絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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第31話 サクラの決意

 

リーがユウたちの助太刀に入った、その同時刻、下忍第十班シカマルたちはというと……。

 

 

「あ~~ん!弱そうな奴なんて全然見つかんなーい!!」

 

 

弱そうな受験生を探し、その書を狙おう作戦を実行中だった。

うまくいかない確立の高いその作戦にいのは苛立ったように愚痴る。

 

 

「つーかな……オレらより弱いっつったらナルトチームぐらいだっつーんだよ」

 

「!!バーカ!何言ってんのー!!」

 

「何が!?」

 

「ナルトとサクラは確かにヘボだけどー!

あそこは超~~天才サスケ君がいるでしょォー!!」

 

「フン、どうだかな……実戦じゃあ、その天才も案外モロいもんだぜ」

 

 

実際にもあるデータ上の話をしたつもりだったが、いのはサスケの悪口だと思ったらしい。

鬼の形相で睨んできた。

 

 

「ハイハイ悪かったよ!カンに障っちまって!」

 

 

ったくメンドくせー奴……。

サスケのことちょっとでも悪く言うとガンつけやがんだよな、いつも……。

……ちょっとはユウやヒナタを見習って欲しいぜ

 

ユウは何をしているだろうか、と若干現実逃避に陥りながらシカマルは棒読みで謝った。

 

 

「サスケ君がやられるわけないじゃなーい!

フン!サクラなら別だけどー!」

 

「あ!サスケがブッ倒れてる」

 

「!!」

 

「――――で、サクラとユウが戦ってる」

 

 

ある方向を指差し、そう告げたチョウジを睨みつける。

が、最後の一言に二人は過剰なまでに反応し、そちらをみやった。

 

 

「あ!」

 

「なんでアイツ……!?」

 

 

あんなボロボロになって戦ってんだよ……!?

 

 

+++++

 

リーは師に教わったことを思い出しながら、バンテージを解き、構えた。

 

 

「(ガイ先生……では心おきなくあの技をやります。

なぜなら今がその……)」

 

「(あの構えは……)」

 

「フン」

 

 

大切な人を守る時!!

 

腰を落とし、リーはドスの前から消えた。

その直後、動揺したドスの元へ体を滑り込ませ、顎を蹴り上げる。

上空へと蹴り飛ばされたドスを追い、影舞踊でドスの背後に付いたリーは彼にバンテージを巻きつけ、拘束する。

そこから体制を変え、回転しながら頭から落下していく。

 

 

「あれじゃ受け身もとれねぇ!!ヤ……ヤバイ!」

 

 

印を結ぶザクを見て、そちらへクナイを放り投げようとした直後、音忍唯一のくノ一、キンがユウへと襲いかかってきた。

降りかかる千本をクナイで払い、キン目掛けて光の弾丸を飛ばす。

それも避け、キンは大きく後ろに後退した。

その時、ふわ、とした普通の地面では考えられない感触にまさかとザクを振り返ればニヤリとした笑みを浮かべている。

 

 

「!最初からこれが目的で……!」

 

 

気付いたが、もう遅かった。

リーの表蓮華が炸裂し、ドスを頭から地面に叩きつけ、彼らから距離を取って着地する。

地面に頭がめり込んでいるドスだが、やはり違和感があったのか、リーは緊迫した面持ちで彼らを伺う。

 

 

「やれやれ……どうにか間に合ったぜ」

 

「フー……」

 

「!!バ、バカな」

 

「恐ろしい技ですね。土のスポンジの上に落ちたのにこれだけ効くなんて……。

次はボクの番だ」

 

 

土から頭を抜き、ドスは腕を構えた。

リーは先ほどの術の反動で動けないらしい。

体を誤魔化しながら駆けつけようと足を踏み出す。

 

 

「おっと、お嬢ちゃん。アンタの相手はオレだ」

 

「くっ……」

 

 

前方にザクが現れ、進行を塞がれる。

グラグラと揺れる視界に、本格的にマズイと焦燥を隠せない。

 

 

