絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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第21話 忍び寄る悪意

呆然と目を見開いていたシカマルの胸に身を任せ、ユウは眠りについてしまったようだ。

かすかな吐息が、漏れる。

そういえばユウが人前で寝ているところを見るのは、初めてかもしれないとボーッとしている頭の片隅で思った。

我に返ったシカマルはこのままでは寝ずらいだろうと思い、ユウを起こさないよう細心の注意を払いながら自分の太ももへ彼女の頭を乗せ、寝かせようとした。

しかし、ここで問題が起きた。

 

 

「……」

 

「……んー……」

 

「……マジか」

 

 

左手を離し、上体を戻そうとしたとき、ユウは不安げに腕を彷徨わせ、あろうことかシカマルの服の袖を掴んだのだ。

しかも、半袖なので、ほとんど密着状態。

当の本人はほっと安心したように、そのまま首に抱きついてきてしまった。

このままでは頭が落ちてしまいそうで、添えた手も離せそうにない。

 

何が言いたいかというと

非常に困った。

 

彼が16歳とかそのくらいであれば、なんとも美味しい状況かとニヒルに笑んだであろう。

だがしかし、今のシカマルは13歳。

早熟と言われる彼であっても、さすがにそう言った欲求はまだ無いのである。

 

結果的に横抱きのような体制でユウの体を抱き寄せる形で落ち着いた。

密着しているからか、首に巻き付かれていた腕も解かれたので、少し落ち着いた。

……いや、妥協したと言うべきか。

 

 

「んー……」

 

「ったく、こっちの気も知らねーで……」

 

 

苦笑が漏れる。

でも、本当によかった。

ユウがたとえほんの少しでも自分に心を開いてくれたことが、素直に嬉しい。

頭を撫でていると、目の前の木々が揺れた。

いつの間にか空気が変わり、ハッとする。

警戒心を顕にし、前方にある一本の木を睨んでいると、それに気付いたのかスタッと華麗に着地する一つの影。

 

 

「あーあ、気付かれちゃったか……」

 

「!アンタ、確かユウたちの……」

 

「そ、ユウの担当上忍のはたけカカシだ。

ウチの子がどーも、君にいつもお世話になってるみたいで」

 

 

暫しの間、カカシとシカマルの無言のにらみ合いが続く。

カカシの瞳に自分が良く知る感情が宿っていることに気づき、シカマルはふっと苦笑した。

 

 

「カカシ先生、だったか?

なんだ、アンタも、同じか……」

 

「流石アスマが認めてるだけはあるな」

 

 

カカシも苦笑のようなものを浮かべ、ゆっくり二人に歩み寄る。

目線を合わせるように片膝をつき、穏やかな寝息をたてる少女の姿に柔らかく瞳を細めた。

 

 

「……ったく、安心したような顔しちゃって……」

 

「あの、話しならユウを寝かせて離れたところでした方がいいと思うんスけど」

 

 

起こしちまうかもしれないッスし、とユウを気遣うシカマルに、カカシはジェスチャー付きで首を振る。

 

 

「いや、その心配はないと思うよ。

この子、この二日間寝てないからねぇ……」

 

「え?」

 

 

二日間。

それは、シカマルと約束したあの日から、ずっとということで、どういうことかと眉を潜める。

 

 

「元々不眠症で、一日二日寝ないなんてのは当たり前な所があるんだが……。

ちょっと今回は特別でな。

二日前に色々あって、それが原因で眠れなくなっちゃったって感じだ。

この様子じゃ、最低1時間は起こそうとしても起きないよ」

 

「……随分知ってるんスね、ユウのこと……

まるで毎日監視でもしてるんじゃないかと、疑うくらい」

 

「まぁ、半分くらい読みは当たってる、と言っておこうかな。

さてシカマル、色々聞きたいこともあるだろうが、まずは本題に入らせてもらうよ」

 

 

鋭い眼光で見据えられ、その有無を言わせない圧力にシカマルは思わず息を呑む。

 

 

「君の気持ちも理解出来るんだけど、な……。

ユウのためを思うのなら、あまり近付き過ぎるのは良くない。

近付いて傷つくのはシカマル、お前じゃなく……この子だ」

 

「!それって……オレにこれ以上ユウに関わるなって言ってんスか!?」

 

「必要最小限で留めておいて欲しいってことだ」

 

「それだって言い方が変わっただけで意味は同じッスよね?

