IS~インフィニット・ストラトス~ ―I AM…ALL OF ME…―   作:ヱ子駈 ヒウ

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第35話「君が掴んだ夢」

 どれほど美しく景色を染め上げようと、シャルロットは夕暮れという景色が嫌いだった。

 公言するほど毛嫌いしているわけでもないが、鮮やかなその朱色は、もうすぐ何もかもを飲み込んでいく、孤独な孤独な夜へと移ろう警告色であるのだから――

 

「……………」

 

 やはり、手放して好きになれそうもない。

 

「それでもいいよね……母さん」

 

 掌に乗せたメダイユへと、そっと呟く。

 シルバーメタルの聖母様は、自分へと柔らかで慈愛に満ちた笑みを向けてくれていて、そんな姿が思い出にしかもう居ない母と重なった瞬間から、自然とこのようにメダイユに話しかけるのは、シャルの日課の一つになっていた。

 ベランダへと吹くそよ風が、まるで愛娘を愛でるように、少女の髪と、少しだけジャージからはだけさせた胸元を撫でる。

 

「今日はね、学校は休みだったから、手紙を書いてたんだ」

 

 宛先は、遥か遠く――それでもまだ、母よりは近い場所に居て、しかし誰よりも遠くに居るように思う、

 

「うん……父さんに宛てて」

 

 もう一人の、肉親へと。

 

「いつも送ってる社への報告レポートじゃ、読んでもらえないかもしれないから、直筆で出そうかなって思って……書いてみたんだ、私なりに」

 

 実父へ送るというのに、浮かれた様子など微塵もなく、ただ不安げにシャルは続ける。

 

「読んで貰えるとは、私も思ってないけどね……でも」

 

 それでも、手紙を送ろうとシャルが決意したのは、この学園で出会った朴月姫燐という友達の一声と――優しい家族に囲まれた彼女への、羨望。

 

「父さんも……私が幸せだったら、嬉しいのかなって……ちょっと、思って」

 

 どれだけ離れていても、家族が笑って暮らしていることは、とても嬉しいこと――それは、父にとっても同じなのだろうか?

 産まれてから一度も顔を合わせず、妻である母さんの死に際も看取らず、自分に望んでいないものを押し付けるだけ押し付けて、この学園へと放り込んだ父にとっても同じなのだろうか。

 望む答えが返ってこずとも、求める権利ぐらいはあってもいいはずだ。

 自分たちが――血のつながった、親子であるならば。

 

「こうして考えると、ほんと酷いよね父さんって。なんで母さんは、こんな父さんのことを好きになったの?」

 

 からかうように、シャルはクスクスと鼻を鳴らす。

 反して、どこか決意を秘めたような強さも、胸に宿しながら。

 

「……うん、私も実はね、あの手紙にも書いたんだ」

 

 シャルが手紙に書いたのは、社に送るレポートとは全く関係のない、他愛ない学園生活や、そこそこできた友達のこと、日本のことや一夏が作ってくれた食べ物のこと、それから――

 

「なんで父さんは、母さんを好きになったの……って」

 

 自分で口にしときながら、なにいい年にもなって幼子のようなことを抜かしているんだと自嘲してしまうが、

 

「じゃあね、そろそろ頑張ってみるよ」

 

現実問題としても、シャルは今、割と早急に知りたかったのだ。

 現在進行形で、後ろを振り向けば待ち受けている、

 

「ぬおおおおおおおおおおおお…………俺は……俺はぁぁぁ……」

「一夏、もういいー?」

「い、いやいや待ってくれ!? 俺とキリはライブよりプラスなラブなんだ!」

 

 この、ベッドに籠りながら、男と女の恋愛感情に真正面から迷走している友人へと贈るボキャブラリーを、少しでも増やすためにも。

 シャルはメダイユをポケットにしまい、気を入れなおすようにジャージのジッパーを引き上げた。

 

 

                     ●〇●

 

 

 今日は楯無さんとトレーニングに出かけると言って、夕方に帰ってきた矢先、実は空には天空に浮かぶ城があるのだと知った時のような、愕然とした形相を浮かべ、一夏はこう呟いてきた。

 

――俺……キリのことが好き……なのかもしれない……。

 

 うん、知ってる。と、シャルが反射的にぶった切り掛けた言葉を飲み込み、えぇーそうだったんだーびっくりーと心が一ミリも籠っていない反応をしても、まるで気付かないまま一夏は項垂れ、

 

――で、でも……や、やっぱ違うかも……。別に俺、アイツを護りたいって思ってるだけで……女の子として好きって訳じゃ……。

 

 は? と思わずキャラ崩壊寸前の真顔でキレそうになってしまったシャルの反応に、肝と一緒に頭も冷えたのか、

 

――ちょ、ちょっとだけ一人にしてくれないか!? 相談したいこと纏めるから!

