IS~インフィニット・ストラトス~ ―I AM…ALL OF ME…―   作:ヱ子駈 ヒウ

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第26話「少女の選択、男の惑い」

「……何をしている織斑」

「あれっ、千冬姉?」

 

 もう何か色々とグズグズなセシリアを彼女の部屋まで送り届け、自室に戻ろうと部屋を出た矢先、どこかやつれた様子の姉と一夏は出くわした。

 思わず姉と呼んでしまっても、いつもの「織斑先生だ」という訂正は飛んで来ず、

 

「なぜオルコット達の部屋から……お前もか? お前も何かやらかしたのか……?」

「ぐえっ!?」

 

 疑心暗鬼に囚われた思念が、常人なら気絶しかねない程のガン付けと共に一夏に浴びせられる。

 どちらかと言えばセシリアが主導であったとはいえ、数分前に思いっきりやらかした覚えがある一夏にとって、彼女のプレッシャーは、喉元から変な悲鳴を漏らすには充分すぎる密度があった。

 

「お前……」

「ち、違うって千冬姉! 少しセシリアと話してたんだよ! 遅くなったから、部屋まで送っていっただけだって!」

「ほう、エスコートか……同じ寮に居る人間を? お前はいつからそこまで紳士的な男になった?」

「そ、それは……」

 

 懐疑的な視線は最後まで変わらなかったが、よほど疲弊しているのか、魂まで吐き出しそうな溜め息をついて「まあいい」と自身の疑問を捨て置き、

 

「お前もさっさと寝ろ……これ以上くだらんバカ騒ぎを起こすようなら、拳で眠らせるからな……あのバカ共のように」

「こ、拳でって……どっちみち、そのつもり、だけど」

「なんだ? まだ何かあるのか……」

 

 私はさっさとビール飲んで寝たいんだ。と、表情が露骨に訴えるほどに、この姉を追い詰めた『何か』が気になってしょうがない一夏が、このことを千冬に尋ねると、

 

「……一夏」

「な、なにさ千冬姉」

「お前に、聞きたいことがある」

 

 あまりの負荷に鈍重になった頭を支えるように、前髪を掻き込みながら額を押さえ、千冬は一夏に向き直る。

 常に威風堂々と教師として、一人の大人としても自信と威厳に満ち溢れた立ち振る舞いを崩さない織斑千冬という女性には、あまりに似つかわしく無い精神的な『揺らぎ』を孕んだ――そんな声で、

 

「犬耳と首輪は……正しいのか?」

「……はぁ?」

 

 よく分からないことを、呟いた。

 

「犬耳と首輪は、教師の言い分よりも正しいのかと聞いているんだ」

「ご、ごめん千冬姉、分からない……お、俺、千冬姉が何を言いたいのか、サッパリ分からないよ」

 

 弟の顔色にマジな心配の色が浮かぶが、対して姉はその反応にフッと、どこか少しだけ安堵したかのように鼻を鳴らし、

 

「そうだな……間違っているのは、あのバカ共で……私と朴月は間違っていない……うむ、あぁ……安心したよ」

「は? キリ? なんで」

「スマンな、明日までには調子を戻しておく。今日の事は忘れろ、いいな?」

 

 チラホラ出るバカ共という単語や、なぜ唐突に姫燐の名前まで出てくるのか訳が分からず、混乱の極みにある弟の肩を叩き、千冬はそのままいつもの足取りで――本当に、ごくわずか、背筋が曲がっていた気がしたが――自分の部屋の方角へと消えていった。

 

「だ、大丈夫かな、千冬姉?」

 

 いかなる時でも鉄面皮を崩さない世界最強を、あそこまで追い詰めた『犬耳と首輪』という謎ワードに疑念は尽きなかったが……今は、一度頭からふり払わないといけない。

 なぜなら、

 

「……いや、俺も行かなきゃ」

 

 一夏はまだ、『彼女』を部屋に待たせたままなのだから。

 もう一度、気合を入れ直すように軽く手を開き閉じ、一夏も自分の部屋に向かって行った。

 

                ○●○

 

「ごめん。待たせたな」

「ううん、お帰り一夏」

 

 すっかり暗くなった室内で、簡素なスタンドランプに電源を入れながら、シャルルは一夏を出迎えた。

 薄ボンヤリとした黄色い明りは、真っ白な蛍光灯と比べて眼に優しく、消耗していないとは口が裂けても言えない一夏にとっては、なかなかに有難い。

 

「とりあえず、お茶とか淹れようか?」

「大丈夫、このままでいいよ」

 

 どこか観念したと言うか、重い肩の荷が降りたようなしおらしさで、シャルルはベッドにゆっくりと腰掛けた。

 一夏もまた無言で、それに向き合うように反対側のベッドに腰掛ける。

 対話するような姿勢になってもシャルルからは、もはや抵抗の意思は感じられず、とりあえず頭をグルグル駆け巡る数多の疑問の、何から聞こうかと考える一夏であったが、

 

「シャルロット」

「え?」

「シャルロット・デュノア……シャルルじゃなくて、これが、私の本当の名前」

 

 シャルロット。『私』の名前と言ったこの響きは、確かにシャルルよりも彼女のイメージにしっくり来るなと、一夏は思った。

 

「それじゃあやっぱり、シャル……シャルロットは」

「うん、ご覧の通り……私は正真正銘の女の子、だよ」

 

 ご覧の通りと言われて、確かに先程までと微妙に雰囲気が違う事に一夏は気付いた。

 後ろで束ねられていた金色のセミロングは解かれて肩にかかり、若干ヨレヨレになったジャージは胸元が少し開いていて――そこから、男子には決してありえない豊満な膨らみと谷間が背徳的な自己主張をしており……

 

(ますます、キリが好きそうな体型してるなぁ……)

「……やっぱり」

 

 ハッと、シャルロットの声に、彼女を前になぜか姫燐の趣向を考えていた自分がいる事に気付き、

 

「一夏って、結構エッチなんだね」

「へぁ!?」

 

 いつの間にか彼女の中で、自分の評価がとんでもない状態になっていた事に、心外な衝撃がそのまま声になって飛び出た。

 

「た、確かに分かってもらうために、胸を押さえていたサポーターを外しておいたのは私だけど……そ、そんなにジロジロ凝視しなくたって……」

「なっ!? 俺そんなにって……見てましたね……」

 

 恥じらうように眼を逸らし、ジッパーを上まで戻すシャルロットに、数秒前の行為を振りかえり顔色を青から赤へ器用に変色させながら、あたふたする一夏。

 

「あのDVDだって……好きなんでしょ?」

「DVDって」

 

 考えるまでも無く先程シャルロットに渡した、貰い物のDVDの事だろうと一夏は目星をつけた。中身は確認していないが、気の合う弾の持っていた物なら自分の趣味とも合うんじゃないかとなんとなく考え、

 

「そりゃ、そうだろうけど」

「やっぱり……ヘンタイ」

「なんでっ!?」

 

 ジトっとしたシャルロットの視線に貫かれながら、一夏は後であのDVD中身を確かめる決意を固めた。

 

「い、いや、胸を凝視したのは確かに悪かったけど……と、とりあえず、これはひとまず休題! 閑話休題!」

 

