ーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やあやあアメストリアだ。というかこの挨拶も久しぶりだな。
今回は恐らく着いてきた艦娘達の主目的とも言える慰安旅行だ。目的地は広島。そこ、元々広島だろって言わない。
行動半径と戦闘を考慮した結果だ。移動手段には一式重武装車輌を使用しようとしたが差し止められた。くそう...
何でもいくら何でも装甲車輌で一般道を走るのは問題があるとの事。今までも走っていた気がするので、なぜに今更止められるのかが理解できん。五七式重装甲輸送車でないだけマシに思ってほしいものだ。
それはさておき、艦娘がキラキラしている。
金剛はいつも以上のハイテンションであり、天城がそれを宥める。矢矧は普段着ないカジュアルな服装に顔を赤らめていた。
そう。全員が服装を普段の露出が激しい巫女服とか和服ではない。リバンデヒは最近伸びてきて背中にかかるセミロングの黒髪に合わせたのかクリーム色のロングコートに白色のレース付きロングスカートだ。尚靴底に鋼鉄を仕込んだ編み上げブーツを履いている模様。やめい。
金剛は普段の複雑すぎて私も分からん結い上げをそのままにこちらも落ち着いた紺色のレザージャケットに寒くないのか元気に膝丈のショートパンツに身につけていた。天城は何時もの和服に慣れたからとの事で袖の大きい巫女服でいう白衣のような白いシャツに黒い袴のようなフレアスカート。矢矧は何故か制服に近い、ドレスシャツにチェック柄のスカート。いつもとそう変わらんな。
響は空色の厚いコートに紺色のミニスカート。黒タイツを履いており、マフラーを二回首に巻き、頭にはあの帽子では無くニット帽のようなつばのない帽子を被っていた。可愛い。
ん?私か?特に言うほどでもないぞ?
普通に長袖のブラウスにショルダーホルスターでMH-6を二丁吊るし、更にミリタリー仕様のダッフルコートを着込み、カーキ色のカーゴパンツだ。珍しく私がズボンだが、汎用性を考えた結果だ。
さて、実は私達の居る呉海軍大学校は、仁方という土地にある。
呉の端だが、その国道279号線までの開発された三角州を利用して建築されている。その為クソでかく、呉線の仁方駅が一番近い。
その為今回は鉄道を移動手段として選定し、それに伴い行く先は仁方駅。そこまでの距離はそれほど遠くなく、大体800m程。市街地は無くただだだっ広い空き地が広がり木が偶に生え木漏れ日が歩道を照らす。しかし現在は冬だ。秋?最近終了したが?おかげですっかり寒くなり私達は耐えられるが生徒共が厚着し始めて非常に暑苦しい。暖房はあるにあるが教室全体は暖まらないと言うあるあるが発生している為仕方ないのだが...
「お姉ちゃん、どうするのかしら?私達今即座に展開できる兵器は六式二丁とバヨネットしかないわよ?」
「一応バックパックに入れてあるから大丈夫だろう」
そう。今私とリバンデヒ、そして金剛がバックパックを背負っている。その中身は無論ビス抜いただけの簡易解体をしたM145が一丁ずつ。私のやつにはB503、つまりグレネードランチャーが装着してある。そして即時展開戦力として私の六式自動拳銃二丁にリバンデヒのバヨネットナイフが不明。コートだから分からん。擦れることは聞こえるがな。
自動券売機で全員分の切符を作り出したリアルマネーで購入した。
実のところ軍属の人間は移動手段にコストがかからない法律が制定されているが今回はお忍びだ。一々そんなチミチミした法律何ぞ配慮するつもりはない。だって私が作った金だし。
切符は最近の新幹線のような大きな切符では無く、裏が黒いちっさな切符だ。あの裏面の黒は磁力何だろうが、ちょっと私の電子機器に干渉しないか心配だったりする。電探とか鈍ったら困るし。まぁ、こいつ自体が磁力を発しているわけではないので大丈夫だとは思うが...
駅は廃れており、小規模でホームにいる乗客もまばらだ。一桁だな。
しかし私達が入って二桁だ。やったな運営会社!収益が上昇したぞ!