 

 と、頼み込まれ、シャルも丁度よかったため、自分の日課のためにベランダに出たのが十分前。

 そして帰ってきた答えは、先ほどの通り。

 

「えーっと……全く意見は纏まってなくて、ライブとかプラスとか、よく分からない方向に突き進んでるのしか分からないんだけど?」

「だ、だって、そうだろ……? そもそも、俺は……アイツの協力者なんだぞ」

 

 姫燐からも直接聞いたように、確かに一夏と姫燐は互いの夢を叶えるために支えあう『協力者』の関係であることはシャルも知っている。

 

「俺はアイツのために強くなるって誓ったし、キリは素敵な恋人が欲しいって言ったんだ……なのに、俺がキリのことを好きになるって……おかしいだろ!?」

「えっ」

 

 真剣に何がおかしいのか分からず、疑問符しか浮かばないシャルに、一夏はいつもとは別ベクトルに空回る思考で結論を出す。

 

「だって……キリが好きなのは女の子なんだぞ……? 男の俺がこここ恋人になったところで意味ないし、そもそも好きになっても……それこそ無意味だろ!?」

「てことは、一夏にとって姫燐は、好きになっても意味が無い程度の子なんだね」

「そんなわけないだろ!? 馬鹿いうなシャル!」

 

 うっわー、バカに馬鹿って言われたーと、意地の悪い返しをしたせいだとはいえ、若干カチンと来てるシャルのことなど気にも留めず、一夏は指折り数えてまくし立てる。

 

「だってキリは、いつも元気だろ? めちゃくちゃ強いだろ? それで優しいだろ? いっつも誰かのことを気にかけてるだろ? でもちょっと傷つきやすいだろ? 最近は特に大変なのに、みんなに心配かけたくないからって気丈にふるまってるだろ? こんなにも頑張ってる子を好きになっても……好きに……なった……?」

「どう? 納得できた?」

 

 今日は特にアップダウンが激しい一夏に、辛抱強くシャルは尋ねるが、

 

「い、いや、やっぱり違うかも……だって俺、千冬姉も好きだし……」

「あーもー、めんどくさいなぁ」

 

 そろそろ本格的に張っ倒してやりたい衝動が混ざってくる。

 

「なら聞くけど、一夏は織斑先生と恋人になりたい?」

「そうは、別に思わないけど……姉弟だし」

「じゃあ姫燐とは?」

「い……いやいやいや! それとこれとは違うだろ!?」

「ほら、違うじゃん。織斑先生への好きと全然違う」

 

 ぐぬぬと、先ほどから口にしたことすべてを完全論破されて、色んな意味で茹ダコになってまた頭を抱えだした一夏とは別に、シャルもシャルで頭を抱えたい衝動に駆られていた。

 どうしてこう、決まり切っている結論を、しょうもない理屈で遠ざけようとするのか。

 

「大体、なんでそんなに必死になって、否定しようとするの? 嫌じゃないんでしょ?」

「嫌とか否定とか……そうじゃない、そうじゃなくて……」

「そうじゃないなら、どういうことなの?」

 

 いい加減はっきりしろと、ジト目気味に詰問されても一夏の中に渦巻いているのは、

 

「分からない……本当に分からないんだ」

 

 あの茂みに隠れていた少女に指摘された瞬間から、この一言だけであった。

 

「胸がじんじんするし、頭はまともに回らないし、今までこんなこと一度もなかったんだ。こんなの……初めてなんだよ」

 

 これが女の子を、男として好きになるということなのか。

 織斑一夏が、どれだけ奇跡的で致命的な唐変木であろうとも、男と女は恋をして、愛し愛され、結ばれて、子孫を存続させていく存在であることぐらいは当然知っていた。

 しかし、祝福されてしかるべきこの現象に、一夏は困惑以外の感情を見出せない。

 

「そっか……じゃあ、一回ハッキリと『好き』って口にしてみたら?」

「え……?」

 

 彼の苦悩が本物だと悟ったシャルは、今までとは対照的に、自らをゆっくり見つめなおすよう、一夏を優しく諭し始めた。

 

「お母さんが昔、私に教えてくれた方法なんだ。迷った時とか、悩んだ時は、そういうのをいったん全部取り除いて、ハッキリと口に出してみるんだ」

「全部……取り除いて……」

「そう。それで、口に出してみたとき……そこに違和感を感じなかったら、きっとそれがその人にとって、間違いなく正解なんだって」

 

 友の頼もしい助言を受けて、揺れ動き、浮つき続けていた心が、ようやく落ち着きを取り戻し始めていた。

 

「分かった……やってみる、シャル」

 