 それはそれとして脱線しかけた話題を元に戻すために一夏は「こほん」と一息入れ、様々な疑問より先に、まずシャルロットに確認しておきたいことを尋ねる事にした。

 

「それで、あれだけやって今更聞くのもだけど……喋ってくれるのか、シャルロット?」

 

 デュノア社が何を企んで、シャルロットをここに送ったのか。と、続けなくとも、聡明な彼女は一夏が言いたいことを汲んで理解していた。

 即答こそはしなかったモノの、シャルロットは重々しく口を開く。

 

「私も……父がやってることが正しいなんて、思って無いから……」

「……そっか」

 

 やっぱり、シャルロットは本心から皆を欺いていた訳じゃない事を、他ならぬ彼女の口から聞けて、一夏は少しだけ胸をなで下ろす。

 

「こちらの事情や経緯は、大体さっき一夏が言ってた通りだから、多分一番気になってると思う部分を最初に言っておくけれど……実は私も、父が何で私をここに送ったのかは、ハッキリとは分からないんだ」

「なっ」

 

 確かに一番気になっていた疑念をピシャリと言い当てられたことよりも、追って告げられた証言の方が、より強く一夏の眼を強張らせる。

 

「どうしてだよ!? そういうのって、えーっと、事前に目的は教えないと意味が無いんじゃないのか?」

 

 一夏の驚愕は当然であった。身分まで偽らせ、IS学園という国家機密で出来た化合物のような物のような地へ赴くのを命じるのだから、当然そこには隠された意図があるはずだ。

 だが、その意図をよりにもよって、現地で実際に活動する人間にまで秘匿してしまえば意味が無い。

 シャルロットも、一夏の疑念は当然だと認めるように、顔を申し訳なさそうに伏せて答える。

 

「父が私に命じたのは『世界で唯一の男性操縦者である、織斑一夏のデータを入手してこい』ってだけで……」

「で、でも、それなら何で、わざわざ男装なんてする必要があったんだよ?」

 

 やはり、自分もそこが一番納得しかねていると彼女も肯定するようにうなずき、

 

「私も、一夏のデータを手に入れてくるだけなら、世界を騙してまでIS学園に入るリスクを負う必要なんて感じなかったから、父に言ったんだけど……父は『お前は余計なことを考えず、私の言う通りにしていればいい』って」

「……そんなこと、言ったのかよ。実の親父さんが」

 

 その、人格を否定するような口ぶりに、家族を道具のように利用する冷徹さに、そして実の娘をこうして平然と傷付けるゲス野郎っぷりに、一夏は腹の底から熱いモノが脳天へ突き抜けていくような感覚を押さえられなかった。

 ベッドシーツを強く握り締める一夏の様子と反比例するように、シャルロットはそれが特に大したことでもない様に続ける。

 

「ああ、父の態度自体は、そんな、別にオカシイことじゃないんだ」

「え……?」

 

 こんな娘の意思を踏みにじるようなことを、然したることでもないと言い切ったシャルロットの微笑みは――

 

「だって私は……父の、愛人の子だから」

 

 ひどく、ぐしゃぐしゃに歪んでいるだけの仮面に見えた。

 

「私ね、二年前までは、母さんと二人で暮らしてたんだ。あんまり裕福だった訳じゃないけれど……幸せだったなぁ」

 

 それから、シャルロットは軽く自分の過去について話し始めた。

 文化の違いからくる軽いカルチャーショックぐらいはあったものの、シャルロットの思い出話は、おはようと言ってくれる人が居たことや、食事の時に会話が弾んだこと、学校であまり良くない成績を取ってしまった時に慰めてくれたことなど……あまりに、普通で、平凡で、それでいて――とても暖かな暮らしだった。

 しかし、そんな、陽だまりのように穏やかな暮らしは、ある日……

 

「本当に、突然だったんだ。母さんが……倒れたのは」

「………………」

「確かに母さんは身体も弱かったし、病気がちだったけど……それでも本当に、あんまりにも突然で……」

 

 二週間ほどの闘病も虚しく、余りにもあっけなくシャルロットの母は、この世を去った。あとに遺されたのは、一人ぼっちになった娘と、ぬくもりが消えてしまった家と、そして――彼女が、最後まで娘にも話さなかった、過去という名の呪いだけ。

 

「お葬式が一段落ついて、家でこれからどうすればいいんだろうって、独り落ち込んでた時だったんだ……父が、私の所に来たのは」

 

 私は、お前の父親だ。

お前は、私の娘になる。

これからは、お前が一人前に生きられるよう『教育』を施していく。

デュノアに引き取られてからの二年間で、父が自分にくれた言葉はその程度ぐらいしか無かったなぁと、シャルロットは自嘲気味に吐き捨てた。

 

「あとの思い出は全部、父が言ってた教育の事……政治の事とか、ISの事、話術や戦闘みたいな、人を傷付けたり、騙したり、陥れたりするような事を必死に覚えた記憶だけ……かな」

「そんな……それじゃ、まるで……まるで」

 

 やはり、聡明になってしまったシャルロットの頭は、一夏が思い浮かびながらも言い淀んでいる言葉も分かりきってしまっていて、

 

「うん、道具。『僕』はね、デュノア社が造った、都合のいい道具なんだよ」

 

 ホント、実験動物と大して変わらないねと、シャルロットは眼を伏せて、

 

「父さんが何を考えていても結局のところ、私をシャルルにしたのは、女よりも男のほうが会社に得があったから……きっと、それだけなんだろうなって思ってる」

 

 冷徹で達観した結果論を、さも当然のように弾き出した。

 

「さ、私の話はこれでお終いかな……他に聞きたいこと、ある?」

「…………ああ、一つだけある」

 

 大体の疑問は氷解したが、まだ一つだけ聞きたいことはあった。いや、織斑一夏は、

 

「それで、お前はこれからどうするんだ?」

 

 随分な遠回りをしたが、ふと思えば、一夏が滾らせていたシャルル――シャルロット・デュノアへの執着は、全てこの一言のためにあった気がした。

 

「……私は、」

 

 聡明な彼女には、目の前の少年が差し伸べてくれている、救いが見えていた。

一瞬の自問が走る。

 あとは彼に全てを委ねれば、この歪んだ学園生活は終わる。。

 もう全て吐き出してしまってもいいんじゃないか。

身勝手に押し付けられた秘密を、これ以上頑なに守り続ける必要なんてどこにあるんだろうか。

 一瞬の自問に――自答が返る。声に出る。

 

「『僕』は、これからも、シャルルを続ける」

 

 全て捨てる決意が何度背を叩こうとも、シャルロットを縛る――いや、彼女がしがみ続けている訳が、ぽろぽろと口元からこぼれ落ちた。

 

「僕はね、一夏。きっと、とても弱い人間なんだって思う」

 

 彼女の選択は――単純な自己防衛だった。

母という全てを失ってから抜け殻となった心体からは、最低限の水やパンすら摂取しようという思考すら枯れ果てて――当然の帰結として、死を肌に感じるほどに衰弱しようとも、孤独に虫食まれた意識は、あっさりと全てを受け入れる準備すら始めていた。

 

