超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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39.ドミートリー PART2

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

薄暗い室内。全てが鋼鉄以上の耐久力を持つ金属に覆われているせいか室内は何処かひんやりとしており埋め込み式のランプが一つ寂しく照らしていた。

そこにいるのは方や腕を後ろに回され厳重に縛られた艦娘、タイフーン級原子力潜水艦一番艦ドミートリー。

方や一目で業物だと分かる、黒い艶のある鞘には控えもながらも桜と彼岸花の金細工が施され、その緻密さからもこの鞘を作った職人の卓越した技術力が伺えるがさらにその鞘が納める刀は素人から見ても化け物だと分かる大太刀であった。そんな危険極まりない日本刀を腰に差し最近変えたのかレッグホルスターにはM-500が入ったアメストリア型戦艦三番艦カイクル。

そして一見、美青年とも取れる綺麗な中性的な美貌を持ち、長く、ツヤツヤな黒髪を白いリボンで一房に纏められ、腰には大ぶりのナイフがぶら下げられ、ホルスターにはバレルの長さが明らかに可笑しいデザートイーグルを入れ、一切何を考えているのか分からない微笑みを浮かべるアメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル。

そしてドミートリーの前に立つのは冷めた、冷酷な目を彼女に向け、その豊満な胸を強調するかのように腕を組み、腰には一回り大きいホルスターが両腰に吊られ、M93Rが入っている。

その表情はいつもの''まだ''柔らかい無表情とは違い、完全に冷え切った、人形のような一切の感情を浮かべない顔をしたアメストリア型戦艦一番艦アメストリアこと私。

正直、内心では複雑だ。核という人類の最終兵器を備蓄とはいえ保有していた。

しかも誰の許可も無く。これはばれたら一発でOUTな非常に軍事的にも外交的にもデリケートな問題だ。私はあのゴミクズが使った大量虐殺兵器として使用国への苛立ちと合わさり、核が嫌いだ。

これには私達が核よりも破壊力を秘めた言わば同類であるための同族嫌悪かもしれないが。

まぁ、アメストリア型戦艦は核如きじゃあ沈まないが、このドミートリーが

『パラオ鎮守府所属の潜水艦として接近し、大本営なり大都市に核弾頭のSLBMを撃ち込む』

という行動を起こしたらどうだろうか?当然あの老害共は提督を処分し、私達を利用しようとしてくるだろう。

「さて、ドミートリー。貴官は核弾頭のSLBMの危険性にそれに伴う影響を考慮した上で核を所有したのか?」

「......えぇ。だってそれくらいしなきゃあんた達倒せないじゃない」

「ならば、貴官の目的は私の破壊もしくは殺害か?」

「最初はそのつもりだったけどもう諦めたわ。あんた達強すぎるもの。」

それは懸命な判断だと思う。核であろうと月の落下であろうと太陽の接近であろうと、悪意のある物は絶対干渉結界により全て弾かれる。無論、起動している間のみだが。

「なら、私達...いや提督に反逆の意思は無いんだな?」

「えぇ。断言するわ」

少し、圧力をかけて答えさせる。こはかなり重要な決断だからだ。

するとドミートリーは目を泳がせずに断言した。呼吸は少し乱れているが、それは私の威圧によるものと思う。

「よかろう。私達姉妹は歓迎しよう。カイクル、ノイトハイル、リバンデヒの所についていてくれ。私はドミートリーを案内してくる」

「了解した。」

「...分かったよ。」

む?未だにノイトハイルは警戒しているようだ。まぁ、確かに怪しいっちゃ怪しいが...

