ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は頭を抱えた。
堂々と3輌で大本営まで辿り着き、説教覚悟で待機していると、例の大将ただ一人のみが近づいてきた。大本営、ちょっと人材の使い方荒くないですかねぇ?大将、一応壮齢の男性である。軍人として鍛えているため未だにキビキビと動けているが、大丈夫かと心配したくなる。
「まぁ、よくも派手にやってくれたな」
「手荒い歓迎があったからな。迎撃したまでだ」
「そうか。ならさっさと行くぞ。先ほどから苦情しか聞いていないからな」
「了解した。」
そう言って五七式に大将を案内した。
内装の頑丈さと清潔さに驚いている様だが、これくらい普通だぞ?兵器自体に時間逆行術式が刻まれているからだ。正直な所、妖精さんなにやってんの!?って軽く小一時間ほど問い詰めたいが、ここには陸軍妖精さんしか居ないので意味ないなーと思考放棄する。
静かにエンジンに火が灯り大した騒音も立てずに五七式が走り出し、そのゴムパッドを履かせた履帯を回転させて一七式が前後を固める。五七式にも砲塔はある。素早く空港まで辿り着かなければならない。面倒なぁ...
案外早く着いてしまった。
特に敵さんからの襲撃は無く、相変わらずと注目度を除けば至って静かであった。
やはり行きの迎撃が効いたのだろうか?いや、でもちょっと嫌な感じがする。だってあの国だぞー?手っ取り早く制圧するために戦車でデモしてる馬鹿どもをローリングした挙句逆効果になって収束つかなくなったあの国家だぞ?あの光沢のある髪の屑が作ってしまった国家だぞ?ここまで大人しいとは思えないなぁお姉さん。
空港に到着するとCT-7にそのまま車輌を押し込み、すぐに離陸準備に移らせる。
ただでさえ滑走路一本占拠して居座っているのだ。これ以上迷惑はかけたくない。
「アメストリア、降りても良いか?」
「大丈夫だ。」
コクピットの妖精さん達が手を忙しなく動かして巨体を動かそうとする。
航空機用粒子エンジンが起動しロマンなのかなんなのか何故かあるファンが回転を始め、甲高い音と共に推進力が生まれる。
つまり機体が前進し始めた訳だ。護衛機のF-222四機は既に上空へ垂直離陸するとCT-7やGF-21の離陸時の護衛についている。
先に二機のGF-21が離陸して行き、陣形の前半分を組む。そしてCT-7も加速を始め、噴進口から轟々と粒子が噴き上がり、スラスターも駆使しながら離陸。上に上がることで重力や慣性の影響があるが、この機内には関係ない。宇宙での飛行を前提とした輸送機だからだ。
という事は大気圏にコイツが突っ込んでも大丈夫という事になるんだが、大丈夫か?駆逐艦が大気圏に突入するようなものだぞ?強度は段違いだが、羽はあのデルタ翼ではない。後進翼だ。一般的な輸送機の形だ。つまり、主翼に対する抵抗が恐ろしい事になるんだが、折れないのだろうか?すごく気になる。
''離陸に成功した感じです〜''
「よくやった。」
窓を見ると後続のGF-21二機も無事離陸し、GF-21が長方形、F-222がその外回りを菱形で護衛している。両機共に武装が展開されており、厳重警戒だと良くわかる。
流石に空中では艦娘スペックは使えない。精々良すぎるほどの視力ぐらいだろ。レーダーは機能してないと思う。航空機のレーダーと戦艦のレーダーは勝手が違うし。
大将は離陸した後に五七式から出てきて、広々とした貨物庫でのんびりしている。無駄に広いからな。存分に使っていただいて構わない。かく言う私も一七式に仰向けで寝転がり頬杖をつきながら窓をぼんやりと眺めていた。ちょうどいい感じに装甲が冷えてるから気持ち良い。
しかし以前この体勢を鎮守府でした所、姉さんはそれだけで絵になるほどの美少女なのだから自覚しろとカイクルからお咎めを頂き、強襲的なナニかをされかけた。意味が分からん。
しかし、空を眺めていても何も変わらない景色である。ただ青い景色にたまに白い雲や積乱雲などが点在するだけだ。
しかし、そののんびりとした時間は崩された。
窓を眺めていると、右護衛を任されていたF-222二番機が主翼を派手に回転させて急降下していった。そして元の水平に戻すとエンジンの出力を上げて急加速。何処かへ飛び去った。
十中八九敵襲だろう。というか現在位置を確認したが、此処は公海上だった。
流石汚い。粗方墜落事故とかで片付ける気なのだろう。馬鹿かっての。アメストリア製の兵器が落ちる訳ないだろ。そんな人為的ミスで。重ねて言うが兵器一つ一つに時間逆行術式が刻まれているため、常に最高の状態、出荷直後の状態を何もしなくても保つすごく便利な兵器達である。
従って攻撃などが無い限り墜落はしない。絶対にだ。これは断言して良い。
おっと、遂にGF-21の片翼12門の45mm機関砲が火を吹き始め、襲来する張りぼてのまともに役立たない戦闘機?が炎上して墜落してゆく。あるものは自分の出した速度に耐えきれずに空中分解しているものもある。何してんだあの馬鹿ども。
どうせ空母持ってきて飛ばしているのだろう。増槽が無かった。まぁ、フル武装したら空母から離艦できない戦闘機だから仕方ないだろう。
アホの一機が奇跡的にミサイルを放つ。AAM、つまり空対空ミサイルだ。多分見栄張って自国生産した粗悪品だから大丈夫だ。
CT-7の対空砲は一切動かずに、胴体に命中した。しかし、たいして揺れる事もなく、何事も無かったかのようにそのまま飛んでいる。ざまぁwwwそんな矢なんか効かないんだよwww次々に最新戦闘機(笑)が落とされてやっと一発撃ててそれも効かなかったってねぇ、どんな気持ち?ねぇ?ねぇ?ねぇ?m9(^д^)プギャーwww
...
