ヴァイオレット・ヴェノムが次元を超えて襲撃してきてから、十数分後。
私は痛む身体を無理やり動かし、最後にして無謀な戦いに挑もうとしていた。
「本気、なの……ゆーなん」
敵の待ち構える第一アリーナ。そのカタパルトに足を載せた際、束さんが心配そうに見上げてくる。
確かにこれからやる事は、きっと愚行以外の何物とも呼べないだろう。止めてくるのも無理もない。
「まったく束さんったら…………マジじゃなきゃ、こんな事しないっての」
そんな風に思考が深刻になってきたのを隠して、取り繕った笑顔で返す。
もっとも、嘘の下手くそな私の事だ。どうせバレていたのだろう。束さんの顔は変わらず険しいままだ。
だけど――私が、やらなければ。
「それに私がやらなきゃ、ナギが危ないんだ。行くしかないでしょ」
なんとしても説き伏せるべく、今度は本心からの理由を口にする。それと同時に、ピットのメインモニターに映っているアリーナ内の映像へと目を向けていった。
気絶したナギが、ヴァイオレット・ヴェノムの触手状のワイヤーアームに拘束されている姿。
これこそ、私が戦いに赴かなきゃいけない理由だった。
四天王機のパイロットはナギを人質にして、私と一騎打ちをするように迫ってきたのだ――もし横槍を入れるようなら、命はないと脅迫して。
この時点でもう、戦いに行かないという選択肢は存在していなかったが、もう一つ大きな理由が私にはあった。
もしかしたら、あの仮面の下にあるのは――。
「……そんなアクシアで、慣らし運転もしてないのに?」
そんな考えを打ち切るかのように、束さんから声をかけられるが……正直、正論以外のなにものでもなかった。
新宿から回収されたアクシアは通常のそれとは大きく異なり、原型を留めていないとすら言ってもいい。
なにせ私が、何かあった時に困ると無茶ぶりした結果……かなり強引な修復を施されたからである。
純正パーツが足りないからって、同じく新宿の街に転がっていたダーク・ルプス・レクスの残骸を強引に癒着。
そのせいで今のアクシアは敵味方のパーツが混じった、クソコラみたいな機体になっていたのだから。
この形態に名前は特別決まっていなかったけど……まぁ、アクシア・パッチワークとでも名付けておこうか。
「大丈夫だって、アクシアもダーク・ルプス・レクスもお姉ちゃんが設計した機体なんだし……その、パーツの親和性、結構高かったんでしょ?」
「それは……そうだけど! そっちの身体の事だってあるんだし――」
「ゴメン。こればっかりは――束さん?」
急に向こうからの反応が無くなったかと思うと、気づけば私のすぐ傍まで移動。同じくいつの間にか手に持っていた注射器をこっちの生身部分へと刺してきた。
「束さんお手製の、速効性の鎮痛剤、打っておいたから。暫らくは痛くないハズ。それと……」
「それと?」
「ここはIS学園だから、まだまだ訓練機も専用機もたくさん残ってる。危なくなったら逃げろ」
「束さん……ありがとう」
最後にそれだけ言うと、気持ちを落ち着かせるべく。
いちど目を閉じて、深呼吸をしてから――。
「神崎優奈、アクシア・パッチワーク……出る!」
カタパルトを作動させ、最後の戦いへと赴くのだった――!
