ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー
二週間が経ち、パラオ鎮守府は一時の平和を甘受していた。
不気味な程の静けさと共に。正直なところこれは異常だ。索敵の為に川内型を旗艦とした艦隊をいくつも派遣し深海棲艦を探した。それにもかかわらず、一隻も発見できず、全く攻撃を受けることはなかった。此方としては弾薬の消費が無く楽なのだが、戦場としての緊張感、雰囲気が無くなるのは軍隊としては致命的である為、あまり良くない事なのだが...
工廠の妖精さんも暇になり、最近は地上のハンガーに置いてあるCT-7を解体し、大惨事にしていた。あれは私も唖然とした。全ての部品一つ一つに分解され、その巨体相応の恐ろしい量の部品に分かれた。これによって昇降式のハンガーが一つ潰れるという事態が発生し、私の妖精さんとリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルの技術妖精さんが総動員で組み立て直した。
かく言う私も巨大な装甲などを運ぶ作業を手伝った。大和や武蔵、長門や陸奥などにも手伝ってもらい、二日で完成させた。長門らは「ちょうど良い運動だった」と言ってくれていたが、大和らは慣れない作業故か撃沈していた。リバンデヒやノイトハイルが膝枕していたのは印象的だった。うらやまけしからん。私に代われよ妹共よ
「それで、現状をどう思う?」
「私個人...いや、アメストリア型戦艦の見解としてはかなり危険な状態だと考えている。深海棲艦は私達に個々の武力で勝てない事を学習し戦力の貯蔵に移ったと思われる。最低でも億単位の戦力がいると計算している。」
これはリバンデヒの見解だった。深海棲艦の攻撃がやんでから早数ヶ月。
日本では平和デス!っていうお前らふざけてんのかっていうムードが流れ、大本営に至っては人類勝ったんじゃね?っていう今までお前ら何してたんだと言いたくなる考えまで出している。
誠に遺憾であり、癪にさわるがどうしようもない。勝手に滅べ。
私にあるのはアメストリアに対する敬意、忠誠、艦娘達を断固守護するという決意のみだ。
「億...」
「あぁ。私達といえども、防ぎきる事は難しいだろう。」
私達はもともと防衛を目的として設計されていない。コンセプトの通り、殲滅と自らの生存だ。
何かを守りながらの戦闘はあまり得意ではない。
事実そういう経験が
護衛?知らんなっていう艦だ。私は。
今思えばあの名も知らない大将はその私達の特性を見抜き私達アメストリア型戦艦のみの護送などを回していたのかもしれない。あの大将何者...
「僕はね、アメストリア。この鎮守府の破棄も考えているんだ」
「そんな事は......そんな、事は...」
「いや、良いんだよ。此処の設備は確かに充実しているね。でもそんなのは別の場所でも作れるんだ」
確かに、そうである。しかし、私が拾われた場所であり、戦ってきた場所である。
多少なりとも、愛着があるのだ。
「......了解した。提督の指示とあらば従おう。CT-7を始めとした輸送機編隊の準備をさせておく。」
「うん。よろしくね」
そう一言で言っても容易では無い。輸送機編隊は無論輸送機のCT-7の訓練や護衛機に使用する機体の選出、パイロットの確保など一筋縄ではいかない。
護衛機は...GF-21やF-222、F-75を付けておこう。最近使ってなかったし。
特にGF-21の機銃の量には感心させられる。二十門以上の機関砲に砲も六門。素晴らしい火力だ。
しかし、あくまでも対地攻撃用機であり、空中の攻撃に対しては、ミサイルくらいしか使えない。
けど、砲に三式弾を載せたらどうだろうか?護衛機としてはこれ以上無い優秀な機体となる。
F-222は何も言うまい。速度、火力、機動力に置いて最高クラスのスペックを持つ。
瞬間加速ではマッハ15まで加速。機体は一機一機が結界に保護され万能の装甲、45mm機関砲四門にミサイル4400発である。あの
F-75はステルス機である。偵察、警戒を主な任務として戦闘はもっぱらF-105である。
どうしようか...
◇◆◇◆◇◆◇◆
空気を叩き割らんばかりの轟音とソニックブームを残して編隊飛行をする。
先進的な形をする機体が音速、つまり340m/sの十五倍の速度で飛び去って行く。
機体には赤や青などの色が塗られ、それぞれが編隊を組み右へ旋回したり急降下したりと訓練を行っている。ついでだから、私達の艦載機も換装しておこうか?
