絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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第17話 手紙

あの戦いの後、サスケとユウは念のため病院へ行くことになった。

そして今、ユウは真っ青な顔で冷や汗を流し、小動物のようにプルプル震えている。

心なしか涙目だ。

そんなユウに苦笑しつつ、逃げないようにその手を握り、引っ張っていくカカシ。

その二人の後ろを呆れたような表情を浮かべつつ、付いていくのはナルト、サクラ、サスケと案内を買って出てくれたタズナだ。

 

 

「やだやだやだぁあああ!」

 

「ハイハイ、逃げない!

ケガしてるんだからしっかり看てもらわないとな」

 

「そうよユウ!アンタだけそんな傷だらけなんだからね?!」

 

「やだ!絶対やだ!お願い本当に病院だけは無理なんです!ホントに!!

無理ったら無理ー!!」

 

「……まさか嬢ちゃんがそんなに病院嫌いとは思わなかったわい」

 

 

タズナはため息をついた。

そう、現在ユウたちは病院に向かっている最中なのであった。

 

 

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「……」

 

「あ~……ユウ?大丈夫??」

 

「……」

 

 

町にある小さな病院に着いたユウはズーンと沈み込み、ガタガタと体を震わせながら隅っこに小さくうずくまっていた。

凄まじい罪悪感がカカシを襲うが、これもユウのためと心を鬼にする。

 

 

「診察なんてあっという間に終わるよ。

もうちょっとの辛抱だから、がんばろーね」

 

 

そう言ってユウの頭を撫でようと手を伸ばすも、彼女はするりと逃げ、更に隅の方へと逃げていってしまった。

ガーンとショックを受けるカカシに首だけ動かし、今にも泣き出しそうな顔を向けた。

 

 

「待ってる時間がダメなのに……。

カカシ先生の意地悪……」

 

 

ボソッと呟いてそのままプイッと再びそっぽを向いてしまった。

一方のカカシは所在なさげに彷徨っていた手で顔を覆う。

 

 

(カカシ先生の意地悪……って何あの可愛い生き物!!可愛すぎでしょ!?)

 

 

非常に加虐心がくすぐられるその仕草に、ユウの名前が呼ばれるまでカカシの顔は緩みっぱなしだったと後にサクラは語る。

 

 

「うーん、出血も止まってるみたいだし、特に問題はなさそうですね。

一応確認ですが痛みはないですか?」

 

「……」

 

 

フルフルと辛うじて首を振ることで伝えるとカルテにサラサラっと書き留める。

付き添いで診察室に入ったカカシは苦笑いだ。

 

 

「じゃあ塗り薬を処方しますので傷が治るまでちゃんと塗ってくださいね。」

 

「……ハイ」

 

「お大事に」

 

 

医師の言葉を背にフラフラと病室を後にした。

帰り道、塗り薬の入った袋を手にグッタリとするユウに各々苦笑を向ける。

 

 

「そんなに酷い傷じゃなくて良かったじゃない」

 

「……病院……行かなくても、良かったくらいだよ……」

 

「も~ユウったら」

 

 

よしよしと慰めるサクラにも無反応である。

あのユウがまるで子供のようだ、と新鮮に思う反面、カカシはやはり複雑な思いを抱いていた。

 

 

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タズナ宅に帰宅したユウは塗り薬を置きに部屋へと戻ってきた。

リュックの中に袋をいれようとして、ふと綺麗に折りたたまれた便箋を見つける。

 

 

「……そういえば」

 

 

白からもらったんだっけ、とぼんやりとした頭で思い出しつつ、手紙を手に取る。

戦いが終わったら見るようにと言われていた、あの手紙。

ユウは手紙を広げ、綺麗なその文字の羅列を目で追っていく。

 

 

