超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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ども、早めに出せた諷詩です。
最近Fateシリーズが盛り上がっているようですね。残念ながら2017年らしいですが。
あとSAOも来年。嫌がらせでしょうか。今年をどう過ごせと...


68.再開のシュチュレーションがこれって...

 

 

 

 

誰だ簡単なお仕事ですって言った奴。

現在絶賛大乱闘中なアメストリアだ。さっきから壁に張り付いたまま一切の身動きが取れないでいる。どうやら深海棲艦もただの馬鹿ではないようで閉じかけて停止している隔壁を土嚢で補強してM2をターレットとして配置。ここで侵入を食い止める防衛線にしているらしかった。おかげで私達は此処に釘付けとなり動けない訳だ。

しかし私達も馬鹿ではない。右の太ももにあるポーチから手榴弾をおもむろに取り出すと安全ピンを抜きとり、信管となるカバーを指で弾くとぽいっという擬音がなりそうなほどの手軽さでなげいれる。その後はM145-S1Aを構え、何時でも突撃できるように。

「3コールで突入だ。...3」

するとどうでしょう。あら不思議。M2の真下で手榴弾が見事に爆発しM2が暴発。弾薬に誘爆して更に大爆発を起こした。12.7mmの弾丸が辺り一面に飛び散り跳弾を繰り返す。無論曲がり角であるこちらにも幾つかの跳弾が襲いかかるが全てノイトハイルがM147で迎撃。弾丸当てという超高等テクニックで全て叩き落としている。優秀で何より。

「...2」

爆発が落ち着きM2だった物が炎を上げて炎上するだけになったのを確認する。

「...1。Angriff!(突撃せよ)

まず私がM145-S1Aを構えながら通路に体を出し第一の制圧。丁度敵が一ついたのでフルオート。リバンデヒがそんな私の後ろから飛び出し私のフルオートを援護射撃として一気に進んで第二の制圧。そしてゆっくりと警戒しながら進んで行くノイトハイルが敵にM147でフルオート。これが第三の制圧。私の145式歩兵小銃と147式軽機関銃のダブルフルオートは敵を粉々に粉砕し通路に黒い血痕を大量にばら撒いた。

そのままハンドシグナルでfollow me!と伝えると警戒を怠らないまま歩みを進める。

通路は曲がり角か直線しかない為カーブなどの面倒極まりないルートはない。それがせめてもの救いだろうか。また現れたM1ガーランドを乱射しながらやってくる雑魚をM145-S1Aのフルオートで粉砕しながらも歩みは止めない。

 

あの後も3ブロックほど制圧は無事に進み1階層分降りることに成功した。

リバンデヒが後方を警戒し私は前方。ノイトハイルはその間でどちらにでも対応できるようにM147を構える。このスタイルは効率が良いようでサクサクと処分することができた。偶に奇襲のつもりなのか後方から襲い掛かる深海棲艦がいたからだ。

 

この先は見取り図によると開けたスペースで、幾つかのエリアへ繋がる通路が集まっているらしい。一応と言った形でM145-S1Aを構えながら進むが、如何にも怪しい。

気配を一切察知することができない。あぁ、これは艦娘パワーでは無く今までの戦闘経験で培った感覚と()という実は一番のチート補正があるからだ。その二つの技能を持ってしても深海棲艦の気配が察知できないのだ。これは怪しいとしか言いようがないだろう。

念のためマガジンを落とし焼夷弾に切り替えて置く。

「リバンデヒ、B-503に装填しておけ」

「了解したわ。それにしても薄暗いわね」

そうなのだ。これも私が警戒する原因の一つで、ある意味自業自得とも言える。等間隔に設置された蛍光灯はかなりの量が割れ、照明としての役割を果たすことが不可能となっている。その原因が私達の徹底的な砲撃と爆撃により衝撃波。蛍光灯とてガラス製の筒だ。500cmの着弾時の衝撃波には勝てないし勝つことはありえない。

カツカツと隠すつもりもなく堂々と歩いているが襲撃は無く銃弾一発でさえ飛んでこない。何か物足りない気分になってしまい、血が熱く発熱する。

......いかんいかん。戦闘狂の気がコントロールできなくなるところだった

 

通路を抜けーーーようとして慌てて身を壁に寄せる。さっきまでいた位置には幾つもの銃弾が飛んできておりあのまま進めば私は蜂の巣になっていただろう。

喧しいほどの銃声のオーケストラは途切れることを知らず軽く連続した音から重く連射速度の遅い音まで様々な銃声が混ざり合いカオスなコントラストを描いていた。要するに不協和音である。開けた空間には深海棲艦が待ち伏せしていたのだ。

土嚢を積み上げバリケードとしM2重機関銃を山の様に配置して圧倒的な弾幕を展開。

床には意地でも侵入させないつもりか対戦車地雷がばら撒かれている。

そんなに殺したいんですかね。

そこから続く筈の通路は鉄板で封じられ、深海棲艦の本気さが伺える。

同時に疑問も湧き上がる。深海棲艦ってそんなに知能あったっけ?という件だ。今までの海戦の通り深海棲艦は正面から突っ切って正面からぶつかり合う事がメインの幼稚な戦術に従って攻撃してくる。しかし最近の戦術は裏をかいたり囮を使って複雑な罠を仕掛けたりと深海棲艦らしくない、人間の狡猾さが現れた攻撃が多くなってきている。

事実私が出向した時に市街地で爆撃機飛ばしてきたしな。

 

...

 

.......待てよ。何故私が小学校に出張授業する事が深海棲艦にバレていた?

偵察機?そんなものが飛んでいたら即刻撃墜していたし電探には反応がなかった。大気圏にも天城のF-222やE-21達がいた。だから自力で探知する事はできない筈なのだ。

密偵?それとも、書類が漏れた?誰によって?スパイだろう。深海棲艦がスパイを放ってきている?では誰が?

.......私が日本に来てから接触した人間は少ない。

憲兵に学生、他の提督にうちの提督の父親。大本営の例の大将に広報官。

これ位しかいない筈なのだ。遠方からの監視?確かに慰安旅行では監視があった。しかしアレはラングレーや特警だろうと予測をつけていた。しかし違ったのだろうか?