◆
ゴーレムの腕部ビーム、エトワールの変幻自在の急襲。さらにはダーク・ルプスの超威力のメイスとテール・ブレード。
ただでさえ異常に厄介なところに、奇襲をかけてきたヴァイオレット・ヴェノム。
それのせいで、一旦戦線はガタガタになってしまっていた。
とはいえ、アーリィ先生の指揮の下でなんとか立て直し、現在はった一機の敵を除けば、かなり優位に事は進んでいる。
だが――問題は、その一機だった。
「やはり、あいつを倒さんことには始まらん、か……!」
満月に照らされた、最後の四天王機。
ミントグリーンに輝く翼を威嚇的に広げ、全身に配置されたスリットからスラッシュディスクをばら撒き続ける白翼の悪魔を見上げ、恨みごとを口にしてしまった。
眷属機ホワイトウィング。
奴の持つ単一仕様能力「
はっきり言って、思い切り相性が悪いとしか言いようがない。
なにせここにいる全員が第三世代以上で、破壊魔鏡に引っ掛かる武器や能力を何かしらは持っている。苦戦するのも当然といえよう。
「一応、倒す手段はないこともないが……」
そう言って、画面横に表示された単一仕様能力――「絢爛舞踏」の、発動可能という表記を見る。
新宿で回収された、ダーク・ルプス・レクスの残骸から得られた四天王機のデータ。
それによると破壊魔鏡は連続使用ができないという。冷却装置を作動させないといけない関係で、微妙にだが隙が出来るらしい。
だから誰かが囮になって、能力を発動しさえすれば……ほんのわずかな瞬間だけは、無防備という事になる。
だが、その手段には危険が伴う以上、他の方法があれば――。
「箒さん」
そんな時だった。私のすぐ隣で牽制射撃を行っていたセシリアから声をかけられる。
その眼には決意のようなものが宿っているようにも見えたが……まさか!?
「お前が、囮になるとでも……!?」
「ええ、このままここでジリ貧になっても、良くないのではないかしら。それに――今一番戦力になっていないのは、わたくしなのですし」
実際セシリアのブルー・ティアーズは第三世代能力の実証機、ゆえにほとんどをビットに依存している。そのため白翼の眷属機の絶好の獲物となってしまっていた。能力を封じられてしまっては、上手くは戦えないのである。
せいぜいが非固定部位を九十度回してキャノンのように使い、腰の実弾ビットもただのミサイルのようにして発射する。そんな、ただの砲撃機のような使い方しかできないでいた。
だが――。
「……敵の本体が何らかの理由で動けない、今しか絶好の機会というものはないですわ。議論をしている余地があって?」
確かにそれも、セシリアの言う通りだ。
まだ安崎が現れていないのは、奴の性格上ありえない事ではある。
なにせあいつはこっちが足掻く姿を嘲笑したり、死体人形にしたりしたがる。そんな、倫理観の欠けた奴なのだから。
にも拘わらず戦闘は眷属機任せにし、本人はまだこの戦場に現れていない。これはもう、何らかの理由で
それ以外には、とても考えられなかった。
だから――。
「すまん、セシリア……頼む」
「合点承知、ですわ」
どうしても奴を倒したい以上、ここは提案に乗るしかなかった。
短いやり取りを終えた瞬間、瞬時加速でもってセシリアはホワイトウィングへと接敵していく。
砲撃機のまさかの接近に、仮面越しにも敵パイロットの困惑が見えたような気がした――その時だった。
「今、ですわ!」
叫ぶと同時、腰の実弾型ビットを発射。随意ででたらめな軌道を描き出す。
それを見た眷属機がとる行動など、ただ一つ。
僅かにセンサーを光らせた後、ホワイトウィングは光り輝く翼から特殊な衝撃波をブルー・ティアーズめがけて発射。既に撃たれた弾頭は勿論のこと、腰部の発射装置までも粉々に打ち砕いていく。
「ぐっ……ですが!」
大ダメージに顔を歪ませるセシリアだったが、この機を逃すわけには行かないとばかりにスターライトを構え、白翼の二対の翼へと狙いを定める。
ホワイトウィングが次の能力を使えるまでのインターバルは僅か5秒。つまり、今攻撃を集中させるほかないのだ。
私も紅椿の荷電粒子砲「穿千」を展開、構えていったが――展開装甲を変形させる時間よりも、仲間達の攻撃のほうが早かった。
セシリアのスラ―ライトが右上を、アーリィ先生の風の剣が左上を、ラウラのカノン砲が右下を、シャルロットの展開した剣が左下をそれぞれ破壊。
浮遊自体はPICがあるために継続はしているものの、全ての翼をもがれた状態へと一気に変貌していく。
こうなってはもう、破壊魔鏡は――使えまい!