近づけばユウが傷つく……そんな証拠もクソもない理由で、本気でオレが納得するとでも思ってんですか?」

 

「思っちゃいない、思ってなんかいないさ」

 

 

だが、とユウを指差し、カカシは感情の篭っていない冷淡な眼差しをシカマルへ向けた。

 

 

「お前たちの“当たり前”が、ユウを苦しめていることくらいは分からないか?」

 

「オレたちの、“当たり前”……?」

 

「お前のことだから気付いているだろうが、里人から異様なまでに嫌われていたナルトでさえ持っている“当たり前”。

それはユウにとっては全部新鮮で、初めてのことばかりだ。

今まで、自分が“普通”であると偽るために“当たり前”なことを知っているフリをしてきた。

そんなユウが、実際にその“当たり前”と遭遇すれば、必ず苦しい思いをする。

……意識を飛ばすほどの痛みや苦しみに襲われる」

 

「!」

 

「体も、頭も、身勝手な奴らに滅茶苦茶にされたせいでな……」

 

 

カカシの拳が怒りに震える。

本当に、怒っている。

他でもない、ユウのために。

 

 

「例えば、だ……友達とショッピングに行って、服を買おうとする。

しかし、服屋に行くこと事態がユウにとっては初めてで、困惑する。

友達がユウのためにと選んでくれた服に、脳がショートを起こす。」

 

「?どう、して……」

 

「“ユウのために”」

 

「?」

 

「“誰かが自分に何かをしてくれる”ってことが、ユウにとっては一番わけの分からないことなんだよ……。

どうして?何故自分に?自分にそんな価値も資格もないのに……」

 

「!!」

 

 

それは、まだ記憶に新しく、忘れるはずもないセリフ。

先程ユウがシカマルに言った言葉でもあった。

そんな資格はない、彼女は確かにそう言った。

苦しそう、に……。

 

 

「その度に、ユウは苦しむことになる……一種の発作だな。

シカマル、お前はユウを苦しみから本当に救ってやれるのか?

覚悟が、あるのか?」

 

 

死なない覚悟が。

死にたくても死ねない少女に、生きている意味を教えるという、本当の意味での覚悟が。

それは、言葉には出さなかった。

まだ誰にも話せない少女を思うと、言えなかった。

 

 

「……覚悟?

正直、考えるのもめんどくせー……。

だけどオレ、もうさっき決めちまったんですよ」

 

 

助けて、と言えない彼女。

苦しいのだと、縋ることを知らない彼女。

誰に頼ることもできない、仕方も知らない彼女……。

 

 

「どんなことがあってもオレだけはユウを守りぬく。

コイツが心のどこかで助けを求めてるんならオレが真っ先に駆けつけて、もう無理しなくていいって、オレがそばにいるって言ってやる……。

頼ることを知らないのなら、オレが教えてやる……。

例えこの気持ちの本当の意味を永遠に伝えられなかったとしても、オレだけはユウの傍に、最後まで味方で居続けてやるって……」

 

 

そう、決めちまったんスよ。

 

真っ直ぐにカカシを貫くシカマルに、瞳を細めた。

 

 

「良い覚悟だ」

 

「……」

 

「――――安心したよ」

 

「……………は?」

 

「いやー、ね?ユウに近づく不届き者は、やっぱチェックしないとなーって思ってたわけよ。

で、揺さぶってみた。

もちろん嘘を言ってたわけじゃないけどね」

 

 

ははは、と笑うカカシをしらーっとした目で冷ややかに見る。

しかし当の本人はフニフニとユウのほっぺをつつくのに夢中だ。

 

 

「カカシ先生、起こしちまったらどう責任取るつもりッスか」

 