まさかの、深海棲艦地上部隊の監視だったのだろうか。荒すぎる監視網も納得できる。

まぁ私達の行動は筒抜けだろうとは考えていたが直接監視していたとは.......待てよ?それだと出向が漏れていたのは分からない。潜水艦だろうと何だろうと全天レーダーやソナーは捉える。移動中は全て消してきた。あ、だからばれたのか。

しかし陸上で監視されていたとはいえ小学校に出張授業をする事がばれていたのは腑に落ちない。まあ気にしても変わらないからこれ以上の思考は破棄する。

 

けれどまぁ、よくもまぁ基地内で重機関銃をぶっ放せるよなぁ...

「武蔵、聞こえるか?」

『...よく聞こえている。何やら騒がしいがどうした?』

「所定の位置についたか?」

『無論だぜ。指示を乞う』

「100cm以下の小口径弾を使用しての砲撃を開始せよ」

『大丈夫か?』

その言葉は私達がいるのに地上を焼いても大丈夫なのか?という問いだろう。無論だ。

陸上兵器も地下に侵入を開始した様だし徹底的に焼かなければならない。

「無論だ。攻撃開始」

『了解した。この戦、武蔵に任せてもらおうか!』

いえ、貴女の主砲は150cm三連装砲だから副砲しか撃てないんですがそれは。

しかし第二艦隊には他にも艦艇はいる。次々と主砲を放ち高角砲も俯角をとって連射してゆく。各艦艇が重機関銃の様に唸り赤い火線を大量に投射する。砲煙はここからは見えないが恐ろしい事になっているだろう。

「リバンデヒ、グレネード」

「了解」

一言だがリバンデヒは理解してくれた様で40mmグレネードを装填し発射。

ポンッという気の抜けた音と共にゆっくりとした速度で飛んで行くと空中で爆発。大量の破片を散らし鉄の矢を全方位に降り注がせる。撃ったのは40mmフレシェット弾。

フレシェット弾と言うのは小さな鉄の矢をこれでもかと積み込んだ砲弾の事で破片手榴弾より拡散し突き刺さる。また爆発する威力は高く貫通力にも優れているため使いやすい。しかし全方位に撒き散らすため味方にも飛んで行く可能性があるため使い所は限定される楽しいグレネードだ。

深海棲艦は血を流さない。しかしM2に突き刺さった鉄の矢は暴発を招き爆発。

同時に三人同時に飛び出しフルオートで射殺してゆく。AIMは幸い優秀な為姉妹との絶妙な連携で虐殺を遂行する。阿吽の呼吸ともいうべき行動のタイミングの一致で制圧にかかったのは5秒。

そのまま突撃し土嚢を蹴り飛ばすとM145-S1Aを下ろし散らばっている土嚢の一つを掴み上げる。そして息を整え利き脚を僅かに下げ体を捻る。

「...シッ!」

鋭い息を吐き思い切り腕を振り下ろす。鞭の様にしならせ最も力が伝わる投げ方で。

途轍も無い馬力で飛ばされた土嚢は重力と慣性によって鋭角の三角形に姿を変えそのまま鉄板に直撃。派手にひしゃげた音が鳴り響き衝撃波で鉄板がくの字に変形し吹き飛ばされる。そこへ私は抜き取った五式自動拳銃を撃ち込んで行く。念の為だが待ち伏せていた深海棲艦は居ないようだ。

「行くぞ」

「......えぇ。」

「......はぁ...」

なんかドン引きされているが私は気にしないもん。気にしないったら気にしないもん。

五式自動拳銃をホルスターに戻しつつM145-S1Aを構えレールにつけておいたタクティカルライトを点ける。限定的ではあるものの明るい視界が確保された。

一応タップで7.92mmを数十発送り込んで見るとあら不思議。闇に潜んで待機していた深海棲艦に命中し残骸に変える。

 

 

 

「ノイトハイル、ここの下か?」

「うん。どうやらこの電子ロックの扉の下に階段があって重要な営倉があるようだね」

「よし。ノイトハイル、撃て。」

「りょうかーい♪」

妙にルンルンした声でノイトハイルがM147を構えると40発/sという膨大な連射力で7.92mm弾を送り込んで行くと最初は跳弾ばかりしていたが徐々に削れそこにピンポイントで送り込まれる7.92mmが抉り扉を削り取ってゆく。

通常の銃火器なら耐えられたであろう防弾扉は時間逆行術式を搭載した無限弾倉には勝てなかったようで穴だらけになって遂に力尽きた。蝶番も粉砕された扉を廊下に投げ捨てるとM145-S1Aを構え慎重に歩いて行く。こういうところで奇襲してくる奴がいるかもしれないし。隅々まで警戒したまま制圧をしてゆくと薄暗い照明に照らされた階段を発見。リバンデヒが後方を警戒し私が先頭に。中間にノイトハイルを挟んだいつも通りの陣形で制圧しながら階段を降りてゆく。金属製なのか歩くたびにカツンカツンと乾いた音をジメジメとした空間に響かせている。そして一番下に降りた先には覗き穴が鉄格子で封じられた扉。

鍵の部分と蝶番を7.92mmで排除して蹴り倒すとそこは赤いランプに照らされた閉鎖空間。

等間隔に鉄の扉が広がる不気味な光景だった。しかし私が扉を踏み倒した時に悲鳴が聞こえたことから艦娘が生存していることが確定した。

「リバンデヒ、片っ端から扉を破壊して救出しろ。ノイトハイル、ここで敵を排除しろ。誰一人入れるな?」

「「Verständnis!」」

かくいう私も扉のドアノブをM145-S1Aの銃床で叩き壊すと力尽くで取り外して艦娘を救出する。そこにいたのは捕虜として捕まっていた翔鶴。

こんな時でも冷静さを失っていないのか背筋を伸ばして静かに座っていた。しかし肌は土気色で所々装束は赤色に汚れている。少々やつれているがその琥珀色の瞳は決して生気を失っていない。

