Muv-Luv Alternative ~鋼鉄の孤狼~ 作:北洋
第4部から本作の「残酷な描写」比率は3倍(当社比?)に跳ね上がりますので、グロイのが苦手な方はご注意ください。
可能な限り1週間に1-2回の更新を目途に頑張っていこうとおもいますので、良ければお付き合いください。
第4部 プロローグ 夢
【???】
夢を見ていた。
この夢を見るのは何度目だろう……?
なぜ、同じ夢を自分は見るのだろう?
夢は刹那的なものだ。
寝ている間だけしか見れない、起きてしまえば忘れてしまう。
次に夢で見た時は一度みた夢だなんて、普通は認識できない。
でも自分は違った……。
1度目は2週間近く前。
自分のオリジナルの世界へと転移する前に見た ── なんというか、良いとは言えず、その上、見てしまう意味が説明できない夢。
とは言え、夢に意味を求めること自体が間違っているのかもしれない。
けれども ── 意味が無いのだとしても、彼はその夢を忘れることができなかった ──……
(そうだ、何故見る……?)
……── 夢の中で、彼は瓦礫の山を掘り起こしていた。
燃えている。市街にあるビル群が、馬鹿のように崩れ、ガスを供給している配管から火の手が上がっている。
そんな中彼は、重機など使わず、自分の腕2本で頭大のコンクリートの塊を力任せに退けていく。
それを掘る、と言っていいのだろうか?
退ける。
退ける。
退ける。
兎に角、彼は我武者羅積み重なったコンクリートを退け続けた。
退ける。
退ける。
退け続ける ── 変わり果てた見慣れた街の中で、彼は
そう、退け続ける。
退ける。
退ける。
退ける。
退け ──……
── 長い時間の末。
彼は見つける。
そして叫ぶ。
「うおおおぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ ─────── 」
彼は手を伸ばした。
彼女の手を掴むために。
彼は彼女の手を掴めたのか?
それは誰にも分からない ──……
【西暦2001年 12月9日(日) 4時12分 横浜基地 キョウスケ自室】
……── キョウスケ・ナンブは、横浜基地で割り振られた自室のベッドで目を覚ました。
ぼったりと全身に汗をかいている。嫌な汗だ。キョウスケは自分が寝汗をかき、目覚めた理由におおよその検討がついていた。
夢を見たばかりだったから。
「……また、あの夢か」
夢は目覚めてしまえば、すぐに内容を忘れてしまうものだ。
だからこその夢なのだが、キョウスケの場合は内容をしっかりと覚えていた。
夢の中で、キョウスケが瓦礫を掘り起し何かを探している。
そして何かを発見して絶叫 ── 12・5クーデター事件が終わってからというもの、毎晩のようにこの夢をキョウスケは見ていた。
常人なら、ただの夢だから気にするな、でいいのだが、キョウスケの場合は少し事情が違う。
夕呼曰く、キョウスケ・ナンブの因子の集合体であるキョウスケが見る夢は、彼を構成する
夢の中で絶叫している自分に何があったのか? この問題は他人に聞いても解決できないし、自力では解決の糸口の1つすら見つけられない現状が続いていた。
もっとも、夢の内容がキョウスケの生きる現実に、左程影響をもたらすこともない。
気にしないのが一番ではあったのだが、
「……目が冴えてしまったな。風にでも当たってくるか」
キョウスケはベッドから出ると愛用の赤いジャケットを手に部屋を出た。
訓練兵用の校舎の屋上 ── あそこなら、星も見えるし風にも当たれるだろう。
キョウスケは校舎の屋上を目指して歩き出すのだった ──……