超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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こちらは差し替え話になります。
四話まではまぁ大丈夫だろうと放置してありますが、この話から新規に組み直した設定に基づく差し替えに徐々に入れ替わってゆく予定です。

以前の話と違う点は、現状私が書ける範囲で頑張った三人称文章です。
物書き初めて早四年。多分初めて三人称書きました。以前の話での三人称は一人称を改造した奴なのでノーカンでオナシャス。

あとアメストリアが大変残念な阿呆になってますが、仕様です。仕様です(威圧。

文句のある方はその場で三回回ってワンっ!してください。


5.初陣ヒャッハーッ!(隼鷹感

差し替え

ーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

私は焦っていた。それもかつて無いほどに。

急かす気持ちを必死に抑え、船体を可能な限り早く進める。無理をしては船体が損傷してしまう為、機関最大、70ノットで航行を続ける。

こうなったのには無論理由がある。時系列は少しさかのぼり、今から数分前。

 

特にやる事もなく露天艦橋にて人工の天井を眺めていたところ、妖精さんが妙に焦った様子で駆けてきた。

訳を聞くと緊急電が駆け込んできたらしい。

すぐに確認すると、

 

ーー 我 トラック泊地第三鎮守府所属 遠洋派遣艦隊 旗艦 大鳳。現在 有力ナル 敵艦隊 コレト 交戦中。 至急 救援 サレタシ。 至急 救援 サレタシ ーー

 

この内容が一本のみ送られ、その後は音沙汰なし。

これはマズイと電探の索敵半径を広げて確認してみると、此処から450kmの所の洋上で戦闘が確認できた。

そこで私は提督に直ぐに連絡を入れ緊急出撃したわけだ。

これが事の顛末。

しかしまだ到着していないのだが、敵のおおよそは確認することができた。

友軍の反応を示す機動艦隊が一つに、それを囲むように八方向全てに水上打撃艦隊。そして少し離れたところに空母機動艦隊が三つ。

 

完全にワンサイドゲームであり、このままでは友軍が確実に全滅してしまう。

どうやら深海棲艦は元ネタよろしく友軍艦隊で遊んでいるらしく、まだ六つの反応は消えていない。しかし深海棲艦がいつ飽きるかなど私は予測できないししたくも無いのでまずは消し飛ばすことにする。

私の初陣。その餌食になってもらうとしよう。

 

 

 

 

ーーーーーーーー三人称ーーーーーーーー

一方、パラオ鎮守府に緊急電を送った友軍艦隊は、壊滅の危機にさらされていた。

船体の整備不足や慢性的な〔弾薬〕不足、赤疲労のままの連続出撃が祟り、敵艦隊とのエンカウントと同時に大鳳が中破。

しかし大鳳は装甲空母である。中破でも甲板が無事であれば艦載機は発艦できる。(着艦できるとは言っていない。)

直ぐに零戦21型を基軸に発艦した艦載機は万全な状態の深海棲艦艦載機に悉くを叩き落とされ、制空権は現在奮闘中のまな...龍驤の虎の子であったネームドの艦載機によってギリギリの拮抗を保っていた。

海上ではワザと少しだけずらされた、それでも威力のある砲撃を避けようと高雄姉妹が決死の操舵を行い、同時に反撃を繰り出していた。

 

また一機、奮戦していた零戦が落とされ、火だるまになって落下して行く。

それとは逆方向、海上から空へと大鳳や龍驤、高雄型の持てる限りの対空砲が火を噴き、逆さの赤い雨を降らせていた。といっても弾幕は散発的なもので、既に破損、使い物にならなくなっている対空砲が殆どで、ハズレ装備の7.7mm機銃や、12.7mm単装機銃が対空射撃に参加している始末。12.7cm高角連装砲は殆どが破壊、整備不良による動作不能で対空砲撃不可能。

唯一摩耶の一基だけが懸命に放ち続けていた。

 

「ーーっ!クソが!最後の高角連装砲がやられた!」

 

その最後の対空砲も今爆撃機によって破壊。使用不能なガラクタと化した。

これでもう残るは機銃のみ。

既に大破ないし中破している船体にこれ以上の負担をかけるのは困難。回避運動すら厳しくなってくる。事実、高雄は既に浸水が始まり、鳥海は傾斜し始めている。

 

轟々と盛んに炎が燃え盛り黒々とした煙が登って行く。

ここは地獄か修羅場か。艦娘達の心に絶望が広がり始める。

 

怨敵たる深海棲艦は八個艦隊で包囲網を形成しており、どこを見ても深海棲艦がいる状況。

余裕を持って傷付いた自分達を包囲し、ジワジワと網を狭めていた。

 

