超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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13.一航戦が漂着しました!......え?

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アメストリアだ。ん?知ってるって?知らんがな。

さて、今日は何故か私と同じ場所に艦艇が座礁していたらしく、

「リバンデヒ、カイクル、すぐに周囲を巡航。大鳳、龍驤」

「「了解」」「何かしら?」「何や?」

「すぐに艦載機を飛ばしてくれ。機種は指定しない。」

「分かった。」「了解や」

 

私も行こうか。ドッグを上げ、海上に進む。

一応提督にも連絡を入れておいた。指示はこちら待ち。

提督...転移出来るようになってくれ...いや、無理か。でも一々歩くの面倒...

 

「リバンデヒ、どうだ?」

『赤城だと思うわ。一切の抵抗は今の所確認できず。というか人影が見当たらないわ。』

「了解した。私のみで突入する。カイクル、援護を。」

『了解した。』

「気をつけてね?」

「あぁ。」

カイクルがstandby...standby...状態になったのを確認し...何処に居るのかは分からない。

何故なら艦橋群は塔楼の他にも予備の中央演算処理装置などを置いておくスペースや各種観測機器を設置する数多の出っ張りがあり、遠くから見ればまとまって見えるものの、複雑な鉄骨の塊であるからにしてカイクルという一人を見つけるのは極めて難しい。砂漠の中からコンタクトレンズを探すーーという例えは実に的確だ。

 

赤城に私が発生させた波が当たるといけないので内火艇を下ろして赤城に乗り移る。

そしてタラップを駆け上がってその勢いで対空砲陣地に手を掛けて曲芸よろしく全通甲板によじ登った。

すぐにM93Rを取り出し、安全確認。

 

 

ーーこりゃひどい。

20以上のボロボロになった艦載機の残骸。穴だらけになった飛行甲板。

ひしゃげた船体、昇降版は途中で止まり、炎上。

艦橋は..航空母艦の艦橋は船体に比べ非常に小型であるため幸いに至近弾でズタズタになっている程度だ。

 

『姉さん、生命反応一だ、艦娘は生きている!』

「了解した。突入する」

 

M93Rを十字にクロスさせ、構える。

そして第一艦橋と思われる場所に突入。

正面、左右、天井、床の順に素早く敵影、トラップ等が無いかを確認し、艦娘の姿を探す。

 

「ひっ......!」

「お、落ち着いてくれ...」

 

突入すると、中はまだマシなレベルで現存していた。250kg航空爆弾の破片や赤城の構造物の破片か、艦橋内は並木の木漏れ日のような光がいくつも差している兵器としては異常事態。

海図らしきものは散乱し、調度品は尽く破損していた。

 

私が突入した途端、赤城がすぐに隠れた。

当然だ。たった一人で敵航空機や恐らく居たであろう艦艇の攻撃を被弾しながらも掻い潜り、やっとこさ逃げ延びたかと思えば島のような戦艦に囲まれ、挙句突入されたのである。誰だって怯える。

 

「私はパラオ鎮守府のアメストリアだ。安心して欲しい。保護しに来ただけだ」

「.......」

 

M93Rをホルスターに戻し、手を上げながら近付いて行く。

「信じて欲しい。私は保護をしに来ただけだ。「カイクル、援護止め。撤収してくれ」」

 

「.......本当に、信じて、良いですか?」

「あぁ。私が責任を持って保護する」

 

やっとゆっくりだが、赤城さんが立ち上がってくれた。

立ち上がってくれたことで見えた。赤城は大分やつれており、疲労の色が濃い。

そして私を見た途端、糸が切れたように倒れ込んだので滑り込んで抱き止める。

 

そして脇と足に腕を通して抱き上げる。

女の子が女の子をお姫様だっこするという特定の紳士諸君には大変美味しいシチュエーション。

良いだろう?