『ユウさんへ

この手紙をあなたが読んでいるということは、ボクたちの戦いは終わったということですね。

そして、その時ボクは、多分君の傍にはいないでしょう。

……きっと、この戦いの中でボクは君を傷付けてしまうと思います。

だから手紙を書くことにしました。

ねぇ、ユウさん。

ボクは君と過ごしたたった数日間が本当に楽しかったです。

本当に幸せだった。

本当はね、ユウさん。

あの時、君と出会ったあの日……。

君の今の現状が辛いのなら、ボクは君を拐ってしまいたかったんです。

再不斬さんと、ボクと、ユウさん。3人で暮らしたかったから。

君と笑ったり、泣いたり、怒ったり……色んな景色を一緒に見たり……。

ボクは……君の隣にいたかった。

ユウさん……ボクは……』

 

 

その先に続けられた文を読んで、ユウはこみ上げてくる物が抑えられず、思わず駆け出した。

玄関の辺りでサクラとぶつかって、驚いたような顔を向けられて、それでも止まれなかった。

走って、走って、走って……ひたすら走った。

何度も、何度も転びそうになって、足をもつれさせながら走った。

 

呼吸が荒い。

胸が苦しい。

心臓が耳のすぐ傍にあるみたいにドクドクいっているのが聞こえる。

 

気がついたら、白と出会ったあの場所にいた。

そこは、白と出会った時と変わらずそこにあって、一つ変わったことがあるといえば、簡易式に作った白と再不斬のお墓があるくらいで。

 

 

「はっハァ、ハァっ……」

 

 

膝が笑っているのも構わず、白の墓へと歩み寄り、そっと手を伸ばす。

縋るようにそれを撫で、崩れるように膝をついた。

 

 

「白…白、……白……白っ……!!!」

 

 

何度名前を呼んでも……もう白が応えてくれることはない。

優しい微笑みを向けてくれることも、ない。

 

 

「どうして……」

 

 

座り込んだまま、手紙の続きを思い返す。

 

 

『ユウさん……ボクは……。

ボクはユウさんが好きでした。

君を幸せにするのはボクでありたかった。

ユウさん、ありがとう。

そしてごめんなさい。

君は、愛する人と幸せになってください』

 

 

「どうして……っ。

どうして泣けないんだろうなぁ」

 

 

泣きたいくらい、苦しいのに……。

くしゃりと笑みを浮かべたユウは、涙こそ流してないものの泣き笑いのように痛々しかった。

心臓のあたりを鷲掴み、痛みを堪えるように瞳を閉じて白の墓に額を付けた。

 

 

白、あたしの方こそゴメンね。

ありがとう。

楽しかった、幸せだった。

あたしも、もっとあなたと一緒に居たかったよ。

あなたと同じ意味ではないかもしれないけど……。

 

 

「大好き、だよ……白―――――」

 

 

ずっとずっと、忘れない。

 

そっと風がユウの頬を撫でた。

その感触に白が重なって、瞳を閉じたまま微笑んだ。

その先に、いつかの白が柔らかな微笑みを浮かべているような気がして――――。

 

 

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あの戦いから2週間後。

ユウたちは再不斬と白の墓参りに来ていた。

橋が完成したので、今日中に波の国を発つ予定だからだ。

供え物のまんじゅうにナルトが手を出し、サクラにその手を叩き落とされた。

そんな平和な光景に苦笑を浮かべていると、サクラが二つのお墓を見つめながら口を開く。

 

 

「……でもさァ、カカシ先生……」

 

「んー?」

 

「忍者の在り方ってやっぱこの2人が言ってた通りなのかなぁ……」

 

「忍ってのは自分の存在価値を求めちゃあいけない。

ただ国の道具として存在することが大切。

それは木ノ葉でも同じだよ……」

 

 

ユウの隣で不満そうな表情をしたナルトが口を開いた。

 

 

「本物の忍者になるって本当にそういうことなのかなぁ……。

なんかさ!なんかさ!オレってばそれやだ!!」

 

「アンタもそう思うのか?」

 

「んーいやな……だから忍者って奴は皆、知らず知らずそのことに悩んで生きてんのさ。

……再不斬や……あの子のようにな……」

 

 

白の悲しげな後ろ姿が脳裏に過ぎって、ユウは瞳を伏せる。

 

再不斬の想いは、白に届いたのだろうか。

鬼人の涙は、彼にも見えていたのだろうか。

 

届いていて欲しいとユウは思う。

あの優しい真白の少年は、優しい微笑みを浮かべることだろう。

感極まって泣いちゃうかもしれないな、とユウはこっそり笑った。

 

 

「よし、今決めたってばよ!!