 

 

この、かなり不幸かつ闇の深い艦隊はトラック泊地第三鎮守府の第五艦隊。

遠洋派遣艦隊とは聞こえを良くした唯の呼び名。

実際は提督に反抗的な態度をとった艦娘を集めて片道切符で送り出す、所謂捨て艦であった。

いや、ただ()()するだけなのだからそれよりもタチが悪い。

タンカーの護衛任務を一切の休憩なしに連続で繰り返し、極度の疲労状態に陥っていたところを深海棲艦から奇襲を受けたのだ。

 

不審船にも見え得た護衛対象は既に海の藻屑とかしており、置き土産と言わんばかりに海を火の海にして行った。

補給は行われず、初手からこちらは〔弾薬〕が赤。燃料もまっすぐ帰れるだけの分しかなく、回避運動など馬鹿みたいに燃料を食う動きは出来ない状態。

当然なす術なく護衛対象はを失い、また自らも同じ道を歩まんとしている。

それがどうしようもなく悔しく、屈辱的であった。

 

「大鳳!ホンマに緊急電飛ばしたんやろな!?もううちらは捨てられとるんやで!」

「えぇ、そのはずだけど...その」

「ーー皆まで言わんでいい!うちもわかっとるわ!」

 

言うまでも無いが、彼女らの鎮守府はブラックである。

大本営も介入してはいたが、送り込んだ憲兵隊は腐敗し、かつ家柄が無駄に良かったこともあり下手に手が出せず、更にそれが悪化を呼び、悲惨な状況になっていた。

駆逐艦は基本弾除け。

軽巡や重巡は使える奴を除き肉の盾。

軽空母は遠征に積極的に駆り出され、主力たる戦艦や正規空母ですら練度は高いものの、最低限...すら満たしていない「餌」を与えられて()()されていた。

 

「いえ、ちょっと待って。電探に感あり。...なんですって!?」

「どうしたんや大鳳?」

「大鳳!こっちはもう持たないぜ!もう沈んじまう!」

「一隻...一隻だけこっちに来ているわ!」

「なっ!」

 

雑音が多く混じる無線機がしん、と静かになり、外からの爆音が嫌に響く。

 

思わぬ援軍。さぞ使える()()だろうと誰しもが思った。思ってしまったのだ。

 

 

しかし実際はどうだろうか。だったの一隻。一隻である。もしその一隻が戦艦であって、大和型であったとしても、この数を相手にするのは少々部が悪い。初期仕様なら最悪だ。

空母であった場合。艦載機を囮にするのなら可能性は無きにしも非ず。

しかし空母自身に火力はなく、側面の砲架にある10cm高角連装砲が精々。

 

どっちにしろ、手遅れである。無駄である。捨て艦としか思えない狂気の所業に、一同が黙り込む。ここに居る全員、ある程度修羅場は乗り越えてきた。

前世の暗く悲しい経験もある。しかし、一隻で突っ込むというのは聞いたことが無い。

一隻が奮戦した、と言うのは綾波然り神通然り、多々ある。

しかし単艦で救援など前代未聞。非常識極まりない。

 

ーーーしかし、それは通常艦の場合だ。

アメストリアに、そんな理屈は通用しなかった。

 

何処からか、おどおどしい雷鳴が轟いてきた。

深海棲艦の至近距離からの砲撃の音など比べ物にならないほどの轟音。

衝撃波で船体がガタガタと揺れる。揺れたと同時に、深海棲艦の艦隊の奥の方で、大爆発が起こった。

実は何処かで巨大な水柱が発生していたのだが、雷鳴に意識を取られていた艦娘らはそれを確認することはできなかった。

 

「な、なんだぁ!?」

「な、何が...」

「何なの...?」

 

続けて、爆発が起き、遅れて雷鳴が聞こえてくる。衝撃波が襲いかかり、再び船体が揺れる。

また、上空を忌々しく飛行していたヘルキャットを始めとした敵機が、次の瞬間には消失。爆炎をあげて爆散していた。

 

これには龍驤、大鳳の思考が停止。

普通、航空機が撃墜されると黒煙を上げながら落下して行くものだ。ジェット機ならば空中で爆散する可能性もあるが、残念ながら大鳳らが運用しているのは70年前のレシプロ機。

当然その知識しかない空母艦娘にとって、敵機のやられ方には度肝を抜かれたのだ。

 

『ーーーーーら、ーラー鎮守ーーく、ーースーアーーーー』

 

無線機が突如、別の音声を拾い上げた。

落ち着いた、女性の声だった。ノイズが酷いのか、ひどく雑音にまみれていたが、不思議と脳に入ってくる、不思議な声色をしている。

 

