ。那珂はいつも騒いでいるが流石にコンサートなどはしていない。川内は夜になると決まって「夜戦っ!夜戦しようよアメストリアさん!」って物凄い勢いで詰め寄られるが絶対にしないと誓っている。一度勢いに負けて了承したら徹夜で深海棲艦を狩り続ける羽目になったのだ。しかも川内は実力があるからよりタチが悪い。満面の笑みで感謝されたのは少し嬉しかったが。神通か?最近は40キロ先に3センチ四方の的を置いてそれを一発で超精密狙撃するのがマイブームらしい。なにやってんのか私には理解できない。ただでさえ彼女は20.3cm三連装砲を装備してその命中率は99.9%なのにこれ以上を求めるとなったらそれなりの設備が必要になる。大演算が可能なより高機能な演算装置にミクロン単位での計測が可能な自動射撃統制装置。そして何よりも波や潮風によって影響される砲弾をいかに抵抗を少なくして精密狙撃が可能な砲弾の開発と㍉単位での仰角の調整が可能な改良型砲塔の開発。それが必要になってくる。しかしそれはメリットだけではなくいちいちミリ単位での照準定める必要が出てくるため時間がかかる。装甲はあるが絶対じゃないし艦橋を狙撃されたらひとたまりも無い。それではダメだ。

「妖精さん、居るか」

''此処にいる感じです?''

''呼ばれて出てきてばばばばーんな感じです?''

「神通の事だが」

''それなら既に設計済みな感じです?''

''もう砲身出来てるぜー!''

''砲弾は15.5cmでテストする感じです?''

何故20.3cm新型精密砲弾のテストを口径の小さい15.5cm砲弾で行うのかは不明だが、妖精さんにも事情があるのだろう。それよりも、何故に砲身が既に出来てるんですかねぇ...

「今から見れるか?」

''無論無論感じです?''

''多分大丈夫な感じです?''

''作っちゃうぜー!''

''ダメな感じです''

''まだな感じなのです''

 

妖精さんの案内に従って艦内を歩いて行くと、一つの部屋にたどり着いた。場所的には知っているがいかんせんでかすぎるため私も行ったことが無いエリアが多々ある。今回の〔アメストリア型戦艦一番艦アメストリア艦内第一工廠〕とネームプレートが貼られた金属製のハッチを通り抜けると其処は異世界であった。艦内は灰色で統一されているのだが、此処だけはよくわからない材質で覆われており窓一つ無い。煙突型排気口へ直接繋がっているらしい換気口が中央に聳え、その周囲にはなんかよくわからない機械もどきが散らばっており、壁際には各口径の砲身が掛けられている。なにこの空間。砲の尾栓部分や砲架、ターレットリングなどが乱雑に置かれ、弾薬が散らばっている。危険だなオイ。

そして奥の方には一際長い砲身が台に乗せられており、その形状は正直異質だった。

砲身は今までの特殊鋼以外の金属で作製されたのかツヤのある真っ黒な金属で形成された砲身は先端に行くほど鋭くなってゆくのは変わり無いが戦車砲のように砲身の途中でボコっていう出っ張りがある。こいつは確か戦車砲内で燃焼すると、その分空気は無くなり圧力が上昇する。その状態で砲弾が出て行くので栓が抜けた状態になり勢い良くその分を回復しようと空気を吸い混むのだが、此処で急激に圧力が減衰するおかげで均衡が崩れ爆発するのだ。戦車砲が。そうなるとあとは砲塔がポーンッと飛んで行く。まるでドイツの対戦車砲に貫通されたM4シャーマンのように。そんなマヌケは晒せないので戦車の砲身にはガスが注入できるように作られている。それがあの出っ張りだ。あれによって急激な圧力の上下は抑えられ砲身がバナナ状態とM4シャーマン状態になるのは避けられるのだ。まぁ一七式戦車や一五式戦車には関係の無い話だが。しかし今回の15.5cm砲身には必要だったのだろう。可能な限り空気抵抗をなくしてより高速にかつ威力は高く。要求が多い砲弾だ。

密閉度の高い砲身の作製は終了しているらしいが砲弾はまだ。15.5cmで試さなければならない。そして一番の鬼門とも言えるのは砲架に仰角だ。精密性と速度を求められる。

「砲架は?」

''まだできてない感じですー?''