「――!!!?」
敵パイロットも、ここに来て焦りを見せはじめたのだろう。
猛烈な勢いで全身のスリットを解放させると同時に、出し惜しみは無しだ。そう言わんばかりにスラッシュディスク「B.G.Max」を全て投擲。
シャルロットの展開したシールドやアーリィ先生の風の盾で幾らか弾き飛ばせたものの、やはりすべて回避することは叶わない。
いくつかは絶対防御の範囲にまで着弾、じわじわとシールド・エネルギーを削り取っていく。
そして、それへの防御にかまけていたのも悪手だった。
「――再展開!?」
予備が量子空間に存在していたのか、はたまたネクロ=スフィア展開であるのか。そこまでは私には分からない。
だが、現実にホワイトウィングは徐々に、その輝く翼を量子の光を集めて構成していこうとしている。
しかも同時に、セシリアへと斬りかかるつもりだろうか。近接ブレード「M.K.Derma」を展開して構えだした。
まずい、このままでは――!?
「させるかッ!」
だが、ここでこちらの仲間が一人、動いた。
敵のアクションが開始された段階で、ラウラが叫び声とともに地面を蹴って跳躍。
スラッシュディスクの攻撃を受けつつも意に介さず、スラスターを全力にして接近すると、右手を敵機めがけて突き出し――。
「これでッ!」
慣性停止結界――AICによって、白翼の一切合切の行動を封じ込めることに成功する。
だが、いくら停止させたとはいっても、それは無力化とは程遠い。
周囲にはダーク・ルプスをはじめとした無人機の群れがいるうえに、ホワイトウィングの翼自体は展開を完了している。
何かのはずみに拘束が解けた瞬間、奴は光輝く翼で再び私達へと猛攻を開始してくるのは想像に難くない。
「セシリアッ!」
「はいなッ!」
そんな事はセシリアとラウラも分かっていたため、短いやり取りの後にブルー・ティアーズの右腕にはある装備が量子展開されていく。
丸ごと右の腕部装甲を覆うように展開された、機体と同じ青の超大型アームユニット。
その先端部の四箇所に、非固定部位のビットが接続されていくと巨大なクローが完成。続けざまにガントレット本体にもいくつかスリットが展開されると、余剰エネルギーが光のように漏れ出す。
これこそ姉さんが開発したブルー・ティアーズ用大型近接ユニット「ブルー・ティアーズ・スターライト」だ。
近接戦闘があまり得意ではないセシリアのために開発された、不得手を補うための武器。
圧倒的破壊力での攻撃はたとえ拙くても十分な脅威となり、また圧倒的な破壊力は近接戦に持ち込まれた時に、短期決戦で敵を仕留めるための物。
つまり今のような状況には、もってこいという事であった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そんな巨腕の攻撃が胴体にクリーンヒット、超至近距離でのビームが撃ち込まれると同時。エネルギーの余波がレーザーとなって掌から漏れ出る。
それらはフレキシブルによって複雑怪奇な軌道を描き、ホワイトウィングの全身へと襲いかかる。
特徴だった翼は全基が砕け散り、スラッシュディスク投擲口のいくつかからは細い光の矢が流し込まれ、一撃で四天王機を撃破まで追い込んでいった。
そして最後に。
顔面に被っていた、白黒の仮面が剥がれ落ちると――。
「乱、音……!?」
そこにあったのは、こちらの世界にもいる鈴のいとこ――凰乱音の、貌であった。
などと、苦々しく思っていた時だった。
「――自爆!?」
ラウラが呟いた通り。眷属機ホワイトウィングのスリットや損傷個所から物凄い光が漏れ出て、次の瞬間には強烈なまでの大爆発が辺り一帯を包み込んでいく。
当然、すぐ近くでこんなものをまともに受けてしまったラウラとセシリアが、タダで済むはずもない。
凄まじい勢いでシールド・エネルギーを削られていくと――。
「箒!」
「後は……任せましたわ……!」
最後にそれだけ言うと、その身体を粒子へと変えて消えていった。
姉さんが新たに作成した次元転移システムは、シールドエネルギーの全損とともに緊急機関プログラムが強制作動するようになっており、よほどのことがない限りは帰還できるようになっていたのだ。
無事にそれが発動したことに、胸をなでおろしていたが――。
「まだサね。ここにいる敵を切り上げない限り――」
「安崎のもとへは、いけない」
アーリィ先生と一夏の言う通りだった。
なにせまだ、周りには何十何百もの無人機の群れがいる。
セシリアとラウラのためにも……これらを出来る限り早く叩き潰し、出来る限り早く突破しなければ!
