昼寝して目が覚めたら目の前にジンオウガがいた。唐突過ぎて、一瞬刃翼で先にやるべきかと悩んだが脚に刺し傷があるのを見て、先程のジンオウガだと判断した。
(良かった。歩けるくらいには回復したんだ……いやこの状況は良くないけど。なに?復讐?寝てるうちにさくっとやっちまおうって事?)
ジンオウガは全く動かずにこちらを見た。と思うと鼻先を地面に向けた。よく見ると蜂の巣のかけらが落ちてた。ひょっとしてこれを持って来てくれたの?
(……なんか、勝手に怪我させて、勝手に治療して、その挙句お礼もらうって詐欺じゃない?)
蜂蜜は美味しくいただきましたけど。さてと、これからどうするべきか。
(ここが渓流ならさっきみたいにハンター達も来るだろうからさっさと戻るかな?お腹も膨れたししばらくは塔で暮らせばいいよね、その後引っ越そう)
そうと決まれば長居は無用、さっさと帰ろう。ジンオウガがどこ行くみたいな目で見てるけど帰ろう。
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(うわぁ……でっかい)
日が暮れる頃に塔に帰ってくると最上階で雷が落ちまくってた。遠目でも見えるくらいの大きさの真っ白な龍がハンター達相手に戦っていた。
(寝床がなくなったわ。どうしよう今晩)
すると真っ白な龍がこちらに気づいたのか目だけ向けて来た。
(丁度いい!そこのお前!手伝え)
(えっ?……あっはい)
なんで喋れるの?とか、そこ私の寝床だよね?とか質問はあったが逆らったらヤバそうな雰囲気だった為、真面目に援護しよう。やっぱり格上には勝てなかったよ。
「おい!乱入来たぞ!」
「嘘でしょ?!」
「ギルドはそんなこと言ってなかったぞ!どうなってやがる!」
「口動かす暇があるなら手を動かしなさい!」
いつも通りステルスして今回は尻尾で足元をすくうように薙ぎ払った。三人は避けたが残りの一人が転び、そこに雷が容赦なく襲った。えげつねえ……ハメ技でしょ。
「大丈夫か!くそっ、一旦退くぞ!このままじゃ全滅だ」
(私に手を出してやすやすと返すと思ったのか!ここでやられろ!)
ずいぶんハイテンションな真っ白な龍が次々雷を落とす。これじゃあ終わらなさそうだからバレない程度に尻尾で怪我人を担いでるハンターを薙ぎ払い出口近くに飛ばした。もちろん手加減したよ?
「チャンスだ!逃げるぞ!」
どうやら上手く行ったらしく、ハンター達はそのまま逃げていった。
(逃したか。まあいいだろう。これで私の恐ろしさが十分理解できたはずだ)
(あのー……)
(ああ、お前も助かった。手助け感謝する)
(あ、いえいえ。ところで貴方は?)
(私は祖なる龍、ミラルーツ。名をアンセスと言う。お前は何だ?)
(えっと、ナルガクルガ希少種です。名前は……ないです)
(すると、まだ生まれたばかりという事か?いや、先程の戦いでは十二分に動けていた。単に名前がないだけか?)
言えない、元人間で気がついたらここにいたなんて言えない。
(多分そうだと思います。親も見た事がないので)
(そうか、なら私が名を贈ろう。手助けの礼だ)
(あ、有り難うございます!)
(そうだな……シロとか)
(本気で言ってます?)
流石にそれはネーミングセンスなさすぎだろ。
(冗談だ、月の色に輝く……Luminous。ルミナスはどうだ?)
なんかプリ○ュアに出てきそうだけど気にいった。
(どうやら気に入ってくれたようだな)
(はい!有り難うございます)
ところで一番の疑問だけど
(ここって貴方の寝床ですか?)
だとしたら出て行くことに高確率でなりそうだが、どうやら違ったらしい。
(違う、私は普段はシュレイド城に住んでいる。ここから見る月景色が綺麗でな。偶にここに来るのだ)
(そうだったんですか)
(心配せずともお前の寝床を奪ったりなどしない。ではさらばだ、また会おう)
(はい、さようなら)
アンセスが帰った後いつもの場所で眠った。
(雷でぼこぼこして寝辛い……)