大鳳は思考を再開。

同時に疑念を持った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

賠償艦であれ、鹵獲であれ和名がつけられるのである。

しかし無線の相手はどうだっただろうか?確かに「ス」「ア」と横文字のイントネーションで発していた。そもそも和名ならば短く四文字ほどで収まるはずである。しかし無線の相手は明らかに四文字以上。海外艦である可能性もあるが、海外艦が日本語で話しかけてくる訳がない。

海外で海外艦といえば敵艦しかいなかった大鳳にとって当然の判断といえる。

ここに足柄を始めとする海外での経験がある艦娘ならば、また違うことを考えたのかもしれないが、大鳳にとって無線の相手は警戒に値する者だった。

他の艦娘達は極度の疲労から思考能力が低下しているのか、何の疑問も抱いていない様子。

しかし大鳳は航空母艦である。直接戦闘はしないが故に、比較的余裕があった。

だからこそこうやって思考が回せたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーだが、それが仇となった。

余裕があったからこそのミス。普段の大鳳ならば絶対に起こさないような失態。

周囲警戒を緩めて思考に割いていたのだ。これが意味することは、敵の攻撃に対応が遅れるという事。致命的な、一打であった。

 

ドーントレスが魚雷を投下した。

97式艦攻のようなスペックを誇れない雷撃機だが、数が問題だった。

放たれたのは4本。6機それぞれ別方向から襲来していたのだが、考え込む大鳳をよそに、警戒を怠らなかった妖精さんはいち早く確認。

対空砲で迎撃を開始。25粍三連装機銃の幾つかを代償に二機は撃墜。

かつ甲板したの船体側面に張り巡らされた単装機銃群が一斉に魚雷に射撃を開始。

 

ここで大鳳も気付き、慌てて舵を切った。

否、()()()()()()()()()()()()艦首を向けた先には、既に待機していた戦艦を基軸とした水上打撃部隊。

大鳳は察した。ああ、ここで終わるのか、と。

 

 

 

だが、これでは終わらない。

妖精さんが決死の掃射をしてなんとか魚雷を破壊せんと奮戦するも、二次大戦の機銃の命中精度だ。まぐれ当たりがない限りそうそう命中しない。

しかし、ここにはアメストリアが居るのだ。

それを見逃すはずもなく、ヒュルヒュルと空気を切り裂く音が聞こえ、遅れて砲弾が着弾。

衝撃信管だったのか、海面に着水した時点で起爆。

榴弾だったようで辺り一面に爆炎と衝撃波を撒き散らし、魚雷を巻き込んで海面を荒らしまわった。お陰で右舷側二本の魚雷は自爆。

 

だがまだ左舷側の魚雷が残っている。

幾ら大鳳が装甲空母とは言え、当たりどころによっては史実よろしく一発で爆沈する可能性だって十二分にある。大鳳は魚雷を視認すると思わず顔面蒼白になり、へたり込む。

脳裏にハッキリと刻まれた爆沈の記憶。魚雷が直接的原因ではなかったとは言え、格納庫に燃料が充満し、大爆発を起こした事には違いない。

 

駄菓子菓子、ここでも救世主は現れる。

音を置いていった速すぎる砲弾が通過。ソニックブームは海面を豪快に斬り裂き、一時的な津波を発生させた。その津波に突っ込んだ魚雷は信管を作動させ、爆発。

水柱が上がる。

津波は船体にも押し寄せており、ギギギと嫌な音をそこら中から響かせながら大鳳はゆっくりと旋回していった。

 

一般通過(物理)をした徹甲弾はそのまま前方にいた絶望の塊を抉り飛ばし、二、三隻を貫通して大爆発。気化爆弾が爆発したかのような大爆発を起こして深海棲艦を次々と沈めていった。

そと絶大な威力を誇る砲撃を前に、大鳳は目を見張った。

 

『こちらは、パラオ鎮守府所属、アメストリアである。救難に来たぞ』

 

ーーその一言にどれだけ救われたか。

救援など来ないと思っていた。もはや横文字などどうでもよかった。

パラオ鎮守府。つまり大日本帝国海軍所属の艦艇であると確定したのだ。

友軍の救援。しかも圧倒的な火力を誇る艦艇だ。これ以上心強い援軍はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

アメストリアだ。

空母らしき大型艦船にゴミが雷撃を仕掛けたのは焦ったが、何とか殺ってやったぜ。

 

あと徹甲弾撃ったらそのまま敵艦隊に刺さって全滅させた件について。

威力おかしくないですかね妖精さん。

 

''おかしくないです?''

''クレイジーです?''

''火力はジャスティスです?''

