絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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下忍選抜編
第4話 結成、第七班


あの卒業試験から早くも一週間が経った。

この一週間の間、ユウは忍者登録書を書いてヒルゼンに提出したり、必要になるであろう忍具を買い揃えたりしていた。

 

そして今日は下忍説明会当日。

班決めなどが行われるこの日は忍者になるための第一歩だ。

 

いつも付けていた黒い布の代わりに額あてを額に付け、会場入りを果たしたユウ。

指定されていた教室の引き戸をガラリと開けると既にナルトもサスケも来ていた。

 

 

「お、ユウ!!おはよーだってばよ!!」

 

「おはようナルト。サスケもおはよう」

 

 

ニッコリ笑いかければサスケも右手をあげ、ああ、と返してくれた。

そのやりとりを見ていたナルトは何故か不機嫌そうにムスッとする。

 

 

「ユウってばいつの間にサスケなんかと仲良くなったんだよ?」

 

「え?んーっと……卒業試験の日に友達になったんだよ、ね?サスケ」

 

「(……友達……)あ、ああ……まあ、な……」

 

 

突然サスケの背後に負のオーラが漂い始め、ユウとナルトは2人で顔を見合わせ、再びサスケを見て首をかしげた。

 

んー……サスケ、元気ないけどどうしたんだろう?

ってそれよりもそろそろ席につかないと!通行人の邪魔になるし!!

 

キョロキョロと辺りを見回し、誰も座っていない席を探していると突如声をかけられた。

 

 

「なぁ!席探してンだったらオレの隣に来いよ!」

 

「ワンワン!」

 

 

声をかけてきたのはフードを被り、頭の上に小さな白い毛並みの忍犬、赤丸を乗せている少年、犬塚キバだった。

話したことはおそらく無いが、同じクラスだった少年だ。

 

 

「え、でも……いいの?キバ君」

 

「お、オレの名前覚えてんだ?」

 

「うん!同じクラスだったよね?」

 

 

花が咲いたようなユウの笑顔を直に受け、途端にキバは真っ赤になる。

そして赤丸は何を思ったか、キバの頭の上からジャンプし、真っ直ぐユウの元へ。

 

 

「ふわっ?!」

 

 

持ち前の反射神経で何とか赤丸をキャッチするも、ストン、と尻餅をつく。

赤丸は嬉しそうにユウの顔をペロペロ舐め、尻尾を千切れんばかりにぶんぶん振った。

 

 

「何やってんだ赤ま、る……!!?」

 

 

何故赤丸を咎めようとしたキバが停止してしまったのか……。

それは目の前に広がる光景が原因だった。

 

 

「ははは、赤丸くすぐったいよ~」

 

「ワン!クゥ~ン……」

 

 

まるで赤丸とユウの周りだけ切り取られたように世界が違う。

二人(一人と一匹?)の周りには花畑が見える始末だ。

しかもユウの満面の笑みを見せられてはこの雰囲気を壊すのもなんだか忍びない。

まるで幻術にかけられたかのようだ。

そこまで考えたキバはハッと我に返ったように勢いよく首を横に振り、赤丸を抱き上げる。

 

 

「赤丸危ないじゃねーか!勝手に飛びついたりしたらユウがビックリするだろ?」

 

 

怒られた赤丸はクゥ~ンと鳴き、ユウは立ち上がってズボンについた埃を払う。

 

 

「キバ君、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。ちょっとビックリしただけだから」

 

「ならいいんだけどよ……」

 

 

ニコッと笑いかければ再び顔を真っ赤にするキバ。

風邪だろうか、とこてりと首を傾げる。

 

 

「ユウーーーー!!キバなんかほっといてオレの隣に来いってばよ!!」

 

「ナルトてめぇオレが先に誘ってんだぞ!!!」

 

「ンなこと知るかァ!大体、ユウと先に友達になったのはこのオレだってばよ!!!」

 