「怖いんだ……誰も、私の家族が居ないことが。自分が一人ぼっちだって思い知らされることが……私には、自分がどんな目に合う事よりも、きっと……死ぬよりも、何よりも怖い」

 

そんな壊れ枯れるだけだった自分に、新しい何かを差し出してくれた人が居る。

その人は、決して正しくなく、決して胸を張れるような人物でもなく、母を捨てたという、決して許してはならない罪を背負った男であったが――彼は私の家族になってくれると、囁いた。

 独りぼっちは嫌だ。独りじゃ生きていけない。誰でもいい。私の家族でいてくれるなら。

 だから、使い捨ての道具でも構わない。

父が、私の父で居てくれる限り、私に『生きる意味』を与え続けてくれている限り、

 

「だから僕は、シャルル・デュノアとして生きる。父さんが、僕の父さんで居てくれる限り、これまでも、これからも」

 

 ごめんね。そして、ありがとう。と、最後に柔らかく、感謝と決別を残した。

 

「……そっか」

 

シャルル・デュノアとして生きるということ。それは、彼女がこれからもデュノア社のために活動を続けると公言しているのだと、一夏でも理解できた。

 正真正銘、もう織斑一夏には、打つ手が無い。この手は彼女の生き方を変えられない。

 罪人が罪を認めた以上、執行者は引導を叩きつけなければならない。

――けれど、

 

(それで納得、出来るかよ)

 

 けれど、同時に一夏はこうも思っていた。

 なぜ、彼女が裁かれなければならないのだと。

彼女は――シャルロットは、救われないといけない、と。

 間違っているのかもしれない。矛盾しているかもしれない。ガキなのかもしれない。

けれども、一夏はこれっぽっちも納得していなかった。

 あたり前な孤独に怯え、高慢で自分勝手な親のせいで不幸になる女の子の存在なんて、認めたくないし、納得なら尚更できるはずがない。結局の所、どれだけ小難しい理屈が立ち並ぼうとも、そういう性根なのだ。織斑一夏という、このお人好しの天然ジゴロは。

 だから――一夏はもう一度、姫燐の顔を思い浮かべる。

 姫燐の面影を思いだして、その唇から紡がれる、彼女の必殺技を、思い浮かべた。

 

「なぁ、シャルロット」

 

 俯き、何も答える事が出来ないシャルロットの手を、一夏は取る。

 真っ直ぐに訴えかける織斑一夏のやり方では、彼女は救えない。

 ならば今は、この局面は、彼女のやり方を借りる。

 

「だったら俺と、取引をしないか?」

「とり……ひき?」

 

 駆け引きなんてサッパリ分からない。

 だから、一夏は取引の条件だけを、一方的に叩きつけた。

 

「まず俺は、お前のこれからの学園生活を全力でサポートする」

「なっ」

「当然、お前が女だって事も黙ってるし、セシリアも……こっちでなんとか皆に黙ってるよう説得しておく!」

「ちょぇ!?」

「ついでにデータも渡す! というか、取り方とか分からないから、勝手に持ってけ!」

「えええっ!?」

「誰かに渡すなとか言われたこと無いし、ぶっちゃけた話、俺は俺のデータなんてどうでもいいしな! 人様に見せて恥ずかしい部分なんて……一般常識の範囲では全く無いッ!」

 

 シャルロットの思考を弾きだすカリキュレーターが、余りにもバグだらけな男の提案にエラーを起こして煙が上がる。

 訳が分からない。そんな事をするメリットは? あそこまで自分の正体に執着していたのに? データまでくれる? 世界すら覆す可能性をどうでもいい?

 札束で顔を叩かれるどころか、投石機で金塊を丸ごと投げつけられるような衝撃的メリットが、早速、交渉という体を崩壊させかけているが、それでも一夏は気にせず、

 

「当然、お前にも相応に俺の要求に従ってもらうぞ」

「要求……って」

 

 破格なんてもんじゃない条件に要求される対価に、シャルロットは一瞬だけ息を呑むが、

 

「お前はこれから、俺の『強くなる』って夢を、出来る限り一緒に手伝ってくれ!」

 

 もう何処からツッコめば良いのか分からないほどフワッとしすぎていて、意識まで軽くフワッと持って行かれかけた。

 

「い……一夏……? それって何の」

「俺は本気だぞ!」

 

 軽く頭をかすめた「冗談」という可能性すら、胸を張って否定さた。

 本気だ。本気でこの男は、私を見逃して、更に全面的に協力すると公言している。

 

「な、何を考えてるの……? わ、私に協力するってことは」

「んー、確かに、俺のデータを外部に流出させるのは問題かもしれないけど……」

 

 違う、そうじゃない。いや、違わなくないけど、一杯ありすぎる聞きたいことの一つをシャルルはとりあえず傾聴する。

 

「なんかさ、俺の身体って本当によく分からないらしいんだよ」

「そ、そんなに特別なの?」

「いいや逆だよ、普通すぎるんだとさ」

 

 身体測定、採血、レントゲン、DNA鑑定、IS適正検査、その他、人には言いづらい部分まで諸々――学校行事でよくやるような事から、初めて見るような機材で測定するような様々なチェックを一夏は入学前に、政府の機関で一通り受けていた。

 そして結果はどれもこれも、ただ一言。

 

――一般的かつ、模範的な成人男性の健康体です。

 

 故に、織斑一夏の身体データは、知らない人間にとってこそ未開の金脈だが、実際は既に掘り尽くされた意味を持たない空洞であり、今となっては関係者達の間では、一夏を狙う輩を引き寄せるための絶好の餌にすぎなかった。

だから、迂闊にこの事は口にするな。と、姉から言われた一夏の口から直接聞かされ、危うく餌に引っかかり、バレてさえいなければ明日からでも本格的に一夏の身体データも漁ってみようと考えていたシャルロットの背中に寒気が走る。

 

「ISも、最初に触ったのが特別って訳じゃなくて、どれでも動かせるしな」

「本当に、僕達のような普通の適合者となんにも変わらないんだね」

 

 つまり、専用機にも特別な仕掛けが施されている訳でも無い。

 それは同時に、現状観測できるデータでは、織斑一夏の身体の謎を解くことが出来ないことを意味していた。

 ならば、自分の任務には何の意味もないのではないかという、シャルロットの危惧も、一夏は既に見越していた。

 

「だからさ、好きなだけ持って行けよ。お前の任務は、『俺のデータを持ってくる』ことなんだろ? 一気に全部じゃなくて、こう、卒業まで小分けにしてさ」

「あっ……そう、か」

 

 そうなのだ。あくまで彼女に課せられた命令は、彼のデータを送り続ける事だけ。

 そのデータの価値は、向こうが判断することなのだ。求めていたデータを送られ、そのデータが意味のないモノだったとしても、任務を忠実に果たしただけのシャルロットには関係のないことである。

 

「確かに今は命令に従うしかないかもしれないけど、こうやって少しずつ成果を出していけばさ、親父さんもお前のことをもっと大切に思ってくれたり……までは、都合良すぎかもしれないけど」

 

――彼……私が思っているよりも、ずっとずっと、色々考えてる。

 

 今まで、ただ勢い任せで生きているだけの若者だと少なからず思っていた織斑一夏への認識を、ここに来てシャルロットは大きく変えざる得なかった。

 ならば、このことについても、当然考えているだろう。

 

