絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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リアルが多忙で更新遅れました;
すみません;;


波の国編
第8話 Cランク任務


「目標との距離は?」

 

 

無線越しのカカシの問いかけ。

そう、ユウたちは現在、任務の真っ只中なのである。

 

 

『5m!いつでもいけるってばよ!』

 

『オレもいいぜ』

 

『私も』

 

『こっちも準備OKです』

 

 

「よし!やれ」

 

「うりゃああああああ!」

 

 

カカシの合図と同時に、四方向から影へ向かって飛び出す。

ナルトはオロオロと逃げ道を探す影へと手を伸ばした。

 

 

「つっかまえたーっ!!!」

 

「ニャーーーーー!!」

 

 

ナルトに捕まえられた影……右耳にリボンを身に付けた猫は暴れに暴れる。

そして自分を捕縛している者へ爪で攻撃を仕掛けた。

 

 

「痛ェー!!」

 

『右耳にリボン……目標のトラに間違いないか?』

 

「ターゲットに間違いないよ、カカシ先生」

 

 

ナルトを未だ引っ掻くトラを苦笑しながら見て、一言カカシに報告する。

すると、ユウは攻撃の手を止めようとしないトラに手を伸ばした。

 

 

「ちょ、ユウ!!ソイツかなり凶暴だってばよ?!」

 

「そうよ!!もし顔に傷がついたら……!!」

 

「そうだぞユウ!そんな暴れ猫なんか、ナルトにでも運ばせろ!」

 

「え?え??」

 

 

きょとん、としながら、トラを抱き上げる。

先ほどまであんなに暴れていたトラであったが……。

 

 

「にゃーん」

 

 

 

ユウにすりより、ゴロゴロと甘えるように喉を鳴らす。

その姿は、先程の凶暴性など垣間見えないほど大人しく、ご満悦の様子だ。

 

 

「よしよし、いきなり飛び出してゴメンね?

ビックリしたよね」

 

「にゃおん」

 

「あはは、くすぐったいよ」

 

 

頭を優しく撫でられ、機嫌を更に良くしたのか、トラはご満悦の様子でユウの頬をペロペロと舐める。

それを見た3人は……サスケは顔を赤くしながら……唖然とその光景を見る。

 

 

「こンのクソ猫ォオオオオ!!なんでユウに対してはあんなに大人しいんだってばよ?!」

 

「わ、分からないわよそんなの!!

でも、ユウに抱っこされて機嫌がよくなったって感じ……」

 

「……(羨ましい……って何を考えてんだオレは……)」

 

「よし、迷子ペット“トラ”捕獲任務終了!」

 

 

そんな4人の会話を無線機を通して聞いていたカカシは苦笑しながら任務成功を言い渡したのだった。

 

 

 

 

所変わって火影邸の任務受付所。

そこでは今、ある意味壮絶な光景が繰り広げられていた。

 

 

「ニャーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

「ああ!私のかわいいトラちゃん、死ぬほど心配したのよォ~~」

 

 

ギュウギュウに抱きしめられ、苦しそうに泣き叫ぶトラ、そんなトラにお構いなしな今回の依頼主であるマダム・しじみ。

 

 

「(ギャハハ、ざまーねェーってばよあのバカネコ!)」

 

「(逃げんのも無理ないわね、アレじゃ)」

 

「と、トラ……」

 

 

し、しじみさんもうちょっと優しくしてあげて!!

今にもトラ窒息死しちゃいそうだから!!

 

涙目で、助けたそうにオロオロするユウの心境もいざ知らず、目の前でトラを窒息死させんばかりに抱きしめるしじみ。

 

 

「……さて!カカシ隊第7班の次の任務はと……。

んー……老中様のぼっちゃんの子守に、隣町までのおつかい、イモほりの手伝いか……」

 

「ダメーッ!!そんなのノーサンキュー!!

オレってばもっとこう、スゲェー任務がやりてーの!