 腰を下ろしていたベッドから立ち上がり、箒から借りて来ている木刀をクローゼットから取り出し、青眼に構えた。

 無論、振るいはしない。刀を構えたまま不動を保つことこそが、織斑一夏を最も効率よく研ぎ澄ますセットアップなのだ。シャルも察して口を閉ざし、神妙に彼を見守る。

丹田に力を込め、呼吸を清まし、刀身に心胆を乗せる。

 一刀に総てを落とし込むプロセスは、一夏を容易く一種のトランス状態へと導いていく。

 

――キリ……朴月、姫燐。

 

 浅く閉じた瞼の裏に、太陽のような笑顔を浮かべる女の子の姿が浮かび上がる。

 出会ってからの約三ヵ月、共に夢を追いかけ続けた日々が走馬灯のように駆け抜けていく。

 ただ彼女だけを想い――今だけは護りたいと思う夢すら、振り払う。

 あとに残るのは、胸の中の彼女と、無我の自分。

 完全に研ぎ澄まされたと、我ではない何かが確信し――振るう代わりに、カッ、と瞳を見開き、言霊を放つ。

 

「俺は……キリが……キリのことが……!」

「あ? オレがどうしたんだよ一夏?」

 

 瞬間……ずいっと、横から覗き込むように、思い浮かべていたビジョンが実像となって、一夏に語り掛けてきた。

 

「つか、何やってんだお前ら? 部屋で木刀なんぞ構えて」

「う、うぇぇぇ!? ほほほ朴月さん!?」

 

 続いて飛び交う、シャルの驚愕交じりの悲鳴。

 当然、二人して見えているものは、幻覚でも妄想でもなく、

 

「よっ、シャルル。ノックしても返事が無かったから勝手に邪魔してるぜ?」

 

 よく見知った、能天気な挨拶をする本人以外の何物でもなかった。

 

「えっ、そうだったんだごめ……どうしたのその恰好ッ!?」

「おふふっ、気付いたか? 気付いたろ?」

 

 しかけたイタズラに、最高の反応をしてくれた時のような、小憎らしい笑みを浮かべて、気取ったようなポーズをとった。

 

「ばばば、バニースーツ!? 朴月さん、どうしたのそんな服!?」

「ザッツライト! どうよ、似合うだろー?」

 

 欲情的な紺のレオタードに、健康的な太ももにしっかりと絡みついた網タイツ。ポップなうさ耳や尻尾と、そこにシックな燕尾のついたベストを纏った、今すぐにでもカジノ辺りで看板を張れそうな、完璧なバニースタイル。

 アダルティックで抜群のプロポーションを惜しげもなく露わにしながらも、いつも通りの堂々としながらも飄々とした姿勢を崩さないスタイリッシュな姫燐の姿は、同性であるシャルをしても、正直ドキッとさせるものがあった。

 そんなシャルを非常に満足気な様子で見やりながらも、背で二回ほど、背後の誰かを呼ぶように姫燐は手を鳴らす。

 

「ほれ、お前らもさっさと入って来いよ。廊下にいつまでも居ると、他の連中にも見られるぞ?」

「う、うむ……ぅ、ま、待て! やはりまだ機というか覚悟が……」

「あ、アンタねぇ……ええい、どうにでもなれ! 行くわよ箒!」

 

 と、二人で渡れば怖くない理論で、鈴は箒の手を強引に引っ張り、室内に突入した。

 

「し、篠ノ之さんまで!? それと確か……中国の代表候補の子も!?」

「や……夜分遅くに失礼する、デュノア……」

「鈴よ、凰鈴音。格好についてはそういう趣味趣向じゃなくて、そこでキモい笑い方してる奴のせいだって先に断言しとくから」

「おっふふふ、アーイイ……遥かにイイ」

 

 まだ羞恥が抜けきっておらず、ガッツリ開いた胸元から色々とこぼれ落ちるのを防ぐよう猫背気味になってモジモジと目をそらす箒と、もう半分以上開き直っていて、小ぶりながらも無駄が一切ない引き締まったボディラインを、惜しげもなく披露する鈴。

 姫燐も含め、全員同様のバニースーツながら、三者三様と断言できるまったく別々の魅力を醸し出しており、シャルも思わず感嘆してしまうほどであった。

 

「これ、朴月さんがみんなの分用意したの? こんなスーツ、結構高いんじゃ」

「大丈夫大丈夫。まだまだあるのに、親父がテストパイロット代ってまた小遣いくれてな。思わず奮発しちまった」

「……オイこら。てことはアンタ、自分のだけちょっと格好いいデザインしてるのワザとね? わざとアタシ達の分には、そのジャケット付けなかったわね?」

 

 んーふー♪ と、少しだけ胸元を隠すようなジャケットの燕尾を揺らしながらも、まさにウサギのようにぴょんぴょんと軽くステップしながら、木刀を構えて固まったままであるメインターゲットへと姫燐は近づく。