「なんだ。てっきりもう作ったかと思うていたが」

''済みません...どうしても難しくて...''

「ふむ...仰俯角装置の圧力は空気圧にしてみたらどうだ?電動や油圧より早いだろう」

''そのてがあったかーっ!''

''さすが艦娘さんです''

''早速試作するのだー!''

''あいあいさー!''

''かしこまりー!''

一斉に妖精さんが動き出した。さっきから肩に乗っかっている艦長妖精さんはぐてーっとしているがそれも可愛い。砲弾や砲塔をどかしてスペースを作ると早速制作を始めていた。仕事が早いですね。是非その熱意を整備に向けて欲しいです。

「妖精さん、砲弾は?」

''15.5cm砲弾なら、あっちにありますー''

その妖精さんが指差す先には名状しがたきナニかがあった。

いやいやいやいや何あれ。なんかもうほぼ針だよねあれ。確かに一番太いところはそこそこある。しかし信管のある部分は直径5cm以下。要するにすんごいとんがっている。これAPFSDSやんけ。横から見ると角度を測れない鋭角の二等辺三角形。薬莢は意外に小さく、150cm程。炸薬量は1780kgだという。まぁ私の45000kgに比べたら消しカスみたいなものだ。しかし問題がある。砲弾の全長が長い。もうそれはもう。通常の1.5倍近いその砲弾は今までの薬室では装填が出来ないだろう。本当に根本から作り直す必要がある。電動レンチやドライバーと音や溶接、カットの騒音が鳴り響き、工廠と同様の雑踏さが溢れてきた。

 

船体側面。其処に私達はいた。妖精さんがいつも以上に慌しく動き回り、準備をしていた。

「妖精さん、発射用意!」

''はっしゃよーい!''

''試製特殊精密狙撃用砲弾そーてん!''

「標準、前方71000の特殊鋼!」

すると、その指示でこの下に並ぶ大量の20cm連装砲...精密には20.3cm連装砲の内1基が旋回を始めた。そして右舷に90°旋回したところで停止し、砲身が上昇を始める。因みにそのテスト用の20cm連装砲は今回の砲身と即興で改修した砲に詰め替えられている。その黒い砲身が上昇し、とある角度で停止。そのプロセスの時間は非常に短く、ミリ単位での調整には見えない。いや、角度調整なんてやってないのだから当たり前か。其処までは間に合わなかったらしい。

「安全確認用意よし。射程よし。ってぇーー!」

''うちかたはじめー!な感じです?''

''撃ちます撃ちます!''

普段の、ズドンッ、という腹に響く砲声ではなく、真空を抜いたようなブシュッ!という特殊な音が響き、普段より大分小さな砲炎が上がった。なんかサイレンサーみたいだなこの砲身。

射出された砲弾...と言っていいのか悩んでしまう細すぎる針は途轍もない速度で真っ直ぐ飛翔して行き7km先にあった特殊鋼で作ったブロックを貫通した。普通、赤い火花を散らすが、何故か異常に発光した蒼い火花を散らしたのは気のせいではない。やはりあの砲弾はおかしい。飛んで行く時もヒューッ!という笛のような音を鳴らしてこれまた蒼い火線を描いていたし、やはり物理法則さんに正面から喧嘩売ってるとしか言えない。その物理法則無視してる代表が言えたことじゃないが。

「威力は高いが、爆発しなかったぞ?これではただのAPではないか。」

''いえいえ、今回のはテスト用だから炸薬は抜いたのです!''

''だから爆発しない感じです?''