 

 

艦橋から出て、アメストリアの船体に飛び移る。

 

「リバンデヒ、赤城を曳航してくれ。大型艦ドックに入れる。地下の修理ドック1番だ」

「了解よ。でも坐礁しているし大破判定ね。曳行は厳しいわ」

 

...赤城位ならうちの妖精さんが直ぐに直すだろう。

曳行が無理となると手段が限られる。どこぞの三流国家のように非効率的な引き上げ方法は取りたく無いので、工廠妖精さんを派遣して現地で簡易修理。その後に馬力の高い艦娘に引っ張ってもらうしかないか。

取り敢えずは先に赤城を医務室に運び込み、妖精さんに預ける。

 

そして第一艦橋に転移する。

 

「提督、報告する。パラオ鎮守府に坐礁していたのは赤城と判明。大破判定だが、工廠妖精さんを派遣して簡易修理後暇してる艦娘に頼んで曳行。その後は工廠にて本格的な修理をする予定だ、」

『そう...艦娘は?』

「疲労が濃く、脱水状態でもあった為現在医務室で処置中だ。」

 

大破の傷もあるしな。

 

 

さて...どこの所属か不明の保護した赤城だが、医務室に寝かせ、栄養剤を点滴で入れる始末だ。

まぁ、大体分かっている。

あの人間に対する恐怖から見て、トラック泊地のあの豚の艦娘だろう。

 

少し失礼だったが、一度弓道着を脱がせ、入渠させた。

勿論アメストリアの船内にあるとこだ。以前高雄らが入渠した艦内浴室だ。

()()()()()()()()()()()()からだ。お陰で身体には大量の包帯が巻かれており、幾つもの傷があった。

入渠さえろくに出来なかったのだろう。大破してもあのバスクリンをぶっかけられたのだろう。

 

「妖精さん。赤城の修理に粒子エンジンを搭載してくれ。あと、あの重金庫の設計図を解禁。

まだ使わないが、改修をする際に使え」

''了解ですっ!''

妖精さんは走ってドックに行った。.......改ニになりましたとか止めてね?

 

赤城の弓道着は洗うとして、院内服に着替えさせた。うん。すごい身体でした。以上。

私は廊下へ出、ドアの横に立ち休めの体勢で立ち続ける。

 

さてさて二時間経ったのだが、

一向に起きない。疲れた...やる事ないし、アメストリアの船内だし、既に鎮守府には到着しているし。

 

「カイクル」

『何だ?』

「少し交代してくれ」

『...了解した』

 

一種の罰ゲームである。何の変化もなくてもずっと一定の体勢を取り続けるのは斥候の得意分野だが、残念ながら私は海のモノノフ。じっとするのは性に合わない。

 

 

 

 

 

 

『.....!......ん!.........姉さん!』

「何だ.....ふぅ...」

『赤城殿が意識を取り戻した様だ。足止めはしておく。提督を...』

「いや、私が連れて行く。」

『了解した』

 

すぐに巫女装束を整え、私室から出て走る。

 

「姉さん、赤城殿にはこちらから説明はしておいた。やはりあの豚だ」

「そうか...赤城、で良かったか?」

「はい......」

「まず貴官の弓道着は現在修理している。なので申し訳ないが、私達の巫女服を貸す。そして貴官は必ず我々が守ると誓おう。これだけは安心して欲しい」

「ありがとうございます...」

 

巫女服に着替えてもらい...対して変わらんな。精々が袴の長さが長くなった程度で、特に変化はない。

巫女服だから意匠があまり変わらないのは分かるが、艦娘の場合不思議巫女服が横行している中、正統派の巫女服要員は少ないのだ。FUSOとか山城はまんまだが、他の艦娘は裾が独立していたり水兵服と融合していたりと実にカオスだ。空母艦娘で正統派巫女服なのは赤城、加賀ぐらいではなかろうか。後はよく分からない不思議制服だったり商船迷彩があったりと凄い進化を遂げている。

ズイ₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾ズイの姉は変化ないがな。

 

 

「何故銃を持っているのですか?」

「一応護身用にな。私達姉妹は自衛...憲兵のような役割も持っている」

「へぇ...そうなんですか...」

 