オレはオレの忍道を行ってやる!!」

 

 

そう宣言したナルトはどこまでも真っ直ぐで、眩しかった。

その姿にユウとカカシは微笑みかけた。

 

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「おかげで橋は無事完成したが……超さみしくなるのォ」

 

 

ユウたちは完成した橋の上にいた。

帰り道は海路ではなく、せっかくなので橋を渡っていくことにしたのだ。

そんなユウたちをタズナとツナミ、イナリが見送りに来てくれ、冒頭の会話に至る。

 

 

「お世話になりました」

 

「まあ!まあ!タズナのオッチャン、また遊びに来るってばよ!」

 

「ぜったい…か……」

 

 

瞳をウルウルさせて問いかけたイナリにもらい泣きしそうになったのか、ナルトもじわぁっとこみ上げてくるものを堪え、フルフルと震え出す。

 

 

「イナリィ……お前ってばさみしんだろ~~。

泣いたっていいってばよォ!」

 

「泣くもんかァ!!ナルトの兄ちゃんこそ泣いたっていいぞ!!」

 

 

二人して意地を張ってまぁ、とサクラが呆れたような顔をする。

 

 

「あっそう……じゃあな……」

 

「あ!」

 

 

くるりとイナリに背を向けた途端、同時にぶわぁあ、どわぁあっと涙を流すナルトとイナリ。

思わずユウはクスリと笑った。

 

 

(ナルトもイナリ君も素直じゃないなぁ……)

 

「ユウちゃん」

 

 

そこがまた面白いのだが、と温かい目で見守っているとツナミに声をかけられた。

 

 

「ツナミさんも、本当にお世話になりました。」

 

「いいのよ!でもユウちゃん、すぐに無茶する癖があるから心配ね。

しっかり3食ご飯を食べるのよ?体を壊さないようにね?

それから……いつでも遊びにいらっしゃいな」

 

「!……はい」

 

 

ペコリと頭を下げると、フワリと頭を撫でられ、驚いて顔をあげる。

ツナミは優しく微笑んでいて、ユウもゆるりと口元に笑みを浮かべた。

 

 

「ユウ姉ちゃん!!」

 

「!イナリ君?」

 

「ボクが……ボクが大きくなったら、ボクのお嫁さんになってください!!」

 

「「「「なっ?!」」」」

 

 

耳まで真っ赤に染めあげたイナリの大胆告白にギョッとする第七班の面々。

サスケとカカシからは殺気が漏れ出していて、サクラとナルトは唖然。

ツナミに至っては暢気にあらあら、なんて微笑ましそうにしていて、タズナはあんぐりと開いた口が塞がらない様子だ。

羞恥でか、顔を真っ赤にしてうつむき、フルフルと震えるイナリに思わず微笑む。

 

 

「その時までにイナリ君の気持ちが変わってなかったら、その時考えるね」

 

「「「「えっ?!」」」」

 

「!!本当に!?その時っていつ?!」

 

「う~ん、そうだなぁ……。

イナリ君があたしよりも大きくなったら、かな」

 

「じゃあ今日から一杯牛乳飲まなきゃ!!」

 

 

拳を作り、キラキラと瞳を輝かせるイナリを微笑ましげに見ているとグイグイとナルトたちに引っ張られた。

 

 

「うわっ!!ちょ、みんな!?

あ、タズナさん、ツナミさん、イナリ君!!元気でね!!」

 

 

手を軽く振り、ユウたちは出発した。

向かうは木ノ葉の里である。

 

 

「ねーユウさっきの本気なの?」

 

「そこんとこハッキリしろってばよ!!」

 

「うーん……どうかな?」

 

「私に聞かないでよ?!」

 

「あははは!!」

 

 

どうやらあまり本気でないことが伝わったらしく、カカシたちが離れてくれたのでほっと一息つく。

 

 

「よーし!早く帰ってイルカ先生に任務終了祝いのラーメンおごってもらおーっと!