「.......待たせたな」

「......ごほっ、...いえ、大丈夫です。それよりも、瑞鶴は...」

「大丈夫だ。」

多分隣だろう。今リバンデヒが突入した為大丈夫な筈だ。

翔鶴に手を差し伸べると微笑みながら手を取り立ち上がる。しゃんとした立ち方には気品が感じられ、余裕を持っている。すごいメンタルだ。

翔鶴と共に営倉から出るとリバンデヒが救出したと思われる陸奥が立っていた。

リバンデヒ仕事早いな。いつもそうであればいいのだが。

 

続けて扉を粉砕して中へ入ると随分と憔悴した様子の加賀が壁にもたれかかっていた。

これはやばい。色々な意味で危険だ。すぐに駆け寄ると手首を取り脈を確認。

.......あることにはあるが弱々しく今にも途切れそうだ。

危篤...ではないが危険域に到達していることは事実。すぐに搬送する必要があるだろう。

「ノイトハイル!治癒符を持ってこい!」

「わかった〜!」

すぐにノイトハイルが作り出した治癒符を加賀に貼ると幾分かマシになった様子。

治癒符というとはこういう衰弱や負傷状態から回復させてくれる便利な符だ。ぺらぺらの和紙にくったくったような良く分からない文字がこれでもかと敷き詰められた紙幣ほどの大きさの紙切れは絶大な効力を持つ。因みに「符」というのは山奥に暮らしていた引きこもりが発案した命繋ぐ術だったという。山奥にて己の厳しい修行を積んだ山伏が野菜などの食料を得る手段として加護がありそうな感じで作成した木製の札を貨幣のように使用したのが始まりだとか。そこに目をつけたのが神社。今では『御守』と名を変えているがあれが陰陽術の札と起源は同じなのだ。神社にとっては財政をやりくりする上での苦渋の策だったのだろうが。

そんな事情を全く無視した陰陽術に精通したアメストリア國ならではの野戦治療法だがこれは効果がある。

 

加賀を救出した艦娘達の側に寝かせると次の扉を破る。

「.......あらあら〜?アメストリアさんじゃないのぉ........」

普段と変わりない口調で迎えたのは能天気な性格の愛宕。しかし普段の余裕は無く強がっているようにも見える。その独特なコートにも見える服は中破したように破け切り裂かれている。それを見るたびに胸が締め付けられ、深海棲艦への憎しみが増幅してゆく。良くも私の愛しき艦娘達をッ!という感じにな。

「うむ。遅れたな。救出に来た」

「よかったわぁ...早く高雄姉さんもよろしくおねがいするわ...」

「そちらはリバンデヒが救出した。」

愛宕に肩を貸して営倉から出るとちょうど瑞鶴と翔鶴が抱き合っていた。うむ眼福眼福。

 

 

「........何故だろうな。私にはカイクルが見当たらないのだが、私の目は節穴になったのか?」

「そうなったら私が飼ってあげるから安心しなさい。けれどカイクルはいないわね。」

「他にも大和たちも居ないねぇ...」

そう。営倉全てをこじ開けて艦娘を救出したが一部いないのだ。

カイクル、大和、長門、神通がいないのだ。お陰で陸奥や川内は随分と憔悴し落ち着かない様子だ。

「.......あの部屋にもいなかったしねぇ........」

営倉の並ぶ廊下の奥に、蒸せ返る濃厚な血の匂いが充満する部屋があった。

分かりやすく言うと、拷問部屋。無理矢理にでも聞き出したい情報があったのだろう。

翔鶴や瑞鶴によるとカイクルが連れて行かれるのか目撃したらしい。あと長門の悲鳴も。

つまり一歩遅かった。深海棲艦がすでに連行したあとだったのだろう。だから各地で殺しに来たのでは無く足止めが多かったのだろう。

「取り敢えずまずは脱出が先だ。妖精さん、ここの近くに七九式装甲輸送車か五七式重装甲輸送車を持ってこれるか?」

''お安い御用です!''

無線の向こう銃声や45mm砲の連続した砲声が聞こえるなか妖精さんがはっきりと断言した。

同時に廊下も此処も大きく揺れ、爆発音が響きわたる。爆発音に混じってビルを取り壊す時のような音が聞こえることから強行突破してきているのだろう。

''アメストリアさんアメストリアさんできるだけ端によってほしい感じです?''

''突き破る感じです?''

「了解した。総員聞いてくれ。動くけるものは重傷者を背負って端に移動してくれ。」

「「「了解!」」」

艦娘達を避難させて妖精さんに一声かけると、一際大きな金属のひしゃげる音がすぐそばで響き、その度に艦娘達がびくりと肩を揺らす。相当怖い思いをしたのだろう。幸いか精神がやられた艦娘はいないようだが心身共に激しく衰弱し加賀は未だに危険域を上下している。

''艦娘さん、突入する感じです?''

「やってくれ」

すると、爆発音か踏み潰す音が隣で響き先ほどまで艦娘が集まっていた壁がそこから押されたように変形を始める。巨大な力で押されたのであろう壁は既にボロボロになり一部は亀裂が入り眩しいほどの光が漏れ出している。成る程。此処まで五七式重装甲輸送車を持ってきたのか。妖精さんもやることが違うなぁ...なんと言うかいつも通りアグレッシブだ。

壁の一部が引き裂かれ、明らかに太く、大きなマズルブレーキがひょっこりと姿をあらわす。そしてにょきりと砲身がそのまま突き出してくると壁全体が次々と布の様に引き裂かれて行き五七式重装甲輸送車の灰色では無く鋭い傾斜装甲を持った黒色の車体が覗く。

重いモーター音と共に砲身が旋回して行きナイフの様に...切れ味の悪い鈍らが無理矢理押し除けた様に金属の板を除去すると巨大な車体が一気に突入してきた。

あれれー?おかしいぞー?(KONANN感)なんで車高がこんなにも高いのかなあ?五七式重装甲輸送車は3m近くあった筈だけどなぁ?なんでこんなに大きくて車体の後方が埋まっているままなんだろう。私不思議だなぁ......はぁ、もういいや。なぜか突入してきたのは一七式戦車だったのだ。

