今日から更新再開致しますのでよろしくお願いします。
ここは……
誰もいない、闇に包まれた中で見えるのは自分だけ。
何も聞こえない、気が狂いそうな闇の中にユウはいた。
突然、自分以外の何かがユウを取り囲むように現れた。
「!ナルト……みんな……!?」
正面には無表情で血を流し、ユウを無機質な瞳で見つめるナルト。
そしてユウを取り囲むように七班を始めとした、同期メンバーがナルトと同じ表情で冷たい眼差しを向けてくる。
ドクドクと心臓が嫌に脈打つ。
つぅ、と額から冷や汗が流れた。
「お前が……お前が力を使わなかったから……オレもサクラちゃんもサスケもみんな傷ついた。
全部全部、ユウのせいだってばよ」
すっと人差し指でユウを指し、ナルトは冷たく笑った。
どこまでも冷たい、憎しみすら感じられる瞳を向けられ、恐怖に震える。
「あ……あたし、は……」
「言い訳かよ……最低だな」
その声にユウは凍りついた。
ゆっくり、振り返った先にいた、軽蔑したような眼差しを送るシカマルの姿。
ピシリ、心にヒビが入る。
「それは何のための力なんだ?
使ってやらなきゃ宝の持ち腐れだろ」
「で、でもこの力は“守るため”に使えるものじゃない……!
破壊しかできないこんな力……」
欲しくなかった
そう告げたユウの後ろで、斬撃音が響く。
ついで、ドサリと重いものが倒れた音。
恐る恐る振り向けば、先ほどまでユウに冷たい視線を送っていたナルトが首を掻き切られ、倒れていた。
何が起こっているのか理解できないまま、斬撃音が続き、周りにいたサクラ、サスケ、いの、チョウジと次々に絶命し、倒れていく。
「!!?」
薄く開かれた瞼から除く濁った瞳は、お前のせいだと物語っていて、まるでユウを責め立てているかのようで、呆然と立ち尽くす。
残ったのは、シカマルのみ。
「お前のせいでナルトたちは死ぬんだ」
「しか、ま、る……」
「どうせ結果が同じなら……
力を解放しろ
全てを破壊しろ
道具として兵器としてただ命令に従い、殺せ」
その為にお前は“造られた”んだろう?
嘲笑したその直後、ユウの目の前でシカマルは喉を掻き切られた。
ぶしゃああああああああ!!
吹き出した鮮血が頭から降り注ぎ、ユウを真っ赤に染め上げる。
「しかま、る……?」
呆然と目を見開くユウの目の前でシカマルは仰向けに倒れていき、倒れたシカマルと入れ替わるように金髪の小さな少女がユウの視界に映り込む。
シカマルの背後にずっといたらしいその金髪の少女は無表情で、氷のように冷たい翡翠の目をしていた。
「あなたがみんなを殺したの……?」
呆然としたまま、問いかけられたそれにふるふると首を横に振る。
すっとユウを指差し、少女は唇を動かした。
「あなたがやった」
「うそ……あたしは、殺してない……
あたしはみんなを殺したりなんかしないッ!!」
「じゃあ、その手に持っている物はなに?」
「え……っ!?」
刀身から血を滴らせている、一振りの刀。
それはユウの手にあった。
カタカタと震え始める体。
「うそだ……うそだうそだうそだうそだ!!」
「仕方ないよ。だって、あなたは、私は……そう在るように“造られた”」
「っ……!?」
「あなたと私は同じ。
私はあなた。そしてあなたは私」
ぐん、と低くなった視界に今の自分の姿が映る。
少女の言う言葉が正しいことを証明するかのように、ぐるぐると視界が入れ替わる。
「所詮人間にはなれないマガイモノ。
けれどバケモノにもなりきれない半端な存在……。」
少女の声と重なるように大蛇丸の声が木霊し、ユウを取り囲むようにして倒れているナルトたちの死体から何百匹もの蛇が飛び出す。
蛇に埋め尽くされ、声が発せなくなる中、少女と大蛇丸の声だけが空間を支配する。
「あなたは所詮、人形でしかない。
命令に忠実な忍という最強で最悪の“殺人兵器”。
それが私。それがあなた。」
「「受け入れなさい」」
「ちが、う……あたしは……”わたし”、は……」
本当は、理解していた。
所詮人間にはなれないマガイモノであることも
人形であり、殺人兵器にしかなれないことも
そう在るために造られたということも
だけど認めたくなかった
ナルトやシカマルたちと出会って、少しずつ変われた気がしていたから。
少しでいい、本当に少しの間だけでも、普通の人間の女の子として生きたいと心の底から願った。
その為には、理解していても認めてはいけないと思った。
だが、そんなユウを嘲笑うかのようにユウの体は勝手に動き、蛇を全て切り刻み、気付いた時には少女の首に刃を添えていた。
「そう……それがあなた。」
少女の体が分裂し、分裂した体は大蛇丸の姿を形作る。
嫌な笑みを携え、大蛇丸はユウへ歩み寄っていく。
「私なら……あなたの全てを理解し、受け止めた上で永久に傍に居てあげるわ……。
あなたの存在を認め、あなたに生きる意味を与えてあげる。
さあ……私の傍らへ……」
手を差し伸べた大蛇丸の瞳に映ったのは、ユウが刀を振りかざす所だった。
「「テメェのような蛇にも、人間サマにもコイツは渡さねーよ。
コイツは……俺だけの巫女姫だ」」
「!お前は……!!」
「「残念だったな……ここはもう俺のテリトリーだ。これ以上勝手なことはさせねぇぜ……。
わざわざ俺様を叩き起こしてくれたお前から消し飛ばしてやるよ」」
ドゥ、刀身が闇に覆われ、それを大蛇丸へと容赦なく叩きつける。
大蛇丸は共学に目を見開いたまま、闇に包まれ、消えていった。
‟ユウ”の口から二重に発せられたのは、ユウ自身の声と低い威圧感のある男の声だった。
蛇に包まれていた空間が一瞬、ぶれた。
次の瞬間には青白い光が灯る、格子に囲まれた牢獄のような空間へと変わる。
刀を肩に担いだ‟ユウ”が瞳を開くと、翡翠の瞳が紫紺へと変わっていた。
その妖しげに光る紫紺の瞳で辺りを見渡すとふむ、と頷く。
「「眠らされてから大体5、6年といった所か……。
意識が戻り、封印が解かれたかと期待したが……。
どうやら随分と手の込んだ封印をかけられたようだ。先ほどの蛇のような輩が解いたのはその内の一つ……。本体が視えないのは最下層に最後の封印の影響だとみて間違いない。
意識だけの目覚めというわけか……フン、忌々しい」」
不愉快そうに眉を歪め、封印の札に触れる。
しかし“ユウ”の手を拒むようにバチィと火花が散り、舌打ちを打つ。
「「やはり、“ユウ”本人でなければ解けない仕組みか……。
我が姫の体にこんなにも傷を付け、直接話すことすらさせぬようにするとは…人間如きが……。
まぁいい。目覚めの時は近い……」」
部屋に置かれた一脚の椅子に優雅に足を組み、妖艶な笑みを浮かべた“ユウ”の影が、巨大な何かを象っていた。
「「その時は……この俺様が直々に人間共を喰らい尽くしてくれよう。
遥か昔に犯した罪、そして俺様の巫女姫に行ってきた所業の数々……。
償ってもらうぞ、人間共」」
そして、“彼”は指を鳴らし、光を消した。