絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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第10話 再不斬襲来、後

「終わりだ」

 

 

それは、カカシが勝利をつかんだという宣言だった。

張り詰めていた空気が少し緩み、ナルトたちはホッと一息をつく。

しかし、一方でユウは訝しげに再不斬を見つめた。

 

なんだろう、この違和感……。

 

 

「ククク……終わりだと……」

 

「!」

 

「分かってねェーな。

……サルマネごときじゃあ……このオレ様は倒せない。絶対にな」

 

「……」

 

「クク……しかしやるじゃねェーか!琥珀のガキもな」

 

━━━━オレの仲間は 絶対 殺させやしなーいよ!

 

「あの時すでに……オレの“水分身の術”はコピーされてたって訳か……。

それに気付いてた琥珀のガキに、分身といかにもらしい会話をさせることで……。

オレの注意を完全にそっちに引きつけ、本体は“霧隠れ”で隠れてオレの動きをうかがってたって寸法か」

 

 

この状況下で、再不斬はいたって冷静だった。

実際、再不斬の読みは当たっていた。

別に示し合わせていた訳ではないが、ユウが気付いていたのは紛れもない事実である。

その時、ユウはしまった、と目を見開いた。

 

 

「けどな……」

 

「オレも そう甘かぁねーんだよ」

 

「!!!」

 

「そいつも偽物―!!?」

 

 

カカシがクナイを当てていた方の再不斬は水となり、本物の再不斬が背後に現れた。

再不斬の武器が風を切り、ブンと音をたてて切りかかり、咄嗟にしゃがみこんでかわす。

しかし、再不斬は刀を軸に強烈な回し蹴りをカカシに食らわせた。

成すすべなく、蹴飛ばされたカカシは水に向かって落ちていく。

 

 

「(今だ!!)」

 

「やらせない!」

 

 

追撃しようと走り出す再不斬の行く手を遮るように躍り出る。

その姿に眉をひそめ、刀を振るった。

 

 

「たった一本のクナイで受け止めるとは、な……。

やるな、琥珀のガキ」

 

「ッそれはどうも!」

 

 

重い……こんなデカイ刀を振り回せるだけはある。

“このまま”じゃ、流石に身体もあんまり動かないか。

あんまり琥珀って言わないで欲しいんだけど……っ。

 

なんて思ってる暇もなく、そのままクナイを弾かれ、目前に迫ってきた蹴りをバック転でかわし、次の攻撃に構えるも、ユウを置いてカカシの元へ行ってしまった。

 

しまった、最初からカカシ先生狙いか……!!

 

 

「悪いな、お前の相手は後でじっくりとしてやる」

 

「せんせー!!」

 

「(な、なんだこの水、やけに重いぞ……)」

 

「カカシ先生!早く水から出て!!」

 

「フン……バカが。遅いんだよ」

 

「!!」

 

 

水牢の術!

 

 

「(しまった!!)なに!?」

 

 

 

カカシは水の球体に閉じ込められてしまった。

 

 

「ククク……ハマったな。脱出不可能のスペシャル牢獄だ!!

お前に動かれるとやりにくいんでな。

……さてと……カカシ、お前との決着は後回しだ。

……まずはアイツらを片付けて、琥珀のガキはもらい受けるぜ」

 

「なに!?」

 

「……」

 

 

印を結び終えた再不斬は、水分身を二体出現させた。

こちらに来る分身体に、ナルトはゾクッと背筋を凍らせる。

 

 

「ククッ……偉そーに額あてまでして忍者気取りか……。

だがな、本当の“忍者”ってのはいくつもの死線を越えた者のことをいうんだよ。

つまり……オレ様のビンゴ・ブックにのる程度になって初めて忍者と呼べる……。

……お前らみたいなのは忍者とは呼ばねェ……」

 

 

突然、水分身は姿を消した。

霧隠れの術だ。

再び消えた再不斬に、恐怖で固まっていたナルトは容赦なく蹴飛ばされた。

 

 

「ナルト!!」

 

「おっと、お前の相手はこっちだぜ?」

 

「ユウ!危ない!!」

 

 

背後から聞こえてきた声。

振り向きざまにクナイを投げつける。

しかし、刀で弾かれてしまい、ユウは後ろに跳び、距離を取る。

 

 

「ただのガキだ」

 

「ぐっ!お前らァ!!

タズナさんを連れて早く逃げるんだ!!コイツとやっても勝ち目はない!!

オレをこの水牢に閉じ込めている限り、こいつはここから動けない!