格納式のランプを点灯させ無理矢理力任せに進んできたのだろう。砲塔には配管や壁の残骸が盛りだくさんにトッピングされ、中々にカオスだ。

しかし地上から地中深くの此処まで強行突破するなら一七式戦車をチョイスしたのは正解だろう。五七式重装甲輸送車も七九式装甲輸送車も装輪式。分かりやすく言い換えればタイヤを転がして走るやつなのだ。これは道路などの整地では良いのだろうが山岳などの不整地には向かない。しかしメリットは多く履帯式と比べ修理が楽だ。なにせ破れたタイヤを交換するだけで良いのだから。しかもサスペンションによりそれぞれが独立した動きをできるため横転しにくい。陸軍では他にも三一式特大型輸送車両や二五九式装輪装甲輸送車、七式装甲車輌、一式重武装車輌は装輪式だ。しかしデメリットも多くタイヤとあって予備を積むと嵩張るのだ。だからわざわざ外付けの装備の面積を削ってタイヤを付けないといけないし、何よりダサい。弱そうに見えるのだ。アメストリアにとっては関係ない問題だ。

比べて履帯式。キャタピラーを使用した兵器は安定する。不整地も整地も楽々走破し踏み潰す。しかしこれは無限軌道。帯を回転させて進んでいるため一枚でも履帯が破損したら走行不能に陥る。これはタイヤの方が便利だろう。戦場の真っ只中で履帯が切れたらあとは大惨事だ。固定砲台と成り果て敵にとっては良い的だ。

良いところでtierの低い戦車に履帯を切られて撃破された戦車ゲーマーも少なくないのではないだろうか。そういう危険性を伴うし何より重い。ゴム製のタイヤと違ってこちらは直に地を踏みしめるため全金属製だ。形も複雑で数も多い。修理や整備には時間がかかるだろう。これもアメストリアにとっては関係ないことだが。ほんと時間逆行術式万能だな。これ作った人天才じゃね?

兎も角、突入してきたのはよりによって全長17.7mの超重戦車だった訳だ。

砲塔のハッチが自動で開くと妖精さんが這い出してきてこちらに敬礼してくる。当然返礼しリバンデヒとノイトハイルに視線を送る。すると優秀な二人は硬直していた艦娘達を誘導し一人ずつ一七式戦車に入れてゆく。

''どんな感じですか?''

「......全員が慢性的な栄養失調と脱水症状。尋問を受けたのか負傷している者が多数だ。特に加賀は危険域を脱していない。早急に医務室に運べ。」

''りょーかいしましたー、しかし足りない感じです?''

「.............間に合わなかった。既に連行された後だ」

ギリッ、と歯をくいしばる音が漏れてしまう。私達がもっと早ければ連れて行かれなかったかもしれない。連れて行かれたのはカイクルに大和、長門、神通。

カイクルと長門は拷問された可能性が高いし、非常に落ち着かない。心配で心配で堪らない。

『武蔵からアメストリアへ。報告だ。たった今ミッドウェイ島を焼き終わった。後は貴様らの脱出を待って最終砲撃を開始する。』

「了解した。お疲れだ」

『それよりも、我が姉は無事か?』

「......本当に申し訳ない。」

『.......................。そうか。』

「既に連れて行かれた後だった」

『......そ、そうか...』

ん?何か二人の間で語弊がある感が否めない。

『帰還を心より待っているぞ』

「うむ。全員乗り込んだか?」

「ええ。私達以外は。」

「なら出してくれ」

私達も車内ではなく車体の上に飛び乗るとちょうど良いシャーシの部分に腰掛け、M145-S1Aを片手に警戒する。よくソ連兵がやっていた乗り方だか一七式戦車は凹凸が少ないため座りやすいのだ。

 

一七式戦車が走り出し踏み潰されて坂道に成り果てた地下通路を登って行くと不意にキューポラが開いた。

''アメストリアさんアメストリアさん。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの艦長さんより通信です''

''電信な感じですー?''

「了解。どうした?」

''私達の目的は一応完遂されました。なのでアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの指揮権を正式に返却する感じです''

''艦娘さん復活な感じなのです''

「...受けた。妖精さん、全基オンライン。主砲九一式徹甲弾装填。副砲に気化弾を詰めておけ」

''かしこまりー!''

''ガンガン行こうぜ〜!!''

 

艦娘達を乗せた一七式戦車が地上に到達するとそこはただの平原と化していた。残骸と呼べるものはほとんど残っておらず全てが灰と塵に変化していた。どこぞの緑の悪魔より悪質なリフォームだ。根こそぎ吹き飛ばして対価は貰わない。寧ろ私達が弾薬を湯水のごとく消費して『吹き飛ばしてあげている』のだ。

一七式戦車の後方にはいつの間にか残骸をトッピングした五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車が合流しており、確認できる限り深海棲艦の反応はゼロ。洋上を見ても美しい艦影が優雅に浮かぶ姿のみ。島の裏側には武蔵もいる。正面側にはアメストリア型戦艦三隻に金剛型。

後方には航空母艦が布陣しているだろう。

隼が向かってくるのを眺めながら、決して良い顔をしていないリバンデヒに報告を受ける。

「どうだった」

「ダメね。どこにもいないわ。あとこじ開けられた穴の他に船底に大きな破口があって水密弁が閉まっていたわ。何かあったようね」

一応、リバンデヒにアメストリア型戦艦三番艦カイクルの内部を調査してもらっていたのだが、無駄足に終わったようだ。まぁ成果はあったのだろう。船底に穴となると相当だ。船底というのは常に海水に浸かる場所。アメストリア型戦艦は速力を出さなくても莫大な海水をかき分けて進むため船底に掛かる負荷は途轍も無い。だから船体上部とは比べ物にならない程強固で精密な設計が施され、ましてやこれは軍艦。魚雷対策に装甲も貼られ耐久性は半端ない。

多分対1000cm位あるんじゃ無いだろうか。多分他の艦艇も同じようなものだ。あ、暁型は水上スキー型に魔改造したからもっとだな。特にキールとか。

 

