爪が伸びた。
いや、人間感覚で言ってるが実際には壁を抉れる程に爪が硬化した。それに伴って爪が成長したのかもしれないが真相は定かではない。何にせよ自分で鉱石が集められるようになったため運動会(笑)はやめさせた。方法は前にジンオウガとゴーヤの喧嘩を止めたとき同様に本気で吠えるだけ。喉が少し痛くなるけど毎日騒音を鳴らされるよりは百倍マシだ。
(鉱石も美味しいけど、寒い地域に慣れるためにも草食べないと)
今はある植物を探していた。前に食べると体が暖かくなる赤い草を渓流で見つけたが元々そこに生えることのなかった植物なのかその後は見つけることが出来なかった。砂漠にはオアシスが一つしかなくそこに赤い草など生えてなかったため、ここで見つけないと何気に後がない。ようはその草を食べて体の中に体温を上昇させる器官を持つように進化することができればいいのだ。
(尻尾が二本になるんだからそんくらいは余裕でしょう。でも、肝心の草が見つからないしここにもないのかな。まさか意表をついて凍土に!………とかもなさそうだな。まずあそこまともに草木があるかすら怪しいし)
今日も成果は無し。ここのところだいぶ暑さに慣れてきたので少し遠出して山頂付近にも足を伸ばしている。もっとも手に入るのは真っ赤な鉱石と他よりもちょっと薄い桃色の硬い鉱石位だった。一度山頂のアグナコトルの巣にお邪魔したことがあるが草なんてどこにも見当たらなかったため、仕方なく麓で草を探しては鉱石を食べる生活が続いた。
(今日も今日とて草探しか。いつになったら見つかるんだろ)
朝早く起きて赤い草を探しては食べて、その後に鉱石を食べる。今朝は赤い草が見つかった為少しだけ残して食べて来た。全て食べてしまうとその場に残らなくなるので見つけた場所を暗記して毎日巡回してる。他のモンスターも食べるのかよく失くなって後悔してるが。
(まだそれっぽい器官は出来てなさそうだな。と言うかあんまり体について詳しく知らないし中身なんて増えても気づくのかな……喉になんか張り付いた、ケホッ)
ボゥッ
(………………はぁ?)
えっ?なんで今燃えたの?鉱石?鉱石食べてたのが原因なの?念の為もう一度試してみると。
カフッ
ボゥッ
(…………ふぇぇ。発熱器官が欲しかったのに発火器官が付いたよ……)
これは面倒だな。このまま火山を去るかもうちょっとここに居続けて発熱器官が得られるのを待つか……
(そもそも私、さっきまでこんなこと出来る事知らなかったんだよね。やっぱり体の方は着実に変わってたんだなぁ)
もう少しここに残ろう。もしかしたら参加の余地が残ってるかもしれない。残ってなかったらさっさと次に移ろう。
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火が吹けるようになってから数日。最早『火が吹ける』から『炎を吐き出す』になってたが鉱石の力は世界一のようだ。そして実は進化の余地は意外にも残っていた。が、個人的にとてもショックな事もあった。変化としては尻尾が燃えた。といっても何処ぞのピ○ミンの修造とは違い常時発火してるのではなく、尻尾を振った時の摩擦で燃える。尻尾には発火のための器官がライン状に赤く光って見える為綺麗なのだが。問題は先端部分の毛が焦げたのだ。付け根から中央辺りは平気だったが調子に乗って振り回した後、先端が黒くなってるのを発見した時は軽く寝込んだ。毎日毛並みは綺麗にしてたのに……
(もう発熱器官は諦めよう……発火器官をどうにかして生活すればいいかな。………次どこに行こう?)
いきなり凍土に行くのもいいがやっぱりここ最近辺境の地ばかりで生活してた為たまには自然豊かな場所に行こう。
(という訳で孤島に出発ー)
羽ばたいて孤島にいざ出発……と思ったら翼の刃の部分が燃えてた。
(そこも燃えるのかよ!あっつ!)
こんな調子で孤島たどり着けるのかな………