Muv-Luv Alternative ~鋼鉄の孤狼~   作:北洋

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本作は「スーパーロボット大戦OGs ジ・インスペクター」のアニメ終盤戦後のキョウスケ・ナンブが「マヴラヴ オルタネイティブ」の世界に飛ばされちゃったぜ! 的なお話です。
オリジナル要素満載になる予定なので、拒否感を抱く方もいるかもしれません。ご了承いただけるかたはどうかお付き合いください!
感想・ご指摘大歓迎!
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ではどうぞ!


第0話 貫け、奴よりも速く

 新西暦と呼ばれた時代。

 それは地球人類が、地球外知的生命体や謎の侵略者との戦いを繰り広げた戦乱の時代である ──

 

 

 ── 多くの命がその激動の時代を駆け抜け、散っていった。

 ある者は愛する者を守るために。またある者は目指した未来を手につかむために。一戦一戦に命と全身全霊を賭し、戦いに向かっている……キョウスケ・ナンブも、そんな男たちの1人だ。

 

 【シャドウミラー事件】 ── 並行世界からの侵略者たちとの戦争の最終局面で、キョウスケは、並行世界から転移してきた自分自身と決着をつけるべく愛機「アルトアイゼン・リーゼ」を駆っていた。

 並行世界のキョウスケは地球を目指し、単機での大気圏突破を敢行している。キョウスケらの目的は敵機の地球到達の阻止。必然的に大気圏に突入しながらの戦闘となり、機体のオーバーヒートを告げる警告音がコックピット内に鳴り響いている。

 アルトアイゼンに大気圏突破能力は備わっていない。

 離脱限界値を越えてしまうと、アルトアイゼンは自力での重力圏からの脱出は不可能 ── そうなった場合の結末など火を見るより明らかだったが、キョウスケは決して引こうとはしない。

 理由は、コックピットモニターに映し出されていたあるモノだ。

 モニター上の敵機……そのコックピットブロック装甲に、鋼鉄の拳が埋まって残っていた。

 

(アクセル ── 届いていたぞ、お前の一撃は)

 

 キョウスケは戦場に散った好敵手を想う。

 敵機に埋もれているのは、アクセル・アルマーの乗機「ソウルゲイン」の玄武剛弾だ。敵機の装甲板に埋もれコックピットに届かなった拳弾。だがあと少し……あと少しで敵のコックピットに到達する……そんな絶妙な位置にアクセルの遺産はあった。

 アルトアイゼンの力で一押しすれば、おそらくソウルゲインの拳が敵のコックピットを貫くだろう……だが。

 

 

(── やれるのか、俺に? そもそも装甲を貫けたとして、コックピットの位置がそのままだとは限らない。その場合、こちらが確実に撃破される ──)

 

 一瞬の逡巡。

 0.1秒に満たぬほどの。

 考えるまでもなく、キョウスケの腹は決まっていた。

 

(上等だ。分の悪い賭けは嫌いじゃない!)

 

 キョウスケはコンソールを操作し、フットペダルを踏み込む。選択された武装はアルトアイゼンの右腕部の固定武装「リボルビング・バンカー」 ── 常軌を逸する程に巨大なそのパイルバンカーを振りかざし、アフタバーナーから爆炎を噴きだしてアルトアイゼンは加速する。

 肉薄するキョウスケのアルトアイゼン。だが敵機から迎撃弾がアルトアイゼンの装甲を抉り、行く手を阻む。

 

『キョウスケ、援護するわ!』 

「エクセレン!」

 

 サブモニターにキョウスケの恋人 ── エクセレン・ブロウニングの姿が映し出された。長い時間を共に過ごしてきた戦友にして、キョウスケが女性として愛する掛け替えのない人物だ。

 エクセレンの乗機「ライン・ヴァイスリッター」のハウリングランチャーが火を噴き、敵機の迎撃を妨害する。ハウリングランチャーは並のPTなら数機まとめて葬る威力を誇るが……直撃したにも関わらず、敵機に大きなダメージは確認できなかった。

 ほんの一瞬だけ、迎撃の手が緩んだだけだ。

 

「それで十分だ!」

 

 

 その瞬間を、熟練したキョウスケの目は逃さなかった。まるで脊椎反射のように、スロットルとフットペダルを全開にし、機体が分解しかねない勢いで敵機に吶喊する。

 再開された敵機の迎撃により、アルトアイゼンの装甲がさらに深く削られていく。直撃弾の嵐 ── 機体各所の機能不全及び脱出勧告がモニターに表示され、耳触りな音がコックピット内に響いた。

 だがアルトアイゼンは撃墜されるよりも速く、敵機に体当たりすることに成功した。

 アルトアイゼンと並行世界のキョウスケの乗機 ── 並行世界のアルトアイゼンは、大気圏の熱に侵されながら地球へと落下していく。

 