「全艦全砲門をミッドウェイへ!撃ち方...始めェ!」

その一声を機に全艦が持てる砲を放ちは始める。それは途轍も無い轟音となって響き渡り島の周辺全域が濃い霧に覆われる。しかし砲撃が止むことはなく、決して止めることなく500cm四連装砲を、150cm四連装砲を、46cm三連装砲をただひたすらに撃ち続ける。ジャラジャラと主砲の薬莢が排出されて行き、4本の砲身が順に上下して行き大口径といえないレベルの砲弾が毎秒のペースで放たれ曲線を描かずに着弾。徹甲弾だからそのまま地中へと深く突き刺さり時限信管が起動し大爆発。これが60門。それに副砲や30cm連装電磁力砲、20cm連装砲の片側が発砲し使用されていない側のミサイルハッチからはトマホークが乱れ撃ちされる。

しかしそれを同時にやって自動射撃統制装置や姿勢制御装置、三次元レーダーや対空電探を同時に動かしても大して負荷のかかっていない中央演算処理装置。戦艦からは副砲を含めて大量に打ち込まれまるで再び噴火した様な形相を呈している。

不本意だが硫黄島の砲撃のようだ。数えられないほどの砲弾が着弾し地下深くを爆破して掘り下げて行く。あ、そうそう。鹵獲されていた艦娘達の船体は別の島に纏めてあったらしい。今頃第三艦隊が確保している筈だ。

兎に角撃って撃って撃ちまくる。情け容赦なく処分する。うーむ。この艦隊ぐるみのフルボッコはなんとも言えない快感をもたらしてくれる。こう言い知れぬ達成感とストレス発散にはもってこいなのだがざっと計算したところ、今回のMI/AL作戦では100万単位の弾薬を消費している事になる。まぁ私達が工場になるけど気にしない。今回は無講礼だ。鬱憤を晴らして暴れまわって構わん。〜〜♪

 

「全艦、砲撃止め。各艦は残弾を報告せよ。」

『リバンデヒ、残弾はそうねぇ...あと三斉射出来るくらいかしら。』

十分じゃ無いですかやだぁ...

『ノイトハイル、えへへ〜全部使い切ったから万能生産装置を起動してるよ〜』

『武蔵だ。こちらは全て使い切った。補給をしたいな...』

『Heyアメストリアー!All-out attackシテクレテthank youネー!Mysister'sは榛名が5attack残ってるけどme達はもう無いネー。lm'sorry...And later treat the tea!』

「ふむ、後でお邪魔しよう。」

今の所戦闘できるのはリバンデヒと榛名。リバンデヒは万能生産装置で各艦に補給兼護衛をしてもらうとして、あと4隻くらいは欲しいな。

『龍驤や。こちらもF-222達は現在補給中やから今飛ばすのは無理やなぁ...』

『赤城です。こちらも現在機体を総点検させているので少し厳しいです...』

「そうか...」

これはアメストリア型戦艦からF-222改を飛ばすしか...

『大鳳です。こちらは余裕がありますが如何しましょうか?』

「それは本当か...ならば三個編隊程飛ばしてくれ。」

『編成は?』

「...F-222とGF-21だけでいい。管制はこちらでやる。」

『了解しました。』

これで大鳳の航空支援をゲット、さすがは大鳳といったところか。こうなる事も想定して飛ばせる機を温存していたのだろう。

『こちら最上だよ。僕達は少し厳しいかなぁ、ごめんね』

「いや無理をしてもらうわけにはいかん。弾薬の心もとない艦を中心に艦隊を編成して撤収を始めてくれ。榛名はこちらに」

『了解です』『了解いたしました!』『了解いたしました』

「他に弾薬の余っている艦はいないか?」

ダメ元で聞いてみる。まぁいないだろーーー

『青葉ですぅ!衣笠は無理でしたけど私は行けますよぉ〜!』

『龍田よぉ...私達も結構余っているわ。あら天龍ちゃん暴れれなかったからって喚かないの』

『だってあまり撃つなと言われて納得できないに決まってるだろ!』

『あらぁ?そんな事言って良いのかしらぁ?』

『アッハイ。』

「........了解した。」

なんかすっかり尻に敷かれているな。天龍。天龍幼稚園(笑)とか言われているが実は一番苦労しているのでは無いだろうか。頑張れよー(棒)。

『こ、こちら吹雪です!アメストリアさん!至急報告したい事が...!』

「どうした。落ち着いて報告してくれ」

『は、はい...実は先程電探に不審な反応があって...反応から深海棲艦では無いんですが船籍が表示されないんです...!』

それは...明らかに違法漁船か何かだろう。しかしこのタイミングで不審船とか怪しすぎるんだが...一応妖精さんに指示を出し電探を起動させるとすぐに捕捉できた。恐らく私達のドキッ☆冬の大掃除大会!(島の地下が)ポロリもあるよ!が開始されてから慌てて逃げ出したのだろう。そう大して離れていない。

「よく報告してくれた。随伴艦に榛名!」

『はいっ!』

「青葉!」

『はい〜!』

「天龍、貴官には龍田と共に臨検隊をやって貰いたい」

『おう!任せとけ!腕がなるぜ...』

『私もオーケーだよ』

「ならばこちらに来てくれ。重火器を配布する。」

 

「これは何なんだ?」そう問う天龍の指差す先には艦橋のテーブルに乗せられた二丁のアサルトライフル。一見HK417に見えるその突撃銃はアメストリアにおいて親衛隊が使用している法務実行部隊用にカスタムされたM145-S1Aの派生系。M69。以前呉に出向した際に艦娘達に渡した銃火器だ。あ、アレまだ返却してもらってないや。まあ良いか。

「コイツはM69。取り回しの良い歩兵小銃だが、命中率や射程は高精度でマークスマンライフルとしても活用できる。」

「まーくすまん?」

「あぁ、マークスマンライフルというのは戦場用にカスタムされたり設計されたライフルだ。セミ、フルオートが出来る狙撃銃だと思ってくれ。」

「へぇ...すげえな...」

天龍がしみじみと見つめる中、龍田は何の戸惑いもなくM69を掴むと銃床を肩に開け脇をしめる。足は肩幅に力を抜いて。なぜか様になっていた。教えた覚えは無いのだが。

「うふふ...これは良いわねぇ...もらって良いかしら?」

「それは構わないが...」

やはり才能だろうか。一発でWWIIの小銃とはかけ離れた形をしているのに扱いをまるで知っているかのように手に取っている。しかもマガジンも装填しコッキングレバーも引いて初弾を送り込んでいた。お主天才か。そこまで分かるとかマジ無いわー。マジやばいわー...