「じゃあ……」

「ん?」

「じゃあ、ね。もし私の任務が急に変わって、それが、私が一夏や、この学園のみんなを傷付けるような任務だったら……?」

 

 彼女に投げかけられたIFに対する答え。

それは既に一夏の胸に強く、何よりも燃えたぎる『夢』という名で刻まれている。

 

「その時は、迷わず大切な人を護るために戦うさ。でも、シャルロット」

「…………?」

「もしその時が来ても俺は、お前も一緒に護ってみせる。お前が俺に銃を向けても、誰がお前を責めようと関係あるもんか、俺がそうしたいって思ってるんだからな」

 

 それは、今日投げかけられたどの言葉よりも予期していなかった、余りにも貫くような暖かさに溢れた言葉で、

 

「な、なんで……どうし、て……? 言ってること、理論的じゃないし、無茶苦茶で、むじゅん、まみれだよ……」

 

 優しくて、嬉しくて、泣きだしてしまいそうなのに、それでもぬくもりの裏を探してしまう、ちっぽけで卑屈な彼女の猜疑心すら、

 

「だって俺、お前のこと結構好きだからさ」

「………………へえぁ!?」

 

 木端微塵に吹き飛ばすレベルの爆弾発言を紡ぎ出した。

 当然、この自分の名前の類義語に「唐変木」がある男に、そっちのケはサッパリ無い。

 

「確かに始めは……自分でもよく分からない内に、なんとなく気にいらなかったけど、こうやって話を聞いて、向き合って、色々とお前の事を知って、思ったんだ」

「で、でも、だからって、そんな、いきなり。わ、私達、まだ出会って本当に……」

「俺達、きっと良い友達になれるんじゃないか、ってさ」

「こんな展開、ダメだよ不健ぜ…………友達?」

「ああ、友達だ。そりゃ、お互いの全部が分かったわけじゃないけどさ。でも、俺はお前との出会いを、不幸になんかしたくないんだ」

「…………大丈夫、私も一夏のこと、今ので少し分かったから」

「そうかっ。って、え、今ので?」

 

 男と女としては、絶対に簡単に気を許しちゃいけないタイプだとは確信しながらも同時に、

 

「一夏は、さ」

「うん?」

「家族のことは、好き?」

「ああ、大好きだ」

 

 きっと私は、彼と良い友人になれるだろう。そう、シャルロットも素直に思えた。

 これは一時の幻なのかもしれない。

ただの甘えなのかもしれない。

問題からの逃避なのかもしれない。

 それでも、私は――

 

「なら――これから私たちは『協力者』だね」

「えっ?」

 

――もう少しだけ、私に友達との出会いをくれた、この学園に居たい。

 誰の命令でもない、恐怖心からでもない、私自身の願いで。

 

「一夏は、私の学園生活をサポートしてくれる。そして、私は一夏が強くなるための手伝いをする。これって、私達が互いに協力者になったってことだよね?」

「そ、そりゃ、それに近くはなる……けど」

「だったら、うん、取引は成立だよ」

 

 互いに了承を得て、円満に終わったように見えた交渉は、

 

「これで私達は協力者同士。これからよろしくね、いち」

「ちょ、待った! 待ってくれ!!!」

 

 今まで殆ど一方的に条件を叩きつけてきただけだった、持ち掛け人の一声で延長戦にもつれ込んだ。

 

「な、何か私、間違ったこと言っちゃった?」

「い、いや間違っちゃいない。間違っちゃいないんだけど……」

 

 急に大声を上げて立ち上がったかと思えば、訳をたずねた途端に髪を掻き毟り、言葉を探すように右に左にウロチョロし始めた男子の奇行に、頭上に疑問符が飛び交うシャルロット。

 そして、足は止まったモノの相当の難産だったのか、絞り出すように眉間にシワを寄せながら一夏は、

 

「その、だな……『協力者』ってのは、ちょっとやめないか?」

「え、そこなの」

 

 まさか過ぎる一夏の葛藤に、素が飛びだすシャルロット。

 

「じゅ、重要なことなんだよ! とても! すごく!」

 

 顔を赤らめながら小学生並みの語彙で力説する姿から、冗談で言ってる訳ではない事だけは分かったシャルロットだったが、やはりそのこだわりが謎すぎることは変わりない。

 

「えええ……」

 

 当のシャルロットからすれば、

 

――アイツと出会って初日に誓ったんだよ。お互いが、お互いの夢を叶える協力者になるってな。

――へぇ。なんだか、カッコいいね。

 

 先程の姫燐とのやり取りで頭に残っていた単語を、ただ何となく選んだだけなのだが……そういえば、彼女が協力関係を取りつけた存在は、目の前の男子であった事を思い出し、

 

「…………え、まさか、ここ? ここに繋がるの?」

「な、なんだよ」

「うん? あー、つまりこれって、協力者は二人だけの特別なー的な、そういうこと? で、男の子な私と、姫燐が親しくしてたから、いやむしろ私が女の子だから余計に?」

「な、何でそこでキリの名前が出てくるんだよ!?」

「しかも自覚無しッ!?」

「な、何なんだよさっきから! 本当に訳わかんねぇことばっかり!」

 

 そう考えれば全てが納得いくのだ。

 なぜ、何もしてないのに私はあれだけ一夏に嫌われていたのか?

 最初こそ、二人目の男性操縦者の存在を疎んでいるのかと考えていたが、こうして腹を割って話してみれば、織斑一夏という青年はそんなタイプでは絶対にないと断言できた――からこそ、余計に分からなくなっていたのだが、こうしてネタが割れてみれば説明は3行すら必要なく、

 

「あぁ、青春だなぁ……」

「な、ん、で、ニヤニヤしてるんだよ!」

 

照れ隠しの怒声もハハハこの純情めと、若干疲れ気味とはいえ微笑む余裕が産まれ……なんとなく、これは、特に恨んでいる訳ではないのだが、今まで散々振り回された仕返しに使え――いやそんな野蛮な言葉じゃなくて、ちょっとした仲直りの握手的な、フレンドリーなやり取りをしたいと……

 

「ふ、ふふ、ふふふ」

「シャ、シャルロッ……ト?」

「んー、なぁーに? 一夏?」

 

 シャルロットの笑顔が、どこか赤い髪をした協力者にそっくりな、あの「いま私はロクでもないことを考えていますよ」な顔に、形を変えた。

 

「確かに、一夏はもう姫燐と協力者同士なんだから、私とは協力者になれないよねぇ」

「なっ、なんでその事をッ!!?」

 

 相手の期待以上にオーバーに驚くのは、猫の前で猫じゃらしをフリフリするようなものだと気付いていない男の反応は、更に悪い子猫の被虐心を煽っていき、

 

「なんでって、姫燐から聞いたんだよ? 教えてくれたんだ、『私だけ特別』にって」

「なっ、なっ、なっ!」

「お互いの夢を叶えるって約束かぁ、ロマンチックだよねぇ。あ、大丈夫だよ? 内容も聞いてるけど、黙ってて欲しいってお願いされてるから」

「じゃ、じゃあキリが、その、あの」

「ああ、女の子が好きなんだよね? ライクじゃなくてラブな意味で」

「そ、そんなことまで、お前に喋ってるのかキリは……?」

 