「そもそも今はチームじゃないお前が、なんでそんなになってまでアイツらを守ろうとする?何一つお前にメリットはねーじゃねーか……。

別にお前が目的じゃねーし、今なら見逃してやれるんだぜ?」

 

 

思いもよらないザクの提案に、少し嘲笑がもれる。

それは、自身に対する嘲りだった。

 

 

「所詮、あたしは壊すことしかできないから……。

だから今回も外されたのかな……」

 

「ああ?」

 

「大蛇丸との戦いでも守りきれなくてこのザマで……今もまた、ただリーが傷ついていくのを見てるだけ。

だけど……そんなあたしだけど……!」

 

 

笑顔でいつもユウを温かく照らしてくれるナルトたちの姿が脳裏に過ぎる。

 

 

「逃げたくない。

……ここで逃げ出したら、あたしはあたしを否定することになる」

 

 

普通の人間として生きることを辞めると、そう宣言することになる。

自分でも、人間だった時間があったんだと、誇ることができなくなる。

 

何よりやっと出来た‟繋がり”を失いたくない。

 

だからユウは戦う。

どんな激痛にも耐え、襲い来るフラッシュバックも体の震えも抑えて、腕が使えなくなっても、足が使えなくなっても、完全に意識を失うその時まで彼女は戦い続けるのだ。

 

 

「これは……“守るための戦い”だから」

 

「……へッ。いいぜ、戦ってやる……。

せめて気持ちよく気絶させてやっからよぉ!!」

 

 

駆け出したザクへフラ、と前へ一歩踏み出しながら、チラ、とその奥へ視線を向ける。

どうやらリーは鼓膜を完全にやられたらしい。

血を流し、倒れ込むリーへトドメを刺そうと忍具のついた腕を振り上げたその時、彼を助けようとサクラが放ったクナイが日光を浴びて光る。

 

これを待っていた。

 

さっと動きづらい右手を動かし、印を組み上げた。

 

 

「何の術使うか知らねーが遅せぇんだよ!!」

 

 

“光転移”

 

襲いかかるザクにふっと微笑んで、ユウは“消えた”。

 

 

「な!?」

 

 

驚くザクはどこから迎撃が来てもいいように身構えるが、ユウの狙いはそこじゃない。

ドスに弾かれたクナイの光を辿り、まさに光の速さでドスの背後に付く。

たどってきたクナイを手にし、ユウはドスに斬りかかった。

 

 

「くっ……なにっ!?」

 

「はぁ、はぁっ……」

 

「ユウ……!!」

 

 

この怪我で無理な体制を取りすぎた反動か、いつもよりかなり襲い奇襲はよけられ、ドスの腹部を掠める程度となってしまった。

無理に印を結んだ右手からは最早包帯など意味がない程血が滴っていて、背中の傷も恐らく傷が開いてしまったな、と無駄に冷静な部分が分析する。

斬りかかった体制のまま、膝をついてしまったユウを見逃さず、ドスは蹴り飛ばした。

 

 

「が、は……ッ!」

 

 

ドン、木に背中から叩きつけられ、口から大量に血が吐き出される。

ぼやけ、霞む視界は最早幻覚なのか、現実なのか見分けが付かないほどぐちゃぐちゃだった。

 

 

「……な………きゃ……」

 

 

守らなきゃ

 

その思いだけで立ち上がろうとして、失敗する。

倒れ込み、真っ赤に染まった包帯を見たサクラの悲鳴が耳に響いてくる。

 

 

「ねえ!逃げよー!あいつらそーとーヤバイよー!」

 

 

こっそり草陰から戦いの様子を見ていたチョウジは涙ながら小声で訴える。

 

 

「サスケとナルトは……気絶してるだけみてーだが……。

あのリーもボコられて、ユウももう動ける状態じゃねぇ。サクラ一人だ……

お前はどーすんだよいの!?」

 

「どーするって……」

 

「つーかサクラやべーぜ!いいのかよ!?

お前ら昔親友だったんだろ!?」

 

 

じゃあこれからは私たち、ライバルだね。

 

その一言で、サクラといのは親友ではなく、“ライバル”の関係となった。

本当にサクラが嫌いになったわけじゃない。ただ好きな人が一緒だっただけ。

それだけで、サクラといのはいがみ合うようになってしまった。

 

 

「(……なんであんな時のこと思い出してんのよ……)」

 

「おい……!