.......こほん。兎も角、自動改札を抜けてホームへと上がったのだが、時刻表を見るに、後5分ほど到着まで時間があるらしかった。
そういえば配布するのを忘れていた、と今更ながら思い出し、内心責め立てながら五台の端末を作り出す。
「全員にコレを配布する。」
端末は四角くゴツゴツとしていてとても市販品には見えない。所謂PDAというやつだ。デザイン的には某食べかけの林檎の端末に似た構造だが、内部スペックは大幅に違う。データ量は10TB。回線は私の中央演算処理装置を介しての超高速回線で秘匿性が高い。
内容はGPSに支援要請、PDA同士の連絡用アプリケーション、ネットと少ないが十分だ。
「What's?コレは何デスカー?」
「こいつは私の中央演算処理装置を利用した最高機密クラスの秘匿性を持った連絡用端末だ。救援要請などはこれでしてほしい。」
「どうやって使うのかしら?」
「側面についている押し込み式スイッチを押せば電源がつく。基本電源が尽きることはないから基本付けっぱなしだ。他にも天城の甲板にスタンバイしているF-222やFB-99の支援要請が出来る」
「
「おもに連絡用として使ってくれ。以上だ。」
丁度、列車の到着を告げるメロディがホームを響き渡り渡る。
轟音と強風を纏った鋼鉄の箱が二本の鉄の棒を滑り減速。空気圧が抜ける音が鳴り両開きのスライドドアが一斉に開き車内の暖気が漏れ出す。残念ながら降りる客は軍人か近くの近隣住民のみ。
私達も乗り込む。ちらりと確認しても車両にいるのは十数人。私なら制圧できる範囲だ。ちらりと脇にあるホルスターに視線を向ける。ただそれだけでリバンデヒは私の考えが読めたようで小さく整った唇を歪ませている。戦闘狂か?
...視線が集まるのを感じる。まぁ綺麗所しかいないからな。リバンデヒとか金剛とか天城とか矢矧とか響とか......あ、全員だな。うん。
流麗な艦娘しかいない為自然と一般市民の視線を集めるのは当然といえよう。しかし、冬グラverだ。可愛いに決まっている。
鉄道に揺られる事30分。
幾つもの駅を経由し、その度に幾つもの好奇の目に晒され、一部携帯を向けてくる輩がいたがリバンデヒが懇切丁寧にお断り願った。...スゴクコワカッタデス。ハイ。車窓から見える景色はトンネルを抜けると〜、のようなある意味すごい変化はないものの海から住宅街、天に向かって聳えるビル。その建物一つ一つも細かい装飾から色彩、洋風から和風、ハーフまで十人十色の形相を呈しており、見ていて飽きないものがある。架橋を列車が通り、減速を指示する信号が流れ、ブレーキが掛かり始め、車窓に映る景色の流れる速度が鈍る。
ここからは開けた建物が多いため警戒を強める。
ボウリング場やドリームタウン呉という呉では一番大きな商業施設が並び、その屋上には室外機などで見にくくなっており、狙撃の危険性が否定できない。
「お姉ちゃん、敵さん三人ほどが居るわね。けどチキンだわ」
「...こちらでも確認した。泳がすぞ。私達は非番だ」
「了解したわ。あと、目的地の隣に何かあるわよ?」
そう。本来なら海軍...海自の軽い基地があったのだが戦時とあって鎮守府とまでいかないものの警備府と言うのだろうか。
駆逐艦が数隻程度の戦力のみが配備されている。正直、何に使うのか分からない。避難指示?鼠輸送でもするのか?すごく分からない。
戦力的にも駆逐艦しかいないため、火力はお察しだ。足は速いが積載量がある訳でもなく、装甲が厚いわけではない。
せめて軽巡洋艦や重巡洋艦だったら避難という意味では役に立つし、装甲も最近妖精さんの量産型特製装甲を装備していて大和砲でも抜けない艦が増えてきているのだ。便利だろうし火力も20.3cm連装砲だ。対地攻撃ではかなりの威力を持つ。だが...駆逐艦だ。旗艦に軽巡洋艦がいるだろうがやはり火力不足が否めない...