 

ンだとォ!やるかァ!!などのナルトとキバの怒声が教室内を飛び交う。

止めたほうがいいのだろうか。

あたふたしていると手を誰かに握られ、ユウはビクッと体を震わせる。

 

 

「ユウ、そんなウスラトンカチ共は放っておいてこっち来い」

 

「サ、サスケ?」

 

 

ユウの手を引いたのはサスケだった。

そしてサスケはケンカしているナルトとキバを放置し、ユウを引き連れて先ほどまで座っていた席へと連れて行く。

そしてサスケが近づいてきていたことに気づかなかったユウは気配に気付かないなんて、と内心落ち込んだ。

サスケに促され、サスケの隣に腰掛ける。

すると周囲からの視線が二人に集まった。

 

 

「……や、やっぱり席変えようかな……」

 

 

周りの視線が怖い、と逃げ腰になってしまい、微笑んでごまかそうにも顔が引き攣る。

しかしサスケはムッとしてユウを引き止めた。

 

 

「今更席変えようとしてもアイツらのケンカがヒートアップするだけだ、そこに座っておけ」

 

「う……」

 

「……それとも、オレの隣はイヤなのか?」

 

 

いささか悲しそうな顔をするサスケにサスケを見ていた女子たちは顔を真っ赤にして黄色い悲鳴をあげていた。

 

……サスケそんな悲しそうな顔されても……。

サスケの隣に座るのがイヤなんじゃなくて、あなたのことが好きな女の子からの殺気を込めた視線が怖いだけなんですが……。

 

 

「い、イヤじゃない!イヤじゃないよ!!」

 

 

そんなことはとてもじゃないが言えないユウは必死に否定し、結局満足げな顔をするサスケの隣りに座ることになってしまった。

そんなとき、ようやくナルト達はケンカをやめたかと思うとこちらを指さしてあー!!っと叫ぶ。

 

 

「ユウ!なんでサスケなんかの隣に!!?」

 

「な、なんでって……誘われたから?」

 

「オイナルト!おまえのせいだぞ!!!」

 

「なんだとォ!?オメェだって責任あんだろォ!!!」

 

「へ?え??あの、ちょっ……」

 

 

止める隙もなく再び口喧嘩を始める二人に困惑するユウを見てサスケはため息を吐いた。

 

 

「このウスラトンカチ共……!!

ユウが困ってんだろォが……ケンカなら余所でやれ」

 

「「うぐっ……」」

 

 

オロオロしているユウを見て二人はもう一度睨み合った後、自分の席についた、その時、

 

 

「ちょっとそこの席通してくれる!」

 

 

ほう、と安堵の息を吐く間もなく、声がかけられた。

その声に応え、そちらを向くと桃色の髪が印象的な女子が目に入った。

 

 

「(サ……サクラちゃん!!)」

 

「え~っと……」

 

 

確か……春野サクラちゃん、だっけ?

 

ポッと頬を赤く染めたナルトは、桃色の髪の少女……春野サクラを見つめる。

 

 

「(も……もしかしてオレの隣に……)」

 

「ナルトどけ!私はアンタの向こう側に座りたいのよ!」

 

「え?」

 

 

ナルトの淡い期待を見事に裏切ったサクラは、しゃーんなろー!っと独特の口癖で怒鳴っている。

ナルトは向こう側にいる者……つまり、サスケをキッと睨み、ユウはそんな三人に思わず苦笑いを浮かべた。

 

 

「なんだよ!」

 

「てめーこそなんだよ!「サスケくゥんv隣いい!?」グォ!!」

 

 

負けじと言い返したナルトだったが、サクラに全体重をかけられて潰されてしまった。

結局サクラはサスケとナルトの間に座ることになった。

スス、っとだが、サスケにすり寄っていくサクラを見るナルトは非常に不機嫌である。

 

 

「(今日こそサスケ君をゲットしてやるわ!!ファーストキッスは私が奪うのよ!!)」

 