.....
.........はぁ、なんかもう良いや。
飽きた。こんなつまらない余興は良いんだよ。あ?チートすぎるって?全然。私の本分戦艦だから。何も私してないから。
「妖精さん、被害は?」
''F-222が一機機銃に被弾したそうですが全く効かなかったそうです〜''
''GF-21も当たった感じです?''
とのことだ。戦闘機の機銃というのは20mmが多い。30mmや35mmもあるのかもしれないが、私は知らん。言えるのはアメストリアの戦闘機は機銃が45mm口径だという事だ。
当然、対45mm装甲が機体全てを覆い、機銃は全く効かない。まぁ、ミサイル食らったら多少姿勢を崩すだろうが。しかし姿勢を崩す程度だ。ミサイル食らってもだぞ?この異常性はおかしい。
ファン巻き込まれるという可能性は無い。空気使って飛んでいるわけでは無いからエアアンティークなんてものもないしな。
宇宙でどう飛ぶんだよっていうツッコミが来るからな。
んーー......もうなんか良いや。つまらんかったし。弱かったし。
巨体が広大な敷地を誇る滑走路へその身を滑らせ、スラスターの逆噴射で停止する。しかし慣性をそのまま利用して格納庫まで機体を運んで行くと、護衛機が続々と着陸しているのが確認できる。
貨物ハッチが開かれて行き、太陽の光が差し込んでくる。うわっまぶしっ...
先に邪魔な車輌を外へ出し、大将と共に鎮守府の地面に降り立つ。
「すごいな...」
思わず大将がそんな言葉をこぼす。
まぁ、わかる。4.5kmの航空基地なんか見た事無いし。というかなんでそんなに滑走路長くしたかなぁ...絶対そんなに要らんだろ。CT-7だって1500mもあれば離陸できるし。C-203とかは垂直離陸だし。GF-21も短いし?なんで4008m級滑走路を作ったかなぁ...
大きな蒲鉾、そんな感じの格納庫にCT-7が格納されて行き、地下の駐機場に地面ごと下降していった。五七式とかは先に陸軍基地に戻っていった。そして迎えの一式と七式車輌が車列を組んでやってきて、大将を護衛する。
前回の阿呆共...失礼。米国視察団の時は物理的火力を見せつけるため火力演習真っ青なかつて無い大規模演習はするつもり無いし。あの時調子乗ってドーラたん出しちゃったからなぁ...あれは、すこし後悔している。しかし反省はしていないっ!(キリッ
さて、一人で淋しく、くっだら無い脳内茶番はゴミ箱にポイするとして、大将と共に各エリアを軽く回った。大将曰く、別に今更見なくてもお前らのチート具合は良く分かっている。との事だ。すごく失礼な気がするが、気にしない。毎度の事だ。
航空基地から出ると軍港へと向かった。
今回は同じ海軍所属だし色々と問題もないので全艦停泊している。え?警戒はって?
いや、隔壁全部閉じてるから侵入できないと思う。珍しく高射塔も作動している。
右手にアメストリア型戦艦四隻。左手に大和、武蔵をはじめとする戦艦や赤城ら加賀などの航空母艦、姉に寄り添うように停泊している重巡洋艦、軽巡洋艦。
駆逐艦はその数の少なさからか一ヶ所に集まっている。やはり、独特のグループが出来上がっている感じがする。別に問題が起こらないなら基本ノータッチの方向だがな。ん?なんで私が統率側になってるんだ?秘書艦だから?いや、違うだろ。んー?おかしいなー?