他のにしてェ!!!」

 

「(……一理ある)」

 

「(もー、めんどいヤツ!!)」

 

「(ハー……そろそろダダこねる頃だと思った)」

 

 

大きな罰点を作りながら三代目火影、ヒルゼンに猛反発するナルトの行動は彼の担当上忍に頭を抱えさせた。

しかし、彼の言い分は最もな所もあり、サスケは一理あると思っているようだ。

サクラは嫌そうな表情を隠さずにモロに出す。

 

まぁ、出来る限り面倒ごとを避けたいっていうサクラの言い分も、早く難しい任務もこなせるようになりたいっていうナルトたちの焦りも分かるけど……。

 

ユウは思わず苦笑を浮かべる。

そんなナルトの言い分に、当然その場にいたイルカが黙っている訳がなく、彼は勢い良く机に手を置き、立ち上がった。

 

 

「バカヤロー!!

お前はまだペーペーの新米だろーが!

誰でも始めは簡単な任務から場数を踏んでくり上がってくんだ!」

 

「だってだって!このマエからずっとショボイ任務ばっかじゃん!!」

 

 

当然のごとく反論したナルトは、カカシから「いいかげんにしとけ」、とゲンコツを落とされた。

 

 

「ナルト!お前には任務がどーいうものか説明しておく必要があるな……」

 

 

そう切り出したヒルゼンに、ああ、これは長くなるなぁ、とユウはため息をついた。

 

ヒルゼンの話しを要訳すると、こうだ。

里には毎日多くの依頼が舞い込んでくる。

依頼の内容は様々なので難易度がランク分けされ、高い順にA、B、C、Dとなっている。

忍は大まかに分けて上・中・下忍と能力的に分けられ、依頼は火影ら上層部が能力にあった忍に任務として振り分けられる。

任務を成功させれば依頼主から報酬金が入り、それが忍たちの給金にもなるというシステムだ。

 

 

「とは言ってもお前らはまだ下忍になったばかり、Dランクがせいぜいいいとこじゃ」

 

「昨日の昼はとんこつだったから今日はミソだな」

 

「また?ラーメンばっかだと体に悪くないかな?

今日ウチで一緒にご飯食べようよ、せっかくだし」

 

「え!マジで!?じゃあお願いするってばよ!!」

 

「きけェエイ!!!」

 

 

背を向け、まるで話に興味がなさそうなナルト、そんなナルトに至って普通に提案を持ちかけるユウに、ヒルゼンは青筋を浮かべながら怒鳴った。

 

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

あ、でもちゃんと聞いてましたよ!!と必死に弁解するが、ナルトはどこ吹く風。

 

……とは言っても、正直さっきから廊下の方から感じる気配で話しに集中出来ないんだけど……全然気配消せてないし、一般人かな。

 

チラ、と訝しそうに廊下へ続く扉を見やり、再びヒルゼンに向き直る。

 

 

「ど……どーもすみません」

 

「あーあ!そうやってじいちゃんはいつも説教ばっかりだ。

けど、オレってばもう……!いつまでもじいちゃんが思ってるようなイタズラこぞうじゃねェんだぞ!」

 

「……」

 

 

後でどやされる、とため息をついたカカシは気付かなかった。

イルカとヒルゼンが、穏やかな表情で再び背を向けたナルトを見ていることに。

そんな二人の様子に気づいていたユウは、これまた穏やかに微笑んだ。

 

 

「分かった」

 

「え?」

 

「お前がそこまで言うなら、Cランクの任務をやってもらう。

……ある人物の護衛任務だ」

 

 

予想外の展開に驚きを隠せない4人。

ナルトは嬉しそうに笑う。

 

 

「だれ?だれ?大名様!?それともお姫様!?」

 

「そう慌てるな、今から紹介する!

入って来てもらえますかな……」

 

 

開かれる引き戸へと視線が集まる。

入ってきたのは、先ほどユウが疑問に思っていた気配の主だった。

昼間であるにも関わらず、酒瓶を手に持っている中年のおじさんである。

 

 

「なんだァ?超ガキばっかじゃねーかよ!