 

「よー、いーちかくーん?」

 

 完全に肉食獣のソレな笑みを浮かべ、恰好だけの草食獣は高慢で豊満な自覚を隠そうともしない前かがみで顔を覗き込む。

 

「どーよコレ? お前に見せるためだけに買って来たんだぜぇ? コメントの一つぐらいお姉さん欲しいんだけどよーなー?」

 

 しかし、男のリビドーを全力で挑発するような仕草を網膜へ焼きつけさせても、口をキュッと結んだまま、無言の剣士は不動。湖水のように澄んだ空気を崩さなかった。

 

「……お、おい、一夏? 起きてるよな? 反応ぐらい返せって、おい」

「この何事にも揺らがぬ境地……まさか、明鏡止水だとでも?」

「知っているのか、箒!」

「ああ……無の境地とも同一視されることもある、悟りの一種でな。明鏡とは曇りなき心を意味し、止水とは揺れ動くことのない五体のことを指す。どのような窮地に陥ろうとも、決して淀むことなく剣を振るうことができると言い伝えられる、武の極致だ」

「お、おお……割とよく分かんねぇけど、とりあえずかっけぇな!」

「男子三日会わねば刮目せよと言うが、一夏め。いつの間にか、ここまでの領域へとたどり着いていたとは。流石だ……」

 

 と、なんだか別の漫画のようなノリで目を輝かせる二人とは対照的に、

 

「…………ねぇ、あれ……気絶してんじゃないの、一夏の奴」

「うん……多分、びっくりしすぎて」

 

 リアリストな女子二人は、彼女たちの夢と一夏の名誉を傷つけないよう、互いに小声で事実を確認しあったのだった。

 

 

                      ●〇●

 

 

「『美少女にはバニースーツを着せよ』。実は日本には、古来からこんなことわざがあってな、シャルル」

「そ、そうなの……?」

「はいそこ、ちょっと信じかけない」

「う、うむ。大丈夫だ私も信じかけていないぞ、うむ」

「そこは頼むから、日本人として目を泳がせないで言い切って欲しかったわね」

 

 女三人寄れば姦しいとは故事に言うが、実は女が四人囲んでいるちゃぶ台は、実に華やかに会話の花が咲き誇っていた。

 

「いやいや、もし嘘だとしても、やっぱりバニースーツは着せるべきなんだって絶対」

 

 内容は乙女チックとはかけ離れ、実におっさん臭く下世話ではあったが。

 発端は、やはりというか当然というか、今も彼女たちが身に纏っているコスチュームについてシャルが尋ねたことであった。

 

「シレっと嘘だって認めてまでアホな主張通そうとしてんじゃないわよ」

「ぼ、僕もそこまで拘る部分じゃないと思うけどなぁ……確かに似合ってるけど」

 

 中国代表候補とフランス代表候補の反応は、実に真っ当で渋いモノであったが、

 

「いや……しかし、姫燐の意見にも一理あるのかもしれん」

「おっ、ほら見ろ! 箒はオレの味方だぞ!」

「はぁ!? アンタ正気!?」

 

 日本で生まれ育った箒がここで、姫燐の意見を支持するように挙手する。

 

「このような恰好……ま、まぁ正直、サイズは少々小さいし、デザインは破廉恥だとは思うが……姫燐が用意してくれなかったら、一生着ることなど無かっただろうからな」

 

 それは、箒の中で確かに芽生えつつある、新たな価値観であった。

 この世は、まだまだ自分の知らないことで満ち満ちている。

 今までは興味すら、気付きすらしなかった未知の数々は、一度臆病な手を引かれて触れてみれば、あまりにも極彩で、大きくて、温かくて――見識を深めるこの過程は、いつも、たった今この瞬間も、豊かな何かを箒の胸にもたらし続けてくれている。

 だから――箒は最近、常々こう思うのだ。

 

「こういうのも、一度ぐらいなら悪くないだろう?」

 

 彼女が掴んだ、新しいライフスタイル。

 それを教えてくれた張本人と同じぐらい、箒は今の自分を気に入り始めていた。

 

「箒……お姉さんは嬉しい! よくここまで成長したなぁ!」

「お、大袈裟だぞ姫燐。この程度、いわば心境の変化という奴だ」

 

 自分が変わろうと思えた切っ掛けに、屈託のない笑顔で抱き着かれ、気恥ずかしさから、思わず、戒めようとしている素直じゃない性分が顔を出してしまう。

 

「そうだよ、そういうチャレンジ精神が人生とオレには大切なんだよ! な、実はな? まだまだお前に似合いそうなコスチュームが一杯あってな? 今度ええやろ? 一度だけ、一度だけだからさ!」