 

ポッとサスケを見つめ、頬を染めるサクラはしゃーんなろー!と心中で決意を改めて固めた。

 

 

「(サクラちゃん目がイッちまってる)」

 

 

目をハートにして更に距離を詰めていくサクラを見ていたナルトは不機嫌そうに眉尻を釣り上げる。

ユウに至っては微笑まし気に見ていたが、人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死ぬというしな、と思い、家から持参してきた本を読み出している。

 

 

「(ムムー、ユウは本読み出してるし……てか、こんな奴のどこがそんなにイイんだってばよ……分からん……)」

 

 

アカデミー男子なら一度は疑問に思ったであろうことを考えるが、当然ナルトに結論を出せるはずもなく、何を思ったか机にあがり、真っ正面からサスケの顔をガン見し始めた。

 

 

「てめェーナルト!サスケ君にガンたれてんじゃないわよ!!」

 

「どけ!」

 

「フン」

 

 

サクラのそんな怒鳴り声が響き、ユウがそちらを向くと互いに敵意剥き出しで睨み合うサスケとナルト。

苦笑いを浮かべていると、そんな二人を見ていたギャラリーの女子たちがサスケを応援し出した、そのときだった。

 

 

「えーうっそー!!」

ドン

「え?」

 

 

偶然ナルトの後ろの席に座っていた男子が会話の最中、腕をナルトにぶつけてしまった。

 

 

「あ!……わりィ!」

 

「え……え……」

 

「……へ?」

 

 

二人に注目していた者、全員が固まった。

しかし、そんなリアクションは仕方のない事。

ブチュ!!

ぶつかった拍子とはいえ、男同士である二人がキスしてしまったのだから。

そんな光景を目にしてしまったサクラはというと俯いてプルプルと震えている。

 

 

「てめ……ナルト!殺すぞ!!」

 

「ぐぉおォオ……口が腐るゥウ~~~~!!!」

 

 

オエー!!と喉を押さえて吐き気と格闘している二人にトドメを刺すかのようにきょとりとしたユウが口を開いた。

 

 

「……二人共、実は仲良かったんだね!」

 

「「違う!断じて違う!!」」

 

 

仲良きことは美しきかな、とでも言い出しそうなキラキラとした笑顔に全力で否定する。

あらぬ誤解をするなと言わんばかりの剣幕だが、ユウは友達ってなんかすごいなぁ、と感慨深そうだ。

あ、友達なんだ、と少しだけホッとしたナルトだったが……。

 

 

「(はっ!!殺気!!)」

 

 

おぞましい殺気に引きつった表情でそーっと後ろを振り返る。

そこには……。

 

 

「事故……事故だってばよ!!」

 

「……ナルト……あんたね……うざい!」

 

「え?」

 

 

鬼のような顔で拳をポキパキと鳴らすサクラがいた。

涙目で滝のように汗を流すナルトの断末魔が響き渡ったのはその数十秒後のことだった。

 

 

「今日から君達はめでたく一人前の忍者になったわけだが……しかしまだまだ新米の下人、本当に大変なのはこれからだ!」

 

 

イルカの話を聞きつつ、そーっとナルトの方を盗み見ればやっぱりボコボコの姿。

あれから随分と酷いリンチにあったらしく、顔の原型すら留めていない。

やはり止めるべきだったろうか、と内心後悔するも、リンチ中の彼女たちの形相を思い出し、フッと遠い目をする。

 

ごめんねナルト。

あれはちょっとあたしでも怖い。

 

 

「えー……これからの君達には里から任務が与えられるわけだが、今後は3人1組(スリーマンセル)4人1組(フォーマンセル)の班を作り、各班ごとに一人ずつ上忍の先生が付き、その先生の指導のもと任務をこなしていくことになる」

 