「いやー、この感触たまんなくて。

それにオレだってまだ諦めたつもりはないし、負けるつもりもないから。

だから今回だけは班も違って中々会えないであろうシカマル君に譲ってあげようって思ってな。

まぁ、ここだとまだ寒いし、家で休ませたげてくれる?」

 

「……」

 

 

もちろんそっちがダメならオレが引き取るけど、とイイ笑顔で提案してきたカカシにため息をつき、ユウに頭から上着をかけ、横抱きで抱き上げた。

もちろん腕にはバッグが提げられている。

 

 

「それじゃ、ここはカカシ先生のお言葉に甘えますよ」

 

 

一言吐き捨てるように言ってペコリと頭を下げ、シカマルは足早に去っていった。

その姿を見送り、カカシは苦笑する。

 

 

「本当に、かわいくないガキ……」

 

 

 

+++++

 

 

「……あった、かい……」

 

 

ふにゃ、嬉しそうに言うものだから、ついつい許してしまう。

家にこっそり帰宅し、部屋に戻って早2時間。

ユウはというとカカシは1時間は起きないと言っていたが、その倍の時間を寝ている。

しかも、絶対にシカマルを離そうとしない。

シカマルは最早脱出を諦め、本を片手に大人しくベッドに座り、ユウの好きなようにさせていた。

現在、彼女はといえば、ぎゅうーっとシカマルの腰に抱きついている。

 

 

「……オレだって一応男なんだけど……」

 

 

嬉しいような、複雑なような。

 

 

「おーい、そろそろ起きろ~」

 

「うー……」

 

 

ぐずりながらも一生懸命目をごしごしこすって何とか瞼を持ち上げる。

ユウの目はとろーん、としていて、今にも再び眠り姫になってしまいそうだ。

 

 

「……あれ?シカマル??

近いねー」

 

 

えへへー、と寝ぼけながら笑うユウにため息。

 

 

「あのなぁ……お前が抱きついて離れてくれなかったんだよ」

 

「あ、そうだったんだ……なんか、ゴメン……」

 

 

横になっているとまた眠ってしまいそうだったので、ユウを抱えて上体を起こさせる。

そのまま体を離すと、再び腕が伸びてくる。

 

 

「うー、やだ……」

 

「やだって……お前なー……また寝ちまいそうじゃねーかよ」

 

「置いて、いかないで……」

 

「は?」

 

「置いていかないで……いなくなる……独り、やだよ……ッ」

 

 

独りにしないで。

苦しそうな声にハッとして、ポンと頭に手を乗せる。

 

 

「……置いてかねーよ、だから落ち着け」

 

「あ……ゴメ、ン?」

 

 

ようやくシカマルを離したユウはようやく我に返ったようだった。

かぁ~~っと赤く染まっていく頬に驚いていると、ユウは布団に顔をうずめた。

 

 

「うあ~~~……恥ずかしすぎる。

誰にもこんなことやったことないのに…。

う~……本当にゴメン」

 

「いや、オレは別に……大丈夫か?」

 

「う~~~~……あたしの精神年齢かなり下がってたよね」

 

 

小さく呻き、しばらく布団に顔を埋めていたユウだったが、チラリとシカマルを見上げた。

 

 

「シカマルが、悪いんだよ」

 

「なんでそうなんだよ!?」

 

「だって……我が儘になれ、なんて変なこと言うから……」

 

「あー……確かに言ったな。

でも、ユウは誰かに抱きつきたかったのか??」

 

「ううん、そんなこと、考えたこともなかった」

 

 

少しだけシカマルに近付き、コテンと首を傾げる。

 

 

「もう一回だけ、抱きついてもいい?」

 

「っ~~……ん」

 

 

これは、ヤバイ。

意識がはっきりしている状態で言われると、こうも違うものか、と変なところで感心してしまった。

小さく頷くだけで精一杯なシカマルに気づかず、ありがとう、と御礼を言う。

控えめにギュッと抱きついたユウは、ほうっと息を零した。

 

 

「名前」

 

「……ん?」

 

「呼んで?」

 

「……ユウ?」

 

「もっと」

 