 ワザとらしすぎる程に盛った話にも気付かないほどの動揺と狼狽が手に取るように分かり、どのようにしても期待通りの反応が返って来そうだからこそ、長くもっと楽しく転がせられるように。話題と手札と自然さを、シャルロットは天秤にかけて口を開く。

 

「これから、私は僕として暮らしていくけれど」

「そ、そそそそうだな、俺もそれの手伝いを」

「僕、姫燐ともっと『お近づき』になりたいんだよねぇ」

「すうぇ!?」

「あっ、特に深い意味は無いんだよ? でも、姫燐みたいな子と一緒だったら、毎日が楽しそうだろうなぁって思って――そうだ。いっそ、僕も姫燐の恋人に立候補」

 

「駄目だっ!!!」

 

 反射的に飛び出た否定。

 それは今日、織斑一夏が口にしたことの中で、間違いなく一番反射的で、一番大きく、そして一番――

 

「ダメ? どうして? それって、おかしくないかな?」

 

 矛盾を孕んだ、一言だった。

 

「確かに僕は、これから男の子としてこの学園で暮らしていくけど」

 

 また、胸元を少しだけ見せるように、無意識に叫んでしまった彼の矛盾を見せつけるように、上着のジッパーを下ろし、充分なサイズがある胸元を晒して、

 

「私は、女の子なんだよ? なんで、姫燐の好きな人候補になっちゃダメなの?」

「……そ、それは、いや、だって……」

 

 デュノア社のスパイだから。いつバレるか分からないから。その気になれば、いつでも退学に追い込めるから。

 いくらでも出てくる合理的な言葉や、効果的な脅し文句も、意味を成さない。

 そこではないからだ。今、一夏が口にしてしまった言葉の、おかしさの本質は。

 それに自分で気付いてしまった以上、彼は何も言えない。何もしゃべれない。何も、考えられない。

 

「一夏は、姫燐の恋人探しを手伝うって約束したんだよね? でも、私が彼女になろうとするのは絶対にダメだって言う……これって、何故だろうね?」

「お、お前には関係ないだろっ!」

「ううん、ある。だって僕達はもう、取引を結んだんだよ? だから、さっそく私から最初のアドバイス」

 

 フッと、浮ついていた言葉はいつの間にか、強い確信を乗せた重い力強さを乗せて、

 

「もしこの『何故』に気付けたら、一夏は、誰にも負けないぐらいに強くなれる」

「俺が……誰にも、負けないぐらいに……?」

「うん、だって今の一夏、それぐらい他の事なんてどうでもよさそうだし。ついでに、今の戸惑いだって、きっと全部、スッキリすると思うから」

 

 次に一夏から帰って来るだろう言葉は既に分かっていたから、話はここまでとシャルロットは席を立って身体を伸ばす。

 

「でも、誰かに聞いちゃダメだよ? これは自分で気付かないと意味が無いから」

「お、お前まで、俺のダチと同じことを言うのか?」

「そうなの? まぁ、それぐらい、今の一夏には大切ってこと。このままじゃ、どんな結果になっても後悔しそうだし」

「俺が……後悔する、だって?」

「んー、いきなり言い過ぎちゃったかな? とりあえず今は、焦るほど急なことじゃないけどね」

 

 同じ日に、全く同じ忠告を受けた偶然。

いや、これは偶然なのか? このままだと、なぜ俺は後悔するんだ? その理由も、この『何故』さえ分かれば答えが出るのか?

一夏は急激に重さを増した頭が支え切れなくなったように、ベッドへと座りこむ。

 

「いきなり随分な宿題、だな。シャルロット……」

「ふふ、頑張ってね一夏――あ、そうだ」

 

 ポン、と自分の名前を言われ、一夏の名前を呼び返して、あるアイデアが浮かぶ。

 

「『協力者』がダメなら、せめてシャルって呼んでよ」

「シャル?」

「うん、シャルならシャルルでもシャルロットでも、どっちでも同じように呼べるし、呼び方がゴチャゴチャだといつかボロ出しそうだし」

「ぐっ」

 

 まったくもって、いつかやりそうだと自分でも思うため、少し屈辱だとは思いつつも、一夏は有難くその提案を呑ませてもらう事にした。

 

「じゃあ一夏、私さきにシャワー浴びていいかな? 今日は色々と、汗かいちゃった」

「ああ、分かった。タオルは洗面所に置いてあるの好きに使ってくれ、シャル」

 

 ありがとう、と奥の洗面所にシャルの姿が消えていくのを目で追ってから、一夏はさっそく宿題のことについて、目を閉じ自問自答を繰り返す。

 俺達は誓い合った。あの日、互いの夢を支え続ける『協力者』同士になることを。

 なのに彼女の夢を、どこかで否定している自分が居る。

 幸せになって欲しい。それだけは、絶対に間違いないのに……。

 色々と、堂々巡りを繰り返していた思考が、一番最初に弾きだした答えは、

 

「…………お腹すいたな」

 

 実に単純な、生理現象についてのことだった。

 今日は一日中、頭も身体も使い倒していたことや、ずっと張り詰めていた気が緩んだ事もあってか、お腹は即座に補給を訴えてきた。

 腹が減っては、戦は出来ぬ。宿題も大切だが、基本的な人間としての生活も疎かにしていい訳が無い。

 お腹が空いていては、きっと良い答えも出ないだろうと一夏は宿題を一端打ち切り、頭を主婦モードに切り替えた。

 とりあえず食堂はもう遅いし自分で作るとして、今日からはシャルの分まで作らないといけないから、二人分作れるかどうか食材をチェックして、そういえば生理用品もこれから二人分必要になるんだよな――と、明らかにルームメイトとしての枠を超えたプランが、宿題とは対照的にスラスラと走り抜けていき、

 

「あ、しまった。風呂場のシャンプー切らしたまんまだったな」

 

 と、思いついたままフラフラ洗面所の扉を開くと、作業反射的に脱衣所にあった服や下着を洗濯機へと放り込み、買い置きしておいたシャンプーの替えパックを手に取って、

 

「悪いシャルー、シャンプー切らしてたんだった。これ替え……」

 

 ごく当たり前のように、風呂場の扉を開いた……シャルロットが--女の子が、シャワーを浴びている、真っ最中に。

 水滴したたるショートブロンド、湯気のベールだけを纏う男装には余りにも不向きな発育を遂げた肢体、湯を浴びて紅潮していた頬は今にも発火しそうな程に赤信号。

 そんな一糸まとわぬシャルの姿を直視してしまった一夏は、溜め息のようにこう呟いた。

 

「……あ、女だったなそういえぼぁ」

 

――強さとか以前に、まずは異性に対する最低限のデリカシーから身に着けさせた方が良いのかなぁ……?

