絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

41 / 42
第41話 予選終了

次に行われた第11回戦。

対戦はドス対ソウ。

音忍同士の対決だ。

試合開始の合図と共にソウが動いた。

この会場にいる何人がその動きを見切れただろうか。

 

 

「ま、これで終わりだな」

 

「勝者、風闇ソウ!」

 

 

トントンと刀を突きつけられ、ドスは冷や汗を流す。

その様子を観戦していたユウも、そしてカカシでさえも険しい表情を隠せないでいた。

 

 

「……あれは速いだけじゃない」

 

「?どういうことだってばよ」

 

「風を身にまとってるんだよ……。いや、風を味方に付けてるって言った方がいいかな……。

仮にドスがソウのスピードを見切れたとしても、バラバラにされるのがオチだったと思う」

 

「……!」

 

 

 

風を操る少年、風闇ソウ。

彼の実力に誰もが畏怖していたその時、ふとユウを振り返り、見上げてきた。

ニッと楽しげに笑んだ彼はその水色の瞳を獲物を前にする獣のような獰猛な物へと変えてユウを見据えていて、ゾクリと悪寒が走る。

体を震わせたユウに満足そうに笑い、刀を収め、彼は観戦席へと戻った。

 

続いて最終対決はレイナ対チョウジ。

何やら焼肉がどうとかでアスマに釣られていたチョウジは意気揚々とフィールドへ躍り出たのだが……。

 

 

「木ノ葉の忍ってこんなものなの? 本当、弱いのねぇ~~」

 

 

レイナちゃん、残念。

本当につまらなそうに呟き、壁にめり込んでそのまま気絶してしまっているチョウジを嘲笑う。

 

 

「勝者 冬闇レイナ!!」

 

 

レイナの試合も一瞬だった。

お得意の肉弾戦車で突っ込んでいったチョウジだったが、彼女はものともせずに蹴り飛ばしたのだ。

その細い手足のどこにそんな力があるのか。

そのまま蹴り飛ばされたチョウジは壁に激突し、気絶してしまった。

微かにチョウジの服に白い靄のようなものが見え、ユウは眉を潜める。

カカシも険しい表情で呟いた。

 

 

「……あの音忍たち、明らかに下忍レベルじゃないな……」

 

「……そう、だね」

 

 

彼らと当たったら厄介だ。

カカシの呟きは、異様に耳に残って離れなかった。

こうして第三の試験、予選は終わりを告げた。

 

 

 

+++++

 

同時刻――――――――――――――――

 

 

「予選は無事終わり…本選に入るようです」

 

 

跪き、報告するカブトに目もくれず、大蛇丸は里の景色を眺める。

腹の探り合いのような会話の後、大蛇丸はカブトにサスケを今すぐ攫うよう命令した。

ナルトの存在が、サスケに変化をもたらしてしまうと都合が悪い。

 

 

「まぁ、九尾の子と引き離すのは必須条件なんだけどね……。できればユウちゃんをさっさと引き入れてしまいたいのよ」

 

「……彼女を?」

 

 

ピクリと反応を示すカブトに内心珍しいと目を見張りつつ、大蛇丸は頷いた。

 

 

「どうやらサスケくんはユウちゃんに好意を持ってるみたいでね……。こちらとしても都合がいいし、引き入れておくに越したことはないのよ……。

ちゃんと使えるようにしてあげないと宝の持ち腐れもいいところ……勿体ないじゃない」

 

 

舌なめずりする大蛇丸にピクリと眉を動かし、カブトは難しいと思いますよ、と一言だけ告げる。

 

 

「そりゃそうよ……。今はあの耄碌爺に抱き込まれちゃってるみたいだしねェ。

レイナたちとの約束もあるし、今すぐにとは言わないわ……。

出来るだけ早い内に手元に置いておきたいけれど……今はあくまでもサスケくんが優先よ」

 

「………」

 

「ふふ……私はいつでもアナタを迎え入れてあげるわ……」

 