水分身も本体から離れれば使えないハズだ!!

とにかく今は逃げろ!」

 

 

背後で、ナルトが一瞬こちらを見て、水分身に向かって走り出したのが気配で分かった。

 

 

「うおおおお!!!」

 

「バ…バカよせ!」

 

 

カカシとサクラの悲痛な声、サスケの焦ったような声が聞こえる中、ユウはただ微笑んだ。

 

 

「一人で突っ込んで何考えてんのよ!

いくらいきがったって下忍の私達に勝ち目なんてあるわけ……!!(え……!?)」

 

「ぐっ…」

 

「(……額あてを……!?)」

 

「おい……そこのマユ無し」

 

 

言ってやれ、ナルト。

 

 

「……お前のビンゴ・ブックに新しくのせとけ!!

いずれ木ノ葉隠れの火影になる男。

木ノ葉流忍者!うずまきナルトってな!!」

 

「お前ら何やってる逃げろって言ったろ!オレが捕まった時点でもう白黒ついてる。

オレ達の任務はタズナさんを守ることだ!!それを忘れたのか?」

 

「カカシ先生、それじゃあダメだよ」

 

「なっ……ユウまで何言ってる!?

お前も狙われてるんだぞ!?いいから逃げろ!!」

 

「うん。そうだね。

でも、それだとカカシ先生、殺されちゃうよね?

カカシ先生抜きで、ホントにあたし達だけでタズナさんを守りきれるかな?

それこそ、タズナさんも守れず死ぬ。最悪のシナリオだよ。

━━━━それに、あたしのことを逃がしてくれるとは到底思えないしね」

 

 

肩をすくめ、目の前の再不斬を見つめる。

カカシもハッとしたように目を見開いた。

 

 

「つまり、タズナさんを守るために最善の選択をするならば……。

どんな手を使ってでも先生を助けるしかない!

あたしたち、5人でチームでしょう?」

 

「おっちゃん……」

 

「…なぁに……もとはといえばワシがまいたタネ。この期に及んで超命が欲しいなどとは言わんぞ。

すまなかったなお前ら……思う存分に戦ってくれ」

 

 

その言葉をしっかり聞き、ユウは目の前の再不斬と向きなおる。

このままではナルトの方へ救援に行けない、取り敢えずこっちの水分身だけでも倒すのが、ベストだろう。

そう考えていた時、再不斬が口を開いた。

 

 

「なぁ、琥珀のガキ。聞いたことあるか?

“血霧の里”と呼ばれた、オレの里で行われていた卒業試験の話しを」

 

「生徒同士の、殺し合いのこと?

確か、10年前に大変革を遂げたっていう……。

理由は、まだ忍の資格を得ていない幼い少年が、その年の100人を超える受験者を喰らい尽くした悪鬼が現れたから、だったかな」

 

「その通り。博識だな。その悪鬼がこのオレ様だ。

楽しかったよ……アレは…………」

 

 

ニィ、と笑った再不斬は、なぜだか泣いているような、気がした。

何故だろう、と思いつつ、普通なら戦慄するであろうその表情をただ見つめる。

 

 

「…………あたしはその話しを聞かされた時、“それ以上”を求められたよ」

 

 

━━━━お前はこの悪鬼以上の至上最狂の存在にならなければならない。

 

━━━━お前は人間じゃない、道具だ。殺戮のみをする、大切な大切な兵器なんだよ。

 

━━━━さぁ、殺せ!!

 

 

「ほぉ?ククッ、どう思った?

さすがのお前でも怖がったのか?」

 

「いや………悲しい話しだと思った。

悪鬼と言われている人は……本当は優しい人なんだろうな、って」

 

 

素直にそう答えれば、意味が分からない、とこちらを睨む。

だが、後々になり、人としての感情というものを学んだユウは本当にそう思ったのだ。

 

 

「きっと、その悪鬼は、もうそんな試験で他の子が苦しまないように、殺してあげたんだろうなぁって…………。

流石にそんなことをする生徒が現れれば、制度は改正せざるを得ない。

きっと、一人で汚れ役を背負って、冷たい目を浴びせられて、すごく…━━━━傷ついたんだろうなぁって…」

 

 

ユウは、知っている。

ただ、生きているのが、背負っていくことが、決して幸せだけじゃないことを……。

時には殺してあげた方が、その人にとって幸せだということも…。

 

だって、自分は殺して欲しかったから。

背負っていくことは重くて、辛くて、苦しくて……。

いっそのこと死んでしまえば良かったと何度思っただろう。

 