「あとで大本営に通告するか...」
「あら、これ以上増設すると軍港自体を拡張して海底も掘り下げなければならないわよ?」
「そんな事は大本営の仕事だ。」
「そう。ふふふ、意外ね。人間の心配をするなんて」
「違う。この基地の艦娘の轟沈は避けたいからだ。」
だって、本家大和型戦艦一番艦大和、艦娘として大量に建造される全ての源、それを安置する場所を守護する戦力だ。
それが駆逐艦だけというのは...本家さんに失礼じゃないか?まぁ、中央演算処理装置に資料を取り寄せたところ、あの基地...第17警備府は磯風、浜風、雪風、朝霜、初霜、霞だった。あれ?軽巡洋艦は?というか矢矧は?居ないんだが...えー....確かに今現在矢矧はこちらにいるし、願いの通り大和の護衛艦として軽巡洋艦以上の火力を発揮している。
しかし...あの活躍ぶりは鬼神に迫るものがある。魚雷というものを撤廃した戦術で、某霧の艦艇の様にミサイルをバンバン発射して主砲、副砲関係なくひたすらに撃ちまくる。しかし突撃するわけではない。
しっかりとした
目的の呉駅に停車すると自動でドアがスライドした。比較的多い人数乗客が降車し、私達もそれに混ざり降車し、改札に切符をダストシュートするとさっさと向かう。実は大和ミュージアムは呉駅と高架で繋がっているのだ。だからそこを通れば信号や交差点で止まる事なく移動できるという訳だ。良く考えたな。かつ、その道中ドリームタウンを通るようにできており、経済効果は計り知れないものがあるのかもしれない。
私達はそこを歩いている訳だが既に艦娘だと気付く者がチラホラと出ており、視線をまず響か私に向けて艦娘だと気付き金剛や天城、矢矧で確信するという流れだ。何故私を見て艦娘だと気付くのかは不明だが、多分...ネットに出回ってるんだろうなぁ......
響は絹のような銀髪とあり目立つ。他は茶髪や黒髪と一般的な日本人的特徴を抑えているが、響はその中一くらいの背格好に現実離れした可愛らしい美貌、粉雪のような白い肌、そして極め付けは生糸のようにくすみのないサラサラとした流麗な銀髪。
完全に目立つ理由は分かりきっている。個人的にはフード付きのコートでも着て欲しかったのだが本人がそれを望まないならば服装まであれこれと言うつもりはない。それに、可愛い。
しかし、例の如く私にも視線が集まっている。
「heyアメストリアー、モテモテネー!」
「全く嬉しくないな。警戒がしにくい。」
そう。視線が集まり、かつその視線には様々な感情がこもり、敵意のある視線が分かりにくいのだ。ヒットマンが忍んでるかもしれないし、ラングレーがいるかもしれない。
「良かったのですか?こんな所に来てしまって?」
「別に構わぬ。今回は非番だし、何時も貴官らには船体に篭ってもらっているしな」
「流石アメストリアネー!」
天城が心配そうに問いかけ、金剛が満面の笑みで私に抱きついてくる。色々と当たってるぞ金剛さん。私としても眼福なんだが、周りの野郎共が顔真っ赤にして狼狽えており、一部雄叫びを挙げる輩がいた。金剛love勢か。確かに金剛は可愛い。これは言うまでもない事実であり、皆も知る当然の事だろう。金剛という火力は確かに有力であり、序盤から中盤、改装で後半まで活躍できる汎用性の高い戦艦だ。
しかし、そんな事を言っているのではない。やはり人気の理由は、その明るく溌剌とした性格にその白くハリのある肌。僅かに西洋の顔立ちを残した美貌。十中八九美人だと言うだろう。そして、数いる艦娘の中でも断トツの提督LOVE勢。そのはっきりとした行為はリアルでは決してないキャラだった。しかし、そのキャラにも必ず理由がある。奮闘しそれでも尚酷い仕打ちを受け反抗的な性格になったり、普段は穏やかだがその中に化け物を飼っているもの。艦齢の若さ故に明るく、しかしその内情に深い傷を負う者。
様々な者がいる。金剛は二次大戦前、否、一次大戦後の英国建造にもかかわらず二次大戦前末期まで活躍し、老艦となってもなお戦い続け最期には老朽化した船体をゴミ共の鉄鯨の魚雷とが食い破り、長門を狙い外れた魚雷の命中した浦風や艦長や司令官以下1300名と共に沈没した。
戦艦金剛の活躍は輝かしいものがあり、マレー沖海戦では榛名と共にクリスマス島砲撃やヘンダーソン基地艦砲射撃では妹の比叡、霧島の最期を見送り、レイテ沖海戦では愛宕、摩耶、武蔵が沈没するのを見送りゴミ共の空母を一杯大炎上に持ち込んだ。大切な仲間を目の前で殺され、最期は長門に見送られ撃沈した。妹や後輩達を殺されあの明るさは正直尊敬に値するものであり私は内心敬意を払っている。アメストリアでは武勲艦の一人として広く知られているとの事。海軍や空軍で新たな『金剛』として活躍している。
