超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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38.ドミートリー PART1

 

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

薄暗い部屋、三つ程しか電灯の付いていない部屋の中にカチャカチャと言う音が響く。

複雑な形、四角い形、丸い形、明らかに人間が持つ形では無い銃がずらりと並ぶその部屋で私は全ての銃、武器を下ろし、スタンショットガンを初めとした非殺傷兵器に換装していた。

何故か?ーーードミートリーの艦内へ臨検に入るからだ。

一応、目的として機関を粒子エンジンに換装出来るかを調査し、核を搭載していないか確認するということがある。

万が一核を搭載していたとなると直ぐに回収しお蔵入りせねばならない。

最悪、艦娘を拘束する可能性もある。私は艦娘博愛主義なのでしたく無い、絶対にとりたく無い手段である。アメリカ海軍?知らんな。

 

「リバンデヒ、武装は?」

「閃光手榴弾五発とモスバーグM500の12ゲージのスタンガン30発、催涙弾三発、SOCOM Mk.23が一丁よ」

よりによってアメストリア軍が好んで使う大型自動拳銃を...私も使っているが、一般的にアメストリアでは大口径の銃が好まれる。しかし口径によって火薬の使用量は変わる。当然反動も強くなるのだが、流石はベガル社とでも言っておこうか。威力が高く、低コストで軽い大口径銃(化け物)を開発した。このSOCOMを初め、20世紀の銃は一部の愛好者によって改造され、原型は外見くらいしか止めていない。M115なんてあるものだ。挙げ句の果て兵器なんか...魔改造されている。

聞いたことあるか?宙返りやバレルロール、ヴァーティカルローリングシーザスと言ったAir Combat Manoeuring、通称ACMこと空中戦闘機動をするブラックホークとか垂直離陸する爆撃機、駆逐艦クラスの大きさの巨大輸送機。しかも60cm砲なんか航空機につけた。要するにそういうことだ。

「私はAA-12に連発式スタンガンだな。煙幕弾数発と...あとバヨネット数本は持ってきているが、実弾は止めておけ?」

「大丈夫よ。ゴム弾だから。」

「そこではない...」

まぁ、良いや。リバンデヒに何を言っても無駄だと判断した私はAA-12に黄色いシェルの入ったマガジンを装填し、コッキングする。一般的にスタンガン(シェル)は連発式ショットガンの使用は勧められていない。しかし、それは地球の話である。当然ベガルが改造しスタンガン、麻酔弾、フレシェット弾などを開発した。最後は非殺傷兵器では無いが。

 

ドック(地上)に接舷された船体をみる。

のっぺりとした黒い鯨であることは変わりないが、堂々とソ連の旗を掲げており、早急にアメストリア軍旗か旭日旗を掲げさせなければいけないだろう。要らぬ誤解を受ける。もう大本営に出頭なんか嫌だ。誰があんな面倒くさい場所に好き好んで行くものか。しかも、彼処に長時間居るのは無理だ。あちらで倒れたこともあることだし。

取り敢えず艦娘パワーを使って乗り込み、艦橋のハッチから入って行く。

 

中は最低限の電灯しか灯っておらず、赤い非常灯が人気の無い艦内を不気味に照らす。

直ぐに各々のメインウェポンを構えるとハンドサインでリバンデヒに指示を出し、私は弾薬庫へと向かう。不思議と妖精さんはおらず、恐らくウチの妖精さんが連れて行ったか隠れているかどちらかと想定する。後者の可能性が高いが。

 

狭い廊下を警戒しながら歩いて行く。先程だが、トラップが仕掛けられていた。

つまり、なにか後ろめたい事があるという事だ。

厳重な密閉型の扉を開けて行く。そして足を踏み出した瞬間、何かに掛かり思い切り倒れる。

何かに引っかかってしまったか...後ろへ首を回すと電灯に照らされてキラリと光る筋が。

ピアノ線かワイヤーだろう。赤黒い液体が滴っている。

足を見ると少しばかり浅くではあるが切れていた。おいおい私を殺す気か?毒があったらどうすんだ

狭い艦内ではAA-12は役に立たないと判断し後ろへ回すと腰に下げていたベルトにある鞘からバヨネットを一本抜き取り逆手で構える。そして警戒を強めながら歩いて行く。

神経薬関係には対抗する事ができ無いが、艦娘の体というのは随分と頑丈なのである。船体のダメージを別として。アレは痛いってもんじゃ無い。

 