「む、むぅ……? わ、分かった、お前がそこまで勧めるなら……」

「言ってることは否定しないし、別に止めはしないけど、ソイツの言うこと何でもかんでも鵜呑みにするのだけはそろそろやめときなさいよ、箒」

「とか言いつつ、お前も着てくれたくせに」

「ええそうよ悪い!? 私もどーせ一夏をダシにされたらチョロイわよ! 出し抜かれると思ったらジッとしてられないわよ! 文句ある!?」

「あははっ、三人とも本当に仲がいいんだね」

 

 逆ギレした鈴が、純情武士子へのセクハラに勤しんでいた姫燐のベストに掴みかかり、三人団子になったようなバニー集団は、どことなくシュールでありながらも確かな絆を傍目からも感じさせる。

 

「べっつに! アタシにとって、こいつらはライバル! それ以上でもそれ以下でもないわ!」

「安心しろ、オレにとってもお前は貴重なちっぱい担当。それ以上でもそれ以下でも、ってこれよりダウンしちまったら本格的に乳じゃなくて板かプププぷブォ!!?」

 

 持たざる者特有の怨恨が籠った右ストレートが直撃し、ダウンした姫燐を一端他所に、嘘だとわかった以上はどういうことなのかと、空いている箒へとシャルは向き直り尋ねると、

 

「む、むぅ……じ、実はだな……い、一夏が……男と男で……お前とだな」

「んんっ、僕? 一夏?」

 

 箒も改まって意識してしまうと、どれだけ前向きに捉えようが今の自分の露出多可すぎる恰好には、やはりどうかと思う部分が強いようで紅潮して縮こまってしまうが、

 

「んー。ああ、なるほど。大体わかったよ」

 

 不器用の通訳に定評があるシャルは、概ね事態を理解して、

 

(一夏に見せに来たんだよね、その衣装)

「ふひゃい!?」

 

 いきなり距離を詰められ耳元でささやかれた上に、意図の一端を的確に撃ち抜かれ、箒の白い肩が跳ね上がった。

 

「うん、とっても着こなせてると思うよ。篠ノ之さん、朴月さんにも負けてないぐらいすごくスタイル良くて普段からしっかりしてるから、間違いなく僕より似合いそうだし」

「そ、そうか……?」

「そうだよ、そう思うよねー」

 

 と、シャルは首をベッドの方へと向けると、

 

「一夏?」

「ふぉうっ!?」

 

 膨らんでいた布団が、電気ショックでも浴びたかのように跳ね上がった。

 

「おっ、起きていたのか一夏!?」

「あ、ああ! いま、ちょうどいま起きたんだよ! ハハハ……」

「うん、そういう事にしとくよ」

 

 実際は、先ほどからピクピクと――特に姫燐が喋るたびに――布団が蠢いていたため、シャルからすれば面白いぐらいに丸分かりであったのだが、息子を見守る母のような面持ちで口を閉ざす。

 

「悪い悪い、いま起きるか……」

「んぁ、起きたのか一夏」

「らヴぃ!!?」

 

 と、起こしかけた体を急速反転させ、再び精神的安全地帯への避難を決行する異様な姿に、バニーガールたちは小首を傾げざる得なかった。

 

「ねぇ、ほんとどうしたのよ一夏。流石に変よ、今日のアンタ」

「ほ、本当に熱でもあるのか……?」

 

 うん、恋って微熱にうなされてるのは間違いないねと、乾いた笑みを浮かべるシャルだが、

 

「ふふふん……? これはこれは、そういうアレかぁ……?」

 

 もう一人、天使とは真反対の邪悪スマイルを浮かべて布団をめがけて唸っている女が一人。今からロクでもないことをしますよと口元で宣誓する、朴月姫燐その人である。

 

「うっしっし♪」

「き、姫燐?」

 

 ひとしきり唸り終わった姫燐は、意気揚々と立ち上がると、一夏のベッドの横に立つ。

 

「一夏ぁ? どうしたんだよさっきからお前さぁ?」

「き……キリ……」

「今日は……来たらマズかったか?」

 

 台詞はしっとりとして感傷的だが、ミリも隠そうとしない卑しさ全開のニヤつきがもう色々と台無しである。

 しかし、顔が見えていないというか、見れない一夏にとっては、また自分の迂闊さが彼女を傷つけてしまったのかと、不必要なまでに深刻に受け止めてしまい、

 

「違う! そういうことじゃ……嬉しい! キリが俺に会いに来てくれて、嬉しいのは嬉しいんだ! とても!」

 

 結構な口の滑りっぷりを披露してしまうが、割と一夏のことを笑えない鈍感っぷりでこれを華麗にスルーすると、

 

「ふーん? なのに顔は見せてくれなくて、茶の一つも出さねぇで布団に籠るってのか?」

「うぐ……そ、それは……悪い」

 