「ユウ」

 

 

自然と手がユウの髪を撫で、反対の腕で抱き締める。

もう、ユウは怯えていないようだ。

それどころか、穏やかな表情で、どこか幸せそうに瞳を閉じている。

 

 

「……あのさ、これ何してんだ?」

 

「んー?……本当に、嬉しいがいっぱいだなって」

 

「嬉しいがいっぱい?」

 

「うん。拙い表現でゴメンね。

名前呼んでもらうのが嬉しい。

頭を撫でてもらうともっと嬉しい。

ギュってしてもらって、鼓動を聞くとね、すごく幸せな気分になれるんだ」

 

 

夢の中でそうだった

 

 

「本当に、幸せだな……」

 

 

微笑んだユウはありがと、と言って離れようとする。

そのユウの腕を引っ張り、元の体制に戻した。

不思議そうにシカマルを見上げるユウの頭を撫でる。

 

 

「それくらい、何度でもやってやるよ。

抱きしめてやるし名前も呼んで頭撫でてやる……」

 

「ありがとう。

でも、もういっぱいしてもらったから大丈夫だよ?

これ以上は……怖くなるから」

 

 

離れられなくなってしまいそうで。

 

名残惜しそうな顔をしたユウに、離れられなくなってもいい、と言ってやりたかった。

そうすればいくらでも欲しいもの与えてやれるのに、と。

しかし、怖いと言われてしまった以上、名残惜しいが離してやらなくてはならない。

渋々、開放してやると、伸びをした。

 

 

「ふぅ……初めてかも、こんなにぐっすり眠ったの。

すごく気持ちよかった!」

 

「そりゃ、良かった」

 

「……あの、ね?」

 

「ん?」

 

「昼間の、話しなんだけど……」

 

 

俯き、ギュッと拳を握る。

昼間、とは、あの里人たちのユウに対しての態度のこと、だろう。

 

 

「まだ、今は話せないんだ……。

でも、いつか、もうちょっと勇気が出てきたら、シカマルに聞いて欲しい。

上手く言えないかもしれないし、話せないことが多くてわけわからなくなるかもしれない。

聞いたら、嫌われるかもしれない……。

けど、その時は聞いてくれる?」

 

「……オレで、いいのか?」

 

「うん。シカマルに、聞いて欲しい、です」

 

 

あたしの、我が儘を聞いてくれますか?

 

 

「ああ。その時は聞かせてくれ。

オレもちゃんとユウと向き合いてぇから」

 

「……ありがとう」

 

 

少し、引きつったような、不格好な笑顔。

それでも、少しずつ、ユウが歩み寄ろうとしてくれてるのが分かり、シカマルは嬉しくなった。

 

二人はその後、他愛もない話しをしながら家を出た。

ユウの家へ向かいながら、くだらない雑談に花を咲かせる。

目立つ金色の髪はシカマルのフード付きの上着で隠してくれたおかげもあり、里の人々に冷たい視線を送られることもなかった。

 

 

「それでね、その時ナルトがね?」

 

「はは、アイツ相変わらずバカだなー」

 

 

会話が途切れることはなく、始終笑顔が絶えることもなかった。

二人の距離は元々近かったこともあり、不意に手が触れた。

 

 

「あ、悪ぃ……」

 

「ねぇ……シカマル?」

 

 

もうちょっとだけ、甘えさせてください。

もうちょっと甘えたら、また頑張るから。

 

そう言って、ユウはシカマルの手を握った。

自分から、不安げに、遠慮がちに。

そんなユウに驚きつつ、シカマルは柔らかく瞳を細め、力強くその手を握った。

 

 

「この程度なら、いくらでもって言っただろ?」

 

「!……ありがとう」

 

「おう」

 

 

気恥ずかしくなり、暫しの間沈黙が続く。

しかし、それは決して嫌な雰囲気ではなく、あくまでゆったりとした、心地のよい空間だった。

ドキドキと、心拍数が上がっていくのが分かる。

チラリ、とユウの顔を見やると、微かに口元を綻ばせているのが見えて、暖かい気持ちになった。

今、シカマルは確かに、この不器用な少女から頼りにされている。

拠り所に、なっている。

 