 

どうやらそうでもないらしい。

火力が素晴らしいのは全面的に同意するが、ちょっと威力高すぎんか?

衝撃波だけで船潰せるよこれ。

 

「まぁ、良い。次発照準合わせ」

''あいあい!''

''砲塔くるくる〜!''

''砲弾そーてんです?''

「...ってぇーっ!!」

 

再び巨砲が吼える。

圧倒的な熱量を噴き荒らしながら強引に砲弾を押し出し、排煙を行う。

砲身からは冷却用の水が撒かれそれがすぐに蒸発してしまっている為水蒸気が激しく立ち登り、同じく煙突からも砲塔内に溜まった硝煙や水蒸気が排出され、白い煙が立ち上る。

 

水平線の彼方、僅かに曲線を描く境界に赤々とした爆炎が水に広がる墨汁のように溶けて行き、電探の反応から敵が減る。

今回は一個艦隊丸ごと平らげれたらしい。反応が丸々消失した。

距離はここから120kmと言ったところか。ならばそろそろ減速しなければ掻き分けた波で艦娘達が転覆してしまう。最低15kmは離れていないと津波に襲われるからな。

 

「両舷減速。各主砲塔は残敵の掃討。副砲は辺りを警戒し、怪しい物は藻屑にしろ。」

''りょーげんはんそー!''

''さーちあんどですとろい!さーちあんどですとろい!''

 

妖精さんが狂気爛漫するのを横目に、電探の精度を上げて行く。

残骸一つ、というのも出来ないことはないが、しても無駄なので、今回は精度をPTボートを探知できる位に調整した。

途端、膨大な情報が搔き集められる。電探が送受信を繰り返す波動によって探知されるのは大体が深海棲艦の残骸。といっても艦首であったり艦尾だけだったりとむごたらしい残骸ばかりだが。

出力方法を変更、リモコンのボタンを押す感覚だ。意識を切り替えると艦橋に設置された立体ホログラムが立ち上がり、近海の様子を詳細に反映してくれる。

残骸の密集地を反映からデリートし、現在水上で活躍している艦娘を探索。

 

ーーいた。

大鳳はすぐに見つかった。そりゃでかいし。何よりも一隻だけ航路を外れていたからすぐにわかる。あとは五隻重巡洋艦サイズ。......ん?一隻妙な反応が返ってくる。

妙に全高が高い...あとまなiゲフンゲフン、全通甲板。あぁ、RJか。

 

空へ意識を向ける。

飛び回っている機体は...あぁ、驚くことにいますわ。

よく生き残っていたものだ。探索精度を上げて、機種を判定。

 

ーー成る程。零戦21型(熟練)のようだ。

といっても編隊の姿はなく、煙を上げる一機のみ。

敵機判定が下りかけたので慌てて対空砲の撃墜目標から外し、更に大和砲までも反応したのでそっちも対応。めんどくさいなおい。

零戦は...おぉ!大鳳に何とか着艦したようだ。

しかし機体は限界だったのか、着艦の衝撃で降着装置が粉砕。油が噴き出した。

 

更にその衝撃で主翼も逝ったようでスライドしながらなんとか着艦。お陰で大鳳の飛行甲板が死にかけているがまぁよくやったとしか言いようがない。

飛行甲板への着艦さえ高等技術なのだ。

 

少し考えればわかることだ。空港や飛行場は陸上にあるから幅は広く、長い。多少ずれても幅があるから問題はない。

しかし空母はそうはいかない。飛行甲板の幅は20mにも満たない。さらに全長は長くて200mちょい。そんな紙飛行機を二階から飛ばしてバスケットゴールに入れろ並の鬼畜要求なのだ。

だから海軍の、空母所属の飛行隊というのは軍隊でもトップクラスの練度を誇るのだ。

着艦の技術即ち操縦の繊細さなり。こればっかりは感覚だし、落ちるときは落ちる。

だから空母には駆逐艦が付いていたのだ。

 

空母に随伴する駆逐艦の最大の役割はトンボ釣りだ。

トンボ釣りというのは着艦に失敗した航空機が海面に落下した際、飛行士を回収することだ。棒で回収している様からトンボ釣りと言うらしい。

飛行機は量産できるが、レシプロ機で戦える人間を育成するには莫大な資金と10年という長い月日が必要となる。単純な価値の問題だ。

 

といってもかの零戦でも3000時間飛んだらポイ捨てしていたそうだ。

なんでも強度が限界になり、発動機も使い物にならなくなるのだとか。

そこ、3000時間も飛ぶ前に墜とされただろとか言わない。

 

兎も角、着艦というのは割と高等技術なのだ。

それを損傷機体でやり遂げるとは、ウチの機体をあげたら化けそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

「こちらはパラオ鎮守府所属、アメストリアだ。大鳳でよろしいか」

「はい。トラック泊地第三鎮守府所属、航空母艦大鳳です」 「

 

私は脇巫女...失礼。大鳳と向き合っていた。といっても身長差で私が見下ろす形になっているが。

大鳳の後ろには記憶によると高雄型姉妹にまな板が整列している。

しかしその姿は痛々しく、所々に治療痕が見える。クソッ、もう少し早く届けばもっと被害を軽減できたかもしれないのに...!

