(うぅー!さっむい!早くどこかで暖を取らないと……)
こんにちは、私は今凍土に来ています。あのハンターを撃退後、地味に殺人の意識に悩まされれていたのでアイルー達に相談したらまた今までみたいにいろんな場所を回って気分を切り替えてくればいいと教えてくれた。
(確かに切り替わったけど……別の意味で問題だよ!)
凍土に慣れるために火山で取得した発火器官は重要なものが無いため使うことができなかった。つまり、火種がない。いくら炎を吐くことができると言っても火種がなくてはすぐに消えてしまう。だが辺り一面氷の世界に閉ざされ、植物は背の低い物や逆に中身がぎっしり詰まった密度の高い木しかなく燃えにくくなっていた。流石にこれは予想外だったため途方に暮れていた。このまま帰ってもいいがそれでは情報をくれたアイルー達に申し訳が立たない。
(あぁ、なんか眠くなってきたよ。寒さで死ぬことはないと思うし……ないよね?不安だけど一回休もう……)
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(…………なんか揺れてる?誰か来たのかな?)
地面が揺れてるような気を感じて目を覚ましたがあたりが暗くて状況が確認できなかった。分かった事はどこかに向かっている事と、
(脚枷?)
両足に金属で出来た鉄輪が挟まり鎖がそこに繋がっていて周りの壁に固定されている。もしかして捕まった?
(凍土で寝てた筈だけど……寒さで体が動かなかったから?)
どちらにしろ面倒な事態になったことは確かだ。このままどこに連れて行かれるのかは分からないが少なくともまともな待遇で生きていけるとは思えない。故に逃げることにした。まず前脚に付いている鎖を噛むと意外にそこまで硬くなかったため数分で両前脚の鎖は取れた。次に後ろ脚だがそこまで頭は届かないので尻尾に電撃を流して焼き切ることにした。そのままやると音がしてバレると思うので出力は小さく一点に集める形で流すと鎖を切った。後ろが見えないため感覚で切るしかないから自分の足を斬るかもしれなかったがうまく行ったようだ。
(よし、これでとりあえず逃げる準備は整ったから……後ここがどこかだよね。なんか分かんないかな)
壁に耳を近づけると少しだが話し声が聞こえてきた。どうやらギルドや密猟団ではなさそうだった。逆にそれ以外でこんな設備を持って私を捉えようとするのが分からなかった。しばらくして揺れが収まった。どうやら目的地についたようだ。近くに人が寄ってきたのかさっきよりも話し声が聞こえやすくなった。
「駄目です!何があるか分からないから危険ですよ!」
「平気じゃ!それよりも早く蓋を外すのじゃ!」
「……団長、さっと終わらせて引き渡せば平気ですよ」
「分かった。その代わりもう少し後ろに下がっててくれませんか?そこに入られると守ることも出来ません」
そこで会話が途切れ壁が開いた。どうやら檻の中に入っていたようで外側から鉄の板で蓋をしていたらしい。蓋が開くと周りにハンターと少し離れた場所に小さな女の子と執事みたいな人が立っていた。私の鎖が壊れてるのを見て周りのハンターが騒ぎ出した。
「なぜ鎖が壊れている!あれはイビルジョーてすら引き千切ることも出来ない硬度の鎖だぞ!」
「騒ぐな!まだあいつは檻の中にいるんだ!ガンナーは睡眠弾を撃ち込め!」
ハンター達の中でボウガンを持っている人達が一斉に構えたのでこちらも動くことにした。尻尾に先程の様に電撃を溜め、尻尾を回すように振り檻の側面を切り飛ばした。辺りにガラガラとうるさい音が響いた。
「檻を切っただと?!」
「どうするんですか団長!」
ハンター達が混乱してると奥にいた女の子が近寄ってきた。
「お嬢様!危険です、こちらにお戻りください!」
「爺はいつもうるさいのじゃ!妾の好きにさせよ!」
そのまま目の前まで来ると鼻に触ったり目を覗きこんできたりした。正直何がしたいのか分からない。頭に手をかけて体を持ち上げようとしているので上に乗ろうとしてるのは分かるが。仕方ないので尻尾の電撃を消し、女の子の両脇に尻尾を入れてゆっくり持ち上げ体の上に載せた。
「お嬢様!危ないです、早くお降りください!」
「何を言うのじゃ!妾を見ても襲って来なかった!危険はないはずじゃ。それに妾には分かるのじゃ!こいつは人を襲うようなやつではない!」
そのまま女の子と爺と呼ばれる人が口論を始めたので周りをハンターに囲まれているため動けない私は寝ることにした。この調子じゃ女の子は降りなさそうだし、女の子が乗ってるのに攻撃をすることはないだろう。服装や言葉の端々からこの子が上流階級の出身なのは分かるのでそんな子に怪我をさせるようなことはしないだろう。