……とくに、そこの二番目にちっこい超アホ面、お前それ本当に忍者かぁ!?お前ェ!」

 

「アハハ、誰だ二番目にちっこい超アホ面って……」

 

 

そこで、周りと自分の身長の差を見直す。

サクラはナルトより少し大きく、サスケはサクラより大きいので当然ナルトより上だ。

頼みの綱、とばかりにユウを見やれば自分よりいくらか小さい位置にあるその頭。

その困ったような微笑みに、自分のことだとようやく気付いたナルトは依頼人へと怒りを募らせた。

 

 

「ぶっ殺す!!!」

 

「これから護衛する人を殺しちゃダメだってば」

 

 

今にも掴みかかりそうなナルトの腕を引っ張り、制止させる金髪の少女に、依頼人はほう、と感嘆の息をつく。

 

 

「それにしてもべっぴんさんじゃのぅ!ソイツが超アホ面ならそこのお嬢さんは超アイドル顔じゃのう!!」

 

 

満足そうに何度も頷く依頼人に、ユウは首をかしげ、サスケとサクラ、そしてナルトは一気に殺気立つ。

 

 

「「「殺す!!!」」」

 

「おい、さっきユウが言ってた事もう忘れたの?君達」

 

 

三人の首根っこを掴み、カカシは深くため息をついたのだった。

 

 

「わしは橋作りの超名人、タズナというもんじゃわい。

わしが国に帰って橋を完成させるまでの間、命をかけて超護衛してもらう!」

 

 

長期任務となるので、各自荷物を取りに行くため一時解散となった。

全員が室内を出たので、ユウも出ようと足を踏み出したその時だった。

 

 

「ユウ」

 

「?」

 

 

手招きをされ、執務室へと連れて行かれたユウは内心首をかしげた。

自分は何か怒られる様なことをしただろうか?

 

 

「どうしたんです?三代目」

 

「実はの、今回の任務、裏があるかもしれん。」

 

「……裏、ですか」

 

「あまり確かな情報とは言えぬのじゃが、どうやら他里の忍が今回の依頼主を狙っているという話しがあってな……」

 

「それってBランク以上じゃ……!?」

 

 

そんな任務、ナルトたちには到底無理だ、と言おうとしたユウは、今回の任務の内容を再確認してみた。

 

今回は波の国までタズナさんを送り届け、橋が完成するまで護衛するという任務。

本当に盗賊やギャングが彼を狙っているのなら、あんなに焦っているような、不安なような態度をとっているのは何故……?

もし、本当に忍絡みならば、Bランクにくり上げてもらうべき……。

だけど、波の国は今、衰退しているらしい。

そもそも衰退していったのもあまりに突然のことで、不自然だという話も聞く。

つまり……。

 

 

「Bランク任務に依頼する資金が足りなかった……?」

 

「……そういうことになるだろうのう」

 

 

相変わらず、少ない情報の中でも正解に限りなく近い答えを出していく聡明な少女に、内心満足する。

始めは戸惑うような表情を見せていたユウは、今や納得したような顔で、肩をすくめていた。

 

 

「火影様はその可能性があることを知りながらもあえて知らないフリをした……。

あたしたちを派遣することで元凶を叩き、波の国の人々を助けたい、そういうわけですね?」

 

「まぁ、そんな所かのう……これはユウがいるからこそ頼める任務じゃ。お願いできるか?」

 

「……あたしよりも、カカシ上忍に言うべきなんじゃないでしょうか?」

 

「……ワシとてそう思うが、カカシに言ったら断られてしまうだろうからのぉ……」

 

「まぁ、そうですね。

なんとか頑張ってみます。

……だれも、死なせたりしない」

 

 

真っ直ぐなユウの眼差し。

そんな彼女を作り上げてしまったのはほかならぬ自分で、ヒルゼンは頼むぞ、としか言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?ユウじゃねェーか」

 

 

木ノ葉の大門へ向かう途中、声をかけられ、振り返る。

その先には、驚いたようにこちらを凝視する黒髪の男子の姿。

 

 

「あれ、シカマル君?」

 

 

彼はユウの同級生である奈良シカマルその人だった。

頬をかきながら、シカマルはお前こそ、と問うた。

 

 

「あたしはこれから長期任務なんだ。

初Cランク任務なんだよ!」

 

「そ、そうか……って長期任務?!しかもCランク!!?」

 

 

何故かショックを受けるシカマルに首を傾げる。

自分に何か用事でもあったのだろうか?