再不斬は、ただ目を見開いた。

この少女は、何を言ってるんだろう、と………。

迷いを生んでしまいそうなその想いを振り払うように、再不斬は刀を振り回し、再び構えた。

その瞳は、とても泣きそうな色を宿していたのを、ユウだけが見ていた。

 

 

「…くだらねェおしゃべりはここまでだ。

あっちでも今、同じ話しをしているようだな。

オレはさっさとテメェを連れていく」

 

「あたしもやらなきゃいけないことがあるから負けられないよ━━━━再不斬」

 

 

それを合図に、両者は駆け出した。

刀が降りおろされ、かわすが、蹴り挙げられてしまう。

 

 

「くッ…」

 

 

追うように再不斬も跳び、迫り来る刀をクナイで応戦、金属音が鳴り、火花が散る。

しばらく一進一退の空中戦が繰り広げられたが、不意にユウが攻撃の手を緩め、腕から鮮血が舞った。

深くはないものの、浅い訳でもなく、出血は止まる様子を見せない。

そして、首をつかまれ、そのまま地面に叩きつけられてしまった。

 

 

「フン。お前、本当はそんなもんじゃないだろう?さっさと本気を出せ」

 

「ハァ、ハァ……」

 

 

身体が、重い……でも、これで勝機は見えた!

 

息を整え、再不斬を見据える。

ポーチに手を突っ込み、素早く手裏剣を取り出すと投げつけた。

 

 

「こんなもん効くか!!

ちょっとは本気を出したらどうだ?琥珀のガキ!!」

 

「……」

 

 

安い挑発に何も答えず、再び刀でガードしようとしたその時、ユウはすっと印を結んだ。

すると、放った手裏剣が淡い光を発する。

驚いた再不斬は急いでよけ、1枚の手裏剣が彼の刀をかすっただけだった。

彼のすぐ後ろで、手裏剣は一つも残らず小規模な爆発を引き起こした。

 

 

「フン。確かに良い戦法だ。

ただの手裏剣と見せかけ、あの一瞬で起爆札と同じ術式を刻み込み、オレが刀で弾いたその瞬間、爆発させる寸法だったんだろうが……。

残念だったな、発動させるタイミングが早かった」

 

 

だから気付かれたんだよ。

 

そう不敵に笑う再不斬に、ユウはただ静かにニコッと微笑んだ。

その笑顔に少し目を見張る再不斬。

 

 

「半分正解、半分不正解。

だって、あの手裏剣はもう、役目を果たしたんだから」

 

 

あの手裏剣は、かするだけで良かった。

その言葉の真意が読み取れず、再不斬が眉を寄せたその時だった。

すっと印を構えると、その瞬間刀から這い上がるように、術式が浮かび上がる。

 

 

「な、何だこれは!?」

 

「言ったでしょ?あの手裏剣は役目を果たした」

 

 

マーキングは腕を切られていた時に、仕込みは先ほどの手裏剣で充分。

バッと印を組み上げ、胸の前で構えた。

 

 

「これで、あなたの負け━━━━闇遁・爆華昇(あんとん・はっかしょう) 一ノ舞」

 

 

右腕を振り上げる。

それに倣うように、再不斬の刀に彩られた術式から、次々と漆黒の華が芽吹き、ツタが再不斬の体に巻き付いて再不斬の自由を奪った。

 

 

「くッ何を……(何だこの術!?)」

 

 

胸元まで手を下ろし、印を組みチャクラを込めると、闇色の華は暗く鈍い光を宿す。

そして……━━━━。

 

 

「 爆 」

 

 

言い終わると同時に、華は再不斬もろとも爆破し、水となって散り散りに消し飛んだ。

その一部始終を見ていたサクラは、驚きに目を見開く。

 

 

「(ユウ……あんなに強かったの!?

ナルトとサスケ君、二人でもあんなに苦戦してるのに……!!)」

 

 

そして、未だ苦戦しているナルトとサスケを心配そうな眼差しで見つめる。

しかし、こちらもこちらで決着が着こうとしていた。

簡単に止血を済ませたユウはタズナとサクラの元に駆け寄り、二人の様子を見て大丈夫そうだと判断する。

 

 

「ただいまサクラ。タズナさん。」

 

「おお!お嬢ちゃん超強かったのぉ!!」

 

「ユウ!!私たちの方はいいから、二人の援護を……」

 

「いや、二人は大丈夫だよ。むしろ、あたしなんて必要ない」

 

 

ニッコリと安心させるように笑い、再び二人を見れば、サスケが手裏剣を構えている所だった。

 