いの!どーすんだよ!」

 

「わ……分かってるけどどうしようもないじゃない!!

うかつには出てけないでしょ!

今、私が出て行ったって間違いなくやられるだけよ……」

 

 

「(私だって……!私だって!!)」

 

 

ユウが動けなくなった。

ガクガクと足が恐怖に笑うのを叱咤し、サクラは音忍と対峙する。

手裏剣を放つが。

 

 

「ハッ!!」

 

「キャ……!!」

 

 

投げた手裏剣はドスの前に出たザクの空気圧によって跳ね返されてしまう。

腕で顔を庇い、反射的に目を瞑ってしまう。

ニヤ、ザクが笑みを浮かべた。

 

 

「痛っ!!」

 

 

髪を鷲掴みにされ痛みに顔をしかめる。

横目で見やればキンがサクラの髪を鷲掴みにし、見下していた。

 

 

「私よりいい艶してんじゃない……コレ。

フン、忍のくせに色気付きやがって……髪に気を使うヒマがあったら修行しろこのメスブタが」

 

「痛い!」

 

 

サクラの悲鳴に、ユウの瞳にわずかに光が戻る。

ぼやぁっとした視界に、自分から流れる赤色と、サクラの桃色の髪が映った。

 

 

「ザク……この男好きの目の前でそのサスケとかいう奴を殺しなよ」

 

「!!」

 

「こいつにちょっとした……余興を見してやろーよ」

 

「お!いいねー!」

 

「オイオイ……」

 

 

サスケを……殺す?

 

ぴくん、ユウの指が跳ねた。

ドクン、ドクン、と大きく脈打つ鼓動。

 

 

「(そ、そんなことやらせるわけには……)」

 

「動くな!」

 

「くっ」

 

 

サクラの呻き声に反応し、リーがなんとかしようと体を動かそうとするが、力が入らないのか首を動かすので精一杯だ。

無力感に襲われ、地面をひっかきながら拳を握る。

ぽたり、サクラの瞳から涙が流れた。

 

 

「!」

 

 

ドクン、一際大きく心臓が跳ねた。

そう思った時にはもう、ユウの体は勝手に動いていて、一瞬で間合いを詰め、キンへ殴りかかった。

 

 

「コイツまだ……!」

 

 

目を見開くキンの瞳に瞳孔が開ききり、一瞬右目が紫紺に染まったユウが映る。

もう意識を失っても可笑しくないほどの深手を負っているのに、痛みも何も感じていないかのようなあり得ない動きに恐怖すら覚え、キンは動けなくなってしまった。

 

 

「させるか!!」

 

 

しかし、ユウの拳がキンへ叩きつけられようとしたその時、彼女の体はザクの両手から発せられる空気圧によって吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

 

「へっ……あのまま気絶してりゃー良かったのによ……。

ッ!?」

 

 

俯き、ふらつきながらも立ち上がるユウに音忍たちも、サクラも、リーも、そしてシカマルたちも目を見開いた。

顔をあげ、視界があまり見えていない中、彼女の目は涙を流すサクラだけを映す。

 

 

「……もういい……もういいよ、ユウ……。

戦わないで……お願いだから……

これ以上は、本当に……本当にユウが死んじゃう……ッ!!」

 

 

ポタ、ポタとサクラの瞳から大粒の涙が溢れ、地面に染みを作っていく。

それを見たユウは再び地面を蹴り、音忍たちへと距離を詰めた。

今度こそ邪魔されないようにするためか、手裏剣をドスに投げつけ、光で作った弾丸をザクへ飛ばす。

当然弾かれた手裏剣は粒子となり、弾丸の光が霧散する。

 

 

「な、なんだ……驚かせやがって……チャクラ切れか?」

 

 

冷や汗を流したまま、余裕の笑みを取り戻すザクだったが、ドスは恐怖に表情を凍らせた。

ユウの体が光に包まれ、粒子をたどり、光の残影を残して移動していく。

 

 

「くっ……」

 