「(ちィ……3人1組(スリーマンセル)4人1組(フォーマンセル)……。

足手まといが増えるだけだな。

……ユウを除いて、だが……)」

 

「(絶対!!サスケ君と一緒になるわよ!!)」

 

「(まずユウと、サクラちゃんと……他はサスケ以外なら誰でもいいや!)」

 

「(3人1組(スリーマンセル)4人1組(フォーマンセル)かぁ……今のとこ、仲良くなってきたナルトかサスケが一緒だったらいいな。

あ、でもキバ君が一緒でも楽しくやっていけそうかな)」

 

 

上から順に悪態を吐くサスケ、サスケと同じチームになると闘志を燃やすサクラ、そしてサスケ以外なら誰でもいいナルト、いささか不安なユウの心境だ。

 

 

「班は力のバランスが均等になるようこっちで決めた」

 

「えーーーーーーーーー!!」

 

 

イルカの一言に全員が大ブーイングだ。

それを見て苦笑しつつ、ユウはため息を吐く。

 

自信ないや……。

せめて仲がいい人と一緒だったらいいんだけど。

 

そんなユウに隣の席から声がかかった。

 

 

「ユウ」

 

「うん?どうしたの?サスケ」

 

「同じチームになれるといいな……お前なら足手まといになんかならないだろうし、なったとしても……」

 

 

お前が傍にいるのなら、オレはそれでいい……。

 

そこで黙り込んでそっぽを向いたサスケに対し、そんなことを言ってくれるとは思ってもみなかったユウは瞬きした後、柔らかく微笑んだ。

 

 

「うん、そうだね。同じチームになれたらいいね!

あたし、サスケの足手まといにならないように頑張るよ」

 

「!あ、ああ」

 

 

真っ赤になってまたそっぽを向くサスケにユウはきょとん、と首をかしげた。

順調に第6班まで発表されたが、未だにユウの名前は出ていない。

 

 

「じゃ 次7班。春野サクラ……うずまきナルト!」

 

 

ヤッター!!と立ち上がって両手を上げながら大喜びのナルトに対し、サクラはガクっとあからさまに落ち込んだ。

 

そ、そこまで落ち込まなくても……。

 

そんな二人を気に留めず、残りの班員を発表しようと口を開く。

 

 

「それと……うちはサスケ」

 

 

今度はサクラがしゃーんなろー!!と大喜びする番で、ナルトがガク!と落ち込む番だった。

 

んー、二人とも同じ班になれなかったなぁ、

せめてキバくんと一緒だったらいいんだけど…。

 

7班はこの三人だろうと思い、ユウはやや落ち込む。

 

 

「イルカ先生!!よりによって優秀なこのオレが!何でこいつと同じ班なんだってばよ!!」

 

「……サスケは卒業生28名中、一番の成績で卒業。

ナルト……お前はドベ!いいか!班の力を均等にするとしぜーんとこうなんだよ」

 

「フン……せいぜいオレの足引っぱってくれるなよ、ドベ!」

 

 

サスケの言い分に怒りでプルプルと震えるナルト。

 

 

「何だとォコラァ!!!」

 

「いいかげんにしなさいよナルト!!」

 

 

怒鳴るナルトを制するサクラ。

 

……このチーム、最初はチームワークの欠片も無いかもって思ったけど。

結構いいチーム、かもしれないな。

 

フッと寂しそうに微笑むユウだったが、次のイルカの一言に驚くことになる。

 

 

「お前ら、まだそれで7班が全員だとは誰も言ってないだろ?」

 

 

やれやれ、とでも言いたげに首を横に振るイルカに、7班の三人は一気に静まりかえり、イルカへ注目する。

 

 

「この班は人数の都合上、4人1組(フォーマンセル)とする!

残り、最後の一人は…………琥珀 ユウ!」

 

 

……え?

 

思わずバッと顔をあげたユウの目に映ったのは、ニコリと優しく微笑むイルカ。

 

あたし、この、班……?ホントに……??

