私の体はどうやらナルガクルガになったようです   作:粉プリン

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感染

渓流での大戦争が終わった次の日、朝から体力回復のために蜂蜜を食べていると雲ひとつない空なのに雷の様なものが見えた。けど多分ジンオウガだと当たりをつけて食事に戻った。

 

(昨日は尻尾斬られてたのに元気だね……私なんて対して戦ってないのに滅茶苦茶疲れたよ)

 

やはり元人間とモンスターの根本的な差かと思ったが、雷に合わせて木がドンドン倒れている。ジンオウガは体が大きいため開けた場所で戦うからあそこまで木が折れることはない。即ちジンオウガ以外の雷を使うモンスターが来たという事だった。

 

(昨日の今日でまた面倒事持ってこないでよ。只でさえ昨日のことで他のモンスターからまた食料貰ってるんだから)

 

実は昨日のハンター達の拠点襲撃を見ていたモンスター(おそらく隠れていたジャギィ達)がいたらしくここに来た時のようにまた起きたら蜂蜜や茸が等の山が出来てたりする。どうやら渓流を救った救世主みたいな扱いっぽかったがそこまでの事じゃないと思う。言葉が伝わらない為訂正できないし、善意で集めてくれてるので無闇に止めろと威嚇することも出来なかった。

 

(全く持ってチキンです……こんがり肉食べたい)

 

木が倒れている方に向かうと黒色に輝く鬣を持つモンスターがいた。黒ずんだ黄色の線模様に口から真っ黒な涎を垂らし目が真っ赤に血走っていた。明らかに自我はなさそうで体から毒々しい紫色の血を流して怪我を気にせずやたらめったらに攻撃を繰り返してはケルビやガーグァを捕食していた。

 

(なんだろうあれ……確実にヤバイ奴だよね。あんな見ただけでヤバい物食べたって分かるモンスター見たことないし。雷を使うのってキリンとフルフルとジンオウガ以外にいたっけ?………そう言えばミズハさんが前にラージャンの坊やとか言ってた気がするし、もしかしてあれがラージャン?なんか全国のラージャンに悪いけどあんまり会いたくない見た目してるな……)

 

そこで、ようやくこちらに気づいたのかラージャンがこちらを見た瞬間殴りかかってきた。

 

(嘘でしょ?!見境なしなの!)

 

慌ててその場から飛び退いた。殴りつけた地面は小さなクレーター状に抉れ、一発喰らうだけでお陀仏なのは確定的に明らかだった。

 

(ヤバイなぁ。まさかこんな奴に会うとは思わなかったし。体調は完全に回復しきってないし……)

 

するといきなり前のめりに倒れるとラージャンはピクリとも動かなくなった。少し様子を見てから棘を近くに撃ちこんだが少しも反応しなかった。

 

(もしかして死んだの?でもなんでいきなり……)

 

その後も突いてみたり、ひっくり返して見るが瞳孔が開きっぱなしなので死んでる事が分かった。すると突如、ラージャンの体から黒い煙が立ち昇り始めた。煙はある程度まで上がると辺りに漂い始めた。そこにケルビが一匹やってきた。すると様子がおかしくなり、先程のラージャンのように体の色が黒くなり始めた。

 

(もしかしてあのヤバそうな煙って病気なの?これって映画とかで見たことあるけど、パンデミックだっけ?)

 

だとしたら待ってるのは渓流の生物がさっきみたいに全員暴れ出す未来だ。不味いと思い、咄嗟に火を吹きかけると煙が薄くなった。どうやら火には弱いらしい。そのまま刃翼を発火させて周囲の煙を薙ぎ払っていると煙はだいぶ収まった。暴れていたケルビもこのままでは渓流に逃げ込んでしまうかもしれないので仕方なく殺してしまった。

 

(後はこの死体だけか……)

 

このまま残したままだとまた煙を吹き出していつ渓流が墜とされるか分かったものじゃない。かと言って持ち運ぶことも自分には出来ないし、先程炎で燃やそうとしたが密集した筋肉が邪魔してほとんど燃えなかった。それにケルビは感染したとはいえ自分が殺したのだ。それなりの方法で弔うべきだろう。この場で出来ることなど一つしかなかった。

 

(………食べよう)

 

せめてもの供養と思い、ラージャンの腕に噛み付くとそのまま力任せに噛み千切った。いつも食べている生肉と違って物凄い苦味とえぐ味しかないが我慢して全て食べ切った。ケルビも同様に食べ終わると、疲れた体を引きずって高台に戻った。

 

 

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白帝竜観測隊よりギルド本部に連絡

 

今朝方、渓流の森の中で突如雷のようなものが確認できました。調べたところ、付近のエリアから迷い込んだラージャンが暴れていた模様。その後近くに居合わせた白帝竜と戦闘中に突然死亡。明らかな短命から察するに激昂状態だった可能性があります。白帝竜はこれを捕食後住処に帰っています。他のエリアから迷い込み白帝竜の勢力内に入らなかった例はこれが初めてなので報告を送ります。

 

 

ギルド本部より白帝竜観測隊に連絡

 

了解しました。こちらで確認したところそのラージャンはバルバレの地域にいたものが移動したものと断定されました。一つ気になる点としてはこのラージャンがバルバレから出る際に(激昂状態とは別に)体色が微妙に変わっていたとの情報が送られてきたため、もしかしたらゴア・マガラの狂竜ウィルスに感染していた可能性があります。白帝竜が狂竜ウィルスに感染した場合の被害は想像を超えるかもしれません。下手をすると勢力下の全てのモンスターが一斉に暴れ出す可能性も指摘されています。今後の動向に十分気を付け定期的な報告をお願いします。


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