 

「風魔手裏剣 影風車!!!」

 

「手裏剣なんぞオレには通用せんぞ!」

 

 

飛び上がったサスケは、思いっきり手裏剣を投げた。

が、その標的は水分身ではなく、本体の再不斬。

 

 

「なるほど、今度は本体を狙って来たって訳か…………。

が……甘い!」

 

 

受け止めた再不斬の目の前に、もう一枚の手裏剣が迫る。

それに驚き、目を見開いた。

 

 

「手裏剣の影に手裏剣が……!」

 

「(影手裏剣の術……タイミングもバッチリだね)」

 

「(死角に2枚目の手裏剣が……!?)」

 

「!!が、やっぱり甘い」

 

「!!(よけられたァ!!!)」

 

 

跳んでかわされ、手裏剣はそのまま飛んでいく。

もうダメだ、とサクラが絶望したような顔をした時、肩に置かれた手。

隣を見れば、大丈夫、と言いたげにニッコリ笑うユウ。

見れば、サスケもニヤリと勝利を確信したかのような不敵な笑みを浮かべている。

 

ボン!

 

手裏剣は、破裂したような音とともに、ナルトの姿になった。

 

 

「(ここだぁっ!!)」

 

「!?」

 

「ラァ!!!」

 

 

投げられたクナイ。

それをかわす為、咄嗟に水の球体に突っ込んでいた手を抜いてしまい、術がとけてしまった。

キレた再不斬は手裏剣を振り回し、ナルトに向ける。

 

 

「「「!」」」

 

「(このガキィ!!!)」

 

 

ガッ

 

しかし、それはカカシが回転を己の手によって止めさせた為、未遂に終わる。

水に濡れ、輝く銀髪の間から再不斬を睨む瞳は、強い殺気が込められていた。

 

 

「カ…カカシ先生!!!」

 

「ぷはぁあっ!!」

 

「ナルト……作戦見事だったぞ。ユウもすまなかったな、一人でよく頑張った。

成長したな……お前ら……」

 

「へへ……」

 

 

褒められたナルトは、今回の作戦を嬉しそうに明かした。

その意外性に、ユウはいつも驚かされるが、今回はその中でも本当にすごいと思う。

 

 

「へっ……カッとして水牢の術をといちまうとはな…」

 

「違うな!術はといたんじゃなく、とかされたんだろ

言っておくがオレに2度同じ術は通用しない。さてどうする」

 

 

印を結ぶ二人は、全く同じ印、同じ順番で印を結んでいく。

そして、二人の背後から水でできた竜が生み出される。

 

水遁・水龍弾の術!!

 

二つの水龍はぶつかり、大きな水柱を上げる。

その後も、二人は全く同じ動きをし、段々再不斬を苛立たせる。

 

 

「(こいつ…オレの動きを完全に……)」

 

「読み取ってやがる」

 

「(?なに!?オレの心を先読みしやがったのか?

くそ!こいつ……)」

 

「むなくそ悪い目つきしやがって……か?」

 

「!!!フッ……しょせんは2番せんじ」

 

「「お前はオレには勝てねーよ、サルやろー!!」」

 

「!!!てめーのそのサルマネ口……二度と開かねェようにしてやる!」

 

 

全く同じセリフを言われ、完全にキレた再不斬は印を結んでいく。

しかし、カカシの背後に自分の姿が見え、動揺して印を結ぶのをやめてしまう。

その隙にカカシは印を結び終えた。

 

水遁、大瀑布の術!!!

 

 

「な……なにィ(バカな!!術をかけようとしたオレの方が……追いつけない!!)」

 

 

再不斬は悲鳴をあげながら水に流される。

その強力な術による被害は、流されはしないものの、ユウたちにまで及ぶほどだった。

木に叩きつけられた再不斬は、ぐったりとしていて、クナイが飛んできてもよけられず、そのまま縫いつけられてしまう。

 

「ぐっ……」

 

「終わりだ……」

 

「……ナゼだ…お前には、未来が見えるのか……!?」

 

「ああ……お前は死ぬ」

 

 

カカシがクナイを構えたその時。

突如飛んできた千本に再不斬の首は貫かれた。

 

 

「フフ……本当だ、死んじゃった」

 

 

語尾にハートマークがつきそうな声色だった。

ドサッと倒れる再不斬の首には、二本の千本。

倒れた再不斬に駆け寄り、脈を確かめるが…なるほど、確かに死んでいる。

しかし、警戒心を隠すことなく新たに現れた面を被った男を見据えた。

 

あれは…暗部?