 

 

「シカマル君?もしかして何かあたしに用事、あった?」

 

「え、あー……あのよ、そのシカマル君ってのやめねぇ?」

 

「え?うん??」

 

「だから、呼び捨てにしてくれよ」

 

 

顔を真っ赤にしながらそっぽを向く。

なんだか、シカマルがサスケの時とそっくりで、思わず笑ってしまった。

 

 

「うん、分かった。じゃあ、シカマルね」

 

「お、おう。

あ、あのよ……その……」

 

「ん?」

 

 

コテン、と首をかしげるユウに、ただでさえ出にくい言葉が更に詰まってしまう。

数瞬、視線をさ迷わせ、決心したようにそっぽをむいたまま口を開く。

 

 

「ちょ、長期任務から帰ってきたらよ……ふ、二人でどっか遊びに行かねぇか?」

 

 

よし!よく言ったオレ!!

と内心ガッツポーズをし、ユウに視線を戻すとシカマルは文字通り固まった。

なぜなら先ほどまでポカンとしていたユウは、嬉しそうに口元を弛ませ、それを隠すように口元に手を当てて、頬をほんのりと赤く染め、それでも隠しきれないというようにそれはそれは嬉しそうな笑顔を浮かべていたのだ。

それはもう、何よりもシカマルの鼓動を高まらせる原因となったであろう。

可愛らしい、表情だった。

 

どうしよう、初めて遊びに誘われた……!!

嬉しい……!!

いいのかな、こんなに喜んじゃって……

でも仕方ないよね?

たまには、素直に喜んでも……。

 

笑顔が隠せないや、と思いながら、口元に当てていた手を胸元に持っていき、嬉しくて嬉しくて仕方がない、と一目で分かってしまうような、満面の笑顔をシカマルに向け、コクりと頷いた。

 

 

「うん……!うん!

あたしで良ければ、ぜひ遊びに行きたいな!

任務から戻ってきたら一番にシカマルに知らせに行くね!!」

 

「あ、あぁ」

 

 

シカマルは、真っ赤に染まった表情を隠すことも忘れ、ぼーっとユウを見つめながら頷いた。

 

 

「あ!それじゃあ、そろそろ任務だからあたし行くね!!

誘ってくれてありがとう!本当に嬉しい!!」

 

「あ、ちょ!待て!!」

 

 

慌てて引き留めたシカマルは、紙切れをユウに手渡す。

首を傾げるユウに、ニヒルに笑って見せた。

 

 

「それ、オレの住所な。

せっかく知らせに来てくれようとしても、住所わからなかったら来れないだろ?」

 

「わ、わぁ……!!ありがとう!!

絶対に行くから!!

じゃあシカマル、いってきます!!」

 

「おぉ、気を付けて行ってこい」

 

 

最後に極上の笑顔で足取り軽く去っていったユウを見送ったシカマルの顔は、これ以上ないくらいに真っ赤で緩みきっていた。

 

 

「……あれはやべーだろ」

 

 

あんな顔、他の誰にも見せたくない。そう想いながら口元を手で隠す。

 

ヤベェ……嬉しすぎる……!!

 

その後、任務だと呼びに来たいのとチョウジに発見されるまで、シカマルはその場に突っ立って顔を真っ赤にしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「出発―っ!!」

 

 

木ノ葉の大門前。

荷物をまとめ、集合した一行。

中でもナルトのはしゃぎようは凄かった。

 

 

「何はしゃいじゃってんの、アンタ」

 

「だってオレってば一度も里の外に出たことねェーからよ」

 

「そういえば、あたしも」

 

「……それにしちゃあ温度差がありすぎるわよね、アンタたち」

 

 

キョロキョロと忙しないナルトに対し、チラッと辺りを確認する様に見渡すのみで、至って落ち着いているユウ。

確かにサクラの言うとおり温度差が違い過ぎる。

 

 

「おい!……本当にこんなガキで大丈夫なのかよォ!」

 

「上忍のカカシ先生もいますし、大丈夫ですよ!

