私の体はどうやらナルガクルガになったようです   作:粉プリン

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極限

(何か、渓流での大狩猟を彷彿とさせるものがあるね……)

 

凍土の氷塊の上から覗くと防寒の為の防具を身につけたハンター達が荷車に乗り、凍土の拠点に向かっていた。渓流の時と同じくまた大狩猟でも始めるのかと思ったが、よく見ると爆弾や罠と言った物はなく、代わりに食料や回復薬などの消耗品が多く積まれていた。更によく見るとハンター達の何人かが首から双眼鏡らしきものをぶら下げていた。

 

(あれで何かを見る………もしかして討伐じゃなくて観察?)

 

ここ四年間姿を見せなかった私の生態を調べるために来たのかもしれない。どちらにしてもやる事は変わらずハンター達を追い返すだけだ。

 

(そうと決まれば他の子たちには手出し無用って言っておかないと)

 

まだうまく扱えていないがある程度の指示を他のモンスターに伝えることが出来るようになった。といっても物凄く曖昧な『ここから逃げろ』や『一緒に戦え』などの何処ぞのゲームのさくせんコマンドみたいな物しか伝わらないが。これも含めてまだ狂信・盲信の加護は制御中だ。

 

(この分だと本格的に始まるのは昼頃からかな……それまでは皆の避難と場所の選択かな)

 

他のモンスターを巻き込まないように逃がすのと、私の技の範囲圏内に巻き込まないように私自身も場所を考えないと。

 

 

 

 

 

 

 

(始まったみたいだね……)

 

向こうの方から足音がたくさん聞こえてきた。もうすぐでこちらに辿り着くはずだ。

 

(とにかく、四年間頑張ったことだしどれくらい通用するか試してみるかな)

 

すると、エリア内にハンター達が入ってきた。選んだ場所は開けた周りを氷の壁に囲まれたコロッセオのような場所だ。出入口は基本的にハンター達が来た場所か空を飛ぶのみ。なので奥を陣取っておけばハンター達を出入口に弾き飛ばせる。間違っても壁に叩きつけてその後ミンチなんてことにはならないはずだ。

 

(それに加護に関しては相当練習したし、事故はないでしょ。一応気を付けとくけど)

 

「見つけたぞ!周りを囲め!」

 

それぞれのパーティが互いに邪魔にならないように適度に連携しつつこちらに来た。盾持ちが壁になりその隙にガンナーが援護射撃をしてきた。

 

(とりあえず攻撃しますか)

 

体中に電撃を纏い斬りつける。流石にこの程度じゃ削れないし、手の内がバレバレなんだろう。逆にギリギリで躱し反撃してくるくらいだ。ならばと思い刃翼に電撃を纏って刃の長さを伸ばす。同時に斬れ味も上がるがそのままだと間違って攻撃が当たった時大変なので、刃を潰して丸まる感じに纏める。

 

「新しい攻撃だ!注意しろ!」

 

一人のハンターが叫びまわりに注意を促す。でもこれは普通に躱すんじゃ意味がないけどね。

 

「?!この攻撃、追ってくるぞ!」

 

(流石にバレるよね)

 

実はハンター達が着ている防具の金属に反応して刃が微妙に曲がるのだ。さっきのようにギリギリで躱していると方向修正して当てに行くのだ。けど、あくまで少しなので見極めれば攻撃の隙は減るが当たる事はなくなる。

 

(どんどんやらないとこっちが殺られそうだね)

 

向こうは多分攻撃パターンなどの観測だと思うけど狩れるならそのまま狩ると思う。そうならない為に次の攻撃のための準備をする。いつもは霧を出すが今回は可燃性の高い鱗粉を周囲にばら撒く。もちろん撒いてることをバレない様に動きながら。そしてエリア内にある程度充満したところで纏っている電撃の出力を一気に引き上げる。すると

 

(…………どうかな?)

 

私の周りを避けるようにエリア内で爆発が起きた。後衛のガンナーをも巻き込んで爆発させたがあまり被害はなさそうだ。ガンナーが何人か撤退したがおそらく途中に設けた簡易拠点に戻っただけだろう。

 

(それにだいぶ攻撃も当たってきたし……そろそろ頃合いかな?)

 

体内である器官(・・・・)を動かし何時でも出来るように待つ。同時に肩の双腕に意識を持って行くと新しい感覚が増えた。いつになってもこの腕が増える感覚にはなれないが行動するのに違和感を感じない程度に練習したので問題はないだろう。そこで体内の器官が準備出来たので一気に放出した。

 

「なんだ?!こいつ硬くなったぞ!」

 

体から黒いオーラのようなものが見えるので成功だ。使ったのはゴア・マガラが使っている狂竜ウイルスだ。それを体内で爆発的に増や体中に流す。このままだとウイルスに侵されるだけだがここで狂信・盲信の加護を使いウイルスを支配すると肉質の超硬化とスタミナの急速回復、それに加護の力を十分に引き出せる。

 

「ガンナーの弾も弾かれてるぞ!どういう事だよ!」

 

「こっちも全然刃が通らねえ!弱点を探し出せ!」

 

(残念だけど……全身硬化させてるから攻撃は効かないよ)

 

攻撃が効かないためごり押しで行く事も出来るけど四本に増えた腕を使って複数人に狙いを付けて攻撃していく。腕で薙ぎ払いハンターを的確に攻撃していく。途中途中腕や脚を抑えてることから骨折したようだけど今更だし、それくらい覚悟してきてるはずだ。更にブレスで後衛のガンナーを狙う。いきなり狙われたため避け損なって体を焼かれる者もいた。火傷による熱で悲鳴をあげるハンターに驚き前衛が動きを止める。その隙をついて刃翼の電圧を上げて叩き込む。今度は面制圧の意味も込めてあえて纏めず放電する形で当てた。電流が流れ麻痺状態になったハンターを出入り口めがけて殴り飛ばす。徐々に離脱するハンターが増え、三十分程すると全員が撤退していった。

 

(やっと終わった………疲れたしさっさと寝よ)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ギルド本部より白帝龍観測隊に連絡

 

先日行われた白帝龍の調査クエストですが依頼を受けたハンターの殆どが重症、または軽症を負い現在治療中です。ハンター達の報告によると攻撃パターンが大きく変化し、以前よりも攻撃性が上がったとの事。また戦闘中に他のモンスターが乱入して来なかった等、狩猟環境にも変化があったようです。正式依頼を更新すると共にそちらも観測結果の報告お願いします。

 

 

クエスト名『極寒の地に住む隠者』

 

依頼者:ギルド本部

クエスト内容:四年間姿を消していた白帝龍がついに凍土にて発見されました。先遣隊のハンター達を全員リタイアに追い込むほどの実力を秘めています。姿を消していた間に更なる進化を遂げ、攻撃パターンも大きく変化したこの白帝龍を討伐する猛者をここに募集します。

 

契約金:3000z

報奨金:70000z


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