超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

42 / 82
43.第一波

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「主砲、ってぇー!」

轟音と激しい閃光が輝き船体を衝撃波が揺らす。

現在、全艦がパラオ鎮守府に集結し、自らの砲全てを使い防衛していた。

さながら呉空襲の形相を呈しており、まるで地獄のようだ。

空は黒々とした厚い雲に覆われ、風が強く、駆逐艦が、軽巡洋艦が、重巡洋艦が、航空母艦が、戦艦が。全ての戦闘艦の対空砲が逆向きの雨を降らせ、重力に従って火達磨が落ちてゆく。

 

私達アメストリア型戦艦はドック近海に天龍、龍田、最上、三隈、鈴谷、熊野と共に布陣しており、後方にはせわしなく制空戦闘機としてF-105やF-222を飛ばす航空母艦達が控えている。

レーダーに映る反応は全方面から1000を超えていた。

前衛艦隊が迫ってきたと思われる。

既に工廠妖精さんなどの非戦闘艦もCT-7で送られ、間宮は高雄、愛宕、鳥海、摩耶、ドミートリーの護衛の下ナウル島へ向かっている。大体3時間程で撤退は完了する。

''弾薬の備蓄五割を切りました!''

「万能生産装置を起動させろ。次目標!前方深海棲艦集団、主砲、放てぇー!」

第一砲塔から順に砲塔が回転し、砲弾を吐き出してゆく。

同時に対処できる目標数は大体、駆逐艦が30、軽巡洋艦が50、重巡洋艦が75、航空母艦が100、戦艦が300〜5000である。無論、5000は私だ。

その対処数をギリギリ超えるかどうかという数が来ており、特に前線にいる駆逐艦の弾薬の消耗が激しい。比較的という話だが。だって駆逐艦の主砲や対空砲の弾薬消費量と500cm四連装砲の弾薬消費量なんか釣り合うわけないじゃん?

 

海面が深海棲艦の残骸で覆われた頃、やっと戦闘が終了した。

各艦から煙が上がっているが、砲身の冷却や破損だ。気にしなくて良い。

私達は生産装置をフル稼働させ〔弾薬〕を大量生産し艦娘に配分している。

今の内だ。束の間の休息ってやつだろう。隼も使用し各艦に補給してゆく。しっかし空母さん。ボーキサイトの消費量どうにかしてもらえませんかね?F-105とかの修理に使うのは分かるけども。

 

さて、久しぶりにフィーバーした訳だが、正直な所苦しい。

二回(小規模を含めると三回)にも及ぶ戦力拡張により鎮守府自体の戦闘力が上がったにも関わらずだ。この攻撃が無い時間にも深海棲艦は布陣し包囲網を構築しているだろう。

生き残れるかなあ...いや、旗艦がこうでどうする。不安を押し潰し気丈に振る舞う。

現在時刻は13:36。ちょっと遅い昼時だ。深海棲艦にも昼飯という概念はあるのだろうか?

気になるところだが、今はそれどころでは無い。

機材や資料を満載した最後のCT-7が滑走路より飛び立ち、護衛機と共に遥か上空へ退避してゆく。

因みに提督は私の艦長室に居てもらっている。絶対安全、とは言わないが多分大丈夫だ。

 

「提督、報告だ。我が方の被害は暁と雷が小破。あと〔弾薬〕200000の消費だ。深海棲艦は予測だが1000隻以上の轟沈と航空機少なくとも2000機以上の撃墜だった。」

「そう...うーん...アメストリア、君はどう思う?」

「まだまだだろう。これからも散発的な襲撃があり本隊により攻撃があると思われる。」

「僕も同じ考えだよ。パラオ鎮守府破棄も検討してるけど、脱出にどれ位かかる?」

「この鎮守府自体を囮とするならば密集陣形で高速離脱だろう。多少は被害を受けるが、私達が主戦力として出る。あとは鎮守府を爆破でもすれば良いだろう。

また、鎮守府防衛戦となると、防衛線をもう少し広げなければかなり厳しい。

現在の体勢のままだと補給、戦力共に不足している。」

「だよね...想定される被害は?」

「私達が良くて小破、悪くて大破または...轟沈だ。」

「......生存を第一目標とすること。これは命令だよ」

ん?ネタか?あ、違う?失礼...どちらにしろちょっとキビシーんだよなぁ...

敵も馬鹿じゃ無いのだ。戦場では何が起きるかわからない。深海棲艦がどんな戦術を使ってくるかどうかわからないのだ。

結局、全艦娘を招集し、下された決議が、

 

ーーパラオ鎮守府の破棄。そして既存艦隊による全力攻撃。

 

だった。苦渋の策、出来れば取りたくなかった案だ。

それに伴い寮から私物を己の船体に運び、反撃の体勢を取るのに30分を要し、陣形も変更した。

総艦隊旗艦である私が最前線へ出て、左右をリバンデヒ、カイクル、ノイトハイル。間に大和らと続いてゆく。

 

この後の反撃を説明しよう。

まず深海棲艦の襲撃があったら真っ先に鎮守府を破棄。私を先頭に第五戦速にて離脱をはかる。

そして30km以上離れた所で陣形を変更し、アメストリア型戦艦を四方に展開し、中央に航空母艦や軽巡洋艦を放り込み隙間を埋めるように戦艦や重巡洋艦、駆逐艦を配置する。

対潜警戒に難があるが、高速で移動するから大丈夫だろう......多分。

「妖精さん。非常警戒体勢、いつでも全速航行出来るようにウンターガングエンジンのご機嫌取りをしていてくれ」

''了解しましたー!''

''やったるぜー''

''れっつごー!''