「コイツ本当に人間かよ!?」

 

 

闇雲に空気圧を放っても交わされ、むしろ更に拡散していく光の粒子によってユウの行動範囲が広がるばかり。

そして、ついに現れた彼女はドスとザクの背後に立ち、クナイを振りかぶる。

ヤバイ、そう思ったキンはサクラの髪を思い切り引っ張った。

 

 

「きゃあ!!」

 

「!!」

 

 

サクラの悲鳴に、そちらに気を取られてしまう。

それを逃すドスとザクではない。

サクラを助けに行こうと体を反転させたユウの頭を鷲掴み、地面へと叩きつけた。

そこへドスの振動が加えられ、ユウは完全に動きを止める。

光を失ったユウの瞳に、ほっと息をつくザク。

 

 

「チィ……手こずらせやがって」

 

「流石あの人たちが狙っているだけはある。

……ほとんど気を失っていたあの状態で、あの女を助けるために動くのは完全に想定外だったよ」

 

「!(私を、助けるために……!?)」

 

 

ショックに打ちひしがれるサクラ。

音忍たちがユウに恐怖を感じたのは、単純に彼女の力だけではなかったのだ。

自分たちに立ち向かってきたユウの瞳から意思や生気が感じられなかった。

気を失っていたのだ。

それでも尚、サクラの涙に反応して動いていた。

キンが最後にサクラの髪を引っ張った理由もここにある。

意識がなく、思考力なんてない状況の中で、サクラに反応して動くのならば、サクラ次第でザクとドスを倒す絶好のチャンスを無下にすることが出来る。

先の彼女が動く動力とキーは、全て“サクラ”だった。

 

 

「(そんな、私……。

また足でまといにしかなってないじゃない!!

いつだって守られてるだけ……

悔しい……)」

 

 

今度こそは……って思ってた。

今度こそは……大切な人たちを私が守らなきゃって……

 

 

「じゃ、気を取り直して……やるか」

 

 

仲間を、サクラを守るためにナルトも、サスケも、そして今は敵同士でもあるユウやリーが、目の前で次々と倒れていく。

ユウの光を失った瞳が、サクラの滲んだ視界に映り込む。

 

 

「オイ!サスケとナルトもやべーぜ」

 

「ユウだって早く治療しなきゃ!あのままじゃ死んじゃうよ!いの!!」

 

「(ど……どうしたらいいの――――!?)」

 

 

サクラは一度強く瞳を瞑り、クナイを構えた。

 

 

「ムダよ!私にそんなものは効かない」

 

「何を言ってるの?」

 

 

ニィ、と挑戦的に笑んだサクラからは、先ほどまで自分の無力に嘆いでいた彼女とは思えないほどの意思の強い瞳を宿していた。

そしてサクラはそのクナイをキンではなく、拘束されている自分の髪を断髪するために振るった。

 

 

「!!なに!」

 

 

その場にいた全員が驚愕する。

ハラハラと花びらが舞うようにサクラの髪が舞う。

 

 

「(私はいつも……一人前の忍者のつもりでいて……。

サスケ君のこといつも好きだって言っといて……ナルトにいつもえらそーに説教しといて……ユウのお姉さんぶっておいて……。

私はただ――――いつも3人の後ろ姿を見てただけ)」

 

 

それなのに

 

 

「(3人はいつも私をかばって戦ってくれた。

リーさん、アナタは私のこと好きだと言って……私を背に命懸けで戦ってくれた。

アナタに教えてもらった気がするの……)」

 

 

私もアナタたちみたいになりたい

みんな……

 

 

「(今度は私の後ろ姿を――――……

しっかり見てください!!)」

 

 

凛としたその後ろ姿から、サクラの強い決意が伝わってくる。

 

 

「!!チィ……キン!殺れ!!」

 

 

音忍が殺気立ち、キンが攻撃を仕掛けてくるが、サクラは冷静に印を結んだ。

それに気付いたザクも印を組む。

キンが手にした千本をサクラへ突き立てた。

しかし、

 

 

「!!(変わり身の術……!!)」

 

「(右か……なめてんのか?そんな基礎中の基礎忍術でオレに向かってくるなんてな!)」

 

 

クナイを両手に構えたサクラを横目で認めると、キンにその場から離れるように言う。

両手のクナイを放つが、ザクが構えた両手から空気圧……斬空波が放たれ、弾かれる。

弾かれたクナイはサクラへと襲いかかるが、クナイが刺さる瞬間に変わり身を使い、ザクの上へと跳躍した。

再び変わり身の印を組むサクラに苛立つ。

 

 

「2度も3度も……通用しねーって言ってんだろが!!

