私の体はどうやらナルガクルガになったようです   作:粉プリン

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毒沼

(あれー?私って方向音痴なのかな?確かに緑のある方に行ってたはずだけど孤島なんてどこにもないな)

 

辿り着いたのはあろうことか沼地だった。それも夜のだ。空気が生温く湿っていて毛先が濡れて元気がなかった。でも逆に空気中の水分は豊富だから霧は作り放題だしそもそもその辺にたくさん漂ってるのでステルス状態は維持しやすそうだった。

 

(まずは恒例の寝床探しかな?沼地って言ったら夜の洞窟は砂漠の夜よりも寒そうだね。発火器官が役に立つときが来たかな)

 

まずは洞窟を探すとそれらしいものを見つけた。中にはいるとそこそこ広めの空間があり、壁に埋まってる大きな鉱石が光を発して内部を薄く照らしていた。

 

(ここでいいかな?今日はもう寝て明日はそこの鉱石を食べたら行動再開だね)

 

寝る前に寒さを和らげる為近くから薪を持ってきて火を付ける。しばらくしたら燃え尽きるだろうがこれくらいなら朝までは耐えることが出来るだろう。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「おい、大丈夫か?そこに洞窟があるからそこで休もう」

 

「ありがと。それにしてもまさかフルフルが二頭も出てくるなんて思わなかったわ」

 

「全くだな、ギルドも亜種がいるなんて言ってなかったし最近は狩場の情報があやふやになってきたな」

 

「きっと噂のあいつね」

 

「なんだ?その噂って」

 

「聞いたことないの?これだから脳筋バカは……結構有名な話よ。ここんところ白いナルガクルガが出てきたって」

 

「ナルガクルガは黒と緑しかいないだろ?希少種か?」

 

「元々はそうだったらしいわ。でも今は独自に進化したってことで『白帝竜』なんて呼ばれてるわ」

 

「『白帝竜』か……名前から察するに白いのか?」

 

「そんなの誰だって分かるわよ。問題なのは周りを常にモンスターが守ってるのよ」

 

「なんだそりゃ?モンスターが別のモンスターを守るなんて聞いたことねえぞ」

 

「だから噂になってるのよ、イタっ」

 

「平気か?ほら、ゆっくり座れ」

 

「有難いわ、薪までつけてくれたのね。気が利くじゃない」

 

「いや、それ元からついてたぞ」

 

「そんなわけ無いでしょ。ならここに誰かいたってこと?」

 

「かもしれねえな。大方どこかのパーティとバッティングしたんだろう。あったら挨拶しときゃいいさ」

 

「そう、それにしてもこの岩ヒンヤリしてるわね。触り心地がいいわ」

 

「なんだよ、俺は地べたに座ってるのにずいぶん待遇の差があるじゃねえか」

 

「私は怪我人よ、それくらい譲りなさい」

 

「へいへい、火ももうすぐ消えるからさっさと寝ようぜ」

 

「そうね、おやすみなさい」

 

「おう、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

(………んぅ、朝だ。そろそろ起きるかな)

 

体を起こして洞窟から出ようとすると何かが自分の体に寄りかかって寝ていた。見ると男女二人組が薪の近くで寝ていた。

 

(何でこんなところにハンターが?私これでもモンスターだし向こうは気付いてないのかな?)

 

とりあえず尻尾でもたれ掛かってる女性の方をゆっくり寝そべらせて外に出た。相変わらず曇ってはいるがステルスをする程度には光もあるため問題なかった。

 

(朝は鉱石食べようと思ったけどあの二人もお腹空いてるだろうし肉でも持って行って上げるかな。その後どこかで食事してから移動しよう)

 

ブルファンゴがちょうど良くいたので狩りいつものように処理をしていい大きさの生肉を三つほど手に入れた後、洞窟に持ち帰った。二人はまだ寝ているらしく起きる気配が無かった。肉を一旦置き森で薪を見つけると消えかかってるところに置いて、軽く火を吹きかけた。次に放置した肉の両脇を尻尾で掴んで回しながら火を吹きかけた。しばらくするとパリッとした見た目になりいい匂いが洞窟中に広まった。二つ目を焼き始めると外からイーオス達がやって来た。どうやら匂いに釣られたらしい。まあ普通に生きてれば彼らは肉を焼くなんてことはしないからこれの美味しさも知らない訳だし、少し分けてあげよう。いつもの事だけど。

 

(もう少しで焼けるから待ってて)

 

言葉は通じてないと思うがイーオス達は一回吠えると洞窟の入り口に走っていった。が、思いの外声が大きかった為洞窟内で反響しハンターが起きたようだ。

 

「ん?ここ何処だ……あぁ確か洞窟で…………おい起きろ!」

 

「なんだよ、うるせぇ…………何でここにモンスターがいるんだよ!」

 

二人組は跳ね起きて武器を構えたけど、正直お腹空いてきたからあとにして欲しい。

 

(よし、こんなこんな感じかな?)

 

食べてみると肉汁が溢れてきて素材本来の味がして美味しい。やっぱり生より焼いたほうがいいね。ちょうど、イーオス達も戻って来た。

 

(あれ、ドスイーオスも来てる。さっきのは呼びに行っただけかな)

 

ある程度食べたので残りをイーオス達に上げた。一斉に食らいついてるからすぐなくなると思うけど、まあたまにしか食べれないだろうしいいか。残りを二人の前に置いてそのまま振り返らずに洞窟から出た。

 

(あっ、鉱石食べ忘れた……まあいいか。今度来たら食べよう)

 

 

 

 

 

 

「………行ったわね」

 

「これ、食べてもいいのか?」

 

「どう見ても、普通のこんがり肉よね。あいつ火を吹きかけてたわ」

 

「どうやら噂の白帝竜とやらは相当強いらしいな……うめぇ」

 

 

〜~~~~~~~~~

 

ギルド本部より白帝竜観測隊に連絡

 

こちらで白帝竜の目撃情報を確認しました。対象はつい先日まで沼地にいた模様。急ぎ沼地に向かい対象を発見してください。またハンターにこんがり肉を振る舞ったという情報も上がってきました。改めて「や白帝竜の危険度の調査を行いたいと思います

 

 

白帝竜観測隊からギルド本部に連絡

 

了解しました。こちらも沼地に現在向かっていますので明日には報告を届けます。


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