「はぁぁぁあああああああぁぁぁぁっ!」
そう思いながら、私は敵の集団へと瞬時加速で斬りかかりに行くのであった――!
◆
戦闘開始から数分が経過したが、圧倒的にこっちが不利だった。
幸い奴は人質解放だけはしっかりとしてくれたので、ナギはIS学園側によって回収。さらにアリーナ全域にシールドバリアが張られた。
そのため、戦いに専念できるとはいえ――。
「超大型メイス……こんなに、使いづらいなんてね!」
花鳥風月のついででコピーしたと思われる雪片と、超大型メイスで打ち合う最中。
思わず舌打ちしつつ、呻く。
ただでさえ馬鹿でかいために扱いが難しく、しかも今のアクシアは酷く不安定なパッチワークときた。
いくら当たれば凄まじい威力と言えども、とても使えた代物じゃあない。
「だったら!」
「――だったら?」
「こうするんだよ!」
そうと決まれば話は早い。蹴りつけて距離を取り、メイスを投げ捨てる。今の状態だと、収納の時間も惜しい。
そうして次の武器としてライフル「テンペスト・ソニック」を構え、数発の光の矢を撃ちこんでいくが――。
「こっちもか……!」
射撃――それも、もとから持っていた武器によるものにおいても、機体のアンバランスさは私を苦しめる。
なにせ元々それなり以上の大きさの火器であり、しかも今のアクシアは両手の長さが滅茶苦茶。そんな状態で両手持ちの銃を無理やり片手撃ちなどして、まともに当たる方が異常という話だ。
「それ、なら……!」
けど――そのくらいのハンデで、今更泣き言なんて言ってられるか!
数度の試し撃ちを経て、通常時とパッチワークとの誤差をある程度把握。
誤差を修正させ、それから数発の牽制射撃。
そして――ついに、新たな武装を解禁させる。
「コイツの威力は、あんたらが良く知っているはずだろう!?」
背中に意識を集中させると、敵ISの代名詞的存在だった武装――テールブレードを射出。
ワイヤーに繋がれた恐るべき凶刃は変幻自在の軌道を描きながら、ヴァイオレット・ヴェノムへと迫っていくが――おそらく躱される、ないしは弾かれるだろう。
なにせぶっつけ本番で初使用の私と、それ専門の訓練も受けている敵。他の部分ならいざ知らず、有線兵器に関しては間違いなく大きな実力差が存在しているに違いない。
だからこそテールブレードはあくまで
そうする、筈だったのだが――。
「当たっ……た……!?」
拙い私のテールブレードなんて捕食用のワイヤークローで弾き返して、反撃する事だって出来たはず。
なのに、すんなりと吸い込まれるように凶刃はヴァイオレット・ヴェノムの仮面。その表面の薄皮一枚だけを切り裂くように当たっていった。
まさ、か……!?
「わざわざ零さんの時と合わせてみたのよ……どう、中々洒落が効いてると思わない?」
やはりとでも言えばいいんだろうか。奴は私の予想と同じ内容の事を言いながら、壊れかけの仮面を勢いよく剥ぎ取る。
仮面に備え付けられていたであろう、ボイスチェンジャーが壊れて肉声が届くが――その、声は。
私の親友の物と、全く同じで――。
「ナ、ギ……!?」
その名が口から漏れ出ると同時、まるで時が止まったかのような錯覚を私へと与えていく。
いくら予想はある程度できていたとは言っても、これは――!?
