仕事がヤバくて中々こちらに顔を出せず、すみません……。
会社の忘年会でハッピーシンセサイザを踊ることになったんですが、いや本当にマジでどうしてそうなった。
覚えられる気がしないので途中からアドリブでおかしなダンスしようかなと考え中。
さて、どうでもいい話は置いといて……。
絆道42話、スタート!(俺物語風に)
解散を告げられてすぐシカマルに呼び止められた。
「ユウ……お前罰ゲームのこと忘れてねーか?」
「……あ!」
「やっぱりな……」
はぁとため息をつかれ、たじろぐ。
そうだった。
シカマルに予選が終わり次第罰ゲームを言い渡すと宣言されていたのだ。
「えっと……ゴメン」
「まぁ、色々あったししゃあねーか……。
罰ゲームなんだけどな……オレの家に泊まりに来るってのはダメか?」
「お、お泊り!?」
予想の遥か上を行くまさかの解答。
泊まりなんて波の国の時が初めてで……というかプライベートでなんて本当に初めてだ。
「で、でもシカマルのお母様たちは……」
「迷惑だなんて思われねーから、安心しろよ。
……つか今度泊まりに来させろって煩いの母ちゃんたちだし……」
どこか疲れたようにため息をついたシカマルに戸惑い、首を傾げる。
自分を家に泊まらせて、彼らになんの得があるというのか。
理解が出来ない頭で必死に考えていると、シカマルがまたため息をついた。
「オレが誘ってるのは別にメリットがどうとか、そういうことじゃねーからな」
「え?な、なんで考えてること分かったの?」
「お前が何考えてるか、最近少しはなんとなく分かるんだよ。だいたいそういう顔のときは、めんどくせーこと考えてる時だってな」
得意げに笑われ、気まずそうに視線を逸らす。
……めんどくさいこと、か……。
「こういうのはめんどくさいこと?」
「あ? ああ……まあ、サクラやいのだったらそこまで難しく考えないんじゃねーの?
オレは女じゃねーから、よくわからないけどよ」
「……そっか」
普通一般的な考えじゃないということが分かれば、それでいいと頷く。
それではこれはどういう基準で考え、答えを出せばいいのだろうか。
ここにはそういうことを気兼ねなく訊ねられるカカシはいない。
どうしよう、と変に焦り始めるユウの頭に乗せられた暖かな掌。
「あんま難しく考えるなって。お前が泊まってみてぇって思うなら頷きゃいいんだよ。
オレは家に来て欲しいと思って誘ったんだから」
「泊まってみたい、か……」
「そ。自分の気持ちに素直になれって前に言ったよな? まさにそれだ」
「素直に……」
目を閉じて、自分の気持ちを探す。
自分は、どうしたいのだろうか?
プライベートでの泊まりなんて初めてのことだ。
波の国でだって、なんだかんだいってほとんど家にいなかったことを思い出す。
だが、みんなで食卓を囲んで、確かに“楽しい”と思った。
“おかえりない”
“ただいま”
“いってきます”
“いってらっしゃい”
“おはよう”
……“おやすみ”
それを言って、言い返された時の、暖かさを、喜びを、確かに感じたのだ。
ユウにも、感じることができたのだ。
シカマルの家に泊まったら、と想いを馳せる。
もしかしなくても夜眠るときも、朝起きるときも、独りじゃないのではないだろうか。
挨拶をして、返されて。
ひょこっと顔を出せば自分以外の人が居て……。
それは、なんて素敵なことだろうか。
いつの間にか、独りが怖くなっていた
独りで過ごす夜が、不安で怖くて寂しくて、仕方なかった。
もう温もりに触れるのはやめた方がいいのかもしれない、とも。
……だけど
「……泊まっても、いいのかな……」
もう少し、その暖かさに触れてみたい。
もう少し触れたら、それ以上は望まないと誓うから。