あたしも命をかけて守りますから」

 

 

真っ直ぐな眼差しでタズナを安心させるように余裕の笑みを浮かべてみせる。

そんなユウにいささか安心することが出来たのか、タズナの心に余裕が生まれた。

 

 

「(不思議な娘じゃ……不覚にも安心できたわい)

おお、それは頼もしいのぉ!よろしく頼むぞ、嬢ちゃん」

 

「ユウの言うとおりです。上忍の私もついてますし、そう心配いりませんよ」

 

 

そんなやりとりが気に食わなかったようで、ムスっとした表情を浮かべたナルトは、タズナに食ってかかった。

 

 

「コラじじい!あんまり忍者をなめんじゃねーぜ!

オレってばスゲーんだからなぁ!

いずれ火影の名を語る超エリート忍者!

……名をうずまきナルトという覚えとけ!!!」

 

「火影っていやー、里一番の超忍者だろ。

お前みたいのがなれるとは思えんが」

 

「だーうっさい!!火影になるためにオレってばどんな努力もする覚悟だってーの!!

オレが火影になったらオッサンだってオレのこと認めざるをえねェーんだぞ!!」

 

「ま、まあまあナルト落ちついて」

 

 

苦笑いを浮かべながらナルトを宥める。

しかし、タズナはどこか、全てを否定するような目でナルトを見つめていた。

 

 

「認めやしねーよガキ……火影になれたとしてもな」

 

「!……ぶっ殺―す!!」

 

「だからやめろバカ、コイツ」

 

 

そんな会話をしながら歩き出す一行。

着いていこうとしたユウは足を止め、チラと背後の一本の木を見やり、目を細めた。

もちろん、気付いた事を見抜かれないように止めていた足をゆっくりと進めるのも忘れない。

 

この感じ……完全に忍、だね……。

もう、あの仮説は正しいと見て間違いなさそうかな。

 

一つ、ため息をつき、少し前を歩くカカシの隣に並んで歩く。

 

 

「ねえ……タズナさん。」

 

「何だ?」

 

「タズナさんの国って“波の国”でしょ」

 

「それがどうした」

 

「ねえ……カカシ先生……その国にも忍者っているの?」

 

 

振り返って問いかけるサクラ。

そんなサクラを見やり、カカシは口を開く。

 

 

「いや、波の国に忍者はいない……が、たいていの他の国には文化や風習こそ違うが、隠れ里が存在し、忍者がいる。」

 

 

カカシの話しを要訳するとこうだ。

大陸にあるたくさんの国々にとって忍里とは国の軍事力にあたり、それで隣接する他国との関係を保っている。

里と国はあくまで立場的には対等であり、波の国のように他国の干渉を受けにくい小さな島国では忍里が必要ではない場合がある。

忍里の中でも木ノ葉・霧・雲・砂・岩の五ヶ国は国土も大きく、力は絶大なため“忍五大国”と呼ばれている。

里の長が“影”の名を語れるのもこの五大国のみ。

 

 

「その火影・水影・雷影・風影・土影のいわゆる『五影』は、全世界、各国何万の忍者の頂点に君臨する忍者たちだ」

 

 

最後にカカシはそう締めくくった。

 

 

「(あのショボイジジィがそんなにスゴイのかなあ……なんかウソくさいわね!)

へー、火影様ってすごいんだぁ!」

 

「……お前ら今火影様疑ったろ」

 

 

呆れながら言えば、ギクリと反応するユウ以外の3名。

その分かりやすい反応に思わず苦笑してしまう。

 

 

「ま……安心しろ、Cランクの任務で忍者対決なんてしやしないよ」

 

「じゃあ外国の忍者と接触する心配はないんだァ……」

 

「もちろんだよアハハハ!」

 

 

ピク、と反応し、険しい表情をしたタズナに気付いたのは、ユウとカカシ、そしてサスケだけだった。

道端に水溜まりが出来ているのを見つけ、ユウとカカシはアイコンタクトをとる。

 

それが、普通のCランク任務なら、の話しだけど……。

 

ユウたちが水溜まりを通り過ぎた、その時。

 

 

「!!」

 

「なに!?」

 

「え!!?」

 

「な……なんだァ?」

 

「……!!」

 

 

突如二人の敵が水溜まりから現れ、彼らの武器であろう、鎖がカカシを捕らえ、縛り上げる。

身動きの出来ないカカシ、突然の奇襲にユウたちは臨戦態勢をとる。

 

 

「一匹目」

 

 