「工廠長!F-222の特別機を作ってくれ。数は...30機位でいいだろう。」
「重量はどうするのじゃ?」
「気にしなくていい。機関砲は六門に。ミサイルは6000発に増やしてくれ。制限は設けない。思う存分改造してくれ」
「了解じゃ!」
ということで工廠にいる。
工廠では黒い塗装のされたF-222がずらりと並んでおり、一斉に改造が始まっていた。
先端が外され、新たに二門の機関砲が追加される。
エンジンのノズルが改造され、さらに俊敏な機動が可能となり、只でさえ化け物である戦闘機が空軍艦船同等の兵力を保有した。
又、量子変換器が追加され、ミサイルの装弾数が格段に上昇。
兵装庫より大量のミサイルが車両を使って運び込まれ、主翼下に吸い込まれて行く。
黒い機体には主翼の三角形の一辺に白い塗装がされてゆき、可動式の尾翼にはアメストリア海軍のマークが貼られる。うむ。良いな。重量は2t程上昇したが大した問題では無い。
早速完成した機体を見上げる。主翼は最終点検のため90度に回り、表面の結界術式とミサイルランチャー、スラスターがよく見える。
スラスター周りには[フムナ]という警告文がプリントされ、莫大なエネルギーを放出する為警告を促している。多分人間は跡形も無く消し飛ぶクラスだ。
エンジンは無論双発。ノズルが改造され、F-22のような形になった。
機関砲の銃口が左右三つずつ計六門になり、前方の火力は素晴らしいことになっている。
一編隊分、つまり四機が納入されるまで一時間掛かり、プログラムの更新も終了した機体が並ぶ。
取り敢えず試験飛行するべきだということになり、工廠から直接飛び立ってことになった。
本来は妖精さんが操縦するのだが、こちらに到着してい無い為、私が直接操ることになった。
空母の艦娘の場合管制を行う際声を発したり念話による指示だが、私は戦艦である。
本来なら操縦する艦娘では無い為、某人形師のようで手で操る。これでもかなり無理やりだが。
両手を適度に広げ人差し指をクイッと立てる。すると四機の機体に初めて火が灯り、甲高いエンジンを響かせる。ノズルからエネルギーが放出されて行き、風が吹き荒れる。
両手を上げるとより一層エンジン音が高くなり機体が空を飛ぶ。垂直離陸である。小型艦用の昇降機を借用して地上へ行く。この際もずっと浮いたままホバリングしている。
そして、ハッチが開いた途端、指を複雑な動きで動かし、機体を高速態勢に移行させ海面ギリギリを飛ばす。一番機を守るように後続の三機が飛んで行き、ある程度飛ぶと垂直に飛びマッハ10まで一気に加速する。リングを描くように飛び、三機が一番機を軸として回転しながら空を駆ける。
そして最高時速マッハ25に移行した後に急激な垂直降下。海面まで一気に落ち主翼、尾翼を巧みに回転させ海面にてホバリングする。三角陣形に形を変え、地上へ着陸させる。
妖精さんが待機しているからだ。
主翼が90度から0度の水平へと戻り、エンジン音が低くなって行く。
「どうだ?機体は?」
''素晴らしいです!''
''すごいですー!''
''びゅわわー!''
''すごいよー!''
最後はよくわからないが、機体の方は良かったのだろう。
海を見ると大鳳と龍驤、翔鶴と瑞鶴が浮かんでおり、戦闘機を回収している。見られたか?
「よし。アメストリアに格納しておいてくれ。」
妹達にも載せなければならない。まぁ、ぶっちゃけると使用する機会はほとんどないのだが...
こうして私の試験飛行と妖精さんによる試験飛行はしゅうr....
''レーダーに感あり!航空機です!''
どうやら終わらないようである。妖精さんに指示を出し先にF-222改を出させる。
船体の方とリンクし、攻撃態勢に入る。ミサイルは使えることもないのだが、万が一F-222に当たると目を当てられない事態となってしまう。出来ればF-222の方で対処出来ればいいのだが...
艦隊の方を見ると、全通式の甲板からF-105が飛び立っている。初の実戦である。まぁ、空母の中では古参の大鳳と龍驤かろいるので大丈夫であろう。
鎮守府には久しぶりの空襲警報が響き渡り、海の上にいる船体の高角砲や対空砲が上を向いてゆく。一応、念の為500cm四連装砲も向けておき、三式弾の装填準備をさせて置く。
遂に来たか...
『お姉さん、迎撃は?』
ノイトハイルから通信が来た。
「現在私の艦載機と大鳳、龍驤、翔鶴、瑞鶴が迎撃に向かっている。警戒してくれ。電子戦機が入る可能性がある。」
『...了解だよ』
事実、EA-105やE-7などの電子戦機が入る可能性が否定出来ない。奴らの目的が対応のパターンの解析だった場合最悪の事態を招く可能性がある。あちらも馬鹿正直に突っ込んでこないのだ。
私達と同等のスペックを持つ戦艦が何隻もいるように。
''敵機全機撃墜です!''
「そうか...」
安心出来ない。戦闘機は帰投を開始したので、実質攻撃出来ない空白の時間が出来る。
艦対空ミサイルはSM-2とSM-3しか積んでいない。しかもあれは近接防空システムであり、遥か上空の航空機を落とす為の物ではない。弾頭も散弾式だし。
この攻撃自体威嚇であろう。そこまで貯まったのか...妖精さんに追加で指示を出し、F-222を持って大気圏に突撃。航空機の警戒に当たらせる。私は弾道ミサイル位しか支援できない。
それも支援と呼べるかどうか分からないが。
「報告する。空母艦隊の編隊演習中、深海棲艦の航空機群が接近。私の艦載機と艦隊の艦載機がこれを迎撃。全機撃墜した。又、電子戦機などは確認できなかったそうだ。」
「そう、だね...遂に来たのかな」
「だと思われる。警戒が必要になってくる」
「また戦争かなぁ....?」
「私達の本来の仕事だ。任せておいてくれ。」
提督室にて報告をしていた。今回の襲撃を機に、深海棲艦による攻撃が再発するとの見方だが、何故か他の鎮守府には襲撃が無いのである。不気味さがある。
何故このパラオ鎮守府のみが狙われているのか?大体分かる。深海棲艦をかつて無いほど虐殺した私達の存在があるからだと思う。なら、私達が移動すれば済むという話でも無い。
既に私は通常の艦娘にオーバーテクノロジーの兵器の技術を与えてしまった。深海棲艦からすればパラオ鎮守府自体が脅威である。攻撃は確実だと思う。
まぁ、なにが来ようが全て粉砕するだけであるが、艦娘に鎮守府、付属施設...エクセトラエクセトラ...それすべてを守りながら戦うのは前回も言ったが残念ながら不可能である。
500cm四連装砲20基しか無く、満遍なく展開しようが防衛は不可能である。