妖精さんを呼んで、ドミートリーの機関を粒子エンジンに換装し、武装関係に量子変換器を積むよう指示する。量子変換器とは私達の弾薬などは勿論赤城や加賀などの艦載機を収納するときに使うものだ。艦載機一機ずつにも積んでおり、あのミサイルの積載数の意味不明さはここから来ている。でもあれはおかしいと思う。

 

ドミートリーを連れて尋問を行っていた私の船体から出て甲板にでる。

上を見れば太く、長いマストに巨大なアメストリア国旗がはためき、ワイヤーが揺れている。

船体の巨大さに、より波の揺れは殆どなく、甲板も馬鹿みたいに広いのでここは船か?と疑ってしまう。

「あの主砲は何センチなの?」

「あれは500cm四連装砲だ。前方に三基、後方に二基積んでいる。」

「500cm.......どんだけ炸薬使ってるのよ...」

「大体...いや、忘れたな。かなり使っている。お陰で砲塔は熱くなるがな」

無論排気システムは完備されている。煙突の存在意義に関する事でもあるし。

タラップから地上へ降り、中型用の格納庫に進んで行くドミートリーの船体を見送ってゆく。

ドミートリー本人はそのシステムに驚いているようだったが。毎回言われるがやはり慣れているからかこれが普通という感覚だ。あ、潜水艦用のドック作んなきゃなぁ...

後で工廠長と話し合おう。

 

ドック(地上)から歩いて工廠、鎮守府の順へ見せてゆく。

途中、利根や高雄に愛宕や第六駆逐隊、最上姉妹と会った。もがみん、いい加減湾岸砲から降りろ。

轟音と共に、空に白い線を描きながら戦闘機が飛び去って行く。

恐らく、雲龍型の練習だと思う。蒼龍、飛龍は既に艦載機を理解し、既に使いこなしている。

さすがは二航戦である。あの急停止やホバリングのできる二次大戦とは全く違う艦載機を使いこなしている。妖精さんの練度が気になるが、やはりその統率を取る艦娘の方にも優秀さがわかるというものだ。

そんな普通の鎮守府ではまず見られないであろう光景にドミートリーは驚愕したり喜んだりとコロコロと表情を変えていた。見ていて飽きないな。かわいい。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

私はいま工廠長と対峙している。

実質的に私はこの鎮守府の統率役であるためある程度の改造、増設は事後報告でも良いとされている。今回の潜水艦という戦力の拡大に伴い、これからの拡充にも対応させる為新しく海中のドックを作る事になった。場所は以前(20話位)発見した岩礁地帯を活用するつもりである。

 

まず水深6、700mに穴を掘り侵入口を作る。そしてその先に空間を人工的に作り出しそこをドック(仮)としてクレーンの設置、ドック(地下)と繋げたり、着岸する為のドックを作ったりと色々と建設しなければならない。

「じゃが、どうやって穴を?」

「そこだが...妖精さんに頼んで発破するか私が徹甲弾で砲撃するかだが、私が撃つと島が吹き飛ぶからな...」

「そおじゃのぉ...」

そう。肝心な穴を開ける方法が決まっていないのだ。

爆雷はまず沈まない。砲撃は危険極まりなく、水深700mまで進む砲弾を私は知る訳がない。

潜水艦はドミートリーのみしか居らず、現在改修中の為出撃不能。魚雷はまず届かない。

どうするか...

しかし、私は忘れていた。私達アメストリア型戦艦には潜水機能があるのである。

海を進む為、極めて隠密性が高く、光学迷彩と併用することでレーダーにも映らない完全無敵な戦艦?が出来上がる。無敵、とは言い難いが。

しかし海中では砲撃は出来ない。一瞬とは言え砲口が開かれ砲弾が莫大な量の炸薬によって射出される。その際、どうしても隙間が発生するし、水中で炸薬が点火するかどうかさえ分からず、最悪の場合海水が砲塔内に流入し、砲自体が使えなくなる可能性がある。

設計図と睨めっこし、アイデアが浮かばなかった為に左手で作製していた鋼鉄製の疾風を手の上に乗せる。我ながらかなりのクオリティと自負する。30cm程の大きさの模型でエンジンはキ-84を完全に再現させて頂いた。あれは日本の技術の結晶と言ってもさしあたりない。というよりは、日本人らしさの出ているエンジンだと思った。パイロットの事情を弁え、整備においても考慮する。

軍事兵器としては当たり前の配慮だろうが、丁寧さが伺えるのは日本だけだと思っている。

「むぅ...やはり、ASROCを撃ち込むか...」

当然、ミサイルにも種類が存在する。対艦ミサイルであればグラニート。対地ミサイルなわばトマホーク。対潜ミサイルならASROC。そしてその種類別で〔弾薬〕の消費量は違いがある。