「さて...全艦三角陣形にて前進せよ。第三戦速!」

その指示で一斉に戦艦も重巡洋艦も軽巡洋艦も関係なく前進を始める。

その馬力は凄まじく海水を一時的に消した程だ。かく言う私もゆっくりとした時間をかけて前進を開始。速度を上げて行く。上げすぎると榛名達が転覆するからな...

上空には爆撃機...否F-222の編隊が到着し並走している。

大鳳の所属を表す灰色の三本線が描かれたF-222やGF-21は上空を旋回しながら隙間なく警戒している。西の海岸線には日が沈もうとしおり空全体をオレンジ色に染め上げていた。さらには雲が混じり水墨画のような芸術的な天空に昇り墨となって塗り潰すは先程撃敵リフォーム☆afterしたミッドウェイ島。本当に噴火したみたいな惨事になっているが知ったことでは無い。

 

すっかり太陽は潜り込み夜の茅が覆う暗闇の世界。ちょうど今日は新月らしい。星の光も照らす力には及ばず真っ暗な闇と化している。ミッドウェイ島をみると炎上しているのか煙の中に赤々とした業火がチラチラと見える。

私達はというと最低限の照明のみに絞り光源を制限。榛名を先頭に全艦を先行させている。

突然榛名の探照灯が遠隔操作で作動し海面を照らし出す。そこにいたのは150mを超えるであろう大きなタンカー。何故か照明を点けずにコソコソと航行していた。残念ながら113号電探は暗闇を苦としないためバッチリ捉えている。

「そこの不審船に告ぎます。我々は大日本帝国海軍ナウル鎮守府です。速やかに停船してください。繰り返します。我々は大日本帝国海軍ナウル鎮守府です。速やかに停船してください」

探照灯で照らされているにもかかわらず、タンカーは停船しない。そこへ闇に溶け込んだ真っ黒な船体から探照灯が照射され、三方位を封じ込む。天龍龍田の15.5cm三連装砲は既に旋回しており砲口は向けられている。これは私も動いたほうが良いだろう。タンカーの進路上に陣取り、闇に紛れる。

するとタンカーの方で動きがあり僅かに進路を右へずらすと同時に甲板に乗員が上がってきた。

そして甲板上に被された布をとると、そこには最近の装備一斉更新で破棄された筈の12.7cm単装高角砲が。乗員がそれを操作して榛名へ向けた。榛名も副砲を旋回させているが間に合わない。というか下手に撃てない。

ドォンという私達の砲に比べたら虫みたいな小ささの砲声。しかし打出された砲弾はMausとほぼ同口径の127mm砲弾。とにかく撃ったのだろう、砲弾は艦橋に飛んで行き着弾。そして何事もなかったかのように弾き返した。戦艦の装甲を舐めてはいけない。金剛型であろうと私という過保護がいる限り最強になる。高々127mm位で貫通する筈もない。

『そこの不審船に告ぐわぁ...さっさと停船しなければ撃つわよ〜?』

楽しそうな声色で龍田が警告するもタンカーは止まるそぶりを見せない。

多分パニックになっているのだろう。暗闇に紛れてコソコソと航行していたら突然戦艦に発見され更に127mm砲もビクともしない。しかも追い打ちをかけるが如く真っ黒に塗装された軽巡洋艦が突然現れ包囲された。逃げようと前進するもレーダーには島が出現。壁のように聳えるナニカに慌てて転進。そんな具合だろう。

 

あろう事かタンカーの乗員はAK-47のコピー品を持って銃撃。龍田が被弾した。

他にもG3のライセンス品か粗悪銃も繰り出し必死に銃撃を続けている。そこに上空からライトが照らされ、爆音と暴風に襲われる。主翼を回転させてホバリングしたF-222が監視していた。まだ諦めないのだろうか。

「天龍、龍田。乗船用意。奴らが人質を繰り出してくる危険性がある」

「分かったぜ」

「了解よ〜」

私も右舷に設置された巨大な250cm探照灯を起動させタンカーへ向ける。同時に艦橋群の照明を点灯させ船体に埋め込まれた信号用の電灯を一斉に点灯させる。船体中に散りばめられたオレンジ色の光を発するライトに飾られた超巨大な戦艦。暗闇に浮かび上がるその姿はライトとその陰によりより偉大さを感じさせ、威圧感に溢れている。

一番主砲が旋回して行き砲塔が合わせられる。

『アメストリア型戦艦一番艦アメストリアより最後の警告を発する。今すぐ抵抗を止め即刻停船せよ。止むなしは撃沈も考えている』

そう言うとやっとタンカーは停船した。

一応露天艦橋からバイポッドを手摺に引っ掛け115式対艦機関狙撃銃を構える。最近19.8mm重機関銃しか使ってないからなんか小さいように感じる。これでも2150mmあるんだが。自動で調整されたスコープを覗き込むと未だに重火器で武装したむさ苦しい男共が群がっている。

「二人共、突入してくれ。発砲は許可する」

武装した二人がタンカーに乗り付け発砲。たちまち激しい銃撃戦へと発展する。私も支援を目的としているのでトリガーを引き絞って行く。カーソルに対象の頭部を合わせて引きしぼる。

ただそれだけで弾薬に点火し弾丸が高速で飛翔。派手に肉片と血しぶきを散らして対象が吹き飛ぶ。しかしアホみたいにワラワラと湧いてくる蛆虫に二人も苦戦しているようだ。しかし龍田に至ってはルンルン気分で次々と射殺している。龍田さんやはり天才か。

私も147式軽機関銃も持つと甲板に転移。タンカーに飛び乗る。無論その間も銃撃することは忘れない。艦娘パワーで飛び乗ったあとは機械的にフルオートでグチャグチャになって人間と判別できなくなるまで消し飛ばすと次へ。

ミッドウェイでの室内戦より楽だ。こいつら銃の扱い方下手だしなんか腰だめで撃ってるし。それ素人のすることだからな?上手くなるのって本当のプロだけだからな?