 

「この度は救助ばかりか修理までしてもらって、感謝の念にたえません。このご恩は絶対に忘れません。」

「いや、礼は提督にでも言ってくれ。私は艦娘の救済を目的に動いているにすぎない。」

 

そう。

大鳳らを救助したは良いものの、艦娘やの被害は甚大で、浸水や傾斜している艦までいたのだ。おのれ深海棲艦。絶対許早苗。大切な娘を傷物にしおって。艦娘の傷は治りづらいんだぞ?

船体には既に私の妖精さんを派遣している。現在は投錨したアメストリアに接舷させて応急修理の真っ最中。

龍驤は甲板に穴を開けられ、高雄は横っ腹に砲弾を二発。愛宕は煙突を喪失。また後方構造物やマストが崩壊し主砲が使用不能。摩耶は他の艦娘同様対空砲が全滅。主砲も根元から抉られているものがあったり砲身が折れて破損しているものが多々ある。そして一番酷いのが鳥海。

横っ腹に魚雷を食らったらしく、2mの大きな破口を確認。浸水がひどく、機関が海水でやられて自力航行不能。

大鳳に関しては対空砲がやられた位だ。流石は装甲空母。強度が違いますよ。

 

てかさ、大鳳を抱きしめたい(唐突)。

現在態々私の船体に乗り込んでお礼までしてくれる礼儀正しい艦娘なのだが、可愛い。

とにかく可愛い。

ショートボブの茶髪にどっかの人型決戦兵器の操縦者がつけてたみたいな、無線機みたいなパーツを付けたカチューシャ。そして一番の特徴たる大きく露出した脇。これは多分格納庫への嫌味だろいが、笑えないぞ。胴体は甲冑のような黒い装甲板に覆われ、もう少しつければ武者になりそうな感じ。

何よりも小柄で、電...ほどとはいかないが中学生くらいの背丈は、空母にしては珍しく、可愛い。可愛い(迫真)。

 

高性能なまいぼでぃーは無表情を維持してくれているが、この機能がなかったらさぞ残念なことになり、アメストリアが残念美人になってしまう。あんなのは雪女だけで十分だ。メニアーック!

 

 

 

 

「さて、貴官らはどうするのだ?」

「...どう、とは?」

 

不思議そうな表情で大鳳が首をかしげる。あぁもうそれも可愛い。

抱きしめたい。

 

「これからの事だ。先程データベースに問い合わせたが、第三鎮守府に大鳳がいたという記録は存在しなかった。」

「そんなっ!」

 

そりゃ信じられないわな。

第三鎮守府の提督とやらは相当な無能だと思われる。

「装甲空母 大鳳」この戦略的価値がどれ程重要なものか。わかっていないのだろう。

翔鶴、ズイ₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾ズイ、大鳳の三隻運用はとても安定していると聞く。

何は我がパラオにもお迎えしたいと思っていたのだ。

そこに丁度やってきた()()()()()()大鳳。もうこれはね、獲るしかないじゃない!(マミり感)

 

 

何より、目が気に入った。生きることを諦めていない、活力に満ちた瞳。

そもそもそんな子じゃないと私が来るまで持ちこたえるはずがない。パラオ鎮守府は戦力が足りないのだし、丁度良い。

 

「そこで、だ。私達は貴官らを受け入れる用意がある。」

「.....。」

「なぁアメはん、それは本当なんか?ウチら、もう裏切られるのは嫌やねん」

「そうね。豚提督...あら失礼。提督にはほとほと愛想が尽きましたし...」

「そぉーねぇー、ちょっと辛かったものねぇ」

「捨て艦は、もう勘弁です」

「そうだそうだ!アタシらはモノじゃねぇんだ。アンタなら分かるだろうけどな」

「無論だ。私とて艦娘の一人。私達がモノだと思ったことはない。現在パラオ鎮守府には暁、雷、電、利根しか居ない。戦力として貴官らは有力であり、大鳳という空母が居るならば私としても助かる。」

 

「そう、ですか。ならば、まずはパラオ鎮守府に案内をお願いできるかしら?」

「承知した。貴官らも宜しいだろうか」

「勿論や。大鳳はんがそう言うんや」

「えぇ、私には異論はないわ。ねぇ愛宕?」

「えぇ〜。勿論よぉ〜」

「私も異論ありません。」

「アタシもだ」

「なればよし。手続きはこちらで済ませておく。」

''艦娘さん艦娘さん、しゅーりおわたです?''