「まだだ……ッ!」

 

 叫びと共にコントロールレバーを操作するキョウスケ。

 

「貫け……! 奴よりも速くッ!!」

 

 埋まっているソウルゲインの拳に、リボルビングバンカーの鉄杭が撃ち込まれた。敵機のコックピットが鋼鉄の拳に押しつぶされていく。

 接触回線を通じて、並行世界のキョウスケの断末魔が耳に届いた。

 

『馬鹿なぁッ!? 未来が……過去にぃぃぃぃっ!?』

「俺は生きる! 未来をッ、エクセレンと共に ── ッ!!」

 

 炎に包まれた2機のアルトアイゼンは、重力に引かれるまま青い母なる星へと堕ちていく……全身を苛む熱気……感覚と言う名の生きている証拠を享受しながら……キョウスケの意識は、一度、そこで途切れた ──……

 

 

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 …

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【西暦2001年 11月11日(日)  日本 新潟BETA上陸地点】

 

 地獄、あるいは死屍累々、そう表現するのは適切であろう光景が伊隅 みちるの眼前には広がっていた。

 

 11月11日の正午過ぎ、伊隅 みちるは新潟にある海岸線沿いにいた。青い海に白い砂浜、もし季節が夏ならば、ここが海水浴場だと偽っても決して疑われることはない ── そんな光景が確かに作戦開始前には広がっていた。

 しかし今はどうだろう?

 海岸線の青と白のコントラストは暗赤色の体液で上塗りされ、海水浴客の代わりだとばかりに大小様々な異形の骸が山積みになっていた。戦闘が終了して既に30分が経過していたが、今なお化け物の体から流れ続ける赤黒い体液は海を汚し続け、独特な硫黄臭をあたりに撒き散らしているはずだ。

 もちろん、人型ロボットのコックピット内にいるみちるの鼻に、腐臭と言っても良いその硫黄臭が届くことはない。だが外部の光景は、常に網膜投影されて写し出されている。一般人ならば間違いなく嘔吐しているであろう凄惨な光景だったが、みちるにとっては別段珍しくもない見慣れた光景だった。

 伊隅 みちる。彼女は特殊任務部隊「A-01」の部隊長であり、階級は大尉。大尉ともなれば、人型ロボット ── 戦術機による化け物 ── BETA(ベータ)掃討作戦は何度も経験してきている。彼女はベテラン、あるいはエースとも呼ばれる類の人間だった。

 

 佐渡島ハイヴから新潟に上陸BETA掃討後、みちるが率いる「A-01」は残存BETAが存在しないが哨戒にあたっていた。

 小隊別に行動し、非常時に連携が取れる程度の距離に散開、警戒しているが動体反応はない。

 と、別行動中のB小隊から通信が入ってきた。

 

『こちらヴァルキリー2。隊長、こちらではもう動いているBETAはいないようです』 

「ヴァルキリー1了解。こちらもおそらく大丈夫だろう。だが油断しすぎるなよ、BETAはクソったれな下等生物だが、タフさだけは折り紙つきだからな」

 

 通信の相手 ── B小隊小隊長にて「A-01」のナンバー2「速瀬 水月」は、みちるの言葉に苦笑いで応えた。

 

『まったくですよ。ぶっ殺すだけでも一苦労だっていうのに、今回の特殊任務はBETAの捕獲って言うんだから……博士の鬼上司っぷりには白旗を上げたい気分ですね』

「ふっ、同感だ。……まったく、博士は何をお考えになっているのか。BETAの捕獲など……?」

 

 殲滅するだけでも相当な被害……最悪壊滅しかねないBETAという怪物たちを相手に、生きたままのサンプルを捕獲すること。それが、今回みちるの所属する特殊部隊「A-01」に与えられた特殊任務だった。

 みちるたちの乗る全長18m程の人型ロボット ── 戦術機をもってしても苦戦必至のBETAという化け物。それを捕獲せよ、とのお達しなのだ。当然、殲滅よりも任務成功の難易度は高くなる。

 結果だけ言えば、みちるたち「A-01」は任務は達成していた。しかし戦死者1名という痛手も被っていた。みちるにとっては、大切な部下を1人失ったということに他ならない。

 

(香月博士……いつものこととはいえ、読めないお方だ)

 

 NEED TO KNOWの原則。

 知る必要がないから知らせない。ただそれだけのことだ。詮索したところで望んだ答え帰ってくる保障は何処にもない。知らされない以上、目の前の任務をこなすしか選択肢は最初からないのだ。軍隊では珍しくもない、日常茶飯事のことだった。

 

