超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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27.アメストリア、倒れる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

どんよりとした曇天の空からこんちにわ。アメストリアだ。

輝かしい太陽はすっかり天岩戸してしまい、艦橋も暗い。艦内システムを精査するホログラムや気象などの環境情報が表示されたホログラムが照明代わりとなり、薄暗く照らしている。なまじ体育館みたいなサイズなんでそこまで明るくならないな。うん。ホログラムの近海マップが出てきた。ようやくそこそこ明るくなってくる。海はそこまで荒れていないようだな。まぁこれから私達が荒らすが。艦内も特に異常無し。ただ、私は朝から咳が少々あるのが気掛かりだな...今度から私の調査も入れてもらおうかね。

それはともかく出撃だ。無駄飯食いにはなりたくないからな。一応警報を鳴らしてもらっている。私が進むことによって発生する波が半端ないからだ。

「抜錨!機関始動!10ノットにて低速航行!」

大馬力のモーターによって鎖が巻き上げられ、海底に突き刺さっていた錨が海面から飛び出す。アメストリア型戦艦ともなると巨体を固定する為にそれ相応のサイズの錨が必要となるが、私達では折りたたみ機構を実装し、精々10式程度に小型化した。ん?どうやら民間用埠頭から撮影を試みているおそらく民間人が複数。三脚を立てた対空砲のような望遠レンズ。あれなら確かに私を細かく撮影する事ができるだろう。一応艦橋の防弾ガラスの透明度を落としておく。写真再現できる技術はまず重要度が低いし、出来たとして脅威にならない為好きに撮らせておこう。

まぁ確かに観艦式やらに比べ実際の戦場への出撃はまた違ったものとなる。それが撮りたいんだろう。

「主砲一式徹甲弾装填、旋回テスト」

見せてやろう。五基の砲塔がそれぞれ回転し、砲身が別々の角度を向き、元に戻る。

左右繰り返し、45mm対空機関連装砲も動作テスト。

「ゴホッ...アメストリア、出撃する」

『リバンデヒ、出撃するわ』

『カイクル、出る』

三隻の巨艦がゆっくりと進んで行き、白い航跡を残しながら進んで行く。

ちなみに護衛艦や直庵機は居ない。必要無いからだ。

後部格納庫からF-105を飛ばす。主翼が根元から回転来ることができ、垂直に離陸する。

レーダーを起動し、索敵。

 

''レーダーに感あり!距離16500です!''

「ミサイル、グラニート装填!ゴホッ...座標固定、発射!」

暫く航行してゆくと、レーダーに反応があり、取り敢えずグラニートをぶち込む。

艦首付近のハッチがドミノの逆再生の様に開いて行き、順次グラニートが放たれる。

''レーダーに反応!艦載機、120以上!''

「リバンデヒ、カイクル、結界を起動。帰投まで解除を禁ずる。45mm対空機関連装砲用意!」

明らかに音速を五倍程超える速度で接近する影が大量にある。

「500cm四連装砲、150cm四連装砲、46cm三連装砲、三式弾装填!座標固定!」

私達の船体にあるすべての火砲が動き出し、主砲、副砲は深海棲艦の艦載機の方へ。

45mm対空機関連装砲は艦載機の高度に合わせ角度を変えてゆく。30cm連装電磁力砲や20cm連装砲はこの間に攻め入る深海棲艦を警戒し、全方向に旋回する。

三隻に補う様に布陣し、艦首側の三基の主砲や右側の副砲が火を噴く。

同時に私から視認できる距離に黒い点が沢山映る。

そこに飛び込んで行く鋼鉄の塊はその艦載機の前で爆発し、柳のような花火を咲かす。

海面に艦載機だったモノが水没し、何事もなかったかのように進む。生き残った艦載機は長距離ミサイルを放ってくるが、ゲリラ豪雨より濃いレベルの45mm対空機関連装砲による弾幕でことごとく落ちてゆく。万が一生き残っていても残念ながら結界により墜落する。

ムフフ...無敵じゃね?いやダメだ慢心しかけている。それのせいで何回も大破しているんだ。

妹まで私の慢心に巻き込みたくない。

 

父島と呼ばれる島近海にて停泊する。

「こちらアメストリア。ノイトハイル、聞こえているか?」

『こちらノイトハイル。ちゃんと聞こえているよ』

私達の目の前に突如同型艦が姿をあらわす。ノイトハイルだ。

「報告は?」

「ん〜特にないね。」

いつの間にか既に私の艦橋にいる時点で既に人間辞めていると思うんだ。いや人間じゃないけどさ。

しかも珍しく抱きついてくる。む...?一週間近く離れていたからか?

「ノイトハイル...あまり甘えるなよ?」

「分かってるよ〜。でも僕だって会いたかったんだよ?」

「分かっている。リバンデヒ、カイクル、私の船体の第一会議室に集合してくれ」

 

「さて、第二回を始めよう。ノイトハイル、本当に何も無いんだな?」

「うん。あ、でも最近深海棲艦を見なくなったね」

「それを言え...」

私も闇夜に紛らせて調査したが、深海棲艦の数が明らかに減ってきている。

リバンデヒの艦載機は帰ってこなかったこともある。その艦載機が飛んでいたのはパラオ方面。

何が心にざわざわとした不安になるいやな感じが残る。

「私の予想としてはおそらく我が鎮守府に近く襲撃があると見るが、姉さんはどうだろうか?」

「その通りだ。私も懸念している。最悪の想定をすると、深海棲艦のアメストリア型がいる。そして核やウンターガングを使ってくると思われる。大和達は大分強化しているが、恐らく勝てない。