「ここか。」

目の前には〔Склад боеприпасов БРПЛ〕と書かれた扉がある。

レバーを下げて、いくばくか重い、分厚い扉を開け放つ。そこには左右に棚があり、寸胴の弾頭が並べられている。本来なら、発射口から直接補給する物だが、この船は既に艦娘である。

''弾薬''としての備蓄にSLBMも含まれるのだ。

目的の一つ、弾薬を核として既に具現化し、保存してい無いか。

順に見て行く。

「はぁ...」

見つかった。いや、見つけてしまったが正しいか。

核のマークを表す紋章のある弾頭。奥の方に並べられて、一見視界に入らない場所に並べられていた。まぁ、理由は分かるが。

「カイクル...ドミートリーを、拘束しろ。核が見つかった」

最悪の場合、これを自爆させられたらこのパラオ鎮守府の地上施設は全て吹き飛ぶ。

近くは私達の高さもあって1km以上深いため問題ない。

『...了解した』

恐らく、艦娘を拘束したのは初めてだ。出来れば、取りたくなかった手段である。

やだなぁ...

「リバンデヒ、撤退する」

『.....................』

「リバンデヒ?」

『.....................』

何故かリバンデヒから返答が無い。嫌な予感がする。

AA-12へと持ち替え、リバンデヒの向かった機関室へ向かう。

途中黒色の煙幕弾を艦橋から投げ、ノイトハイルに知らせる。

事前の打ち合わせではドックのタワーの内一つからM115AXを使って狙撃待機だったから。

黒い煙幕は緊急事態発生。ノイトハイルの事だ。SCAR-Hでも持って急行するだろう。

 

「リバンデヒッ!?」

走って機関室へ向かうと、モスバーグM500は床に転がり、幾つもの黄色いシェルが床に散らばっていた。そしてその使い手は配管に寄りかかるように倒れており、右手は何処からか持ってきたであろうワイヤーで拘束されていた。頭からは少量の血が流れ、恐らく頭部への打撲攻撃だと予測できる。直ぐにAA-12を後ろへ回し、バヨネットでワイヤーを切断する。そしてリバンデヒの肩を揺さぶる。しかし一切の反応を示さない。まるで屍の様だ。ってふざけている場合では無い。

息はある。気絶しているだけだ。直ぐに頭に傷を処置し、包帯を巻く。鉢巻というかカチューシャの様に巻かれていたリボンは邪魔であったため解いた。

そしてモスバーグを回収し、辺りを警戒する。

相手は妖精さんであろう。恐らくリバンデヒは此処に入った途端に、妖精さんから何かしらの奇襲を受け、気絶。そのまま拘束され、放置された。

すると、コツコツという鉄と硬い物が接触する音が響き、扉から独特の、見慣れた形状のマズルフラッシュが視界に入る。

「リバンデヒお姉ちゃん...?」

ノイトハイルがキョトンとした顔になり、直ぐに顔を優しそうな笑みではなく引き締めた、アメストリア軍人としての顔になった。

私はその変化の方が驚いた。何時も意図を分からなくする...私も大概だが優しそうな笑みを浮かべたノイトハイルだが、のほほんとした雰囲気は何処かへとボッシュートされ、鋭い雰囲気を感じ取る。こんな表情も浮かべるのか...

「ノイトハイル、直ぐにSLBMの核弾頭の回収を頼む。私はリバンデヒを護送する。」

「...分かったよ」

するとノイトハイルは何時もの柔らかい表情へと戻り、意図的に出されたのほほんとした雰囲気が漂う。しかし分かる。目が一切笑っていない。微笑みを浮かべているが、目が笑っていない為、本来私の方が姉であるはずだが、怖い。美人の笑みは怖いと聞くが、此処までなものか?

直ぐに走り去ってしまった為私は一息溜息をつくとリバンデヒを背負い上げ外へと向かう。

 

外へ出ると磯臭い陸風や弾薬の硝煙の匂い、整備用の潤滑油と鼻をつく臭いが広がっている。

まぁ、戦場であるから当然なのだが。

カイクル、ノイトハイルに実弾による武装を命令し、私自身もリバンデヒをアメストリアの医務室に寝かせると直ぐに武器庫へと向かい非殺傷兵器を全ておろし、ベガルM115AXにDE、カランビットナイフ(大)に装備を換装し直ぐにカイクルの元へ向かう。

ノイトハイルは多分回収した核弾頭を工廠か船内に入れているだろう。

「ノイトハイル、今何処だ?」

『工廠の第三倉庫だよー。お蔵入りさせてる』

「了解した。直ぐにカイクルの元へ向かってくれ」

『はーい』

中々に厄介になってきたぞ...さて、これからどうするか...


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