生産区画は長時間止まる事はなかった。まぁ見るものないし良いんだが。
場所は変わり提督棟。応接室では提督と大将が向き合い、私が提督の後ろに控えている。
例の如く五式自動拳銃を撫でながらだが。やっぱ落ち着くんだよねー。何処ぞのバーサーカーでは無いが、武器を大切にしているという面では普通だと信じたい。あ、なんか自信なくなってきた...
アメストリア人は戦闘民族じゃ無いんだよな?多分。うん...え?武器を見ろって?いやー、敵に対して容赦し無いだけだしっ!
「アメストリア、六式を持ってきてくれるかな?」
「......?了解した。」
取り敢えず、指示があった為、私の船体の武器庫に転移し、拳銃のガンラックを見渡す。30cmの長い五式がずらりと並び、隣にちょこんと並んでいる六式自動拳銃。
口径を11mmに縮小し、初のフルオートを採用した最新式自動拳銃らしい。そう。今までの自動拳銃。全てをセミオートなのだ。当たり前だが。外見はベレッタなのだが、フルメタルでマガジンが長い。艶消しされた素晴らしい銃でカイクルならば確実に頬擦りしてるだろうが私はそこまで末期患者では無い。
その中から一丁持ち、ケースを取り出してその中に入れる。マガジンも弾格別に入れておく。通常弾薬と科学弾頭(以前使ってたやつ。痛かった。)と炸裂弾を入れておく。ホローポイントとかダムダムはいいだろう。
ケースを閉じてロックをかける。今の所私のみが解錠できるようになっている。機構?秘密だ。
「持ってきたぞ」
「ありがとう。では、大将殿。こちらでよろしいでしょうか?」
「あぁ。」
賄賂か?賄賂なのか?流石に許さんぞ?私が。
只の贈り物だな。うん。そう思う事にしよう。うん。
さて、現在はCH-4に乗っている。逃げたとか言わない。言わないったら言わない。言わせんぞ?
で、だ。なぜCH-4なんか言う巨大輸送ヘリに乗っているかというと大将を日本に送り返しているからだ。護衛機はAH-39、AH-60攻撃ヘリに任せている。
武装は39(通称ミク)に至っては45mm機関砲四門にST-8二百発だ。大丈夫だろう。
普通、ヘリで海越えは不可能である。燃料やら時間やらで。
しかしアメストリア製のヘリである。燃料要らずだし、速くてすぐに着く。まぁ、市街戦に強いヘリもいるが。帝都だからな。ビルの間を通るには丁度いいだろうと判断して連れてきた。
帝都が見えた。ビルが聳え立ち、光学フィールドみたいに霧がかかっている。最近寒いからな。雲が低いんだろう。公害もありそうだが。
AH-60二機が前方に移動する。そして被弾率を下げる為に小刻みに移動し続ける。
一応防衛隊も出動していたが、機体に描かれたアメストリアのエンブレムを見た途端バンクして去っていった。なんで...
「大将殿、もうすぐ都市戦闘体勢のまま突入する。しっかりと捕まっていてくれ」
「了解だ。」
高速で飛行のままビルの合間を飛行してゆく。ババババババッ!っていう爆音を轟かせながら飛んで行く為、すごく目立っているが、このヘリ、密閉タイプなので内部は見えない。
武装を積んだまま突入している為、翌日の瓦版は賑わうだろう。話題の提供ってやつだ。リバンデヒには怒られたが。
大本営まであと806mとなり、ゆっくり減速してゆく。
ローターの回転数が僅かに下がり、機体が前傾姿勢から水平体勢に移る。
大本営にはヘリポートも存在する。そこにCH-4のみ着陸し、上空を二機のミクが警戒する。AH-60は一緒に着陸している。
スライドドアを開けて、地上に降り立つ。日の光が眩しくて覆ってしまうが、艦娘スペックですぐに慣れる。
「では、大将殿、これにて我々は失礼します。」
「すこし待ってくれたまえ。貴様にも用がある。」
そう言って大将は封筒を取り出すと私に渡す。は?
「呉に海軍大学校があるのは知っているな?」
「......あぁ」
何だかすごーく嫌な予感がするなー(棒)
「次世代の軍人の育成は重要だ。それにおいて、貴様らのような規格外の艦娘に対する重要性などを理解させておく必要がある。」
「まぁ、そうだろうな」
嫌な予感しかしないなぁ...
「よって、それを理解するには本物を見た方が早いだろう。」
「.......」
「だから、アメストリア型戦艦一番艦アメストリア、貴様を出向させる」
「...........拒否する」
「勅命だ。拒否権はない」
「あんな偽りの神なんぞに信仰心は向けていない。」
「まぁ、行け」
「断る。」
私は、また、頭を抱えた。
もうやだぁ......(泣)