物量に負けるだろう。そこでノイトハイルは常に警戒してくれ。そして深海棲艦が現れたらすぐに夜だろうと通達しろ。すぐに出撃する。」

「分かったよ」

「私達も深海棲艦の規模によっては大規模掃討作戦を行う可能性がある。」

しかし計画を始動すると海が荒れてしまう。汚染してしまうのだ。

核による蹂躙。ウンターガングは海水ごと消すため駄目だ。水位が下がる。

「お姉ちゃん、そろそろ戻らないと怪しまれるわ」

「分かっている。ではノイトハイルは指示通りに向かってくれ。私達は帰投する」

 

 

さて無事に帰投し、ドックでは無く、近海に投錨し、隼で帰った。

父島までだが、20ノットの低速航行で移動しているため、既に夕日は水平線の彼方に沈もうとしており、夜の闇が足音を立てる。

隼を接岸し、ロープで固定する。むぅ...怨念が凄い...

「カイクル...少しキツくないか?」

「確かにな...これは...」

不覚にもフラッとしてしまった。というか熱い。視界が僅かにかすみ始め、高速思考が出来なくなる。

「ね、姉さん!?熱い...リバンデヒ、姉さんが熱だ。私が背負う。報告に行ってくれ」

「分かったわ」

カイクルに背負われる。それは分かるが、状況が理解できなくなってくる。

私はどうしたのだろうか?何が起きているのかよく分からない。

でも少し熱いなぁ...熱か?昨日慰霊碑にずっと居たからか?最近寝ていないのは事実だが、艦娘も人間か...耐えられなかったかぁ...

 

意識が戻り、ぼんやりと視界が戻ってくる。

白い天井だ。医務室か...?頭がガンガンするが、上半身のみ起き上がる。清潔感のある部屋に置かれたベットに寝ていた。そして右足に重みを感じたので見ると、カイクルが寝ていた。今気づいたが、額に冷たいタオルが置かれていた。

「カイクル......」

かなり深く寝入っているようだ。起こさないように抜け出し、汗ばんだ巫女服を脱ぐ。

熱か...怠いが、新しい巫女服を作り出し、羽織る。帯を巻き直し、

テーブルに置かれたSOCOMやM93Rをホルスターに入れる。

「お姉ちゃんは...あら、起きているじゃない。大丈夫?」

「あぁ。少し怠いが、何とか動ける。」

「そう。良かった...あんまり無理しないで頂戴。私の気が持たないわ」

「すまない。あらゆる戦略や対応策を中央演算処理装置で想定していたし、同時に要注意人物や使える人間を選抜していたら何日か徹夜してしまった。」

「はぁ...そんなの言ってくれれば私がやるのに...」

確かにリバンデヒは諜報については長けている。

沢山の戦略を熟知し、短所長所を知り尽くしている。私としては有り難いのだが、私も自身で出来るだけやっておきたいのだ。元が人間だからな。

しかしこの世界の人間は贔屓しても好かない。不快になる人間が多い。

私達をなんだと思っているんだ...兵器だが、個性を持ち、感情を持っている。

恐怖の視線や興味、怪奇の視線を外に出れば向けられ、鎮守府内では常に気を使い、注意して生きている。正直息苦しいのだ。パラオに帰りたい...

 

さてさて翌日。

朝食を食堂でとり、暗号による情報交換を取ったところで、ここの提督に呼ばれた。

「さて、貴様らを呼んだのは近々国際的な会議や式典がある。総理大臣や大臣達が乗り込む予定だ。アメストリア型戦艦一番艦アメストリア、貴様に乗られる予定だ。他の二隻は護衛したまえ。

出発は来週だ。では精々頑張りたまえ」

「...了解した」

と、いう事になった。何でだよ...帰りたいのに...あと二週間だ!と思ってたのに...

 

「ノイトハイル、聞こえているか?」

『聞こえているよ〜どうかした?』

「うむ。私達は内閣総理大臣達官僚共を載せることとなった。なので暫く増援に行くことができない。警戒を強めてくれ」

因みに行き先は台湾を通り、フィリピン、インドネシアを抜け、チヤゴス諸島を通り、ソマリア、インド洋を抜け、マダガスカル島の裏を通り、南アフリカをぐるりと周り北欧に向かう。そしてドイツにて会議がある。深海棲艦についてと物資の輸送だ。陸路でも良いのだが、中の国がある為断念。空路は撃墜されるので却下。結果、海路だが、太平洋を突き抜けるのは私達でもきついので、大回りして向かうらしい。

そこで恐ろしい防御力と攻撃力を持った私達が輸送に使われる事となった。

 

ほんとやめて...ソマリアとかあれじゃん。海賊未だにいるじゃん。深海棲艦は何故か太平洋に密集しているため、その他の海では比較的少ない。かつ、通常兵器も効くには効くので(微々たる結果)何とかやっているらしい。

当然タンカーなどが日本やドイツに向けて航行するため、世界一治安が悪くて国連軍も治安維持部隊を派兵するのを諦めたソマリアの海賊共が動く。格好の獲物だろう。

タンカー類は積荷を優先しているため、まともな武装は無い。小銃くらいならあるだろうが、生ぬるいと思っている。殺るなら徹底的に。これ常識な。

主砲ぶち込んでやんよ。今までの悪事は人間の血で払ってもらう。知識として知っていて良かった。知らずに行くと45mm対空機関連装砲であしらいそうだからだ。

さて、準備でもしておきましょうかね...主砲弾(粒子弾、榴弾式結界弾)を多めに積んでおこう。


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