 またまた意地の悪い質問で、一夏を追い詰めていく。

 

「それに、だ。お前、自分がやってることの意味が分かってんのかぁ?」

「お、俺がしてることの意味って……」

 

 いまお前の顔を見ると、爆音で鼓動する心臓が本当に壊れてしまいそうだからと、正直に一夏が告白するよりも先んじて、

 

「女がやってきてるってのに、男がベッドから動かないって事の意味だよ、意味」

「……へっ?」

「つまり、今お前はなぁ……」

 

 彼女が言う意味がまるで分からず、疑問符が突き刺さった胴体に、

 

「このオレを、ベッドに誘ってるってこったぁぁ!!!」

「おぶぉ!!?」

 

 渾身のバニーフライングボディプレスが炸裂した。

 

「オラオラァ! 固くなってるぜぇ一夏ァ!」

「むごっ、むごぉーーーー!!?」

 

 そのままシーツごと包むようにガッチリと、それでいて柔らかな肢体で抱きしめられ、声にならないくぐもった悲鳴が内側から鳴り渡る。

 

「ほれほれ、逃げ場なんてねぇぞぉ?」

 

 もはや半分パニックになりながらも、怪我だけは絶対にさせないように加減を心得て抵抗する一夏であったが、マウントを取られ、しかも手足でガッチリとシーツ上から拘束されてしまった現状から脱出するにはあまりにも半端で力不足。

 結果、殆どなすがままに、姫燐のワガママボディを堪能させられてしまう。

 

――間違いねぇ!

 

 顔を見せた瞬間気絶。起きてるのに顔を出さない。意地でもオレを直視しようとしない。

 どれもが、今まで付き合ってきた一夏のパターンから逸脱している今日の現状に、姫燐はある答えを確信しつつあった。

 

――こいつは……こいつ絶対に……!

 

 織斑一夏は、間違いなく、この朴月姫燐が――

 

 

――バニー萌えだなッ!!!

 

 

 ……着ているバニースーツ大好き人間なんだなと、救いようがなく勘違いしていた……。

 

(いやー、分かる、超わかるマン。自分でも結構エロカッコよくキマったって思ったしなぁ♪)

 

 いつもはこんな女体パラダイスで涼しい顔をしているアイツが、ここまで取り乱しているのだから、自分は間違いなく萌えの急所をぶち抜いたのだろうと、姫燐は残念なことに疑問すら抱く余地無く信じ切っていた。

 本当に効果が抜群なのはバニースーツではなく、自分自身である可能性など微塵も考えておらず、色んな意味でノーガードなセクハラを続けていく姫燐。

 胸を押し付け、手を這わせ、足を絡ませ、

 

(……やっぱ鍛えてんだなぁ、これ本気で抵抗されたら振りほどかれちまうかも)

 

 以前、抱き着いた時とは比べ物にならないぐらいガッシリとしてきた肉体に感嘆しながらも、それはそれとして性的ハラスメントは一切緩めないが。

 しかし当人としてはホモチェック半分、イタズラ半分でやっていることであっても、被害者からしてみればたまったものではない。

 

(近い柔らかい暖かい匂い甘い声が近い圧が凄い息が近いィ!!!)

 

 シーツ越しに姫燐という存在すべてを味あわされている現状は、今現在の一夏にとって、控えめに言っても生殺しの拷問であった。

 意識がショートしかけるほどのスパークが全身を突き抜けていき、完全にフリーズした体は、異様にやかましい心臓以外まるで動かせないまま縮こまる。

 もはやされるがままで、なすがまま。どこまで行くのか被害者は無論、加害者も割と考えていない不健全的一方通行同伴は、

 

「な、なにやってんのよ姫燐んんんんんッ!!?」

 

 外部からの接触により、さらに混迷を極めようとしていた。

 大胆かつ不適で、不潔なプロレスごっこを急に始めた姫燐の背中に、マジギレ気味な中華的検閲は引きはがすよう腕を伸ばすが、

 

「んんっ? そうだ良いこと思い付いた」

 

 と、無駄に発達した反射神経で掴み取られてしまい、

 

「ほい、もう一名追加入りまーす」

「なっ、ふぎゃ!?」

 

 そのまま力尽くで引き寄せて抱き込まれ、軽々と鈴は、一夏と姫燐の間にサンドイッチされてしまった。

 

「あ、わわわわわわわ……!!?」

 

 ミイラ取りのミイラにされてしまい、今度は鈴が一夏と同じ目に合う番であった。

 好きな男と、シーツ一枚と薄くピッチリとしたバニースーツ程度の薄着で、ベッドのうえ寄り添いあう。

 間違いなく、鈴にとっての歴代レコードを、大幅に更新する距離感の近さ。

 

(ほれほれ、こんな機会滅多にないんだし、今のうちに堪能しとけって、な?)