自分の素直な気持ちを伝えることに慣れていなくて、不安に揺れるあたしに、答えが出るまで待っていたシカマルはただ、嬉しそうに小さく微笑んで、
「いいに決まってるだろ」
そう、頷いてくれた。
差し出された手。
その手に、この手を伸ばしてみたくなったんだ。
+++++
とりあえず泊まりに必要になりそうな着替えや歯ブラシ、タオルなどといった荷物を鞄に詰めこみ、ユウは自宅を出る。
そこにはもうシカマルが待ち構えていて、支度を終えたユウに気づくと、鞄を奪い取った。
「あ! 自分で持てるよ!?」
「いいから。どうしても気になるってんなら、これも罰ゲームの一つだってことにするけど?」
「……」
罰ゲームとはなんと恐ろしい物なのだろうか。
……シカマルは意地悪だ。
「……手、大丈夫なのか?」
「え?」
「まだ治ってねーんだろ」
「ああ……でも大丈夫だよ?」
本選までには治るだろうし、と彼女は笑うが、シカマルは笑えなかった。
「……決めた」
「え?……何を?」
「罰ゲームの追加。本選が始まるまで帰さねーから」
「ええ!?」
そんなに一杯着替えとか持ってきてないのに!? と慌てているユウに隠れてこっそり笑いつつ、シカマルは自宅を目指すのだった。
「ただいま」
「シカマル! お帰り。中忍試験どうだった……って、あら?」
「こ、こんにちは」
ヨシノと目が合い、慌てて頭を下げた。
おどおどしているその様子が可愛らしくて、目元を和らげる。
「最終試験の本選まで残ったぜ。ユウもな」
「本当に!? アンタ普段やる気ないくせにやるじゃない!!
ユウちゃんもおめでとう!」
「え……?」
「本選まで残ったんでしょう? 今日はお祝いね!」
にっこりと優しく微笑まれて、ユウは戸惑った。
今まで里の大人にこんな優しく笑いかけられたことなんてなくて……。
瞳を揺らしたユウは少し引きつったような微笑みを浮かべた。
「……ありがとうございます」
そんなユウの様子を見守っていたシカマルはポンポンと頭を撫で、ヨシノに向き直る。
「母ちゃん、試験が終わり次第ユウを泊まりに誘えって言ってただろ?
今日から泊まらせてもいいよな?」
「別にウチは構わないけど……あんたちゃんと誘えたのね」
「試験中コイツ大怪我負って利き腕使えなくなっちまってたからな……。
ユウは一人暮らしだし、ウチに泊まりに来たほうが色んな負担減ると思って早めに誘ったんだよ」
赤くなった顔を隠すようにそっぽを向き、めんどくせーと呟く。
ユウは目を見開いてシカマルを見た。
まさか、彼がそんなことを考えてくれていたとは思わなかった。
ヨシノはすぐにユウの右腕に巻かれた分厚い包帯を見て、心配そうな顔をする。
「本選までに治りそうなの?」
「え、えと……あたし怪我の治り速いですし、大丈夫だと思います……」
「そっか……」
なら良かったとまた微笑まれ、挙動不審になってしまうユウ。
ヨシノは小さく笑うと息子の肩を叩く。
「アンタもやるじゃない! 流石奈良家の息子ね!!」
「いてっ! ……そういや、親父は?」
「ああ、もう少ししたら帰ってくると思うわ。
あの人が帰ってきたら二人の中忍試験の話、色々聞かせてね」
「え?は、はい!
あの、今日からしばらくお世話になります、よろしくお願いします!」
「こちらこそバカ息子をよろしくね!
旦那が帰ってくるまでシカマルの部屋で寛いでいて?
試験が終わったばかりで疲れが溜まってるでしょうから。」
「へいへい……んじゃ、部屋行こうぜ」
「あ、うん!……本当にありがとうございます」
ぺこり、丁寧にお辞儀をしたユウはシカマルに連れられ、二階へ上がっていく。
それを見送っていたヨシノはふと、息子たちの姿と在りし日の自分たちの姿が重なり、微笑ましそうに顔を綻ばせた。
「……本当に好きな相手なら、離すんじゃないわよ―――――シカマル」