 

 シャワーから上がったシャルは、ボコボコに変形した風呂桶を捨て、これから始まる共同生活に果てしない不安を抱きながらタオルを手に取った。

 

                  ○●○

 

「ふぅん、一夏の専用機――白式だよね。って、他の武器を積む容量がないの?」

「そぶだな」

 

 翌日、昼休みの屋上。

 喋り辛いので顔に張り付けたガーゼと包帯を外しながら、一夏は頷く。

 さっそく強くなるために、一夏は前々から気になっていた自分の愛機の大きな欠点である、『近接武装しか積まれていない』点について、技術者視点からの意見を聞きたいとシャルへと相談を持ち込んでいたのだ。

人目に付きやすい教室や食堂を避け、一夏が作った二人分の弁当片手にやって来たいつもの屋上は、外で食べるのも悪くないと思わせるほどに快晴であったが、

 

「それは……少し、変だね」

 

 反面、相談を受けたシャルの表情は、疑問に曇る。

 

「だよなぁ、いくらなんでも雪片弐型だけしか積んでないっていうのは」

「ちょっと違うかな。それ自体は、試作機なら珍しくないよ」

「え、そうなのか?」

「うん、試作、だからね。普通の量産型じゃ積まないようなオーバースペックな武装や、戦況においた臨機応変さなんて考えないことは、いつものことなんだけど……」

 

 シャルは、渡された自分の分の弁当箱を広げ、軽くお箸の先で、その中身を指しながら、

 

「でも、普通はこの弁当箱みたいに、全部空にすれば……あ、すごい。美味しそ……じゃなくて、他の武装を積む事だって出来る筈なんだよ」

「言われてみれば、そうだよな」

 

 今まで千冬と同じ武器を扱える高揚感からスッカリ失念していたが、当然、武器は他にもいくらでもあるのだ。

 確かに千冬は、これ一本で世界を制した。

 しかし、自分は姉とは違う凡才の身。同じ道具を使うだけで、自分もその高みまで昇りつめられるかと問われれば、凡才だろうと考えるまでもない。

 雪片に拘るのは、自分がもっと強くなってからでも遅くは無いはずだ。

 

「じゃあ、雪片を外せば他の武器も白式で使えるのか?」

「うん。初心者ならもっと使いやすい近接武装が沢山あるんだから、雪片を外してそれらをインストールすれば良いんだけど……ちょっと一夏、こっち来てIS見せて貰ってもいいかな?」

「おう」

 

 言われた通りにシャルの横に座り、自分の腕にはめられた、白い腕輪――待機形態の白式を差し出す一夏。

 

「一度しっかりとアームズ・ボックスのキャパシティを確認したいから、コンソールを起動して、メンテナンスモードにチェンジしてくれないかな。そこからデータさえ見つけられれば、こちらのISにコンバートして詳しく分析できるから……」

「…………?」

「……白式のお弁当に、どんな食材を使ってるのか知りたいから、僕の台所に持って行くために、そのお弁当箱を開いて欲しいんだ」

「な、なるほど! 分かったぜ、シャル」

 

 ああ、クラスのみんなが前に言ってたけど、本当にド素人なんだね……と、シャルは、「分かりやすいなー」と能天気に笑う横顔を見て、思わず溜め息が出かけたが、

 

「で、メンテナンスモードってどうやるんだ?」

 

 結局、軽く頭を抱えながら遠慮なく溜め息を吐き出した。

 

「そ、その、なんかごめんな?」

「うん……仕方ないよね……ここに来るまでは、普通の学生だったんだし……分かってはいるんだけど……」

 

 業界にとって世界的に有名な人物であるため、勝手な幻想を抱いていた自分が悪いのだとは分かっていても、

 

(本当にこの人……これで中国の代表候補生に1対1で勝ったの……?)

 

ISに触って僅か数か月で、これほどの成果を叩きだした逸材の口から、ここまでド素人丸出しの反応が返って来て失望するなと、シャルを責めるのも酷ではあった。

 この噂が真実ならば間違いなくこの目の前の能天気は、かのブリュンヒルデの一族であると納得出来るが……今は、考えるのは後回しにしようとシャルは割り切り、1からメンテナンスモードを開く方法を教えていく。

 

「そんな難しくないから覚えておいて、まずは……」

「ふむ――あ、いつも通り念じるだけでいいんだな?」

 

 教えると言っても、ISの操作は内部データの開示であっても思考一つで可能であるため、簡単な単語を念じるように教えるだけでスラスラと開くことが出来る。

 そう、あえて一夏用マニュアルに置き換えて言うならば、弁当箱を開くだけなら、誰でも出来るのだ。

 だが――

 

「……ダメだ、お手上げ」

「えっ!?」

 

 その中にある食材に、何を使われているかどうかを判断できるかは別問題である。

 一夏がメンテナンスモードを命じた瞬間、腕輪から出てきた空間スクリーンに表示された文字列の記号をザッと見て、シャルは速攻で匙を投げざる得なかった。

 

「分からない。一体、どんなプログラミングで動いてるの、このIS? 現在流通してるどの国のOSとも当てはまらないし、類似性もない上に、何語で構築されてるのかまでサッパリだ」

「つ、つまり……?」

「完全なブラックボックス。中身が全く分からないから、雪片っていう惣菜を取り除くことも――いや、どれが雪片なのかすら分からないから、換装は勿論、基本的なメンテナンスすら出来そうにないってこと」

「基本的な手入れも出来ないって、それ相当不味いんじゃ」

「当然、試作機としても論外だよ。ISだって機械なんだ、メンテナンス無しで長いあいだ動かしていたら必ずどこかに不調が出る」

 

 だからこそISにもメンテナンスモードが存在し、一般的な規格に沿ったチューニングを施すためにも、試作機だろうが一切他人が手を付けられないブラックボックスであっていいはずがないのだが、

 

「だけど……」

 

 そんな闇鍋状態のソースコードの羅列に、一つだけ。

 まるで、お前らはこれだけ読めれば良いとでも言いたいように、その一文は綴られていた。

 

「『ジークフリート・ギフテッド』……?」

「ジーク……なんだって? シャル、知ってるのか」

「ううん、僕も分からない。何かのシステム名? ジークフリートって、どこかで聞いた事はあるんだけど……」

「ジークフリートっていや、『ニーベルゲンの歌』に出てくる、龍殺しの大英雄の名前じゃねぇか」

「そうそう、それだよ! 一夏詳しいね」

「え、今の俺じゃなくて」

「すまない……オレなんだな、これが」

「へ? うわぁ!?」

 

 背後から、音すら立てずにシャルの肩を抱くと、軽く抱き寄せながら声の主はもたれかかって来た。

 

「おうおう、昼飯時に二人して居なくなったと思ったらISの解析とか、なんか面白かっこいいことしてるじゃねーか? オレも混ぜろよ」

「キリっ!?」

「朴月さん!? どうしてここに!?」

「おおっと、勘違いしないでくれよシャルル? オレは別に、教室に居場所がねぇとか、ルームメイトが怖いだとか、ていうかクラスメイト全員怖いだとか……そういう訳じゃないからな断じて」

 

 と、聞いてもいない事を念入りに押しながら、一夏の弁当箱から卵焼きをつまみ食いしつつ、姫燐は改めて白式から映るコンソールを眺めた。

 

「んぐんぐ、ジークフリートは龍を殺した時に、その血を浴びて不死になったからな。そんな奴の贈り物ってことは……つまり、パイロットにも機体にも効果がある、ジークフリートじみた自動再生システムって所か?」