''おわこんです?''

''動けるです?''

「そうか。では進路をパラオ鎮守府に向ける。両舷半速。波を立てるなよ。貴官らも自らの船体に戻るといい。私の後に続けば辿り着くだろう。」

「そうさせてもらうわ。」

 

 

艦娘達が各々の船体へと戻り、炉に火を入れる。

と言っても既に機関は動いており、後はその動力をシャフトに伝えるだけだ。

船が唸り声をあげ、海を切り裂き白波を立ててゆく。

特徴的な煙突からはモクモクと黒い煙を吐き出し、荒波を進んで行く。

 

もっとも荒波の犯人は私なのだが。

仕方ないじゃん、動くだけで莫大は質量、つまり排水量の水を避けているんだから波が立たないわけがない。実際、大鳳は兎も角、龍驤や高雄らはかなり揺れており、嵐の中を進む様な状態。幾ら応急修理があるとはいえ、まずいのではないか...?

 

『この波は何とかならないかしら!?』

『こんな波、久しぶりねぇー』

『コレはきつくねぇか?波が強すぎるぜ...』

『ちょっと、キツイです...!あ、浸水がまた...!』

「も、申し訳ない。針路は指示するので、私の前を航行してもらえぬか...」

 

 

 

 

結局、私の前を進んでもらってパラオまで行きましたとさ。

高さ500mの巨大な長方形に驚いていたが、まぁ是非もないよヨネ!

 

 

 

さてさて、此処からはお楽しみタイム。船体の改装だ。

幸か不幸か船体は痛々しいほどに損傷しているので、思い切って大改装をする。

「というわけで、工廠長。どうする」

「どうするといわれてものぉ。どうせお主の技術を使うのじゃろ?」

「無論だ。このままではお話にならない」

「ふぅーむ...ならばあれじゃ。作り直せば良いじゃろう」

「まぁ、そうなるな」

 

まぁ、そうなるな。(瑞雲感

ぶっちゃけ、現在の設計はそれ自体で完成しれているのでいじりようがないのだ。

ならばやることは一つ。脱ぎ脱ぎだ。

基礎を除く全ての部品を取り払い一から船体を構成し直すのだ。

ほぼ新造と考えてもらって構わない。しかしこうでもしないと設備が入らず、ペラッペラの装甲になってしまう。駆逐艦などは本当に板一枚だったという。そんな悲惨な状態にはしたくない。

 

「あぁ、そうだ。あの零戦パイロットはどうなった?」

「あの妖精なら動けるようになったらすぐに零を欲しがっての。暇してた工廠妖精が紫電改ニを作って与えたらすぐに乗りこなしての。いまは噴進機の習熟訓練をさせておるわ」

「そうか...」

 

なんですかそのバケモン。

紫電改ニはご存知の通り局地戦闘機を艦載機に改造した機体だ。

ゲームでは烈風に次ぐ制空値を誇る強力な機体だ。私はあの涙型のキャノピーが気に入ってる。局地戦闘機なので、機動性は言うまでもなく高く、性能は高い。

 

それを今まで21型に乗ってたパイロットが乗りこなして、現在はジェット機に習熟訓練中?

それ何処のハル○マン?

 

でも、凄まじい戦力が加わった事には違いがない。

戦力アップには違いないのだし、敵側になったわけでもない。良しとしよう。

 

「ほれ、アメストリア。設計図じゃ。こんなもんでいいじゃろ」

「...失礼。......ふむ。龍驤があまり変わっていないな。」

「あれを変えるのは無理じゃ。」

 

だそうですまな板さん。

まぁ確かに重巡クラスの船体に全通甲板乗っけて空母運用って自体が既におかしいんだしな。

龍驤は他の軽空母と違い全高がアホみたいに高い。そのくせ船体は狭く小さいのでとてもアンバランスな形状になってしまっていたのだが、今回再設計では格納庫を全廃。

全てアメストリア産の量子変換器を使用して機体の収納を行う事に。その分空いたスペースは潰して全高を低くし、かつ船体を拡張して装甲を分厚くする。そして生まれた余裕にミサイルハッチと対空砲を張り巡らせるわけだ。

なんだか優先順位が微妙に違う気がするが、これもまた良いだろう。

 