 

ねぇ、ユウちゃん……。

 

 

+++++

 

 

「!!」

 

 

1ヶ月後に本選が行われるとヒルゼンから説明を受けた予選突破者たちは、アンコの持つ箱から一枚ずつくじを引いていっていた。

ユウの番号は11。

シカマルの隣りに並び、他の予選突破者がくじを引き終わるのを待っていたその時、ふと感じた凍りつくような悪寒にバッと背後を振り返る。

 

 

 

「……?」

 

「? どうした、ユウ」

 

「……なんでも、ない……」

 

 

ピリピリする首すじを抑えて、ユウは再び正面を向く。

確かに感じたことのあるそれに、気のせいだとは思えなくて、膨れ上がる不安に戸惑っているユウをシカマルは見つめていた。

 

 

「よし……全員取ったな。ではその紙の数字を左から順に教えてくれ!」

 

「9よ」

 

「10、だな」

 

「1だってばよ」

 

「7」

 

「5」

 

「3」

 

「8」

 

「11です」

 

「2」

 

「6」

 

 

上からレイナ、ソウ、ナルト、テマリ、カンクロウ、我愛羅、シカマル、ユウ、ネジ、シノの順。

そしてこの中の抜けている数字……4番がサスケになるのだろう。

くじの結果をイビキが記入していく。

 

 

「ではお前達に本選のトーナメントを教えておく!!」

 

「え――――!!?」

 

「そのためのくじ引きだったのか!」

 

「ではイビキ、組み合わせを前へ」

 

「ハイ」

 

 

ナルト 対 ネジ

我愛羅 対 サスケ

カンクロウ 対 シノ

テマリ 対 シカマル

そしてユウは一回戦他の受験者より多いようで、ソウとの対戦の後、レイナとの対戦ということになった。

 

 

「(ユウがあのヤベェ音忍2人と当たるのか……!?

しかも一回戦多いし……大丈夫なのかよ………)」

 

 

思わずナルトやシカマルはユウへと視線を向けるが、当の本人は至って冷静。

むしろ予想通りだったのか、落ち着いていた。

 

 

「(やっぱり、こうなるよね)」

 

 

スッと音忍二人の方を見れば、こちらをずっと見ていたらしいソウと視線が合った。

ソウは楽しそうに口角をあげ、ペロリと舌を出してみせる。

 

 

「ではそれぞれ対策を練るなり休むなり、自由にするがよい。

これで解散にするが、何か最後に質問はあるか?」

 

「ちょっといいっスか」

 

 

挙手したシカマルにうむ、と頷く。

 

 

「トーナメントってことは、優勝者は一人だけって事でしょう……。

つーことは……中忍になれるのはたった一人だけってことっスか?」

 

「いや、そうではない。この本選には審査員としてわしを含め、風影や任務を依頼する諸国の大名や忍頭が見ることになっておる。

その審査員たちがトーナメントを通してお前たちに絶対価値をつけ、中忍としての資質が十分あると判断された者は、例え一回戦で負けていようとも中忍になることができる」

 

「ということは……ここにいる全員が中忍になれる場合もあるってことか?」

 

「うむ。じゃが逆に……一人も中忍になれん場合もある!

トーナメントで勝ち上がるということは自分をアピールする回数が増えるということじゃ。

分かったかのォ……シカマルくん!」

 

 

 

頷きながらもめんどくさそうな顔をするシカマルに苦笑し、ちょいちょいと服の裾を引っ張る。

それに気付き、なんだ?と目で訴えれば、頑張ろうね、と口パクで告げ、ふわりと笑む。

しょうがねぇなぁ、と頭をかき、視線を逸らしながら頷いた。

 

…ユウに言われちゃ、やるしかないか。

 

 

「ではご苦労じゃった!ひと月後まで解散じゃ!」

 

 

様々な思惑が渦巻く第三の試験本選。

それまでに挑戦者たちへわずかな休息を。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。