「どうして、そこまで分かるの?」

「オレとしても、原理はサッパリ分からんが、こいつがイケメンなのが何よりの証拠って奴かな」

 

 コイツ呼ばわりされた本人は、イケメンと姫燐に断言され、少しこそばゆさを感じて指で頬を掻き――

 

「あ、そうか」

 

 昨日、デリカシー欠落のツケで顔に負った打撲が、いつの間にか完治していることに気付いた。

 

「そ、お前、昨日『風呂場ですっ転んだ』から包帯巻いてたほどの傷、もう治ってるじゃねぇか。それにソイツの機体、今までどんだけ激しい戦闘しても、一度もメンテ出してるとこ見たことね―んだもん。そんなもんが付いてるなら納得だよな、一夏?」

「言われてみれば……いつの間にか、勝手に直ってるよな白式も、俺の傷も」

 

「便利だよな―、オレの身体もISはまだ治んねーのによ」と、しかめっ面をして右腕のギブスで一夏を小突く姫燐とは対照的に、シャルは余りに常識を逸脱しすぎているシステムの存在に驚愕を隠せない。

 

「む、無茶苦茶だよ! こんなシステム、作れる人間なんて居る筈が……」

「もー一つ、英雄豆知識。ジークフリートにはな、実は嫁さんが居るんだよ」

「お、お嫁さん?」

 

 いきなりの英雄雑学で待ったをかけられ、余計に迷走しかけたシャルの意識は、

 

「そのお嫁さんの名前はな……ブリュンヒルデ、って言うんだぜ?」

 

 その豆知識によって、一瞬にしてある可能性へと導かれていく。

 

「ブリュンヒルデって、それ、織斑千冬先生の……」

「千冬姉の、二つ名」

「後は簡単だ、あのブリュンヒルデ様の婿って間接的に名乗れるぐらい親しくて、ISに誰よりも詳しい人間なんて、この世に一人だろ?」

 

 流通しているどの企業のOSすら当てはまらないISを作れる人間が居るとしたら……? こうしてみると、考えるまでもない事であった。

 そもそも、数多の研究者を抱える企業以上に、ISのことを熟知している人間なんて、

 

「篠ノ之……博士」

 

 ISを作り出した人間以外に、居る筈もないのだから。

 

「あはは……そうだな、あの人なら確かに出来かねないし、やりかねない――っていうか、出来てやってるのか、実際にこうやって」

「IS設計者の篠ノ之博士と織斑先生が親友同士であるっていうのはテレビとかでもよくやるぐらい、有名な話だしな。なんか、このネーミングセンス見る限りは、すっげぇ情熱的な人みたいだけど」

「ということは白式って、篠ノ之博士のオーダーメイドなのっ!?」

 

 自分が気軽に解析しようとしていた一品が、とんでもない大人物が直々に作り出した逸品だったことに気付き、決して図太いとは言えないシャルの小市民的メンタルの揺れが、彼女の膝へとダイレクトに振動を伝える。

 そんなシャルの姿は、

 

「……そうそう、オレは本来こっち側。受けはキャラじゃない、犬耳と首輪は似合わない。オーケーオーケー……」

「キ、キリ?」

 

 最近崩壊しかけていた何かを姫燐の中に蘇らせ、ぶつぶつウンウンと納得し、

 

「あーもぅ、本当に可愛いなぁお前はよぉー!」

「わぶっ!?」

「なっ!?」

 

 今度はシャルルの背中へと、完全に覆いかぶさるように抱きついた。

 

「わととっ! あ、危ないじゃない朴月さん! お弁当、膝に置いてるんだよ?」

「おっと、悪い悪い。シャルルが子犬……子猫のように、可愛らしーく震えてるもんだからついつい」

 

 謎の訂正を加えながらも、シャルの背中から離れようとはせず、

 

「不安なら、お姉さんの胸で甘えてみるかぁ? うりうりー」

「もーっ、くすぐったいよ朴月さんってば」

「はぁぁぁ……癒される……草食な反応が、こうスゥーっと患部に……」

 

 ギブスを撒いた左手を気にしながらも、更に密接にコミュニケーションを図っていく。シャルも少しだけ困り顔ではあるが、まんざらでも無いためそれを甘んじて受け入れた。

 傍から見れば、仲の良い姉妹とも思えるぐらいの距離感だ。

 だが、その余りに和気あいあいとしたシャル達の反応は、

 

(違う、それは男として間違ってるぞシャル!)

 

 明らかに思春期を謳歌する健全な男子として、異端であった。

こればっかりは鈍い一夏でもわかる。なぜなら昔、自分は彼女にまったく同じことをされて、完全に平静を保てなくなった結果、弱味まで握られ、行きの電車代を取られたのだ。

男としての反応以外にも、もう一つ急を要する問題点がある。

それは、シャルの体型をシャルルへと矯正するためのサポーターの存在だ。

外見からは骨格すらも誤魔化すぐらいに精巧に出来ているため分かり辛いが、流石にあの距離でベタベタされると話は別だ。いずれ必ず、地肌とは違う異物の感覚に気付くだろう。

 今は、なんだか死地から生還して家族と再会できた兵士のように、うっすら涙すら浮かべながらもシャルを堪能しているが、鋭い彼女がいつこれらの違和感に気付くか分からない。

 

(ここは……無理やりにでも、やるしかない!)

 

 手段を選ぶ余裕、時間、全てが足りず、心の中で姫燐に何度も謝りながら、一夏は彼女に対する切り札を切った。

 

「なぁ、姫燐!」

「あん?」

 

 姫燐がこちらを見やるのすら確認せず、一夏は大声と共に立ち上がると、ボタンを外し、上着を捨て、中のカッターシャツも脱ぎ、

 

「今日は、なんだか、すごく、暑いなッ!」

 

 最後に、中のTシャツも脱ぎ棄て、その逞しい胸板を外気に、彼女の視線に、堂々と晒した。

 勢いの良い啖呵が通り過ぎた後に残ったのは、静寂。

 風の音に、軽い喧騒、小鳥のさえずりと言った環境音だけが、しばらく3人だけの屋上を支配する。

 

「…………なにしてるの一夏」

「いや、何してるって……」

 

 ようやく、事態を呑みこめたシャルの質問に、一夏は何も言えずに立ちすくむ。

 服を脱いで、女性二人の前に裸体をさらけ出した。

 完全に露出狂の変態アクションであるこれを、どうすればシャルに納得してもらえるか、一切考えて無かったからだ。

 

「……この国の男の人って、暑くなったら女性の前でも脱ぐの? 違うよね? こんな時、僕は織斑先生に通ほ、相談すればいいのかな? ねぇ、一夏。なにか言ったらどうなんだい?」

 

 シャルの中の、自分への株が急転直下で暴落していく視線に耐えられず、一夏は縋るように本来見せつける予定だった相手を泳ぐ目で探し、

 

――あれ、キリは?

 

 バタァン!