あんな衝撃的なカミングアウトをされても、それでもなお、この気持ちは消えなかった。

それどころか、守りたい気持ちも重なっていき、もっと膨らんでいく。

本当に、なんでこんなに好きなんだろう

きっとこんなに好きな人はこの先一生現れない

だから、守りたい。

この少女がもし、自分のことを好いてくれて、想い合うことができたら、それは本当に素敵なことだとも思う。

だけど、こうしてユウに頼られるのなら、このままでもいいかなとも思うのだ。

ユウを支えられたら、それはそれでシカマルは満足できるのだから。

 

その時、不意にユウがあ、と声をもらした。

彼女の視線の先を追うと、そこにはよく知る人物がこちらを見て呆然と立ち尽くしていて、思わず頬がひきつる。

 

 

「キバ!久しぶり!!」

 

 

元気よく手を振るユウに、キバは言葉に詰まってしまったようだった。

きっと、自分も彼の立場だったらそうなる。

 

 

「よ、よおユウ……二人で何してたんだ?

まさかデートかぁ?」

 

 

からかうように、無理矢理笑いながら茶化すキバは見ているこちらが痛々しかった。

なんとなく、気まずく思っているとユウは小首を傾げた。

 

 

「デート……ああ、いのが言ってた男の子と女の子が一緒に遊びに行くことだっけ?

うん、そんな感じ??」

 

 

よく分かっていなさそうなユウの仕草に安心したのか、ほっと息をつく。

その姿に不機嫌になるのは、もちろんシカマルだ。

 

 

「キバ、お前こそ何してんだよ?」

 

「オレ?オレはユウが長期任務から帰ってきてるって聞いてよー。

会いに行こうと思ってたんだが……まさかこんなとこで会えるなんて思わなかったぜ」

 

「ふーん?」

 

 

納得のいかなそうな顔でお互いをにらみ合う両者にユウは首を傾げる。

しかし、何を勘違いしたのか、つないでいた手を離した。

 

 

「じゃ、あたしはここら辺でおいとましようかな?

なんか、話したいことあるみたいだし……」

 

「な?!別にコイツと話すことなんて」

「ゴメンなー、ユウ。ちょっとシカマルと二人で話さないといけねーことあってよー。」

 

「ううん、いいんだよ!こっちこそゴメンね?

シカマル、今日はありがとう!楽しかった」

 

 

ニコ、微笑みを浮かべ、二人にペコリと会釈をする。

 

 

「じゃあ二人とも、またね」

 

「おう!またな~!」

「お、おう……」

 

 

踵を返し、ユウの姿が見えなくなるまで見送ると、シカマルはため息をつきながら隣りにいる男を睨む。

しかし向こうも同じだったらしく、敵意むき出しに睨んできていた。

 

 

「テメー、どういうつもりだキバ」

 

「ハッ、そっちこそ抜けがけなんてせこいんだよ、シカマルの癖によォ……」

 

 

オレだってまだデートしたことねーのに、と不貞腐れる。

 

 

「ま、オレはぜってーお前に負けねーから、今回は見逃しといてやるよ」

 

「負け犬の遠吠えにしか聞こえねぇ」

 

「ああ!?んだとコラァ!!」

 

「めんどくせー奴……。

ユウはテメーにだけは渡さねー」

 

「それはこっちの台詞だっての!!

シカマルなんかに任せられるか!!