 ……結局、残存BETAの存在は確認されずCP(コマンドポスト)から撤退命令が下ったのは、それから30分が経過した後だった……。

 

「聞いたな。総員、撤収準備にかかれ」

『『『『了解』』』』

 

 みちるが発した命令に隊員全てから言葉が返ってきた。

 その時だった。

 みちるの戦術機のセンサーが『何か』を拾ったのは。

 戦術機大の金属反応が出ている。反応が見られているのは、みちるの小隊が担当したエリアだった。

 

(金属反応? BETAの死骸以外に、戦車や戦術機の残骸が転がっていたのは確かだが、この反応はあまりに大きい……これではまるで、無傷の戦術機が、BETAの死骸の真ん中にいるみたいじゃないか……?)

 

 もしそんな機体が残っていたのなら、みちるたちが哨戒中に絶対発見しているはずだ。さらに言うなら、哨戒中に表示されている金属反応はなかった。

 仮にBETAの死骸に埋まっていたとしても、金属反応が一切検知されないとは考えづらい。

 

「…………」

『隊長? どうかしましたか?』

 

 水月がみちるの回線を開いて訊いた。

 みちるは無言のままだったが、しばらくして口を開いた。

 

「……ヴァルキリー2、少し気になる事がある。それを調べたいのだが、貴様は、残りの隊員を指揮して撤収準備を進めていてくれ」

『はっ、別に構いませんけど……何かあったんですか?』

「なに、大したことじゃない。すぐに済む」

 

 そう、すぐに終わる。該当場所に向かい、目で見て確認するだけだ。長年衛士をやっていると、時々このような違和感を覚えることがあった。些細な事なのだろうが、確認しなければいけない、経験からくる衛士の勘がみちるにそう告げていた。

 水月は怪訝そうに眉をひそめたが、それも一瞬だけだった。

 

『了解です。「伊隅ヴァルキリーズ」これより撤収準備に入ります!』

「頼んだぞ、速瀬」

『任せてください。隊長を置いてけぼりにするつもりで、チャチャッと準備を終わらせますから』

 

 悪戯好きな子どものような笑顔を浮かべる水月に、みちるも微笑で返すと、金属反応が出た地点に戦術機を向かわせた。

 ……数分後。

 みちるは目的地に到着し、奇妙な光景を目にすることになる。

 

「……なんだ、こいつは?」

 

 海岸線には無数のBETAの死骸が積み重なって山のようになっている。それは変わらない。だが見慣れないモノが増えていた、先ほどの哨戒中には発見できなかったモノが、だ。

 

 折り重なった死骸のほぼ中央部分に巨大ロボットが横たわっていた。

 

 戦術機より大きな巨体に、頭頂部にはエアバランサーとは思えない鋭利なブレード、さらに両肩には巨大なコンテナが装備されている。中でも特徴的なのは、右腕部にある巨大なパイルバンカーだった。

 見たこともない戦術機……少なくとも、みちるの所属している国連軍と日本帝国軍に、このような戦術は登録されていない。加えて言うと、そのロボットは全身が目を引くメタルレッドで塗装されており、哨戒中に見逃すはずもない程度には派手だった。

 そして何より奇妙だったのは、そのロボットが横たわっている場所だった。

 ロボット周囲にあるBETA死骸と、触れている地面が球形に抉り取られたようになっていった。まるで重機か何かで、無理やりロボットが倒れる場所を確保したかのような奇妙な感覚。

 戦闘終了後にも関わらず、そのロボットは新品同様の光沢を放っていたことも、みちるの中の違和感に拍車をかけていた。

 妙だ……しかし、みちるにはこの状況を捨て置くこともできない。

 

「……こちらヴァルキリー1、生存者発見の可能性あり。繰り返す ──」

 

 この後、赤いロボットのコックピットからは1人の男性パイロットが発見される。

 みちるの一報は衝撃となって、戦場跡を駆け抜けることになったのだった ──……

 

 

 

 

 

 

───それは、語られなかった他なる結末。

 

         とてもちいさな、とてもおおきな、とてもたいせつな

 

                            あいとゆうきのおとぎばなし───

 

 

 

 

 

to be continued ──……

 

 




本作は「マブラヴ オルタネイティブ」本編開始後、途中から(BETAの新潟上陸事件後)キョウスケが転移してからの話になります。
原作本編であった「総合戦技技術評価演習(だったかな?)」以前の話は割愛します。ですので、原作を知らない人には理解しにくい内容になる可能性が高いです。また本作は「二次創作もの」なので、「マブラヴ オルタネイティブ」に多い専門用語・戦術機・BETAの説明はあまり挟まない予定です。
更新は遅くなると思いますが、どうかよろしくお願いします。


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