 

 

「やったー!!ユウ!同じ班だってばよ!!やったな!!」

 

「フン……一緒のチームになれたな」

 

「よろしくね!!ユウちゃん!!」

 

 

笑顔で迎えてくれたナルト達にこの班になれて心の底から良かったと思った。

 

 

「(……ま……どうにかやっていけそうかな!ナルトの奴も……)

じゃ、みんな午後から上忍の先生達を紹介するからそれまで解散!」

 

 

イルカの一言を皮切りに一斉に行動に移した。

ユウはお弁当を出してナルト達と食べようと思った……のだが……。

 

 

「あれ?……いない……」

 

 

ガクッと肩を落とし、仕方がない一人で食べようと立ち上がった時だった。

 

 

「あれ?ユウじゃねーの!どうしたんだ??」

 

「あ、キバ君……あはは、ナルト達どっかにいっちゃって……」

 

「……ユウも大変だな……」

 

 

忘れ物でもしたのか、教室に入ってきたキバはユウに気付き、話しかけてきた。

まだ残っている理由を聴くと納得したように苦笑し、しばし考え込む。

 

 

「(んー、まぁアイツらだし、ユウの事拒むわけないよな)……じゃあオレ達と昼飯食おうぜ!」

 

 

一人で食べるなんて寂しいだろ?と笑いかけるキバ。

 

 

「え?良いの??……でも、お邪魔じゃないかな……」

 

「ンなこと心配するなって!!

……それに、下忍の任務が正式に始まれば会う事も少なくなっちまうだろうし」

 

 

若干寂しそうに笑ったキバに、ユウも寂しそうな顔をした。

 

そっか、キバ君とは班別れちゃったから……。

 

 

「うん、それじゃあお言葉に甘えてお邪魔しちゃおうかな」

 

「ああ!じゃあ行こうぜ!!」

 

 

キバに連れられ、ユウはある場所に連れてこられた。

既にそこにはサングラスをかけた少年と、黒い髪の少女がおり、キバは片手をあげる。

 

 

「悪ぃ!遅くなった!!」

 

「別に構わない。なぜならチームメイトを待つのは当然のことだからだ」

 

 

そう答えたのはサングラスをかけている少年……元クラスメートの油女シノ。

 

 

「シ、シノくんの言うとおりだよキバくん。だ、だから気にしなくてもだ、大丈夫」

 

 

あわあわとしながらシノに続いたのは黒髪の少女……これまた元クラスメートの日向ヒナタだ。

 

 

「あ、そうそう!昼飯なんだけどよ、ユウも一緒に食って良いか?」

 

 

その一言で二人の視線がキバの背中に隠れていたユウに注目する。

 

あ、無意識で気配消してた……。

 

そりゃ気付かないよねーっと考えていると、顔を真っ赤にしたヒナタが歩み寄る。

 

 

「あ、あの……ユウちゃんだよね?ユウちゃんなら全然お、オッケーだよ!」

 

「え?あ……でも、ホントに良いの?ヒナタちゃん、シノ君」

 

 

せっかく初めてのチームメイトでの昼食邪魔しちゃって、と消え入りそうな声で問いかけると、ヒナタはぶんぶんと首を横に振った。

 

 

「わ、私はユウちゃんが良ければ一緒にお昼食べたいな!」

 

「ヒナタの言うとおりだ。なぜなら、チームメイト同士でならこれからいつでもできるが、他のチームになってしまったユウとはいつでもというわけにはいかなくなるからだ」

 

「ヒナタ!お前はテンパり過ぎ!シノは説明長ったらしいんだよ!!