この鎮守府、驚く事に憲兵隊が居ないのである。

調べてみたらここだけ。確かに赴任当初は電しか居なかったから憲兵隊の必要性がなかったのだろうが、今は結構いるのだし、監視の意味で犬を入れてくるかと予想したのだが、意外な事に来なかった。

一機二式大艇が来て居たが、()()()()()で他鎮守府近海に緊急着水したしな。

あぁ不思議だなー(棒)

 

 

「あぁ。大本営との少し殺りあったからな...ここだ。一応私は後ろについておく。ここの提督は当たりだ。安心して話して欲しい」

「分かりました」

「カイクル、もう大丈夫だ。念のためにリバンデヒとドックにて待機」

「了解」

 

カイクルが転移するのを見届け、執務室の扉をノックする。

 

「提督、赤城をお連れした。」

「入って。」

 

扉を開けると、執務机に積み重なったこんもりとした白い山。

また増えたのではなかろうか。なんとも程度の低い軍人共だ。男の嫉妬とかキモいから一刻も早く黄泉にお帰りいただきたいのだが。

 

「さて、君はあのb......失礼。大崎司令官の所属だった...確か合同演習の時に居たね」

「びぃ...?はい。あの時はよく覚えています。」

「良かった...生きていたね...」

「はい?」

「いやね、今回君のいた鎮守府に襲...摘発を行う事を大本営から許可して貰ってね」

 

それが殴り込みでだがな...痛かった。

今でも思い出すと痛くなる。古傷が痛むっていうやつだ。

 

人間というのは思い込みで痣や火傷、死んだりするが、あれは脳の誤信号だ。地味に脅威だが、艦娘にもある。船体とダメージを共有していることもあってか、ズキズキと刺すような痛みや、破損箇所によっては腕や足が動かなくなる時もある。修理が雑だったりすると痛みは引かないし、完治しても痛みが消えなかったりする。

 

「大将殿から''好きにしろ''って言われているんだ。君はどうしたいかな?別に返してもいいし、ここに迎えても良いんだけど」

 

露骨に勧誘したぞ...しかし改修を既にやっているなら返すにも返せない状態にならないだろうか?

別にす途中で沈めろって言ったら提督を沈めるし。

 

「.......少し考えさせて下さい」

「まぁ、すぐにとは言わないからゆっくり考えてね。」

「提督、正規空母寮に案内しておく。『カイクル、待機止め。戻ってくれ』」

 

と言うことで赤城を正規空母寮に案内しているのだが、凄く考えている。

変な方向に曲がらなければいいが...あ、其処は柱だ...

 

 

 

 

「赤城、ここだ。時間はいくらでも、とは言わないが、あるから十分考えてくれ。」

「分かりました......あの...」

「何だ?」

「アメストリアさんは、どうしてここに?」

「さんはつけなくていいぞ。私は目覚めた途端から深海棲艦の攻撃を受けていてな。大破してここに座礁して、赤城と同じ位置だったな...そしてここの提督に保護されて居候させて貰っているのさ」

「......私も安心して暮らせますか?」

「あぁ。断言する。私の船体にある技術を流して要望があれば改修するし、戦いたくないならそれで良い。此処の提督は優しいからな今までの暴力や理不尽な仕打ちは無いし、劣悪な関係も無い。」

「そ.......う...です.....よ、ね...」

「あぁ。もう大丈夫だ。絶対に安全だし、綺麗で優しい所だ」

 

こういう時の言葉足らずにイライラするなぁ...ここまで、精神までボロボロの赤城に対してこんな事しか掛けることができ無い。赤城を抱き寄せる。そろそろ限界だろう。ゆっくりと休ませねば。

 

「どうだったのだ?姉さん?」

「まぁ、大丈夫だろう。ここに入るだろう。私に依存しなければ良いが...」

「む......それは問題だな」

 

何故に...?

 

「私が姉さんを独占できない」

 

スパーン!と乾いた音が響いたのは言うまでもない。

 


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