それにさ!それにさ!木ノ葉丸にもオレの武勇伝聞かせてやろー!!」

 

「じゃ私は……。

ね!サスケ君、里に帰ったらデートしない?」

 

「いや断る」

 

「そ……そんなぁ……」

 

「あのさ!あのさ!オレってばいいよ!」

 

「うるさい!黙れ!ナルト!」

 

 

相変わらずのナルトとサクラ、サスケのやり取りに微笑みを浮かべる。

もし、誰か一人でも欠けていたらこの会話は無かったんだなと思うと、今回の任務でみんなが無事で本当に良かったと思った。

 

 

「ユウは里に帰ったらまず何したい?」

 

 

当たり前になりつつあるこの幸せを噛み締めていると、隣を歩いていたカカシが柔らかな微笑みを浮かべ、問いかけてきた。

その問いに興味津々といった様に一斉にユウに着目するナルトたち。

 

 

「なあ!なあ!何もする予定がないならオレと一緒にラーメン食いに行こうぜ!」

 

「ちょっと!ユウは女の子なのよ?

ねえ!私と一緒に甘味屋行かない?甘栗甘ってとこなんだけど」

 

「ユウ、一緒に修行しないか?」

 

 

我先にと言わんばかりの勢いで三人から誘われ、驚きのあまり目を白黒させるユウ。

そんなユウを微笑ましげに見守りつつ、内心出遅れた……と項垂れるカカシ。

しかしユウが一番惹かれたお誘いはもちろん……。

 

 

「修行?!サスケと一緒に?」

 

 

修行の二文字であった。

ナルトはしまった、というような顔をし、サクラは羨ましそうにユウを見、カカシはやっぱりね、と言いたげに肩をすくめた。

是非!と頬を高揚させ、答えようとしたユウだったが、はた、と思いとどまった。

 

 

「あ、ゴメン。あたし帰ったら人と会う約束してたの忘れてた」

 

「え?!ちょっ、誰に?!聞いてないわよユウ?!」

 

「え?だって今初めて言ったし……」

 

 

色々ありすぎて忘れてたし、と顔を引きつらせ、答える。

そんなユウを見てカカシは一瞬怪訝そうな顔をした。

 

 

「ユウ、誰に会いに行く約束してたの?」

 

「アカデミー時代クラスメイトだった人だよ」

 

 

それじゃあ該当する人物がありすぎて分からないだろ!とツッコミたくなった。

サスケは明らかに面白くなさそうにぶすっとしているし、カカシはカカシで顔を引きつらせている。

 

 

「クラスメイトってことはキバとかか?」

 

「ううん、違うよ!そいえばキバとは最近会ってないなぁ。

忙しいのかなぁ」

 

「じゃあ誰なのよ?さっさと白状しないとまた無理矢理病院連れてくわよ?!」

 

「えぇ!?サクラ酷い!!理不尽!!」

 

「「「(サクラ/ちゃん ナイス!!)」」」

 

「別に、そんな気にすることでも……」

 

「ユウ、私知ってるのよ?」

 

 

にんまりと悪役さながらの笑みを浮かべるサクラに顔を引きつらせ、な、なんのこと?と首を傾げる。

そんなユウにサクラは笑みを深め、耳元へ唇を寄せた。

 

 

「せっかく処方してもらった塗り薬……アンタ、一回も使ってないでしょ」

 

「!!な、な……!!?」

 

「ふふーん、私の目を誤魔化せると思ったら大間違いなんだから!

これをカカシ先生に報告してもいいんだけどねー?

でもほら、ユウったら病院嫌いじゃない?最早アレルギー並に!

だから心優しい私は、内密にしてたんだけど……。

それにはやっぱりギブアンドテイクが必要だと思うのよねー。

どうしようかしら?カカシ先生に報告して、病院へ強制連行の方がいいのかしら?」

 

「ゴメンなさいぃいい!!ちゃんと言う!!言います!!