それを合図に、思いっきり鎖を二方向から引っ張られた。

カカシの体はバラバラに引き裂かれ、血飛沫がまい、肉片と化したカカシの体が地面へと落ちていく。

 

 

「キャー!!」

 

「カ……カカシ先生ェ!!」

 

 

咄嗟に気配を探る。

カカシはどうやら身を潜めているだけのようだ。

 

カカシ先生、やっぱり変わり身使ってたんだ……。

わざとやられたフリをしたってことは……見極めるつもりだね。

 

 

「2匹目」

 

 

一番強いであろうカカシを倒した敵は、標的をナルトへと移す。

世にも恐ろしい声色を耳元で感じ、ナルトは硬直してしまう。

敵の鎖がうねった。

サスケとユウはナルトを助けるべく、即座に動いた。

二人は同時に跳躍し、ユウが手裏剣を放ち、絶妙なタイミングでサスケからクナイが投げられ、敵の鎖に杭を打つ要領で封じた。

 

 

「!!」

 

 

鎖が外れず、身動きが出来なくなってしまった敵二人の腕にサスケが降り立つ。

両足の代わりに手で敵の腕を掴み、支えにするのと同時に軽く跳ぶ。

その反動を利用し、二人の顔面を容赦なく蹴りつけた。

瞬時に距離を取ると、敵は前のめりに倒れかける。

 

 

「フ……ッ」

 

 

今度はユウが目前に降り立ち、一息つく暇もなく一人目に裏拳を決め、二人目にサマーソルトをお見舞いした。

そのまま低姿勢で地面スレスレの所を水平に回し蹴りを決め、足をすくわれた敵は成すすべなく倒れ込む。

しかし、敵もそのままで居てくれるはずもなく、互いを繋いでいた鎖を外し、それぞれ攻撃を仕掛ける。

一人はナルトへ、もう一人はタズナの方へ。

ユウとサスケも瞬時にアイコンタクトを取り、それぞれ救出するために駆け出す。

 

 

「!!うわあ!!」

 

 

襲いかかる敵にナルトは動けず、恐怖に固まってしまい、ユウはナルトの前へと躍り出て、敵に思いっきりクナイを投げつけた。

相手の軌道をずらすことには成功した、が、いかんせん、タイミングが少し遅かった。

完全にはいかず、ユウの肩とナルトの手を掠ってしまった。

腕に痛みが走るが倒れ込むナルトを見て敵の懐へと突っ込み、渾身の蹴りを鳩尾に決める。

相手は吹っ飛ばされ、木に激突し、気を失った。

 

 

「!!」

 

「(く……!来るっ!!私が……やらなきゃ……やらなきゃ!!)

おじさんさがってェ!!」

 

 

迫り来る敵の鍵爪にサクラはクナイを構え、タズナを守るように自分の後ろへ押しやる。

そして、サクラと敵の間に躍り出たサスケは、サクラを守るように両手を広げる。

しかし、それは無意味に終わった。

 

 

「ぐォ!!」

 

 

それまで一切手を出さなかったカカシが、敵をたった一本の腕で気絶させたからだ。

いつの間にかユウが気絶させた敵も回収していて、その姿にタズナはほっと安堵の息をつく。

 

 

「ナルト……すぐに助けてやらなくて悪かったな。ユウ、お前にもケガさしちまった。

…ナルトがここまで動けないとは思ってなかったからな。

とりあえずサスケ、ユウ、よくやった。サクラもな」

 

 

ナルトは呆然とサスケとユウを見つめた。

 

 

「(オレってば何も出来なかった……なのにサスケは……。

初めての実戦なのに……ちっとも怖いって思わなかったのか?