同じく正規空母である大鳳なんかはもう原型をとどめていない。

まず船体を丸裸にすると基礎を継ぎ足して延長。その長さ実に1300m。

そしてバルスバウを採用した拡張型船体の上に二段の格納庫を収納して余りある余裕は全て装甲に回した。

その結果対500cm装甲とかになったけどイイヨネ!(現在時刻2:00。察してクレメンス

 

搭載量は格納庫に量子変換器がたんまりあるおかげで驚異の2000機オーバー。

頭おかしい。ちょっとした動く基地だ。

アメストリアの艦載機が強力な理由の最大の理由は弾倉に量子変換器又は時間逆行術式を組み込んでいる事だ。

要は無限バンダナだ。ミサイルの搭載量は数千、数万発単位。

機銃に至っては弾倉を時間逆行術式で補っているので、無限。

 

それに整備面、補給面でも利点がある。

量子変換器というのは立方体の形状をしており、それを取り替えるだけで簡単に補給出来るように全ての兵器が設計されている。まぁそれだけでは終わらないのがアメストリアクオリティだがな。無論術式が使用できなくなった場合を想定して尾栓を付けたり、自動装填装置を増設したりとかなり厳重な対策がとられているのだ。

 

ともかく、ミサイルを使い切ったらマガジンをリロードするように量子変換器を交換すれば満タンになる。

これがどれだけ戦術的に価値があるか想像に難しくはない。

 

 

さて、高雄姉妹の場合、元ネタの対空特化をモデルに我々の技術でアレンジしてみた。

例の如く船体を丸裸にしてから基礎を延長。

船体を大型化させてから三重に装甲を張り巡らし、対空砲をマシマシに。主砲は沿岸砲として検討していた60口径35.6cm 三連装砲を使用。アメストリアの主砲は砲身冷却の関係で25粍三連装機銃みたいに順番に撃つので、最低限三連装砲の場合が多い。

連装砲は比較的重要度の低い副砲か、大口径主砲の場合が多い。

今回は[48口径12.7cm高角連装砲]8基を使用。外見の変化は武装のみに留め、電探も大型、中型の高性能電探を積ませてもらった。ゲーム的には32号、14号電探だろう。

対水上、対空電探を予備を含め二つずつ積んである。

元の姿をそのまま大型化したような外観になったが、その方がいいだろう。

外観変わりすぎて飛燕状態になって欲しくないしな。

但し重量は11万トンになった模様。大和より重いじゃねぇか。

 

というわけで改装した六隻が地下の大型ドックにて並んでいる訳だが...やっと軍港らしくなったな。今までだだっ広い地下に私と駆逐艦と重巡が一隻ずつしか居なかったからな。末期でもあるまいし、空母二杯に重巡四隻は有難い。

この世界に改装に必要な設計図とか集めるのがめんどい勲章とかのシステムはリアル基準なのか無いようだし、要は自分たちのも思いつき次第でゲームシステム外の事ををいろいろやれる訳だ。口径長伸ばして射程の延長も可能だし、そもそも砲弾はスロットに入らないしな。艦娘が任意に変更可能だし。

 

重巡四隻、空母二杯は[建造記録]として偽装する事になった。

レベルに関しては誤魔化しようが無いが、遠征だけだったからそう大して上がってもいないので誤差だ。これから3-2-1するけどな。ちょうど良い海域見つけたんだよ。

ともあれ、改装が完了したのだから進水しなければならない。このドックは注水ができないので、態々地上の発進口から出発。

艦娘達もいつもと違う勝手に相当四苦八苦していたようだが、一時間もすれば慣れてきたのかだいぶぎこちなさがなくなってきた。優秀かよ。

大鳳は例の妖精さん搭乗員(熟練)の率いる新生大鳳航空隊を乗せて現在は艦隊演習中。

 

まな板はまだレシプロ機を使用している。

というのも小さすぎて噴進機が全幅を大きくオーバーするのだ。

大型機を載せれず、管制機や対地攻撃機が搭載不可。辛うじて戦闘機は載せれたが、これも危うく、着艦困難。

これはマズイと工廠長と本人と話し合った結果、制空担当ではなく、対地攻撃担当に専念する事になった。現代の護衛艦と同じタイプ。つまりヘリ空母だ。

アメストリアにも回転翼機は当然存在し、輸送と攻撃に分かれる。

輸送ヘリにはCH-31、CH-4が存在し、CH-4は全長45mの化け物回転翼機だ。戦車も輸送可能。攻撃ヘリにはAH-39、AH-60、AH-182の3種がある。

これらを配備し、ついでにせめてもの戦闘機として烈風と紫電改ニを新たに開発して載せた。

これも割と危ないのだが、カタパルトでなんとかした。

 

ん?大改造で大型化しないのかって?