 

 余計な老婆心をひけらかし、後ろからは当て付けのようにあれこれ大きいウサギがこちらを圧迫してくるが、後ろがパックリ開いたバニースーツだと、その感触を地肌で受けることになり、それがまた妙に背徳的で鈴のあれこれをチリチリと炙っていく。

 

――あ……これ、ヤバい奴だ……。

 

 と、鈴の危ないスイッチが入りかけてても、一夏は銅像であり、姫燐は鈍感、残り二人も現状についていけずオロオロしているだけとくれば、もう爆発するしかねぇと未来は収束した……、

 

「はっはっは、そう照れんなよ。お姉さん、女は肉食系でナンボだと思うぜぇ?」

「そうかしら? お姉さん、女の子には慎みも必要だと思うわぁ」

 

 かに、思えた。

 

「と、く、に、破廉恥な服装で、男の子も女の子も困らせちゃうような小悪魔な妹ちゃんには、ね」

「え、げぇっ!? かたねぎゃぁぁぁぁぁぁ!!?」

「楯無さん!?」

 

 本日二人目の不法侵入者は、自分より体格がいいように見える姫燐を軽々とベッドから引き離すと、即座に隣のシャルが使っているベッドへ、共になだれ込んだ。

 

「はーい、お説教にお仕置きの時間よぉヒメちゃん。なんでかは、分かるわよねぇ?」

「や、やめっ、そこに指入れんなぁぁっ!」

 

 今日はガチだと言わんばかりに、いつも張り付けている茶目っ気たっぷりの笑みではなく、反省を促すような呆れ顔で、バニースーツの谷間に指を滑り込ませていく楯無。

 

「もう、こんな露出ばっかりの節操ない格好でベタベタと引っ付いて……あんまり一夏くんを困らせちゃダメじゃないの」

「……自分はそういうの大好きな癖にゃぁぁぁ!!?」

 

 割と都合の悪い反論を、右腕ごと姫燐の谷間に埋め込んでいく。

 

「私はいいの。更識当主であり、生徒会長であり、ロシアの代表操縦者。そしてなにより、お姉さんだからセーフなの」

「うっわズりぃー……」

 

 お姉さん万能論に白い眼を送りながらも、正座を言い渡されしぶしぶと従う姫燐。

 楯無も対面に正座して扇子を開く。文字はまさしくこれから行う『説教』の二文字であった。

 

「まず最初になんだけれど、別にお姉さん怒ってるわけじゃないのよ?」

「それ怒ってるやつの常套句だよな」

「無論、これからのヒメちゃんの態度次第だけれど」

 

 目にも止まらぬ早業で頬をつねり、「ふぁい」と素直な返事を引きずり出して続ける。

 

「お姉さんはね、ヒメちゃんのことがとってもとっても心配なの」

「はぁ」

「ヒメちゃんってば、昔から行動力に溢れてて、元気いっぱいでとっても可愛らしいけれど、同じくらい何をするのか分からないし、危なっかしいし、ちょっと天然さんだし……」

「いやいやいや……昔は仮にそうだったとしても今のオレは前とは」

「ふむ、正鵠を得た見解だな」

「さすがお姉さんだね、朴月さんをよく見てる」

「お前らッ!!?」

 

 この学園からの付き合いにも色々と酷い見られ方をしていて、少なからずショックを受けながらも今回は素直にはい、はいと言い切れない理由がある。

 面白半分なのは否定しないが、これのもう半分は重要な検証でもあるからだ。

 

「でも、かた姉。オレだってなんも考え無しでこんなことしてる訳じゃ」

「でもじゃありません。まずは一夏くんと鈴ちゃんにごめんなさいでしょう?」

 

 なのに、こうも真っ向から頭ごなしに否定されれば、相手がかた姉であっても――いや、相手のことを誰よりも認めているからこそ、認めてもらえない事には、どうにもカチンとくる物があった。

 

「ふん……べっつにー、アイツら喜んでたと思うけどな、オレは」

「ヒメちゃん!」

「確かに、オレはアンタにとっちゃ『色々と』悩みの種かもしれねぇけどよ。私生活までアレコレ口出しされる言われは無いっての!」

「そ、それは……」

 

 いつの間にか正座を解いて胡坐をかいていた姫燐から、今までにないほど拒絶され、普段はいくらでも詭弁を並べられる楯無の舌が縺れてしまい、

 

「ふんっ、前々から思ってたけど、とにかくかた姉はオレ達をガキ扱いしすぎなんだよ。相手のプライドとか考えずにさ」

 

 代わりに姫燐の、怒り交じりの感情的な否定は止まることを知らず、日頃の鬱憤をぶちまけるような形にも発展していってしまう。

 更識でもない、生徒会長でもない、ロシア代表でもない、一人の姉へと投げかけられた憤りに何を諭し、どう導いてやるべきなのか。

 