平気なカオして服に汚れ一つつけずに……オレのことを助けたっていうのか……。

それに、ユウ、だって……)」

 

「よォ……」

 

 

敵を縛り上げるのを手伝っているユウの左肩を見つめていたナルトへ、声をかけたのは意外なことにサスケだった。

 

 

「ケガはねーかよ、ビビリ君」

 

「!!!」

 

 

完全に見下したような物言いに、ナルトは血が頭にのぼる感覚を覚えた。

そこにストップをかけたのはカカシ。

 

 

「ナルト!ケンカはあとだ。ユウもあんまり無理に動くなよ。

こいつらの爪には毒が塗ってある。

お前らは早く毒抜きする必要がある。

傷口を開いて毒血をぬかなくちゃならない、あまり動くな。毒がまわる」

 

 

毒、その単語を聞いてナルトは自分の手の甲を見つめる。

そんなナルトにユウは駆け寄った。

 

 

「ゴメン、ナルト……あたしがもうちょっと早く行けば……」

 

 

本当に申し訳なさそうな声色で、心配そうに泣きそうな目で自分を見てくるユウに、ナルトは目を合わせることができなかった。

……この少女に、こんなことで謝らせてしまった自分に、酷く腹が立った。

 

 

「タズナさん」

 

「な……何じゃ……!」

 

「ちょっとお話があります」

 

 

そう言ったカカシの声色は、とても厳しいものだった。

 

 

「こいつら霧隠れの中忍ってとこか……。

こいつらはいかなる犠牲を払っても戦い続けることで知られる忍だ」

 

「……なぜ我々の動きを見きれた」

 

「数日雨も降っていない今日みたいな晴れの日に、水たまりなんてないでしょ」

 

「それ以前に、もうちょっと殺気と気配を抑えないとね。あれじゃ雨の日でも通用しないと思うな」

 

 

素っ気なく返事を返すカカシと、トドメと言わんばかりに苦笑し、ユウは指摘してやった。

その通り、とカカシは満足げに少女に微笑む。

しかし、この会話を聞いて一つの疑問が生まれた。

 

 

「あんた、それ知ってて何でガキにやらせた?」

 

「私がその気になれば、こいつらくらい瞬殺できます……が……。

私には知る必要があったのですよ……この敵のターゲットが誰であるのかを……」

 

 

イマイチ確信に触れないカカシの返答に、タズナはどういうことかと再度問いかける。

 

 

「つまり、狙われているのはあなたなのか、それとも我々忍のうちの誰かなのか……ということです。

我々はアナタが忍に狙われているなんて話は聞いていない。

依頼内容はギャングや盗賊などただの武装集団からの護衛だったはず……。

これだとBランク以上の任務だ……依頼は橋を作るまでの支援護衛という名目だったはずです」

 

「……」

 

 

タズナは俯いたまま何も言い返せない。

カカシの言っていることがどれだけ正しいか、よく理解しているからだ。

静かにそんな二人を見つめる。

どんな展開になるのか、それ次第では自分は動かなくてはならない……。

 

 

「敵が忍者であるならば……迷わず高額な“Bランク”任務に設定されていたはず……。

なにか訳ありみたいですが依頼でウソをつかれると困ります。

これだと我々の任務外ってことになりますね」

 

「この任務、まだ私達には早いわ……やめましょ!

二人の傷口を開いて毒血を抜くにも麻酔が要るし……里に帰って医者に見せないと……」

 

「んー」

 

 

最もなサクラの意見にカカシは少し思案するようにチラリとナルトを一瞥し、やがて困ったように眉をハの字にする。

 

 

「……こりゃ荷が重いな!二人の治療ついでに里へ戻るか」

 

 

悔しそうな顔をするナルトの隣で、まさか自分まで言われるとは思わず、軽く目を見開く。

徐に傷口に手をあて、うつむく。

 

まさか、自分の不注意で任務続行不可能な状況に追い込まれるとは思わなかったな……。

あんまり使いたくなかったんだけど……仕方ないかな。

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

ようやく思考がまとまった直後、隣から聞こえてきた切り裂く音に、全員が驚愕した。

ナルトが、己の左手にクナイを思いっきり突き刺したのだ。

 

 

「(どーしてこんなに違う!どーしてオレの方がいつも……。

……ちくしょう!)」

 

「ナルト何やってんのよ!アンタ!!」

 

「ナルト……」

 

 

どうしてこんなことをするのか意味がわからない、とサクラはナルトに怒鳴る。

しかし、ユウはただ、呆然とナルトを見つめるだけだった。

……彼の気持ちが、痛い程に伝わって来るから……。

 

 