ユウはオレが幸せにするって決めてんだ!!」

 

「アイツの気持ちガン無視かよ」

 

「~~絶対オレが先に振り向かせる!!」

 

「言ってろバーカ」

 

 

ムキになってヒートアップしていくキバを見ながら、シカマルはため息をついた。

かといえ、自分がキバの立場だったら表では隠すだろうが、こうならないという自信もないので、なんともも言えない……。

恋敵となってしまった彼だが、そんな彼をやっぱり嫌いになれないのもまた事実で、シカマルは呆れたような笑みを浮かべるのだった。

 

 

+++++

 

 

 

 

一時の安らぎの時間は終わった

 

これからは休む暇のない戦いが続くだろう

 

 

ユウは感じていた

 

 

その時、自分が何か大切なものを失くすかもしれない、とも

 

でも、きっとあの温もりを忘れなければ

 

頑張れる

 

 

 

そう思った。

……そう、信じていた

 

 

 

 

運命の歯車はグルグルと止まることなく回り続ける

 

閑話休題を終え、一つの始まりに向かって加速していく

 

 

 

 

―――――この世界を綴る物語の、次のステージは目前に迫っていた。

 

 

 

 

 

「着いたな、木ノ葉に」

 

 

夕暮れに染まる木ノ葉隠れの里。

妙に赤く染まるその火影岩の上に三人組の影があった。

 

 

「しばらくは“アイツ”との契約があるから好き勝手に動けないんだよなぁ、マジだる~。

でも、ま……唾つけるくらいなら出来るっしょ。」

 

 

可愛い子だといいなぁ

笑う影に呆れたように腕を組むのは、一番背の高い影。

 

 

「お前がいうと洒落にならない」

 

「だって本気だもーん♪」

 

「目的を忘れるな」

 

「だーいじょうぶだって!

待っててねー!オレの運命の君ー!!

たぁ~っぷり可愛がってあげるからー!!」

 

「……」

 

 

非常に面倒だと言いたげにため息をつく。

その影に、ようやく真ん中にいた影が動き、クスクスと笑った。

 

 

「でも、まぁ楽しみじゃなーい?

ドキドキしちゃうわ」

 

「お前……!」

 

「いやーんこわぁい♪

そんなピリピリしちゃやーよ?」

 

「……」

 

 

疲れたようにため息をつく影に冗談よ、と笑いかけた影。

陽の光の角度が変わり、その影の顔が照らし出される。

 

 

「ねぇ、ユウちゃん?」

 

 

美しく、ゾッとするほどの凄惨な笑みを浮かべ、“影”は嗤った。




ハイ
えーまぁ……
なんか、すみませんでした

シカマルなんかキャラ違う!って思った方
私もそう思います←
シカマルはそんなこと言わねーよ!って思った方
私もやっぱりそう思います←

でもでも、そろそろユウに本当の意味で心安らげる存在が必要だったんです!
それにはナルトじゃ駄目なんです!!
なぜかって!?

予定的に相手はナルトじゃないから!!

ああごめんなさい石投げないで!?
もちろんそれだけが理由じゃないっすから!!

ナルトだって辛い中頑張ってきている。
それが分かっているからユウの性格上、絶対にナルトには本当の意味で甘えられないんです。
サスケも同様ですね。
サクラは2期に入ると頼れるお姉さんなんですが、1期の頃だと難しいかなぁ、と……
大人たちには恐怖心を抱いてるんで、カカシとかも論外なんですよね

ってことは!
シカマル、キバ、いの、チョウジ、シノとかそこらへんじゃないといけなかったんです。

でもキバだと結構感情的になるから、ユウは多分、勘違いしちゃうと思うんですよね
むしろ怖がりそう←

いのも同じく。

チョウジは……この時点で接点なかったので←

シノは……私が難しいんでパス←ぉぃ

で、トータルで考えるとやっぱりシカマルがベストなんですよ。
一番冷静に、かつ親身に。
それでいて大人でいてくれると思うんで、別に想いが伝わらなくてもそれでいい、と言ってくれると思うんです。
……今のところは、ですけど。

そんな感じで、ちょっとシリアスな甘さでしたけど閑話としてシカマルとのデート編?を入れさせていただきました!
森デート?、いいなぁ……虫は嫌ですが←
しかも鹿と触れ合えるなんてズルい!
そんな描写出さなかったけどね!!

さて、長くなってしまいましたがここまで閲覧してくださった皆様、ありがとうございました!
次回からはいよいよ本編軸に戻り、中忍試験編に入ります!
これからも頑張って参りますので、応援宜しくお願いします!

ご意見・ご感想などお待ちしております!!

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