「そんなんだから……」

 

 答えに行き詰まった楯無の胸に、それは、

 

「カンの奴にも避けられるんじゃねぇか」

 

 核心を突く棘になって、深々と、突き刺さった。

 

「……………ふん」

 

 ちょっと言い過ぎた。とは思うが、間違ったことも嘘も言ってないと、意固地に鼻を鳴らして姫燐は目をそらす。

 楯無の方も無地になった扇子で顔を隠して無言を貫き、表情が伺い知れない状態であり、会話はこれで途切れてしまった。

 後に残ったのは、重苦しい静寂と、事情を知らないため何も言えない外野たち。

 こういう時に真っ先に空気を入れ替えてくれる二人が起こしてしまった ケンカは、このまま互いに溝を残したまま……、

 

「キリ」

 

 終わってしまうかに、見えた。

 

「……あん?」

 

 ゆらりと、横に立っていたのは、意外にもずっとシーツに籠っていたはずの一夏だった。

 

「な、なんだよ……」

「…………」

 

 彼らしからぬ、表情筋が死んだ真顔で見下ろされ、不機嫌よりも先にうすら寒いものを感じ取りながらも、腕を組んで睨み返す姫燐。

 

「オ、オレは間違ったこと言ってねぇからな。お前はカンに会ったことないだろうけど」

「そこは、いい」

 

 楯無に関しては確かに、一夏も姫燐の言い分に納得できるものがあったので、口を挟む気はない。

 しかし、そこにはなくとも、この一件だけは口出ししない訳にはいかなかった。

 

「俺が、一言、言いたいのは、だ……」

 

 大きく息を吸い込み、吐きだし、

 

「ああいう事を急にされると、危ないってことだ」

 

 抱き付くことの何が危ないのかと姫燐が聞き返す前に、一夏は喰らい付くような機敏さで、

 

「それってどういう」

「反省して……もらうからな」

 

 

 姫燐を――力任せに、抱きしめた。

 

 

「ぶっ……」

 

 不意打ちすぎる、自分よりも体格の優れた男からの、強烈な抱擁。

 正面から受けてしまったそれは、姫燐の柔らかな身体など軽々と押しつぶし、制服越しとはいえ、バニースーツ越しとはいえ、熱によって溶け、二人という根幹を越えて一つになってしまったかのような錯覚を容易く引き起こしていく。

 

「ぉぐっ……!」

 

 痛みに喘ぎが漏れるが、苦痛など感じてしまう前に、五感が畳みかけるような『男』という情報に飲み込まれていく。

 零の匂い、肉の固さ、呼吸のリズム、心臓のドラム。

 異性に抱きしめられるなど、父親以外には当然のように初めてな姫燐にとって、そのどれもが耳元で絶叫されるような鮮烈さを伴って感知されていく。

 

「どうだ……何もできないだろ」

 

 耳元で囁かれる、聞きなれているはずの声すらも、麻酔薬のように自由を奪うが、それでも異常の中で切り離された冷静さが、どこかで確かに納得した。

 これは、確かに危険である。

 己が溶かされていき、踏み込み過ぎれば二度と戻れない確信があるのに、その帰結を感情的な何かが否定しない。

 本能的な危機と――甘美であった。

 

「俺も、今度同じことされたら、加減できるか分からないからな……」

 

 瞬間、半身が引き剥がされたような凍えが、地肌に刺さる。

 一夏が自分の身体を放したのだと彼女が理解するには、ほんの僅かだが時間を有した。

 

「今後は……もう少し自重してくれ」

「あ、へ…………はい……」

 

 へにゃりと、骨格を引き抜かれてしまったかのように動かない体で、部屋の外へと出ていこうとする一夏を呆然と見送る。

 姫燐も、箒も、鈴も、シャルも、楯無すらも。

 全員が全員、眼前で繰り広げられた現実を処理しきれず、出ていく男を止める女は誰一人として、いなかった。

 すっかり夜になり、人通りがなくなった寮の廊下を、一夏は早足で歩く。

 

――ああ……そう、だったんだな。

 

 まだ全身で覚えている残り香が、霞かかっていた世界を払拭して、織斑一夏の欠け落ちていた部分を余すところなく満たしていく。自分が向くべき方向を指し示している。

 半ば衝動的に掴み取ってみた、彼女の総て。

 たった一度だけでは飽き足らない、何度でも求めてしまうこの衝動が、答え以外の何だというのか。

 

――やっぱり俺は、キリが……好き、だったんだな。

 

 愛しき人を護る。

 織斑一夏の夢はようやく、ただ一人のための剣へと、その姿を孵ようとしていた。

 




 やりたいイベントが多すぎてまるでシャル編が終わらんぞ!

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