……ま、でもそういうこった!こいつらも、もちろんオレも大歓迎だぜユウ!!」

 

 

キバたちの嬉しすぎる厚意にジーンと感動し、ユウは笑った。

 

 

「ありがとう!じゃあ、お邪魔させてもらいます」

 

 

そこからは楽しい昼食となった。

こんなに楽しい食事は初めてかもしれない。

ナルトやイルカと行った一楽は結局ユウは食べれなかったのである。

 

三人の事を呼び捨てで呼ぶことになり、軽い談笑を楽しんでから辺りを散歩するため、三人と別れた。

 

ナルトたち……どこでお昼食べたのかな……。

 

 

「まーたまたぁ、話そらしちゃって一一。ナルトやユウちゃんなんてほっときゃいいじゃない!」

 

 

その時、見知った声が聞こえ、咄嗟に気配を消し、木の上から下を見ればサクラとサスケの姿。

 

……あたしとナルトをほっとけばいいって……何の話……?

 

 

「ナルトはサスケ君にいつもからむばっかりだし、ユウちゃんはいつもオドオドしてるっていうか……自信なさげでさ!ちょっとウザイのよねー!」

 

 

……ウザイ、か……。

 

あはー、と苦笑して若干落ち込んでしまう。

 

 

「やっぱりまともな育ち方してないからよ、アイツら!」

 

 

返す言葉もなかった。

ナルトはともかくユウは本当にまともな育ち方をしてないことを誰よりも自覚していた。

 

 

「ホラ!アイツら両親いないじゃない!?」

 

 

その一言に、歩きだそうとしていたサスケが止まり、表情が一変した。

それに気付かないサクラは、口を開き、ナルトたちにとって残酷な言葉を吐き続ける。

 

 

「いつも一人でワガママしほーだい!!私なんかそんなことしたら親に怒られちゃうけどさ!」

 

 

まあ、そういう考え方もあるにはあるけど……。

 

苦笑を浮かべていたユウは、だんだんとそれすらも消えていく。

ただ、静かに、感情の見えない瞳でサクラとサスケのやりとりを見る。

 

 

「いーわねーホラ!一人ってさ!ガミガミ親に言われることないしさ。

だからいろんなとこでワガママが出ちゃうのよ」

 

「……孤独」

 

「え?」

 

 

ここまで来て、初めてサスケが口を開いた。

その声のあまりの冷たさに、マズイと思ったが、既に遅かった。

 

 

「親にしかられて悲しいなんてレベルじゃねーぞ」

 

「ど……どうしたの急に……」

 

 

オロオロするサクラへ振り返り様に、サスケは言った。

 

 

「お前、うざいよ」

 

 

嫌な風が二人の間を吹き抜け、サクラは放心状態で去っていくサスケを見送った。

気配を消していたユウはため息をつき、木から飛び降りてサクラの前に姿を現す。

 

 

「!!っユウちゃん……ッ!?

……今の、聞いてた、わよね……」

 

「うん。ごめんね……悪いとは思ったんだけど……」

 

 

サクラはそれを聞いて視線をあちらへこちらへと彷徨わせる。

ナルトに関しての悪口はホントに思っていたことだったのだが、ユウの事は咄嗟に口をついて出てしまったものである。

ユウを探していたサスケ……サスケが好きだからこそ、その対象者であったユウに嫉妬してしまい、悪口まで言ってしまったのだ。

ホントはユウと仲良くなりたい……そう思っていたのだが、今のを訂正しても仲良くなんて無理なのではないか、とサクラが落ち込みはじめたその時だった。

 

 

「ゴメンね、サクラちゃん」

 

「え?」

 

「いや……あたし、サクラちゃんからしたらただウザイだけなんだよなぁっておもって……。

だって普通、イヤだよね~!ウジウジしてばっかりなんて!!