''してたらアレ吹き飛んでるです''

「そ、そうか...」

あれが爆発してたら何が起きてたのだろうか。なんか核みたいなキノコ雲が容易に想像できた。そんな戦術級兵器は今の所私達で間に合ってる。だから要らない。

「炸薬は、少なくしておけよ?」

''かしこまりー''

''改良するです''

''神通さんに許可取ってくるです''

すでに改良について話し始めた妖精さんに一言断りを入れた去った。なんか第一隔壁でガンッッッッ!っていう嫌な音が発射後に聞こえていたがきっと岩だ。そうに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日々の日課となりつつある、大和への見舞い。

大和を寝かせているのは寮に設置された医務室だ。こちらはいつも使用されることがない部屋で、人も少ないだろうという配慮に基づく。だって船体固すぎて艦娘が怪我しないんだもん。

しかし、今日は俄かに医務室が騒がしかった。何かあったのか?

「......失礼する」

ノックをして、静かに入ると、まず聞こえたのは泣き声だった。か弱い、衰弱した泣き声。それに嫌な予感がした私は医務室の病室に駆け込むと、扉をやや乱暴に開け放った。

「大丈夫かっ!?」

随分と焦っているとわかりつつも、動かずにはいられなかった。

目に飛び込んできたのは、大和の体にしがみつき、泣き疲れて眠った武蔵と、それを母親のような慈悲深い笑みであやしている上半身を起こした大和。それを認識した瞬間、私は安堵し、次に最大級の震撼を覚えた。ゾワリ、と背を駆け抜ける不気味な危機感。

粗くなる息を呑み込んでよく見ると、大和の慈悲深い笑みは貼り付けられたもので、大和本人のあの柔らかさはない。そして一番危機感を覚えたのが一切のハイライトが消えた感情の無い瞳。あの柔らかく、凛々しい瞳は光を失い、ただ不気味な人形のような感じを受ける。なにか、怖い。

「......やま、と...?」

「...ふふふ、あら...アメストリアさん。どうしましたか?」

あの、光の無い闇を凝縮したような()に見つめられ、息がヒュイッ、と詰まる。心臓を鷲掴みにされたような、急所を全て決められた時のあの命の危機感に似た()()の感情が沸き上がる。頭がガンガンと警告を鳴らしている。

いかんいかん。こんなこと...如きで私が動揺するわけにはいかんのだ。私は艦娘達の代表であり戦闘を統括するもの。狼狽えてはいけない。

「......調子は、良いのか?」

「はい、おかげさまで随分と楽です」

何が()なのか。私は、無意識にインカムをつないでいた。私の内心に沸き上り続ける恐怖故か、()の長年の経験からの行動か。

「......り、リバンデヒ...妹を全員連れてこい...すぐにだ」

『...了解したわ。大丈夫?お姉ちゃん』

「私は大丈夫だ。大和が意識を回復させたぞ」

『それはよかったわ。すぐに向かうわね...カイクルー!お姉ちゃんが呼んでるわー!ノイトハイルも連れて行くわよ!』

変わらないリバンデヒの声に、安心した。

「......お前は、大和で良いのか?」

「ふふふ、何を言っているのですか?私は大和です。大和型戦艦一番艦、大和ですよ」

......警鐘を鳴らしている本能が、嘘だと断定する。あまりにも、普段の大和と雰囲気が異なりすぎる。こう、まるで別人みたいな......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......待て。

別人?..........だったら...そうか。そういうことか。やはりあの鎮守府は潰しておいて正解だったな。しかしそれだけでは抑まらんなぁ...ああ、非常にイライラする。グツグツと煮えたぎった溶解した鉄のようにグツグツと粘りっこい憎悪の感情。理性が無駄だと処断し、()があきれているが、感情が収まらない。納得がいかない。誰だ。この大和にトラウマを埋めつけた奴は。あ、もう殺しちゃったか...クソ。やっぱり納得できん。同じ境遇にあっている艦娘がいるかもしれない。そう考えるだけで更に溶けた鉄は追加され、憎しみは増大してゆく。

 

 

___________やっぱり、人間は嫌いだ。




予言しよう!ナウル鎮守府にはあと3隻増える!巨乳と犬と失望した人だ!

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