''今の内にかくを...''

''それはイケない''

''ダメなのです!''

''それ以上はイケない''

またカオスだ...見ていて飽きない。けど、今それどころじゃないんだよねぇー...はぁ...

肩の荷が重い...重責を担っている。

「姉さん、あまり気を重くしないでくれ」

「そうだな...ありが............と......う......?」

ちょっぉぉぉぉぉぉぉと!?カイクルさん?いつの間にか転移するのはいつも通りだから良いとしてもその肩に乗せてる明らかに300cmを超える銃?は何なんだろうか?カイクルの方が肩に重い物を乗せてるよね!ちょっとこれはOUTだろう。どうせカイクルの妖精さんと共謀してキチガイ銃を作り上げたんだろ?わかってるよ...

「おい待てカイクル。その砲か銃かよく分からない物体は何だ?」

「む?これか...これは私の妖精さんが作り上げたベガルM634だ。口径19.8mm、全長4500mm、重量48.6kgの機関『銃』だ。」

「はぁ...?その、ベガルM634とやらは、何に使用するつもりだ?」

「無論、深海棲艦に使う予定だ。ベガルM115だと沈められない時があるからな。ギリギリの口径ライフルを作った。姉さん達の分もあるぞ」

「なんていう物を作っているんだ...はぁ...もう勝手にしろ...」

「了解だ。気をつけよう」

絶対反省してない。断言しよう。なんやねん19.8mmって。ゲパードより酷い。

反動が非常に気になるが、一般的に『砲』という定義は20mmからである。M61A1などの機関『砲』やファランクスなどが代表的である。また、20mm以下が『銃』という分類に入る。99式対物狙撃銃は12.7mm。それ以上は14.5mmがある。

恐らく、銃なら良いんでしょう?なら、ちょっと20mmにならない程度にしようぜ的なノリでそライフルは誕生したのだろう。取り敢えず、一言。

 

い い か げ ん に し ろ !

 

何回私を困らせたら気がすむんだ!そんな軽いノリでゲテモノ作るな!連射性能つけるな!

もうやめてくれ...管理しきれない(断言)。

はぁ...すまない、少し荒ぶった。しかし、このベガルM634というライフルは外見がバレットM82A3に似ている。アレに何か太すぎる銃弾が弾帯でぶら下がっている感じだ。

バレルの太さは優に50mmを超え、機関部は特殊装甲によって頑丈に張られている。最早銃じゃない。しかし、気になる。私も()も新兵器という未知のゲテモノに好奇心を刺激されている。

事実''彼女''から撃ってくれオーラがででいる。

「......カイクル、一丁くれ」

「ふふふ、了解した。これだ」

カイクルが片手でM634を渡してくる。私は意外に重いと感じたが、両手で扱いかつ、バイポッドを展開した状態でなら撃てるだろうと予想する。

「...妖精さん、そこら辺に丁度いい的は居ないか?」

''えっと...あっ!距離4900に深海棲艦の哨戒機です!''

丁度いい。このキチガイ銃の餌食となってもらう事にしよう。

19.8mm劣化ウラン爆裂徹甲弾の弾帯を給弾口に入れ、私の親指二本分の太いボルトを引く。

そして艦橋デッキに出るとバイポッドをしっかりと付けると3×60のちょっとよく分からないスコープを大分細く感じる20mmレールに滑らせると覗き込む。まるで記憶にあるFPSのような画面が映り、距離、対象の大きさ、種類などが表示される。これ便利だ。

「カイクル、撃つぞ」

「うむ。耳を塞ぐ」

カイクルに一言いってから、かなり堅く重いトリガーを引き絞る。

ズガァァアンッ!という絶対銃から出ない轟音と共にマズルブレーキから大きな爆炎が上がり腕程の大きな薬莢が排出されゴンという薬莢らしからぬ音を立て落下した。

問題の爆裂徹甲弾は空気を無理矢理裂きながら進み、空を飛んでいた黒い機体に命中する。

途端、爆音が轟き、銃弾が弾ける。

装甲を食い破った銃弾が中の炸薬を破裂させたのだ。対象の深海棲艦は火達磨になり海面に激突。爆発を起こし煙を上げる。

「おぉ......」

思わず、唸る。

それ程までに、この銃(笑)は素晴らしかった。撃った途端にバレットの特徴とも言えるバレルが大きく後退し機関部内部もスプリングロングリコイルという強烈なバックブラストを逃す為の専用機構が作動し、反対側、銃口側に衝撃を逃す。かつグリップ側にも衝撃が逃がされており、銃撃時のズレが少なく、次弾も関係なく連射できるだろう。

素晴らしいとしか言いようがない。

恐らく私は今キラキラしているだろう。こんなのはベガルM115以来だ。

「どうだ?」

「素晴らしい......これは、良いな。すぐに使い始めよう。」

「それは良かった。直ぐにリバンデヒやノイトハイルに知らせてこよう。」

「妖精さん、出航までの時間は?」

''今が16:03ですなー''

''だからあと7分ですー!''

あと7分出そうだ。恥ずかしい事に私はこの銃を使いたくてウズウズしている。

子供っぽいが、しょうがない。わくわくしてうるのは事実なのだから。

 

「全艦錨上げ!出航する!」

私の船体から腹の底から響く重い汽笛が鳴りスクリューが回転をはじめる。

そして巨艦がゆっくりと前進して行き、後続艦が次々と雄叫びを上げてゆく。

主砲の砲身が下がり一式徹甲弾が装填される。レールにも同様の砲弾が転がり、一番砲塔が63°、二番砲塔が24°、三番砲塔が84°へ旋回する。

反撃の開始である。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。