そんなゲリラみたいな原始的な戦法に無理やり銃をくっつけたような中途半端な構え方で撃ってくるなし。銃が穢れる。

「大丈夫か、天龍龍田。」

「おうよ。いつもに地味な任務しかしてないからな。」

「確かに最近は潜入とか偵察が多かったわねぇ〜?」

そう。この二人は通常の任務に就いていない。色々と黒い、裏の任務を遂行してもらっている。最近は偵察が主任務と化しているが、いざとなれば拉致だって拷問だってやる。無論人も殺す。関係者も無辜な市民も。任務に立ち塞がるものは武力で排除する諜報部隊なのだ。以前君たちはそんな事をするために生まれたんじゃない!とか君達は無実の人々を殺して恥ずかしくないのか!とか正義心(自己中心的な価値観の押し付け)で任務を邪魔してきた若者(厨二病患者)が居たらしいが今は魚の餌になっていることだろう。来世でまた会おう。もっとも会ってやるつもりもないが。

 

再び湧いてきた雑魚を除去し、船内に突入。天龍は艦橋へ。龍田は私と共に船内のタンク部分へ。ちゃんとしたタンカーならば空洞などなく何かしらの資源で埋められていた筈のタンク。

しかしそこにはタンクは存在せず、代わりに間仕切りが幾つも作られ監獄と化していた。衛生面など考慮されていないのか床はコンクリートのように汚れ荒れているしまずびしょ濡れ。上を見るとここは金網が天井の様だ。なら水は流れ込んでくるだろう。中にも雑魚共はいたが7.92mm弾で黙らせてゆく。

『天龍、クリアだ』

Ja(ダー)

こちらも隙間さえあれば全て確認しチェックしてゆく。

禁制品なのか何も印字されていない木箱が積み上がり一部は見慣れたミリタリーグリーンの箱。兵器の横流し品だろう。中国語だ。簡略化しすぎて全く読めない民族性を濃く表す文体は適当で微妙だ。他にも、奴隷と思わしき人間も発見したが構っている暇はない。

虱潰しに制圧してゆくと木箱、木箱、麻薬擬き、奴隷と見事に外れいている。

「カイクル!居るか?」

「________________ 」

僅かに、音が聞こえる。

布の擦れる音が僅かに響き、うめき声のような悲鳴のような良く分からない声が聞こえる。

すぐに147式軽機関銃を構えて駆け寄る。しかし警戒は怠らず。

銃口を向けつつ隅々まで睨みつけるように確認した私は、中央の物体を見て息を飲んだ。

まず、顔が判別できないようにか麻袋が被せられ周囲には拷問器具なのか分かりたくもない見たくもない大きなペンチなどが散らばり一様に血だらけだった。思わず目を背けたくなるが、その既に服の役割を果たしていない巫女服は確かにアメストリア型戦艦だし、ポニーテールに纏めた白いリボンは血に染まり赤くなってしまっている。両腕は天井につながる鎖によって吊るされ紫色に変色している。これは...誰がやったのだろうか。絶対に許すことができない。

すぐに鎖を切るとカイクルを回収する。麻袋を慎重に剥がすと吐血したのかゴフリと黒々とした血液が吐き出される。まだ、大丈夫だ。

「龍田、少し来てくれ」

「何かしらぁ?...........預かるわ」

「頼む。」

 

今回はカイクルのみの救出ではないのだ。あと大和と長門と神通。三人を回収しなければならない。

147式軽機関銃を持ち直し他のエリアも探索すると、中に長門と大和が纏めて放置されていた。扱い荒っ...手枷が嵌められ暴行されたのか身体中に青痣や痕が残っている。あまりにも悲痛すぎて直視ができない。しかも、よりによって大和はトラウマが再発している。

その反対側の牢には神通も倒れている。こちらは出血した痕跡は見当たらないが、打撲痕が夥しい。気絶しているのが幸いか。

......確かにこの状況は以前と似ている。ジメジメとした悪い空気。灯りは少なく闇が近い。

そう。あの収監されていたあの鎮守府に。

「......大和...」

「...ヒィァッ!?!?」

怯えきっていて、私がアメストリアである事も判別出来ないようだ。これは重症だぞ...メンタル面のケアなんか知らないし......

「天龍、艦橋を破壊後すぐに来てくれ。少しヤバイ」

『了解』

天龍はすぐに来てくれた。両腕を真っ赤に染めながら。いやそれ返り血っすよね?なんか明らかに肉片とか混じってるんですがそれは。黒を基調とした制服や指抜きグローブと合わさって絵になるが危なっかしい。天龍もその惨状に顔を顰めると、黙り込んで無表情になる。そして機械的に長門の脈を確認して背負いあげると龍田の方へと歩き始める。

私はスリングに任せて147式軽機関銃を手放すと大和と神通を慎重に割れ物を扱うように背負い上げ船内から出ると、風に迎えられる。今だライトをつけてくれていたのだろう。F-222が上空でホバリングし榛名の探照灯がこちらを照らす。

妖精さんに寄越してもらったCH-31に四人を乗せると私もソリの部分に足をかけ指示を出す。

「天龍、龍田。良くやってくれた。このままナウル鎮守府に全速力で帰還しゆっくりと休んでくれ。一週間ほど休暇を与える」

「それは有り難いな。」

「今日はちょっと疲れたわぁ...」

疲れの色を見せた龍田は初めてだ。そうなるまで今回の作戦は大胆かつ過激だった。

全戦力を持ってミッドウェーを正面から襲撃し叩き潰す。そして地上兵力を送り込み制圧兼捜索。

舞い上がったCH-31の機内で考える。今回はあまりにも負傷が多すぎた。

船体云々ではなく、艦娘の精神的、肉体的問題だ。

「提督、たった今攻略作戦が完遂された」

『良かった...カイクル達は無事かな?』

「......お世辞にもあまり宜しくない。今回の戦闘でトラウマを抱えたり再発した艦娘がいる可能性がある。」

『そう...だよね。みんな既に到着してるけど疲れている子達が多いみたいだし...あ、あと間宮から伝言だよ。美味しい夜食を作ってお待ちしています、だって』

「ふふ、そうか。すぐに帰還する。」

『無事に、ね。』

「無論だ」

甲板に着艦したCH-31からすぐに医務室に四人を運び込み、すぐに手当してゆく。輸血などの大掛かりな処置は必要ない。傷の大きな場所に治癒符を惜しげもなく使用してゆく。そしてその上からそっと包帯を巻き、できるだけ自然体に。あと服装も工作班の妖精さん提供の服に着替えさせている。流石に汚れたままだと化膿する危険性もある事だし。