あたし昔から自分に自信なくて……でもそんな自分に負けたくなくて……それなのに、そう思ってるのに誰に話しても自信無し!そんな自分が情けなくて……。

おまけにチビでブスで最悪じゃん!良いトコなんて一つもないってね」

 

 

あはは、と頬をかきつつ本音を吐き出すユウに、サクラは目が点になる。

アカデミーの時、彼女は一人でいたにも関わらず、毎日アカデミーに通い、本当に何でもできて可愛らしくて、まさにサクラの憧れだった。

サクラからしてみれば、それなのに何故誰かと話すとオドオドしているんだろうと不思議で仕方なかったくらいだ。

だからこそ、今のユウの発言が信じられなくもあり、これが親という存在がいないことでもあるのかとも思った。

 

 

「だから修行、頑張ってたんだ……でも、身体ばかり鍛えても心は弱いままで、対人関係も上手くいかなくて……。

多分、自分の中で“どうせ忍になるんだから対人関係が上手くならなくてもきっと大丈夫”って、変に諦めがちだったのかもしれない。

……そんな人、誰も認めてなんてくれないのにね」

 

 

“誰も”……その言葉が、異様にサクラの心を揺らがせた。

サクラの場合、虐められても両親はサクラを大切にしてくれた、守ってくれた。

存在価値を、認めてくれた。

 

そんな人がいないユウは、どれだけ辛かっただろう……?

誰も何も教えてくれない……。

真っ暗闇な“孤独”の中で。

 

 

「ねぇ、サクラちゃん。あたしはどう言われても、どう思われても良い。

……だけど、ナルトはあたしが諦めがちだったことも、諦めずに頑張ってる、毎日笑ってる。

だから、ナルトに対してそういうこと、言わないでくれないかな?」

 

「ゴメ……ッホントにゴメンねッ!!ユウちゃんやナルトの気持ち、全く考えずに私……!!」

 

「え?え?!な、泣かないでよサクラちゃん」

 

 

あわあわしているユウにゴメンと謝り続けるサクラ。

 

 

「えっと……次に、生かせばいいんじゃないかな……?」

 

「……え?」

 

「だから、その……言ってしまったことややってしまったことを後悔してしまっているなら、次は同じことで失敗しないように、後悔しないようにすれば……いいんじゃ……ないかな?」

 

 

最後は消え入りそうな声でそう言うとサクラは俯いていた顔をあげた。

 

 

「……うん、私、そうするね。

ありがとうユウちゃん」

 

「お、お礼なんていいって!!あ、あたしのこと、呼び捨てでいいよ?

あたしもサクラって呼ばせてもらえるなら、そう呼ぶから……」

 

 

また自信なさげにがっくし肩を落としたユウに、サクラは笑った。

 

 

「あはは!!良いに決まってるじゃない、ユウ」

 

「!!……ありがとう、サクラ」

 

 

照れくさそうにニッコリ笑いあった二人は、一緒にアカデミーへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがナルトの家ねぇ……」

 

「そうだ」

 

 

その頃、ナルト宅に銀髪の覆面男と三代目火影、猿飛ヒルゼンが来訪していた。

……無断で、だが……。

テーブルに置いてあった牛乳パックを手に取り、この牛乳かなり賞味期限が過ぎている、などとどうでもいい(?)ことを考えている銀髪の男にヒルゼンは話しかける。

 

 

「まぬけな奴だがお前に見晴らせるのが一番だ。お前は鼻がきく。

それから……お前の受け持つ班には例のうちは一族のサスケもいる。

そして……神龍の琥珀ユウもな……」

 

「!」

 

 

銀髪の男は目を見開いた。

 

 

「なんじゃ?お前もあの子に何か思うところがあるのか?」

 

「いえ……ただ、大丈夫なのですか?」

 

「あの子は優しい子じゃ、むしろ、一番の被害者はあの子なのじゃ……。

そんな子が、やると思うか?

わしはあの子を、そしてお前を信じておる。健闘を祈るぞ!」

 

「……了解」

 

 

こりゃ大変なことになりそうだ……。

 

でも。

 

ようやく会えるね、ユウ――――。

 

 

 

 

 

 




長くなってしまいすみません(汗
さてさて、次回はとうとうあの人が登場しますよ、と。

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