 と、シャルにピッタリ張り付いていたはず人間を『探さないといけない』違和感に一夏が気付いたのと、背後にある屋上の扉が激しい音を立てて閉じられたのを察したのは同時のことであった。

 

――良かった、とりあえず引き離せたみたいだな……。

 

 今度はバカなことはせずに、放課後すぐに土下座しようと心で泣きながらも、とりあえずは一安心と胸をなで下ろし、

 

「ねぇ、何か言ったらどうなんだい? 昨日のDVDの件といい、僕そろそろ本気で通報したほうがいいのかな? 一夏って本当に、女性にそういうことして悦ぶタイプ? 日本人は変態さんが多いって聞いたけど、一夏もそうなの? ねぇ、こっち見てよ答えてよねぇ、ねぇねぇねぇどうして、無視、するのかな?」

 

 まずは、こちらに土下座をすることから始めないといけないようだと、一夏は三つ指を揃え、膝を折った。

 

 

                  ○●○

 

 

「あら?」

 

 いきなり屋上の扉を破壊しかねないほどの勢いで閉じた音に、ちょうどその場所へと続く階段を昇ろうとしていた楯無は足を止めた。

 透き通った湖水のような色をした髪の毛が音波で揺れるが、華奢に見える体躯は決してブレず。この程度のことで揺れるようでは、『楯無』は務まらない。

 しかし、吹っ飛ぶように階段を駆け下りてくる赤い影は、

 

「がぁぁぁぁだぁぁぁぁぁねぇぇぇぇぇ!!!」

「ひ、ヒメちゃん!?」

 

 精神的にも、勢い任せに抱きついてくる肉体的にも、楯を大いに揺るがした。

 

「あ、あらあら……どうしたの、ヒメちゃん?」

「聞いてくれよぉぉぉ……アイツマジ信じらんねぇ……」

「落ち着いてヒメちゃん、お姉さんは離れないから、ね?」

 

 ああ、やはりこの子は、なんにも変わっていない。

 流石に、グズグズと涙鼻水こそ流さなくなったが、四年前と何も変わらず自分へと泣きついてくるヒメちゃんに、楯無は心地よいノスタルジーを感じ、背中を優しく叩いてあげた。

 

「ゆっくりでいいから、お姉さんに話してみて。ね?」

「…………うん」

 

 簪ちゃんにいじめられる度に、こうしてあやしたなぁ。

 と、長々グチグチと続く相談内容は半分以上も頭に入らなかったが、妹がダイレクトに自分へと甘えてくるこの時間。それは楯無にとってかけがえのない、至福の時であった。

 

「ほんと、信じられるかぁ? あのバカも、クラスの連中も……オレをいったい何だと思ってやがんだ」

「ふふっ、ヒメちゃんは誰よりも可愛いもの。みんなついついイジメたくなっちゃうのよぉ」

「可愛くねぇ、オレはカッコよくなったの」

 

 と、頬を膨らませ不貞腐れる姿もまた、彼女の母性本能を全力でくすぐり、今すぐにでも部屋に連れ込んで一日中愛でたくなってくる衝動となって楯無の精神を揺さぶっていく。

 だが、それはまた今度にとギリギリで抑え込み、ちょうど探し出すプロセスが省けた自分の目的を彼女に伝えることにした。

 

「じゃあ、そんなカッコいいヒメちゃんに朗報」

「ん……?」

「さっき、おじさま――朴月博士から連絡が入ったの」

「親父から? ってことは」

「ええ、ご明察。先程、ヒメちゃんの専用機、修理と大幅改修が完了したそうよ」

 

 その瞬間、抱きしめていた彼女の身体が強張るのを、楯無は確かに感じた。

 

「かなり大胆に改修したみたいで明日、直接届けて調整も兼ねた試運転をしてみたいと仰ってたわ。だから、マニュアルには目を通しておいて欲しいって」

「……そっか、これでようやくオレも本調子って訳だ」

 

 言葉とは裏腹に、楯無へ預けられる重さは比重を上げていく。

 それをしっかりと受け止めながら、楯無は優しく背中を擦り諭す。

 

「大丈夫よヒメちゃん、ヒメちゃんは私達が良く知るお姫様、そうでしょう?」

「……それ、いつまで引っぱるんだよ」

「無論、お墓までっ♪」

「一生かよっ!」

「あぁん」

 

 終身弄られ保障発言に、力任せに楯無を引き剥がし姫燐は吠える。

 

「だーっ! もういいっ! 充分だ! ありがとな!」

「そこでお礼はちゃんと言えるところ、お姉さん本当に胸キュン」

「胸キュンじゃねぇ! 親父のマニュアルは放課後、生徒会室で良いよなっ!?」

「もう、ツンツンしながらも、その卒のなさ。どこまでお姉さん好みなのかしら……恐ろしい子っ」

 

 もう良いだろっ!? と髪の毛以上に真っ赤になりながら走り去っていく背中を見つめながら、楯無は達筆な文字で『堪能』と書かれた扇子を開き、口元に当てた。

 

「本当、可愛いんだから」

 

 昔は少しからかえばマジ泣きされてしまったが、成長して少しタフになり、あそこまでからかい甲斐がある言動まで身につけてしまったとくれば、下手をすれば昔より更に自分好みの女の子になってしまったかもしれない。

 と、楯無はクスクスと扇子を閉じ、自分も教室へ向かって歩き出した。

 だが、確かに皆がイジメたくなるほど魅力的な少女には違いないのだが、性根は繊細で心優しいお姫様なのだ。

 いい歳なのだから余り過保護なことはしたくないが、あまり目に余ることを続けるなら今の内に釘を刺しておこうかしらと、彼女の愚痴を思い返す。

 犬耳に首輪は――まぁ、これは本音ちゃんが主導だから、やり過ぎだと判断したら上手く立ちまわって沈静化させるでしょう。と、一任。

 問題は、一夏くんの方である。

 

――あのバカ、脱ぐこと以外でオレに反抗できねぇのかよ!?

 

 と、熟したトマトのような顔で鳴き散らす姫燐の姿は一瞬でフラッシュバック出来るが、今は置いておいて、

 

「んー、流石にお姉さんも、一夏くんが露出狂だとは思いたくないのだけれど……」

 

 と、さきほど聞かされた屋上での一幕に、率直なコメントを楯無は残す。

 しかも、これが初犯では無いというから判断に困る。

 思春期特有の、女の子にちょっかい掛けたくなるアレかしら? と考えつつも、流石にいきなり上半身裸になるのは冗談で笑える範囲を越えてはいたが、

 

(そもそも……)

 

 これは話を聞き始めながらも、月日の経過で納得は出来るし、ごく普通の少女の感性として特におかしな事では無いので、そこまで気に留めてはいなかったのだが、

 

「ヒメちゃんって……そんなに男の人の裸ってダメだったかしら?」

 

……この程度のことで揺れるようでは、『楯無』は務まらない。

 そう自分に言い聞かせながらも、『楯無ではない自分』の胸に燻ぶる煙を振りはらうように、楯無は少しだけ、ここじゃない何処かへと向かう足を速めた。

 




今の私は、自らを提督とか次元の守護者とか適合者とかヘッズとかシャルの台詞作るのに時間かけ過ぎ男と規定している。
この更新遅れはそのためのものだ。

あ、イグニッション・ハーツがPS+で配信されたのでプレイしました。
自分にはハーレム物の主人公になる資格は無いと思い知らされました。

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