「........っ.......ここ、は...」

ピクリと肩が揺れ、すぐさま振り返ると薄く、弱々しく目を開けた長門の姿が。

左腕は固定され折角の健康的で柔らかな肌は包帯で覆われている。

「目が覚めたか。長門よ」

「.......アメ、スト...リアか?...ゴホッ!...つぅ.......」

「まだ絶対安静だ。いくらアメストリアの医療技術が優れているとは言え瞬間的に完治できるほど優れていない。」

大和は私が背負ったと同時に意識を失った。何か私嫌われる事しただろうか。したのはリバンデヒだろうに。誰彼構わず胸揉みおって...

『榛名です。一応報告を。たった今到着いたしました。』

「了解した。ゆっくり休んでくれ」

『はい!』

どうやら帰還していないのは私だけらしい。

長門に安静にする様伝えてから艦橋に転移する。

「機関最大!進路ナウル鎮守府に向け!。主砲粒子弾装填」

''機関最大!ぐるぐるぐるー!''

''フルパワー!''

''主砲、回す感じです?''

''主砲装填する感じです?''

「目標、不審船上空。てぇーっ!」

第一砲塔から四発の粒子弾が放たれ、真っ直ぐ飛んで行く。そして予め入力した座標に到達すると、太陽が咲いた。月の光もない中、四つの青白い太陽が連続して咲き、莫大な衝撃波を周囲に撒き散らす。圧倒的な熱量は周囲を焼き尽くし金属であろうと蒸発させる。これは直撃させたほうが威力が少なくなる珍しい砲弾なのだ。さっさと消し去るとウンターガングエンジンが大きく唸り声をあげ莫大なエネルギーをシャフトに伝える。純粋なエネルギーで回転させているスクリューは十枚刃と多くの海水を掻き分ける事が可能で四つもあれば尚更。津波を発生させながら進んでゆく姿は警戒など知らないと言わんばかりに艦橋群を中心に照明を点け軍艦旗が翻る。しかしその速度は異常。85ノットというアホみたいなスピードで高速航行を続ける戦艦には特に負担らしい負担を浴びる事なく難なく切り裂いて進んでいる。

 

暫くすると、電探が鮮明な表示でナウル鎮守府の第一隔壁を映し出した。

「速度落とせ!全砲門ロック。すべての装填中の砲弾を抜き取っておけ」

''りょーかいなかんじです?''

''あいあいさー!''

''機関出力ていかー''

''速度落ちますー''

ウンターガングエンジンの唸り声が穏やかになり、スクリューの回転数が急激に減少。すると当たり前だが掻き分けていた海水の勢いが緩まりクッションとなって速力をさらに低下させてゆく。しかし海水を押し流してきているのも事実。20mクラスの大津波が隔壁を襲う。

しかし隔壁は100mを超える高さだ。それ位じゃあビクともしない。更に隔壁は海底奥深くまで突き刺さり三角形のトラスも耐久度上昇の為組み込まれている。外から見たら海を分け隔てるダムのように映るだろう。灰色に塗られた分厚い隔壁には内部にも広々とした通路が広がり、一七式戦車でも楽々走行できるほど。

かつ当然だが湾岸砲台として500cm四連装砲が2km毎に。46cm三連装砲が至る所に設置されている。そんな隔壁の先に進んでゆくと、けたたましい警告音が鳴り響き、隔壁が閉鎖されてゆく。普段は海底に埋もれている水門が浮力やモーターを利用してせりあがり海面を突き破った。なんかこれだけでも壮大だ。大規模な施設の大きな動きというのは圧巻の一言に尽きる。その大規模な施設の本人が言うのもなんだが。

10ノット程でゆっくりとすっかり要塞化したナウル島へ向かってゆく。第一隔壁には小規模ながら大和でも入る桟橋を備えているため巡回の艦隊が一時的な休憩スペースとして利用している時がある。

見たところ第二隔壁にも存在するがそちらには既に先客が。

天龍と龍田の船体が係留されている。他にものっぺりとした鯨のような巨大潜水艦。ドミートリーは書類上存在しない文字通り幽霊船の為目立たない場所に置かなければならないのだ。

凸型の超巨大軍港には既に私以外の全艦娘の船体が留められ、私も所定の位置に入港する。本来ならタグボートが細い誘導をしてゆっくり時間をかけてやるものだが、私達はそんな事はしない。90度直角に旋回するとあとはパズルのように接舷するだけ。簡単に言うがこれかなり難しいからな?私達という規格外だからこそできる神業ってやつだ。1m単位の誤差でスルリと入ってゆくのは中々壮観だが、桟橋から見るとびしょ濡れになるがな。

「速力落とせ!回頭90°!」

''よーそろー!''

''船体ぐるぐるー!''

船体がゆっくりと回頭する。ここは海ならではの直角旋回をしてゆく。右舷が莫大な海水を押し分け、ゆっくりと回頭。そしてスクリューが逆回転を始め逆方向に進んでゆくとドックにすっぽり収まってゆく。中央演算処理装置の精密な計算のなせる技だが、別に経験さえ積めば駆逐艦でも出来る。というか三回転くらいして海上ドリフトで接舷する事ぐらいやってる。響ならT-34ジャンプならぬ駆逐艦ジャンプしてる。

停止。機関がエネルギー放出を停止させスクリューが回転を完全に止める。

騒音となっていた様々な音が徐々に停止する。

これで、やっと帰ってきたという実感が湧いてくる。やっと、帰ってきた.......

 




ランスロットが使ってる剣ってなんだったんでしょう...あ、アロンダイトですね。アニメでは使用されませんでしたが。あとセイバーさん、叫びすぎです。

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