知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷

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【2018/04/09 追記】
今回の話で、1名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【エピローグ】「彼は悪い魔族じゃないよ」「そうです。彼は質の悪いだけの魔族です」

----クーラside----

 

「…入校希望者のリストですが、今年分はこれで終わりですね?」

 

バーンとの決戦から3年後。

私は現在、初めて地上に降り立ったオーザム王国にいた。

 

そしていま私が聞いた人物は秘書に当たる人物で、レイザー様から商人の特技を学び、そのまま職員として勤めている者だ。

 

「はい。今年も本校へ試験免除の該当者はなく、全てここオーザム校で人格と能力を磨く必要があると判断しました」

 

レイザー様が作られた特技を教える施設『ダーマ訓練校』は2ヶ国にあり、カール王国にあった隠し砦をそのまま改装し、一般公開されていない本校。

 

それとは別に特技を悪用したり、生半可な気分で学びに来る者を省くため、基礎だけを作り、特技は教えない入校試験のためだけのオーザム校だ。

またオーザム校は入学は自由だが卒業試験はなく、こちらが見込みなしと判断すれば、ずっと本校に招いて特技を教えることはない。

 

これはレイザー様が一度オーザム王国を滅ぼしたことを気にされ、復興のため人材を集めることが目的だという。

 

実際勇者たちが使用したという特技は各地で名をとどろかせ、かつオーザム校は入学試験がないため他国の兵士なども含め、あっという間に集落となり、建物も増えていった。

 

「クーラ様。あと、こちらも。カジノの売上金と、カール国王様から今回の襲撃地候補になります」

 

「あぁ。今度は廃墟の撤去目的ですね。…それと私のことは、校長夫人と呼んでください」

 

秘書から渡された、ヴェルザーによる襲撃予定地を見る。

 

戦が終わった直後、レイザー様の案で冥竜王ヴェルザーからの宣戦布告が演出され、表向きは地上と魔界の戦いは終わっていないことになっている。

その方法はアバンのドラゴラムとアストロン、そしてハドラーの周囲に映像を映す魔術を使い、「バーンの次は私が地上を進軍する」という内容だった。

 

その目的は、平和になったことでダイやその仲間たちがバランのように虐げられることがないよう、まだ勇者の力が必要だと知らしめるためだという。

実際はヴェルザー側は沈黙を保っており、存命しているのかすらわからないが、時折レイザー様やアバンがドラゴラムを使い、山賊のアジト襲撃や焼畑などをして脅威を演出している。

 

(…そうは言っておりますが、本当は戦いが終わると特技の需要がなくなるとか、そんな理由ではないでしょうね)

 

ないとは思いたいが、あのレイザー様のことを思うとその疑念はなくならない。

 

「ふふふ、嫌ですね。レイザーさんとクーラ様は、まだ結婚式を挙げる予定はないじゃないですか」

 

私がそんな裏事情を考えていると、秘書はくすくすと笑う。

そして、その目は笑っていない。

 

生徒であるときからレイザー様に馴れ馴れしいと思い、私の側に置いといて正解だったようだ。

 

「レイザー様は忙しいのです。既に私自身で、魔族と精霊の挙式を上げてもらえる教会は調べていますため、時間さえあればすぐにでもできます。…もっとも結婚を認めないような教会は『この邪教徒め!』と叫びながら人通りを飛び去りましたので、人の入れ替わりがないか確認する必要がありますね」

 

「…現在本校にいる生徒に、実家の教会が風評被害で潰れて職にあぶれたという者がいましたが?」

 

「…そういえば、そろそろ本校の入学式ですね。私が目を通さなければいけない案件は済ませましたので、後は任せます」

 

リリルーラを使い、カール王国にある本校に移動する。

今はちょうど広場にて、数国あるスポンサーの一つベンガーナ国からの代表者が全校生の前で祝辞を読み終わったところだ。

 

『…それでは勇者一行として大魔王討伐に大変な貢献をし、特技を教え広めた本校校長からの挨拶になります』

 

アナウンスでレイザー様の紹介をすると、演台の前にレイザー様が風を切るような音と共に一瞬で現れる。

 

どうやら『砂煙』によって視覚をなくし、その砂をまとったまま『疾風突き』による高速移動をしたようだ。

 

その反応は特技への理解で差がでて、入学生や特技を学んでいない関係者は何が起こったかわからず、入学してだいぶ経つ生徒は同時に異なる特技を行ったレイザー様の技量に驚愕している。

 

そして特技を学び終わる直前の生徒や、卒業せずに講師として残った者達は「また高度な技を無駄なことに使ってる」と呆れていた。

呆れている生徒たちは、避難訓練の際、火事や災害よりも「校長がまたやらかした」と放送する方が真面目に避難する程度には、レイザー様に染まっている。

 

「とりあえず、入学おめでとう。堅苦しい挨拶は苦手だから、軽く短く言うが…」

 

毎年のことではあるが、レイザー様はいつもの洗礼をしようとする。

これによって生徒からの敬意が薄れているのが、止めるだけ無駄だろう。

 

「これまでの訓練や挨拶で、疲れてるだろう。皆まとめて、まずは回復してやろう!!」

 

そういって、レイザー様は『ハッスルダンス』を踊り出す。

 

苦労して入った本校の校長がこんなので申し訳ないとは思いますが、約束しましょう。

レイザー様と特技がある限り、この世界は決してあなた達を退屈させません。




このエピローグにて、今作は完結となります。

次話はこの世界でのダイ達について私なりの解釈のため、完全におまけとなります。

本当は1話まるごとあとがきとして書けるほど語りたいことはあるのですが、こちらで長々とするのはマナー違反な気がするため、簡潔に言わせていただきます。

まずは更新速度が遅いにも関わらず、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
出来に納得できず、更新が非常に遅れることがほとんどで、申し訳ありません。

その際も罵倒などせず、むしろ生存確認などで声をかけていただけたことが起爆材となり、何とかここまでたどり着けました。

これからまたしばらくは読み専に戻らせていただきますが、当初の目的の一つだった「自分でもダイの大冒険で話を書いてみよう」と思う人がいれば幸いです。

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