だからそれだけはやめて!!」

 

「(あー、ユウったらホント可愛いわ)」

 

 

お願いサクラーっと縋り付く彼女はとても可愛らしく、サクラは緩む頬を抑えられなかった。

 

 

「あの、あの……サクラだけじゃ、ダメ?」

 

「え?」

 

「あの、約束した人からね、貰った紙に誰にも言わないでって書いてあって……。

だから、せめてサクラだけじゃダメかな……?」

 

 

ビクビクと怯えながらカサリ、と一枚のメモ用紙を取り出すユウに暫し思考を巡らせる。

考え込むサクラを眉をハの字にしてじっと見つめるユウは、ショボンと垂れた犬耳の幻覚が見える程可愛らしく、それからのサクラの決断は早かった。

 

 

「しょうがないなぁ~、特別よ?

(まぁデメリットはないし、私は教えてもらえるし……まあいいわよねっ)」

 

「「「(何?!)」」」

 

「ありがとうサクラ!!

えっとね……」

 

 

ごにょごにょ、と背伸びをしてサクラの耳に顔を近づけ、内緒話をするユウにヤキモキする男3人はイライラと真っ黒なオーラを漂わせた。

 

 

「(へー、まさかアイツがねー!!面白くなってきたわ!!)

なるほどね!良かったじゃない!!」

 

「うん!!えへへ……」

 

 

話し終わったユウは照れたようにはにかむ。

その顔は本当に嬉しそうで、心なしか顔も赤い。

そんなユウを見てカカシとサスケの機嫌は底辺まで落ちた。

 

 

「それで?どんな服装で行くの?」

 

「え?普通にコレだよ??」

 

「ダメよ!!折角なんだからオシャレしなくちゃ。

うーん、そうねぇ……今日会って報告してきたら甘栗甘に来て頂戴!

このサクラ様が色々見立ててあげるわ!!

もし来なかったら……分かってるわね?」

 

「え、あ、あぁ……うん」

 

 

キャッキャキャッキャと騒ぐ女子2人(9割サクラ)

そんな女子2人の会話を聞いた男子組はというと……。

 

 

「聞いたかカカシ、ナルト」

 

「ああ……これはユウに男の影ありといったところか。

あ″~~オレのユウちゃんが……」

 

「いやそれ可笑しいってばよカカシ先生」

 

 

いつもはトラブルしか起こさないナルトが一番の常識人となって必死にツッコミを入れていた。

あのナルトが、である。

 

 

「う~ん、どうするよサスケ。

このままじゃあユウはどこの馬の骨とも分からぬ輩に奪われる!!」

 

「カカシ先生頭大丈夫か?」

 

「そうだな……」

 

「何ナチュラルに話し進めてんだってばよ?!オレは全面的にスルーなのか?!」

 

「これはもう尾行しかないだろ」

 

「人の話しを聞けー!!」

 

「「うるさいぞナルト」」

 

 

2人に殴られ、ナルトは哀れにも地に伏した。

 

 

「(悪いユウ……オレにはこの2人は止められねェってばよぉ……。

つーかオレも気にならないって言ったら嘘になっちまうし……)」

 

 

彼女はもはや友達というよりは兄弟に近い存在である。

ナルトに兄弟はいないため、妹がいたらこんな感じだろうかと思う程度ではあるが、それでもユウは大切な家族のような存在である。

幸せは願っているが、そのお相手を一目拝んでみたいというのが本音だ。

 

 

「よし今回だけは手を組むぞカカシ」

 

「お前一々上から目線だよね。

まぁ、今回はオレも手を組もうと思ってたからいいけど」

 

 

静かにバチバチと火花を散らすカカシとサスケに内心やってらんねーってばよ、と呟くナルトであった。

 

 

英雄を奪われたかの国に、再び小さな希望の芽が顔を出す。

まだ小さいが、いつか大きく花開くことだろう。

彼らと出会ったことはユウたちにとって掛け替えのない経験となる。

そしてユウたちが渡っているその橋に『ナルト大橋』と名付けられることになったのはまた別のお話。

 

 

 

波の国編、終幕。

 




お久しぶりです。
作者の風雅です。

波の国編、これにて完結致しました!
いやー、長かったですね……。

次回は少し原作から離れ、オリジナルが入ります。
皆様にはこれはこれでありかなー、程度に読んでいただければ嬉しいです。

感想などなどお待ちしております。

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