「そういえば……一応MIA認定だったモノね。まさか、ワンチャン生きてる――なんて思ってたのかしら?」
大好きだった親友と同じ貌、同じ声。
なのに中身は全然違って、喋る言葉も私を嘲るもの。
一度お姉ちゃんと戦って慣れてたと思ったけれど……これは、想像以上にきついものがあった。
「……ンな甘い考えは、持ったことは一度もない」
無理やり捻りだした声で、答える。一応それだけは本当だった。
あの世界での戦いでのMIAイコール完全な死というのは、私たち全員の共通認識だったのだから。
だけど、そう返せたからと言って何にもならないのも事実。
だって今、私の頭の中はぐっちゃぐちゃの、あまりに酷いゾーンへと突入していっていた。
吐きたい、受け容れたくない、目を背けたい。
そんな気持ちの数々を抑えつけ、手にしたレーザーライフルの先端から光刃を展開。この後にやって来るであろう近接戦闘へと備える。
目の前のはナギじゃない、敵だ――!
「あの日の質問、憶えてるわよね? 生前の私が、あんたに訊いたヤツよ」
「――ッ!?」
必死に自分に言い聞かせている中、向こうから続けざまに言葉の矢が放たれる。
その直後、気分の悪さは最高レベルをあっさりと更新していく。もう、逃げ出したくてたまらない。
「偽骸虚兵になったら殺してくれるかってヤツよ!」
忘れられる訳はない。
さっき自分で話そうとしたことも分かってる。
けど、他の人の口から発せられるのは、死ぬほど嫌だった――それが親友の口からだったのだから、なおさら。
だけど、けど……。
「まだ、マシだ……!」
瞬時加速で
あれはナギじゃない、ヴァイオレット・ヴェノムだ。
それにあの事を口にされたのだって、安崎に言われるよりは百億倍マシじゃないか。
強引な自己暗示で戦意を無理やり向上させ、光の刃で敵機と切り結んでいった、その瞬間だった。
「で、結局私は殺せるのかしらね?」
口撃も、緩める気は毛頭ない。
そう言わんばかりに、敵は嘲り顔で問いを発してくる。
殺せるか、だと……!?
あぁ、やってやる……やってやるってんだ!
「――黙、れ! 殺す!」
「あははっ! そりゃそっか、実の姉も殺せたんだもの……所詮親友の一人や二人、今更手を汚してもいいって感じかしらね?」
「煩い! お前は私の友達の――友達だった、ナギじゃない!」
「へぇ……じゃあ。貴女がさっき助けたナギもさ、その友達だったナギじゃないよね?」
事実ではあったし、それを言われるとどうしようもない。
そして、そこを突かれてしまったら、割り切った気持ちもどこか弱まっていく。
そんな問いを喰らってしまって、鍔迫り合いの最中だというのに。
思わず、一瞬無防備になってしまった。
それが、拙かった。
「所詮口だけ……零さんを殺したのも、ただの勢いとその場のノリでやったんじゃないの?」
徐々に剣が押し込まれていき。
「ちが――」
「はっきり言いなさいよ!」
しどろもどろになりながらの反論の後、向こうからの強い言葉とともに力任せに振るわれた剣。
それが、アクシアの光刃の出処であるライフルへと到達して。
「まったく、期待して損しちゃった……もういいよ」
最後にトドメと言わんばかりに、冷たく放たれた言葉と。絶句していたためにできた隙。
そこが決定打となってしまった。
ついに剣は腕を貫通し、一気に手数を奪っていった。
「消えなさいよ」
最後に蹴りとともに、冷たくあいつに言われると同時。私の身体はアリーナの壁面へと直撃。
凄まじい勢いで衝突した結果として崩れおちた瓦礫。
それが、倒れた身体に向けて降り注いでいった――。