私の体はどうやらナルガクルガになったようです   作:粉プリン

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今回人によっては不快な表現が含まれているためご注意ください。


神罰

次の日、水没林を巡回していると遠くで地響きのような音が聞こえてきた。渓流でよく聞こえてきたドボルベルクが木々を薙ぎ倒すときの音によく似ていた。

 

(そっちにいるのね!今行くわ!)

 

ステルス状態になり出せるだけの速度で音のする方に向かうと殆ど瀕死状態で倒れているドボルベルクとその近くに立つハンターを見つけた。

 

「さっさと殺して素材剥ぎとるか。いい加減レア素材落とせってんだよオラ」

 

ハンターがドボルベルクの顔を蹴りつけているのを見て、こいつがアイルー達の言っていた奴だと分かった。正直これ以上は不快だから見てられなかった。バレないように後ろに回りこむのと手加減せずに本気で尻尾を薙ぎ払い、燃え盛る尻尾をハンターの脇腹に叩き込んだ。ハンターは勢い良く吹き飛び森の中に飛んで行った。ステルス状態を解くとドボルベルクに忠告した。

 

(よし、今のうちに逃げて)

 

言葉は分からなくともなんとなく尻尾で押すとドボルベルクに伝わったらしく脚を引きずりながら奥に逃げていった。

 

「痛えな!ふざけんじゃねえよせっかく作った鎧が壊れちまったじゃねえか!」

 

(正直鎧がなんだって言うんだよ。こちとら仲間の命が無為に消費されるところだったのに)

 

本気で撃ち込んだにもかかわらず鎧にヒビが入っただけでハンターの方は特に怪我はない様子だった。流石にこれはおかしいと思う。前に渓流で壁に叩き付けたときは崖が崩れるレベルだった。今はあの時よりも力はついてるため威力も上がっているはずなのに、被害は鎧だけ。どうやらなにかタネがあるみたいだった。

 

「ふざけんじゃねえよ。俺は神に選ばれたんだよ!お前みてえな雑魚にやられるほど弱くねえんだよ!」

 

そう言って相手は両手に二本の槍を構えて突撃してきた。ただし動きが酷く直線的すぎるのとまるで槍を初めて使ったかのような素人丸出しの扱い方だったため簡単に避けることが出来た。

 

「クソ!避けてんじゃねえよ!他の奴はのろまだったのに何だよコイツ!こんなのかいるなんて聞いてねえぞ!」

 

(さっきから凄い五月蝿い奴だな。黙って戦えないのかな)

 

黄色の短槍の横薙ぎに合わせて刃翼を振り付ける。流石に折ることは出来なかったが相手の体制を崩すことは出来たのでその場で急回転しもう一度隙だらけの腹に尻尾をぶち込んだ。今度はうまく受け身をとったみたいだが今の衝撃で防具は完全に使い物にならなくなっていた。

 

「手加減してやってるのに調子に乗りやがって!さっさと死にやがれ!王の財宝(ゲートオブバビロン)!」

 

突然ハンターの後ろの空間が歪んで金色の波紋が広がった。そこからおびただしい数の武器が出てきた。

 

(えっ?あれって確か友達に借りたアニメで出てなかった?)

 

詳しくは覚えてないけどアニメに出てきたことは分かる。問題はなんでモンハンの世界で別のアニメの技か使えるのかだ。

 

(さっきから神様がどうって言ってたけどなにか関係あるのかな)

 

ただ少なくとも元々この世界の住人だったという事はないはずだ。あんな反則技使える人が何人もいたらそれこそモンスターなんて一匹残らず狩られてる。

 

(もしかして私と同じ世界の人かな?)

 

「さっさと喰らって死ね!」

 

そのまま大量の武器が私めがけて発射された。バックステップで躱しても幾つかの武器が追って来るので森の中に逃げた。ある程度離れてから刃翼を振りかぶり武器を叩き落とす。が、流石は英雄が使ってた武器なだけあって滅茶苦茶硬い。全部叩き落とす頃には刃翼が何本か折れていた。

 

「出て来いよクソッタレ!雑魚はさっさとやられてればいいんだよ!」

 

(…………もういいや、手加減するのも飽きたし。殺ろう)

 

尻尾をまっすぐに伸ばしあのハンターに向けた。ステルス状態になり同時に尻尾にありったけの電撃を流す。ところでみんなは電磁砲というのを知ってるでしょうか?電流を流したレールで金属球をものすごい速さで飛ばす艦載兵器の事を。ただ電気を流すだけと思うなかれ、これは意外と使い勝手が悪い。弾丸を撃った時に発生する電磁波や衝撃で周りにいるモンスターが騒ぎ出す。また電流や電圧といった法則を無視するラージャンの電撃だと並大抵の金属では耐えられずに空中で消失してしまう。ならばどうするか。今しがた折れてしまった自分の刃翼を使って撃つまでだ。

 

(…………そろそろいいかな?)

 

落ちている刃翼を口に咥え、そこに電撃を一斉に流す。この前から電撃を扱えるように尻尾や刃翼に電撃を流していたのでやはりこのくらいなら溶けることもなく耐えていた。そして箇条流し続けると一時的に電気を帯びた状態の刃翼が出来た。それを二本の尻尾の間に挟んでハンターに狙いをつける。前に一度だけ試したときは余波で木が倒れたので直撃しなくても十分な効果が得られるだろう。

 

(…………逝け)

 

一気に電撃の量を上げると甲高い音を立てながら刃翼が飛んで行った。途中の木も抵抗なく貫通し当然ハンターは避けることも出来ずに棒立ちで喰らった。とうやら片腕を吹き飛ばしたようだ。右肩から血がドバドバ流れていた。その後に来た余波で吹き飛びハンターは崖下に落ちていった。

 

(………帰ろう)

 

ハンターと戦い終わって思ったのは虚しさだった。特に思い入れはないし逆に仲間を虐殺してきた人間だが、私が元人間だからか頭の中に殺人という言葉が浮かんだ。

 

(帰って寝よ)

 

しばらくは踏ん切り付くまで休むかな………

 

 

〜~~~~~~~~~

 

 

白帝竜観測隊よりギルド本部に連絡

 

報告です。先日の連絡にあったハンターがドボルベルクの討伐中、白帝竜と遭遇。白帝竜が攻撃するも防具の破損のみというタフさを発揮し、更に自分の背後から武器のような物を撃ちだすという謎の技術を使いました。しかし白帝竜が電撃を帯び、直後に見えたオレンジ色の槍のような光でハンターは右腕を根本から失い風圧で崖下に転落する形で終わりました。白帝竜は戦闘後寝床に帰った模様。ハンターの生死は不明です。

 

 

ギルド本部より白帝竜観測隊に連絡

 

了解しました。ハンターについてはこちらから調査隊を派遣して捜索することに決定しました。また、今回の件でこのハンターの狩猟権利を剥奪する事に決定しました。そして、白帝竜の危険度を改めて協議し白帝竜を古龍種に含める事が決まりました。この事も各地のギルドに情報を流しハンター達に伝わるようにしています。貴重な報告有り難うございます。


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