「(オレってば強くなってるはずなのに……どんどん任務こなして一人で毎日術の特訓もしてんのに……。

オレってばもう、二度と助けられるようなマネはしねぇ……。

おじけづいたり、逃げ腰にもならねェ…………。

オレはサスケにゃ負けねェ…………)」

 

 

それに、と痛みで表情を歪ませながら、自分を庇ってケガをしてしまった少女に目をやる。

いつも、一番に自分のことを心配してくれる、大切な友だち……。

それでもいつも、止めるのではなく、ただ傍で見守ってくれる、優しい友だち…………。

 

 

「(ユウにこんなマネ、もうさせたくねェ…………。

オレが、これからはユウのことを守ってやんなきゃ…………)」

 

 

だって、この小さな儚い少女は……。

強くて、だけどとても脆い存在だと、心のどこかで感じるから…………。

これ以上、この少女一人に頑張らせたくない。

自分も、その隣で共に戦いたい

 

 

「(一緒に戦いてェんだ…………お前の隣で……。

だから、この左手の痛みに誓うんだってばよ…………!)」

 

 

友情とも、恋情とも違う何かを、少なくとも今、確かに感じていたから。

堂々と背中を合わせて戦えるように、少女の隣を歩きたいと、そう思った。

 

 

「オレがこのクナイで……オッサンは守る。

任務続行だ!!!」

 

 

その瞳に確かな意志を宿し、少年は痛みをこらえながら不敵に笑った。

そんな少年に、彼の担当上忍は真面目な顔で口を開いた。

 

 

「ナルト……景気よく毒血を抜くのはいいが……。

それ以上は……出血多量で死ぬぞ」

 

「……!!!」

 

 

とても良い笑顔で語尾にハートマークがつきそうな感じでそう言い切ったカカシに、ナルトは一気に青ざめる。

 

 

「ぬぉぉ!ダメ!それダメ!

こんなんで死ねるかってばよ!!」

 

「大丈夫だから、手を見せて」

 

「ナルト!アンタって自虐的性格ね、それってマゾよ!」

 

 

泣き喚くナルトの手を苦笑しながら見るユウは、少し目を細めた。

 

流石、九尾ってところかな……。

傷口がもう治りかけてる。

 

 

「え、ユウ?

やけに真顔なんだけどオレってばマジで大丈夫?!」

 

「あはは、そんな心配しなくても大丈夫、問題ないよ」

 

「てか、ナルトが大丈夫でもユウの毒はまだ抜けてないじゃない!

何が任務続行よ、バカナルト!」

 

「サクラ、そのことについても大丈夫!何も心配いらないよ」

 

 

二人に微笑みかけ、安心させるようにそう言ったユウは、自分の指先にチャクラを集め、そっとナルトの手に触れた。

 

 

「!これって……」

 

「へぇ、ユウ医療忍術使えたんだ?スゴイねぇ」

 

「医療忍術とはちょっと違うかな……あんまり、使いたくないんだ」

 

 

苦々しげに呟いたユウは、毒が残ってないことを確認すると、傷口を塞ぎにかかるのではなく、ただ普通に包帯を巻く。

 

 

「?医療忍術使えるなら、わざわざ包帯じゃなくてもいいんじゃないか?」

 

「ううん、きっとナルトは今治してもらうの、望んでないと思うから」

 

「ユウ……」

 

「はい!おしまい」

 

 

簡潔にサスケの疑問に答え、手際よく綺麗に包帯を巻き終わったユウに、ナルトは嬉しそうに、照れくさそうに笑い、お礼を言うのだった。

そのまま自然の流れで立ち上がった彼女を見逃さず、右肩をガシッと掴むのはもちろんカカシであった。

先ほど同様、素晴らしい笑顔である。

 

 

「ユウ~?自分のもちゃんと治療しないと、な?」

 

「え、あ、い、いや~、忘れてた!!ありがとうカカシ先生!!」

 

 

思わず声が裏返り、変なイントネーションになってしまっているユウに、カカシはため息をつく。

じとーっと見ていると、渋々と言ったように自分の治療にかかる。

 

 

「……先生さんよ。ちょっと話したいことがある」

 

 

 




はい、オリジナルでシカマルとの絡みも入れてみましたww
これはこれで有りだなー程度に見て頂けると嬉しいですm(__)m

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