てめーはこれで十分だ!!」

 

 

ザクから放たれたクナイは容赦なくサクラを貫いた。

 

 

「クク……次はどこだァ?」

 

 

辺りを見渡すザクの頬へ何かが落ちてくる。

それはサクラの血だった。

上を見上げると己に刺さっていたクナイを抜き、それを振りかざすサクラの姿。

 

 

「(なんだと……!?

今度は――――変わり身じゃないだと!!)」

 

 

ドッ、クナイをザクの腕へ突き立てる。

そのまま押し倒され、反撃しようともう片方の腕を動かし、斬空波を放とうとするが、サクラはその腕に噛み付いた。

 

 

「放せコラ!!」

 

 

何度も何度も殴りつけられる。

だが、サクラは決して放そうとはしなかった。

 

 

「(サクラ……)」

 

 

いのの脳裏に初めて出会った時の、泣いてばかりいたサクラが過る。

イジメられ、いつも怯えていて、泣いていたサクラを放っておけなくて、初めに声をかけたのがいのだった。

あの泣いてばかりいたサクラが、今いのでさえも立ちすくんでしまうような敵を相手に大切な人を守ろうと必死に戦っている。

 

 

「くそっ放せ!」

 

 

長い前髪で額を隠そうとしていたサクラに堂々としていろとリボンを送った。

それでも額の広さを気にするサクラに可愛いんだから堂々としていろと励まして、イジメられていたせいか引っ込み思案で人見知りが激しく、中々友達が作れなかったサクラを自分の仲のいいグループの友達に紹介したりした。

そして……

 

容赦のない殴打にサクラの瞳に涙が滲む。

 

 

『みんな聞いて聞いて!私…好きな人ができたの!

誰だと思う!?』

 

 

サクラにも好きな男の子ができた。

嬉しそうに当時のグループに報告にきたサクラが可愛くて、微笑ましくて…妹の成長を喜ぶ姉のような心境だった。

しかし、彼女が好きになった男の子は、何の因果なのか、いのがずっと好きだった『うちは サスケ』だった。

表情が凍り、すぅっと頭が冷えていった。

 

 

『いのちゃん!サスケ君って長い髪の女の子が好きらしーのね。それで……』

 

 

何も知らないサクラは、サスケの好みを聞いたり、何かがあるといつも嬉しそうに笑って報告しに来ていた。

 

 

「(サクラ……)」

 

 

いがみ合いながらも、サクラといのは互いに認め合う“ライバル”になっていた。

お互いに負けないと宣言した、下忍の班が組まれた日の出来事。

 

殴られすぎたサクラの顔は痛々しいくらい腫れていて、血だらけ。

じわりといのの目に涙が貯まる。

 

 

「ヤ……ヤバイよ」

 

「お……おい、いの……!」

 

 

とうとう殴り飛ばされてしまったサクラ。

本当はユウの元へ今すぐ駆けつけたいだろうシカマルは、いのの決断をずっと待ってくれていたが、流石に焦燥を隠せない声で決断を迫る。

 

 

「(みんな……みんなを守んなきゃ……)」

 

「このガキィ!!」

 

 

フラフラになりながらも立ち上がろうとするサクラへ斬空波を放とうとしたその時。

 

 

「(え?)」

 

「「!!」」

 

「フン……また変なのが出てきたな」

 

 

サクラを庇うように前に出た三つの影。

その三人の人物はサクラもよく知る人物で、サクラは茫然と口を開く。

 

 

「いの……」

 

「サクラ……アンタには負けないって約束したでしょ!」

 

 

いのは背を向けたまま、サクラに笑いかけるのだった。

 

 


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