うん、無理ミ☆。なんかね、龍驤の発展系を想像することができなかったんや。

龍驤を大型化したとして、その後どう使うのか。私には使い道を想像できない。

なのでアメストリアにはヘリ母艦が無かったから丁度いた龍驤をそうした。

正直適当感があるが、仕方ない。龍驤小さすぎて基礎増設できんのや。細いから。

大鳳とかならそこそこ大きいし構造がしっかりしているから簡単に魔改造出来るのだが、龍驤という重巡船体には無理だった。

因みに同じ重巡船体の高雄型は403mまで大型化しました。(オイ

でもね、逆に言うとこれでも空母には足りんのよ。400mでは全幅が47.4m位。亜軍最大の輸送機の全幅が108m。後は察してくれ。

こいつを運用しなければイケるのだが、それでは爆撃機がいなくなってしまうのだ。

ままならんね。一応FB-99とか言う戦闘爆撃機が居るんだが、そっちは500kg爆弾のみ搭載可能なのだ。対地攻撃には向かない。というかFB-99は対艦用らしいし。

 

兎も角、拡張性が低く、ちょっと魔改造が無理だったため龍驤にはちょっとだけ大型化してヘリ空母としての役割に特化させた。今後噴進戦闘機が垂直離陸可能な物になったらそっちも積んで航空母艦として運用することができるだろう。

一先ずは戦力として数えたいのでヘリ空母として進水させる。

 

 

大鳳の方は大きいし格納庫も広いから量子変換器を満載して戦闘機や爆撃機、輸送機からヘリを一通り搭載。形状に変化は無いが、途轍もなく巨大化した。

全長は1360.7m。ブッシュドバイぐらいの頭おかしい艦船になった。

いや頭おかしい艦船筆頭(全長4650m)か。言うのも説得力は無いが...というかここまで巨大化したのは九割九分九厘私の所為だ。私に合わせて船体は巨大化した。

 

何故か?それは凌波性の問題だ。元の高々300mぐらいの船体では私の巻き起す津波に耐え切れず飲み込まれてしまう。

 

まぁ大型化のお陰で余剰スペースが大量に出たから全部装甲に回したら対500cm装甲になったんだがな。これなら私の主砲も軽々と防げる。まず沈まんだろ。

お陰で重量が347005tとクッソ重くなったが致し方無い。

その為通常の推力では前進することが不可能となり、推進方法にターボファンとスクリューの混成推進を採用。無理矢理動かしている。

対空砲には[70口径10cm高角連装砲]16基を使用。後は45mm対空機関連装砲を1400基にミサイルハッチを2200セルを詰め込んだ。

 

飛行甲板に関しては昇降機が20。無論対500cm装甲で形状は現代型。

艦橋も側面に出っ張りとして作り直し、割と広い空間がある。

スナイプされるから台形とかトーチカの形状だがな。対100cm装甲を三重に張ってある。

後はマストや電探やらを艦橋群の出っ張りとかに設置して、最早必要なくなったが取り敢えず張っておくことになっているワイヤーを張り巡らす。

 

これで完成。改装が完了した船体が地下の巨大な昇降板...といっても前後左右に動く昇降板だがそれを運ばれて待機列に並べられてゆく。

迅速な展開ができるように細かく区切られた区画やレールが複雑に絡み合い、其処に床にあるライトや投光器、空調関係の機器などがひしめき合い、軍事施設の雑猥した感じになっている。よいぞよいぞー。




えっとですね、今回、今作における最大の変更を行いました。
割と悩み、これで良かったのかと悩みましたが、これでいきたいと思います。

変更内容ですが、船体の大型化です。
これもつい最近艦艇のスペック纏めた原本を編纂中に決意したことでして、
アメストリア型戦艦あんなにでかいのに他の艦小さすぎない?って話です。当初は改造で留めようとしていたっぽいんですが、他の鎮守府に居る同じ艦娘との差別化と武装強化と武装強化と武装強化の為に改変させていただきました。勝手な行いを謝罪したします。

でもさ、艦娘だけちっこい船体のってアメストリアがそれを良しとするはずが無いなと。
アレ。艦娘馬鹿ですしお寿司?

ともあれ、船体のスペックが入れ替わって行きます。まぁ時間はかかります。
首を長ーーーーーーくしてお待ちください。

どうしても以前の魔改装船体がいいという方はメッセージでもなんでも送ってください。
相談します。
あ、呼称ですが、改定前のスペックを「魔改装」と呼び、これから入れ替えてゆくスペックは「アメストリアスペック」となります。

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