今私に抱きついて来ている彼女もまたこの世界で戦い沈んだ軍人であり、その体は私達がより沈み難く、より強く。
ただそれだけを追求して悠久の時を経て熟成された設計に従って船体を改装した。主砲は51cm三連装砲へとランクアップしている時点で察してほしい。妖精さん特製の特殊装甲を船体全体に施した。今ではあの忌々しい兵器である核でもビクともしない戦艦へとなった。
正直スペックだけ見るとお前誰?って真面目に問いたくなるほどの大改装であり、建造時に組み込んだことから艦娘にも影響が出るのではないかと危惧したが、そんな事はなかった。天真爛漫のままだ。
「金剛、いい加減に離せ。あと二百と三十五で到着する。」
この先は敵からも見えやすい露天だ。一応黒い屋根は設置されているが、効果は疑わしく、防弾性もクソもないので警戒性は無い。
鋭い視線を周囲へと忙しなく向け、不審人物や屋上付近の敵影などを確認するが、今の所は確認出来ないがいつ来ても可笑しくは無いし、私達も反撃する用意を整えている。念の為に、船体にも支援要請をしておくべきか?今の所大気圏に
さて、例の監視していた三人だが、引いたようだ。チキンめ。
大和ミュージアム、正式名呉市海事歴史科学館は大和ひろばや零戦六二型や回天、酸素魚雷として有名な九三式魚雷。大和砲の名を冠する九一式徹甲弾や長門の41cm砲弾。現在では鎮守府の工廠へ行けばゴロゴロ転がっているが一般に開放されている砲弾としてはかなり貴重なものだろう。しかも技術革新で薬莢式となり弾格も多少変更された為今では生産されていない。そういう意味で希少性はあるだろう。
零戦などは更に無い。山奥の飛行場でもなければ前線は勿論本土でもジェット機が使用されている。
レシプロ機を使っているのは大日本帝國以外の軍位だろう。
「お姉ちゃん、こんな兵器で戦っていたの?」
「そうだ。これで戦っていた」
対深海棲艦戦初期では現代兵器が軒並み壊滅し、効果が無いことが判明し、妖精さんが現れ、協力者として艦娘が現れた。
その艦娘が持っていた兵器は二次大戦のもの。つまり今ここに安置されている兵器達だ。
大和や雲龍などの新造艦は登場が遅く、のちに参戦することとなり、それでも尚深海棲艦とは拮抗した。こちらが新しい艦を出せばあちらも新造艦を出す。埒があかない。
そして、
一階には数多くの入場客がおり、両サイドのパネルや呉の歴史を紹介するパネルを眺めながら、十分の一サイズのミニ大和を眺め、スゲーと意味の無い言葉を感慨もなく零している。
「随分と私達の所にいる大和とは違うわね。」
「一度、アメストリアが大破した時にトラックから連れて来ていたね。」
あれは懐かしいな。戦力を建造する暇が無いなら他からぶん取ればいいじゃ無い理論で突撃したら護送中に深海棲艦のアメストリア型戦艦に攻撃された。
そして二度目の大破をした。後悔はしていないが、痛かったのは事実だ。
十分の一大和をぼんやりと眺めながら考える。金剛は自らの船体に備えられていた一次改装次に取り外された缶を見に行き、天城は零戦六二型を見に行った。矢矧は私の隣でミニ大和を眺めている。響はリバンデヒと共に屋外展示の方へ行ってしまった。こんな時にテロでも起きたら物凄く面倒なんだがなぁ?
「偽物なのかしらね」
「全くの偽物、というわけでは無いだろう」
人形、人の形をしたモノ。人に似せることによって意味を齎す。呪術や神仙術などでも、古今東西使用された理由はそういう意味がある。
人の形を模すことで特定の意味を持たせて術を使う。式神や藁人形が有名だろう。
それと同じく、似せて作ったものには本物に対しての念などがこもりやすく、例えそれが戦艦であっても同様の効果をもたらす。
『戦艦大和』という戦後のビックネームに対しての信仰とでも言うのだろうか、そんなチカラや米帝共の怨念。そういうチカラが溜まっている可能性だってある。艦娘は霊格を持っているのだ。人間もそうだが、その器の大きさや耐久度が段違いに強くそれは国民にどれだけ知られているかによって左右される場合もある。前世で凄まじい戦果を挙げておりそれなりの知られている艦艇は性格に影響を受けている。
「私達も、同じ様なものだからな。」
キャラ描写が薄いと感じているこの頃。
もしかしたら次の作品の投稿早くなるかも