特にASROC。あれはかなりの弾薬を消費する。別に生産装置があるのでどうということはないが、やはり勿体無ぶるのは日本人の性か。

「じゃの...」

「......了解した。二分後に作戦を開始する。」

「分かったのじゃ。わしらは地上で待機しておるよ。」

 

という事で私は再び艦内に戻ってきている。

周囲の電子機器は普段とは違った動きを見せ、それに従うように砲塔が旋回しミサイルの邪魔にならないようにする。火器を担当するコンピュータが激しく文字を打ち込み始め、ミサイルに正確なデータを入力し始める。すると船体のミサイルハッチが続々とドミノのように開き始め、中の白いミサイルを露出させる。

「妖精さん。ASROC発射用意」

''ASROC座標入力完了...撃てます''

「ASROC、発射。」

''ASROC発射します''

煙が上がり、白く細長い矢が飛び出してゆく。それも一発の単位でなく、数十、数百の単位である。大量の噴煙を撒き散らしながら空高く飛んで行き、シャベリンの変態起動の如くクイッと先端を海面に向けるとブースターを全開にし、勢いよく突入してゆく。

あぁ、言い忘れていたが、既にASROCは原型を留めないレベルで改造がなされている。

自動追尾機能は勿論、推進機構をブースターに変え、海中での速度が150ノットを超えた。

その魔改造されたASROCが蜂の群れのように続々と飛び込んで行く。

そして海中に入ると指定された座標に向けて全速力の突撃を敢行する。

海水が強引に引き裂かれ白い航跡を残して進んで行く。

そして、爆発。200kg以上の高性能炸薬を爆破し岩に巨大な傷跡を残してゆく。

残りのASROCも我先にと突っ込んで行き、穴をどんどんと大きくしてゆく。

「第二射用意。」

''第二射用意...座標、どうしますか?''

「...少し奥にしろ。ドックに必要な大きさは第三射で開ける。」

''了解しました!''

大量の、おびただしい数のミサイルハッチが開いて行き、皆同じミサイルを見せる。

その数、1500。ミサイル総数4500基のアメストリア型戦艦だからこそできるASROCによる海底爆発工事である。強引でいるとは自覚している。良い子の皆はASROCで突貫工事しちゃダメだぞ?

''第一派、全弾命中!入り口は完成しました!''

「良し。第二射を発射。五分後に第三射も撃て」

''了解であります!''

千発のミサイルが飛び立って行き、先ほどと同じ軌道を描き、海底を目指してゆく。

何か、暇だと感じる。何故かは知らん。

『お姉ちゃんっ!?何が起きたの!?ASROC2000発ってどんな潜水艦が現れたのよ!?』

「む...違うぞ。潜水艦用ドックの建造の為穴を開けている。」

『それをミサイルでやるなんて...はぁ...もう、いいわ...』

何故か最近聞かなかったやや疲れた声でリバンデヒが引き下がる。

珍しい。疲れている。今夜辺り、襲われる危険性があると予測する。面倒だな...

''第二派、命中しました。''

「そうか。第三射を早めに撃て。」

''了解です。''

案外早く命中するものである。

因みにだが、ソナーは切っている。爆発音が激しいだろうから妖精さんが倒れるのを防止する目的だ。レーダーが代わりに起動し、何も逃さないという勢いで索敵しているが。

第三射の1500発のASROCが放たれる。これで合計3500発。これで開かなかったら4500基全て使う予定だ。

 

あの後は、予定通りに進行し、穴は大方開き、ドック(地下)との繋げる通路を作りつつ穴を目指した。潜水艦だから...生産装置は一つでいいとして...倉庫は魚雷とSLBM用...五つくらいか?

ドック(地下)との違和感をなくす為、カラーリングもあの軍事色で良い感じの雰囲気も出せるだろう。

 

 




書き方を少々変えてみました。如何だったでしょうか?自分としては時間がかかる代わりにかなり書きやすかったのですが...


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