本当に再不斬を殺しにきたのなら、何故千本なんて……?この位置は確か……。

それに……この戦いを始めからずっと見ていた気配と同じ。

 

 

「どうだユウ」

 

「!あ、うん…確かに死んでる」

 

「ありがとうございました。ボクはずっと……確実にザブザを殺す機会をうかがっていた者です」

 

 

ペコ、と律儀に頭を下げる面の男。

 

 

「確かその面……お前は霧隠れの追い忍だな……」

 

「……さすが……よく知っていらっしゃる」

 

「追い忍?」

 

「そう、ボクは“抜け忍狩り”を任務とする、霧隠れの追い忍部隊の者です」

 

 

背丈や声からして、ユウたちとそう変わらない年齢だろう。

それで追い忍とは、かなりの実力の持ち主ということだ。

 

 

「(追い忍、ね……ウソが上手だなぁ)」

 

 

追い忍を名乗る少年を観察していると、ナルトが何度も睨みつけるように少年を、そして再不斬を交互に見ているのに気付く。

追い忍の少年も、面で表情はみえないが、不思議そうにナルトを見ていた。

そして突如、ナルトは少年を指差し、叫んだ。

 

 

「なんなんだってばよ!!!お前は!!?」

 

「安心しろナルト。敵じゃないよ」

 

「!ンなこと聞いてんじゃねーの!オレってば!!

あのザブザが……あのザブザが殺されたんだぞ!!あんなに強えー奴が……。

オレと変わんねェあんなガキに簡単に殺されちまったんだぞ!

オレたちバカみてーじゃん!」

 

 

納得できるかァ!

最後にそう締めくくるナルトは、悔しさで一杯のようだった。

 

 

「ま!信じられない気持ちも分かるが……。

が、これも事実だ」

 

 

ポフ、とナルトの頭に手を置き、再びカカシは口を開いた。

 

 

「この世界にゃお前より年下で、オレより強いガキもいる」

 

 

そう言って、チラリ、とユウを見る。

サスケはその事実に、焦りともとれるような複雑な顔をする。

拗ねたようにそっぽを向いていると、追い忍の少年が瞬身の術で再不斬の元へ移動した。

 

 

「……あなた方の闘いもひとまずここで終わりでしょう。

ボクはこの死体を処理しなければなりません。

なにかと秘密の多い死体なもので……。

……それじゃ失礼します」

 

「消えた!!」

 

 

再び瞬身の術により、姿をくらました追い忍の少年に、ホッと息をつく。

カカシを始めとしたみんなが疲弊している中、みんなを守りながら闘える自信はなかったのだ。

しかも、追い忍を名乗る少年は闘いの一部始終を見ている。

戦闘になったとき、一番に狙われたのは間違いなくサクラだろう。

下手したら全滅していたかもしれない。

思考を巡らせていたユウの隣で、カカシは深い息を吐き、額あてをズラした。

 

 

「さ!オレ達もタズナさんを家まで連れていかなきゃならない。

元気よく行くぞ!」

 

「ハハハッ!!皆超すまんかったのォ!

ま!ワシの家でゆっくりしていけ!」

 

 

タズナが快活に笑い、歩き出したその時、ユウは頭上の影が濃くなったのに気付き、ハッと見上げれば……。

なんとカカシが自分の方へ倒れてくるではないか。

あまりにも突然過ぎる展開に反応できず、ビシッと固まってしまい、そのままカカシに押し倒されてしまう。

顔はなんとか潰されなかったが、その分息が届くくらい顔が近い。

さすがの出来事にユウは脳内がフリーズし、かわいそうな程体をビクビクと震わせるが、おずおずと口を開く。

 

 

「え、あ、あの……か、カカシ先生っ?」

 

「あ~……ごめーんね、ユウ」

 

「なに!?え……ちょっとどうゆう状況よコレェエエ!?」

 

「てめっ…!カカシっ!!」

 

「わー!!カカシ先生早くどけろってばよォ!!」

 

 

カカシの倒れた音に気付いた四人が、振り返ればこの反応である。

ユウの顔が思った以上に近くにあることに、カカシは少し顔を赤くし、涙目になる。

 

 

「(あ~~、写輪眼の使いすぎで動けない、だなんて……。)」

 

「カカシ先生、もしかしてチャクラ切れ?」

 

「あはは、うん……写輪眼使いすぎた……」

 

 

その後、タズナによって背負われ、なんとか彼の自宅までたどり着けたのだった。

 

 

 

 


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